王になった男の紹介:2012年韓国映画。李氏朝鮮の時代を舞台に、実在の国王にして暴君と恐れられた光海君とその影武者となった道化師の15日間に渡る攻防を、イ・ビョンホンが光海君と道化師を一人二役で演じ切り、韓国版アカデミー賞ともいえる「大鐘賞」で史上最多の15部門を制するなど韓国中で大反響を巻き起こした歴史ミステリードラマです。
監督:チュ・チャンミン 出演者:イ・ビョンホン(光海君/ハソン(二役))、リュ・スンリョン(ホ・ギュン)、ハン・ヒョジュ(王妃)、キム・イングォン(卜部将)、チャン・グァン(チョ内官)、シム・ウンギョン(サウォル)、キム・ミョンゴン(パク・チュンソ)、キム・ハクチュン(ユ・ジョンホ)ほか
映画「王になった男」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「王になった男」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
王になった男の予告編 動画
映画「王になった男」解説
この解説記事には映画「王になった男」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
王になった男のネタバレあらすじ:起
1616年、李氏朝鮮の時代。時の15代国王・光海君(イ・ビョンホン)は暴君として恐れられており、また宮廷内の権力闘争にさらされ、料理には毒が盛られるなど常に暗殺の危機にありました。心身ともに疲弊した光海君は自らの影武者を立てるため、自分によく似ている者を探すよう極秘裏にお触れを出しました。
その頃、妓生宿では光海君と瓜二つな道化師のハソン(イ・ビョンホン(二役))が王を茶化したような芝居を打っていました。そこに光海君の側近であるホ・ギュン(リュ・スンリョン)とト武将(キム・イングォン)が現れ、半ば強引に王宮へと連行していきました。ハソンはてっきり国王を侮辱した罪に問われるものと思っていましたが、ハソンに対面した光海君は彼を3日に1度の影武者に任じ、ハソンも高額な報酬に目が眩んで引き受けることにしました。
王になった男のネタバレあらすじ:承
光海君はハソンに正殿を託し、ハソンはホ・ギュンや世話係のチョ内官(チャン・グァン)から王宮での礼儀作法や大臣の氏名や性格などを叩きこまれました。ある日、光海君はとうとう毒を盛られて病の床に伏してしまい、自身が回復するまではハソンを代役に立てることにしました。ただし、偽物であることが露見することを恐れ、ハソンはホ・ギュンから王妃(ハン・ヒョジュ)には会わないよう固く厳命されました。
ハソンは役人から手籠めにされた15歳の妓生サウォル(シム・ウンギョン)を女官として雇い入れることにしました。やがてハソンは見事に光海君を演じ切れるようになり、執務に関してはホ・ギュンやチョ内官の言う通りに振舞っていました。しかし、密かに光海君を亡き者にしようと目論む大臣パク・チュンソ(キム・ミョンゴン)は影武者の存在に気付き、ハソンを利用して自らの思うがままの政策を立案するようになりました。
王になった男のネタバレあらすじ:転
役人たちが不当な重税を国民に課していることを知ったハソンは、自身が影武者の間に虐げられている国民を救うために独断でお触れを出し、重税を課した役人を罪人として処罰しました。
ある日の夜、ハソンの寝室に王妃が現れ、反逆罪で捕らえられている王妃の兄ユ・ジョンホ(キム・ハクチュン)の無実を訴えました。ユ・ジョンホはただ暴君に成り下がった光海君に意見したかっただけであり、兄を助けなければ自害するという王妃の頼みを聞き入れてユ・ジョンホを無罪放免としました。元々光海君と王妃の関係がすっかり冷え切っていたということもあり、ハソンは正体を隠したまま王妃に想いを寄せるようになりました。しかし、ハソンが王妃やホ・ギュンらを騙している不届き者だと勘違いした卜部将はハソンに刃を突きつけ、王妃が庇ったことでハソンは難を逃れました。その後、意識を取り戻した光海君はもはやハソンは用済みになったとして、ホ・ギュンにハソンを口封じとして殺害するよう命じましたが、既にハソンの優しさに触れていたホ・ギュンは躊躇しました。
王になった男の結末
謀反を企てるパク・チュンソは手始めとして、王妃に謀反の罪を擦り付けて廃位に追い込もうとしましたが、ハソンは王妃を辞めさせるなら自分も王を辞めると訴えました。その後、王妃はハソンの胸に本物の光海君が負っている傷がなかったことからその正体を知り、ハソンは王妃とホ・ギュンの計らいで翌朝に王宮から抜け出すよう指示されました。ハソンは影武者としての報酬をサウォルに渡し、実家に戻すようホ・ギュンに命じると最後の執務に臨み、明王朝を支援するために大軍を派兵しようとしる大臣たちを糾弾、明の皇帝のご機嫌取りよりも国民の方が対峙だと訴えました。ところが、サウォルはパク・チュンソの息がかかった女官から毒の入った飴を王の粥に入れるよう命じられ、自ら飴を舐めるとハソンに「末永くお元気で」と言い残して絶命しました。間もなく、パク・チュンソは影武者の正体を暴くため正殿に向かい、手下に胸の傷を確認させたところ、王の胸には証拠の傷跡がありました。実は光海君が間一髪でハソンと入れ替わったのであり、あらかじめホ・ギュンからハソンの15日間に渡る執務の記録を記した日記を読んだ光海君は民を想う理想的な王の姿に心を打たれ、ハソンに情けをかけて逃がすことにしたのです。パク・チュンソは反逆者として捕らえられました。
ハソンは卜部将の助けで王宮を脱出、卜部将は自らの命を犠牲にして追手からハソンを逃がしました。船に乗り込んだハソンは、見送りに出向いたホ・ギュンと涙を浮かべながら微笑み合いました。
この韓国映画「王になった男」は、王とその影武者の入れ替わり作戦を通して、指導者の真の役割を問う痛快無比な諷刺喜劇の傑作だ。
先入感なしで初めてこの映画を観た時、イ・ビョンホン主演の宮廷歴史大作というから、またコスチューム・プレイの空疎な内容の時代劇かなと高をくくっていたら、これが予想を覆してあまりの面白さに、続けて2回観てしまいました。
黒澤明監督の「影武者」を持ち出すまでもなく、王そっくりの影武者が本当の王を袖にして頑張ってしまうのだから、面白くないわけがないんですね。
イ・ビョンホンが演じるのは、17世紀初頭に実在した朝鮮王朝の15代目の王・光海君と、その影武者に引っ張り出された王と瓜二つの道化のハソン。
暴君ゆえに毒殺の危機におびえる王の代わりに、15日間だけ本物の王にすり替わる計画が実行されるが、果たしてその結末は? ——-。
この手の影武者のお話は、最初のうちはうまくいくものの、やがて素性がばれてとんでもないことになるのが落ち。
この作品でも型通りの展開を見せるが、面白いのは本物の王になりすますイ・ビョンホンのコミカルな演技だ。
かつての”韓流四天王”のひとりで、韓国映画を代表する演技派スターにとどまらず、今やハリウッド映画界にも進出して世界的な俳優の地位を確立したイ・ビョンホン。
“七つの顏を持つ男”の異名をとる演技派イ・ビョンホンの愁いと哀しみを秘めた演技はまさに圧巻で、淡々と演じて笑いを取ってしまうその巧さには、唸らされましたね。
その年の韓国の映画賞を総なめにしたのも納得の演技だったと思いますね。
また、王妃役のTVドラマ「トンイ」での爽やかな演技が印象的だったハン・ヒョジュ、王の忠臣ホ・ギュン役の「神弓-KAMIYUMI-」での憎々しい悪役ぶりが凄かったリュ・スンリョンの演技も素晴らしかったが、それ以上に、最後にハソンを命がけで守るト武将役のキム・イングォンの演技には、思わず目頭が熱くなりましたね。
しかし、何といってもこの映画が優れているのは、道化が王になって初めて見えてくる”リーダーの真の役割”を、チュ・チャンミン監督が的確に描いている点にあると思いますね。