真昼の暗黒の紹介:1956年日本映画。1951年に起きた八海事件では、単独犯だった犯人が罪を軽くすることを目的に4人の知人を共犯者に仕立てた。この事件を担当した弁護士、正木ひろしが著した『裁判官 人の命は権力で奪えるものか』を原作とする社会派映画。登場人物等の名は実在のモデルの名から変えられている。公開時、事件はまだ最高裁判所で係争中だったが、1968年の最高裁判決により、共犯とされた4人の無罪が確定している。
監督:今井正 出演者:草薙幸二郎(植村清治)、松山照夫(小島武志)、左幸子(永井カネ子)、矢野宣(青木昌一)、 牧田正嗣(宮崎光男)、小林寛 (清水守)、内藤武敏(近藤弁護士)その他
映画「真昼の暗黒」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「真昼の暗黒」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「真昼の暗黒」解説
この解説記事には映画「真昼の暗黒」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
真昼の暗黒のネタバレあらすじ:起
三原村で仁科老夫婦が惨殺されて発見される。刑事たちは直ちに複数の犯人による強盗殺人と断定した。その翌朝、二人の刑事が笠岡市の遊廓の客、小島武志を逮捕した。彼のジャンパーには血痕がついていた。
小島の取り調べが行われる。小島は土工仲間の中で浮いている。ダンスパーティーに皆で出かけた帰りの夜、笠岡の遊郭に行こうと言ってうるさい酔っ払いの彼を無視して仲間たちが歩いていくとふてくされて、側に停まっていた馬車に積まれていた砂利をひっくり返す。その損害を仲間の一人植村と弁済することになったが、つい酒と女に金をつぎこむ。犯行の夜にとうとう仁科夫婦の家に強盗に入ることを思いついた。だが、夫婦が起きてしまい、慌てて斧を取って夫を殺し、次に妻を絞殺した。夫婦げんかで夫が殺されて妻が自殺したと見せかけるために部屋を荒らして妻を吊るした。
真昼の暗黒のネタバレあらすじ:承
だが、複数犯説に固執する刑事たちは小島から共犯者を吐かせようとする。このままでは死刑になると脅されて、仲間の植村、青木、宮崎、清水の四人を共犯だと自白してしまう。
「共犯」の4人が逮捕される。前科のある植村は首謀者とみなされた。彼は内縁の妻になったカネ子の実家に挨拶に行った帰り、駅前で捕まえられる。殴られ、投げられ、蹴られた末に嘘の自白をすることになる。一審では植村が死刑、他の4人が無期懲役という判決が出た。
真昼の暗黒のネタバレあらすじ:転
一年後、レストランで働いているカネ子は客の中に夫たちの弁護を担当する近藤、山本両弁護士を見出す。二人の弁護士はカネ子に検察が警察と癒着していること、判事もなかなか独自の判断をしないことを話す。でも近藤は植村たちの無罪判決に希望をもっていた。別れ際にカネ子は近藤に金を渡して植村への差し入れを頼む。弁護費用は清水家がもっていたが、植村、青木、宮崎、清水の家族はそれぞれ偏見や貧困と戦わなければならなかった。
控訴審が始まる。検察は被告全員の死刑を求刑する。近藤は警察による拷問があったことを主張し、犯行時間についての小島の証言が供述調書以来次々と変わっていることを指摘する。
現地検証が行われる。植村の家にはカネ子も来ていた。宮崎の実家の食堂では、宮崎の母の愛人でもあった西垣巡査が質問される。彼は事件当夜に食堂に寄った時刻を証言する。それは宮崎のアリバイになる。しかし、事件直後に保身のために捜査本部の主張に合わせて作った上申書との食い違いを指摘されて困ってしまう。
現地検証の後、植村と面会した近藤弁護士はカネ子が別の男と結婚することを教わる。植村はカネ子と別れざるを得なくなった運命を呪うがカネ子を恨むことはなかった。
真昼の暗黒の結末
弁護人の最終弁論が行われる。近藤弁護士は、5人全員による犯行だとすると人間業とは思えない素早さで犯行が行われたことになることを示す。そして小島の犯行時間の証言が他の被告のアリバイに合わせて次々と変化したことを論じる。
弁護側の説得力ある主張によって、植村たち4人の被告の家族は無罪の自信を深め、判決の日は心尽くしの弁当を用意して早朝に出るバスに乗って判決を聞きに出かける。裁判所に護送される植村たちもその日の釈放を期待していた。
しかし、一審同様、植村は死刑、小島は無期懲役。青木は懲役15年、清水と宮崎は懲役12年に減刑されただけであった。近藤弁護士は、被告の家族にかけることばがない。拘置所の面会室で植村に母もかける言葉がなかった。無言で立ち去った母に向かって、金網につかまって植村は「お母さん、まだ最高裁判所があるんだ」と絶叫するのだった。
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