今時の恋愛(原題:LOVE AAJ KAL 英題: Love Nowadays)の紹介:2009年インド映画。インドを舞台に、現代の自由恋愛と、40年も昔の素朴な恋愛模様を描く作品。
監督:イムティヤーズ・アリ 出演:サイフ・アリー・カーン、ディーピカー・パードゥコーン、リシ・カプール、ラフール・カンナ、ラジェンドラナート・ズーチー、ヴィール・ダース、ほか
映画「今時の恋愛」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「今時の恋愛」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「今時の恋愛」解説
この解説記事には映画「今時の恋愛」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
【今時の恋愛について】
このインド映画のロケ地はロンドン、サンフランシスコ、インド(主にデリー)。多くの国がボリウッド映画撮影ロケ地に選ばれるよう、積極的な誘致活動を繰り広げていることは、少し前にインドの新聞に書かれてありました。「ロケに来てくれ」アメリカ、タイ、ニュージランド、各ヨーロッパ諸国が熱いラブコールを送っており、「その代わりロケは全面協力する」「関税も安くしてあげる」など特典の申し出もしているそうです。
なぜ世界各国がそこまでインド映画撮影に執着するのかというと、例えばスペインが舞台になったインド映画(Zineqgi Na Milegl Dobara(人生は一度きり))がヒットすると一気にインド人の観光客が増えスペインも観光収入源を大幅にアップできた、という数年前の事例があるからだそうです。
インド映画(ボリウッド映画)をインドの映画館で鑑賞したことがある人ならご存知のはずですが、観客席がガラガラなんていうことは滅多にありません。インド人の観客たちはスクリーンの中の映画に対して拍手を送り、お腹を抱えて笑い転げています。
映画そのもののステータスが日本とはまるで違います。インド経済の向上と共によって自然とレベルもアップしスケールも大きくなっていっていることから、ここ最近のインド映画の多くは海外ロケばかり!
さてこの「今時の恋愛」もイギリス、アメリカ、インドと三カ国に渡ってロケが敢行されています。では一体どういうストーリーなのでしょうか?
【舞台はまずロンドン】
イギリス側からかなりの全面協力があったとみられ、ロンドンのtube,地下鉄、そしてヒースロー空港での撮影・・・
ロンドン。
主人公のジェイが、バーで一人で飲んでいたミーラに声をかけます。(いくらなんでも、普通のまじめなインド人の女の子が一人でバーに・・・インド国内外のバーで見たことはありませんが…..)
ジェイは軽いノリだったようですが、ミーラの方は運命を感じます。二人はすぐに恋人同士になります。しかしジェイはライトな恋愛ごっこを楽しんでいるだけの様子。ミーラの方はもっと真剣な気持ちがあるのですが、ポーカーフェイスを装い彼のカジュアルな付き合い方に文句を言いません。
ある時ミーラが仕事でインドに戻ることになります。ジェイはあっさりと「だったら別れよう」。彼女はいつものごとくポーカーフェイス。笑顔ですんなり同意。
二人はBreak up パーティーを開きます。「婚約パーティー、結婚パーティーというものがこの世にあるなら、恋人解消パーティーがあってもいいじゃないか」とジェイが悪ノリし、面白がって企画。ミーラはこれにも文句を言いません。
このパーティーの会場になったカフェオーナーのビール氏はジェイとミーラのカップルを見ていました。非常にぴったりのお似合いのカップルだと感じました。「あっさり別れていいのかい?後悔するぞ」とジェイに忠告します。
ジェイはいかにも「うるさいジジイだなあ」という表情を見せるものの、この会話をきっかけにビール氏と親しくなり、彼の遠い昔の恋愛話も聞くことになります。
【今度は大昔のインドが舞台】
このあたりから恐らく40年?くらい前のデリーの映像も出てきます。若きビール氏の回想シーンです。
オールドデリーと思しき場所も出てきますが、流石映画の映像です。庶民街なのに、見るからに病気でやせ細った野良犬たちが登場しません・・・腕や脚がない乞食が物乞いをする姿もまったくありません・・・食べ物屋でも、売り物にハエがたかっていません・・・
そのへんのつっこみはさておき、その後現代の若者のジェイと昔の若者のビールの話が交互になっていきます。脚本と編集がよくできているので、ややこしさはまったくありませんでした。
ロンドンに残ったジェイと、インドに戻ったミーラは携帯やメール、チャットなどで小まめに連絡を取り続けます。
これだけ笑いが絶えない会話がある、ということは本当に気があっている証拠のはずなのですが、恋愛や結婚をまじめに考えたこともないジェイの方は、ミーラが自分にとって特別な女性かもしれない、ということにいまだに気が付きません。
ビール氏が、自身の大恋愛の経験を基にした忠告をいくら口に出しても、ジェイはふらふらしています。
【それぞれ新たな恋人登場】
ある日、ミーラからインドである男性に出会ったと聞かされます。面白くない感情が芽生えたものの、とことん鈍い彼にはそれが嫉妬ということに気付きません。不快な気持ちを紛らわすためなのか、ジェイもすぐに新しいGF(ガールフレンド)を作ります。
新GFは、(恐らく東欧出身の)金髪の女の子。彼女が「インドに旅行に行きたい」と言い出した時、ジェイもお願いされて一緒にインドに行きます。
そしてGFの目を盗んで、帰国しているミーラと会います。何度も二人きりで会うのですが、ジェイは久しぶりのミーラとのデートをただ楽しんでいるだけのようでした。
彼の軽い様子を見ていたミーラも流石に堪忍の緒が切れて、初めて・・・初めてジェイに声を荒げて文句を言います。(確かに昔の恋人が海を越えて「会おう」と言ってきたら、何か一大決心をして告白をしてくるんだ、と思うでしょう。しかし数年ぶりの再会であるにも関わらず、昔と何も変わっていない・・・いらっとするでしょう)
ミーラが「今のBF(ボーイフレンド)に求婚された」と打ち明けても、ジェイはへらへらするだけ。ミーラは本当に悲しみます。
「それぞれ付き合っているBF,GFがいるのに、恋人のような電話やメールのやり取りを続けるのはおかしい、よくない」ミーラは「もうあなたには連絡しない」と言い放ちます。
ジェイはものすごいショックを受けますが、大人しくまたイギリスに戻ります。
【元恋人がよその男の妻に!】
遂にミーラがBFと結婚式をする日がやってきました。彼女との共通の友達を大勢持っていたジェイは、半ば強制的にその挙式に参加させられます。
挙式を挙げている美しいミーラを見て、流石に自分が失うものの大きさに初めて気づきかけます。
しかし、そこは今時の若者。自分の心の中をしっかり見つめてみよう、というなど全くしません。まあいいさ、仕方ない、時はすでに遅し、とすぐに諦めます。
挙式の翌日、ミーラは夫に別れを申し出ます。「私は大きな間違いをしでかした、ごめんなさい」
ジェイに会って思いのたけをすべて・・・長年の彼への愛情など打ち明けようとします。そのタイミングで彼が長年の夢だったサンフランシスコの会社から採用通知をもらったことを知ります。
ジェイはサンフランシスコのゴールド橋建設に関わる仕事をするのが夢で、ほぼ諦めていたところにこの通知。
すっかり舞い上がってしまったジェイはミーラがお嫁に行ってしまった悲しみも忘れて、浮き足立って一人で渡米します。(ミーラがたった一日で離婚したことを知りません)
ミーラは「おめでとう」と電話で言って姿を消します。
【そして次の舞台はサンフランシスコ】
今度はサンフランシスコのロケ・・・一体この映画一本製作するのにいくらかけたのでしょう・・目がくらくらです・・・
サンフランシスコのシーンも本当に見事でした。街全体とゴールド橋の空撮のスケールという技術的なことだけでなく、内容も素晴らしかったです。
サンフランシスコの大企業に就職。眺めのよい豪華マンションに住み、またもや金髪の女の子もゲット。やる気満々で張り切って目を輝かして、背広姿で背筋を伸ばし早歩きで快活に歩き、自信とエネルギーにみなぎった表情。
ところが生活と仕事に慣れ何も目新しさがなくなっていくと共に、彼自身がじょじょに生気を失っていく様子が分かりやすく上手に描かれていました。
ジェイは自分でも戸惑います。なぜ長年の夢だった仕事に就いて自分は恵まれた環境にいるのに、こんなに鬱なんだろう、と・・・
何しろ自分の深層心理だとかまじめに考えようとしたこともない、軽いノリで生きてきた今時の若者なので、まったくもって自分が一体どうしてしまったのか、何が不満で気に入らなくていらいらするのか、不幸せなのか、全然分かりません。
ところが夜道を一人で歩いていた時に、窃盗団に出くわし、お金を盗られます。その時に財布に入れていたミーラの写真も盗まれた時に「ミーラだ、彼女がいないからだ。だから自分はこんなに落ち込んでいるのだ」とようやく気付きます。
ジェイはミーラが既婚者になっていると思いこんでいますが、それでも「人生は一回きり」と、ビール氏の励ましもあって、デリーまで飛びます。
幸せな結婚生活を送っているのであろう、子どもももう生まれているのかもしれない。幸せを絵に描いたようなファミリーライフを送っているのに違いない。
でも彼女への気持ちに気が付いた今、再会しなければならない。気持ちを伝えなければならない。
緊張と不安いっぱいでした。一切期待はしていませんでした。しかしミーラは左手の薬指に指輪をはめておらず、ちょうどフラスコ画修復の仕事作業中でした。なんと彼女はたった一日だけの結婚をした後、ジェイへの想いを捨てきれないままずっと独り暮らしをしていたのです。
【「今時の恋愛」から学べること】
この映画を見て思ったのは、男は男らしくならなければならない、ということです。妥協も遠慮も、損得の計算も打算もなく、ただ自分の感情に従い、当たって砕けろとどんな障害にもめげず、頑張っていく・・・頭でごちゃごちゃ考えない・・・
「でも、でも・・・」とぶつぶつ言わない。理屈はなく、「ソウルメイトなのだから、一緒にならなければならないんだ。とりあえず行動しなきゃならないんだ、欲しいものには全力で入手する努力をしなければならないんだ」と、こうと決めたらパワー全開。「どうせもう手遅れだもんね」なんて怠慢なことは言わないこと。
こういう原始的な恋愛パワーを、最近の欧米や日本の小説ではお目にかかっていないです。この映画には、純粋に感動します。
【All the best!な映画】
主役の男優は背が低くて、お腹も出ていて鼻は大きすぎるし、全くキュートではありません。(若い頃のダスティン・ホフマンに少し似ているかもしれません)しかしバタくさい雰囲気がこの映画には逆に良かったのかもしれません。非常に鈍くてイライラさせられる青年なのですが、どこか茶目っ気たっぷりで憎めない感じがいかにも女性にモテそう。
ミーラ役の女優も華があって可愛く、思わず応援したくなるようなけなげさがあり好感。
老人の昔の恋愛話も絡んでいますが、古き良き時代のインドと、現代のインドとスタイリッシュでモダンなロンドンとサンフランシスコ。ひとつの映画でこれだけ贅沢な舞台を見ることができたのは、非常に得をしたような気分になります。
たかが恋愛映画ではない、ダイナミックさと壮大さと豪華さを感じられる愉しい映画です。見終わった後の気分も爽快。
映画の中でのジェイの口癖・・All the best. (無事でね!、元気でね!うまくやってね!などの意味になるのでしょうか)
最初はただの口癖だったけれども、本人の成長と共に、意味を持ってその言葉を発していくようになる・・・これも良かったです。
片思いの相手に思いを告げる自信と勇気のない人はぜひこの映画を見てパワーをもらうべき。
All the best!!!!
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