ミッドウェイの紹介:1976年アメリカ映画。アメリカ建国200周年を記念して製作され、太平洋戦争における最大の激戦となったミッドウェー海戦を描いた大作戦争映画です。序盤で東京や川崎などの主要都市に対するドーリットル空襲などが描かれ、終盤では1942年6月4日から7日のミッドウェー海戦で航空母艦・ヨークタウンが撃沈されるまでの過程を描いた作品である。
監督:ジャック・スマイト 出演者:チャールトン・ヘストン(マシュー・ガース)、三船敏郎(山本五十六)、ヘンリー・フォンダ(チェスター・ニミッツ)、グレン・フォード(レイモンド・スプルーアンス)、ロバート・ミッチャム(ウィリアム・ハルゼー)、ジェームズ繁田(南雲忠一)、ノリユキ・パット・モリタ(草鹿龍之介)ほか
映画「ミッドウェイ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ミッドウェイ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ミッドウェイの予告編 動画
映画「ミッドウェイ」解説
この解説記事には映画「ミッドウェイ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ミッドウェイのネタバレあらすじ:起
真珠湾攻撃に端を発した太平洋戦争の開戦から約半年が経った1942年4月18日。大日本帝国海軍連合艦隊の戦時待機錨地である広島にいた連合艦隊司令長官の山本五十六大将(三船敏郎)は、渡辺安次中佐(クライド草津)から、東京や横浜、川崎が相次いでアメリカ軍に空襲されたという報告を受けていました。
その頃、ハワイ・ホノルルの米軍太平洋艦隊真珠湾基地では、太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツ提督(ヘンリー・フォンダ)の命を受けたマシュー・ガース大佐(チャールトン・ヘストン)が日本軍の動向に関する情報を入手するため海軍情報局のジョセフ・ロシュフォール(ハル・ホルブルック)のもとを訪ねていました。その帰り、ガースは偶然にも息子のトム少尉(エドワード・アルバート)に遭遇して驚きました。トムは日系人女性の佐倉春子(クリスティナ・コクボ)と交際しており、ガースに結婚の許しを求めてきました。
ミッドウェイのネタバレあらすじ:承
元々人種に対する偏見などないガースでしたが、真珠湾攻撃から半年しか経っておらず、敵国の女性を向かい入れるのは全く想定だにしていませんでした。しかも春子の両親は危険人物として逮捕されており、トムは早期に春子の両親が釈放されるようガースに協力を求めてきました。
その頃、広島湾に停泊していた日本海軍連合艦隊の旗艦である戦艦「大和」の艦上では、山本を中心に作戦会議が行われていました。山本は米軍太平洋艦隊の主力をミッドウェイ沖に誘き寄せ、大艦隊で一気に制圧する作戦を提案、第1機動部隊司令長官の南雲忠一中将(ジェームズ繁田)などは賛同するも、第2艦隊司令長官の近藤信竹中将(コンラッド・ヤマ)などは基地航空部隊の支援が望めない現状では無謀だとして反対、意見は二つに分かれました。
一方、ホノルルでは、ミニッツ提督が副官のアーネスト・ブレイク少佐(ロバート・ワグナー)らと共に水上飛行艇で真珠湾基地に到着、ガースとロシュフォールの出迎えを受けました。ロシュフートは日本軍の通信暗号“目標AF”を解読した結果、それがミッドウェイを指し示すことを確信したうえで、逆にミッドウェイから偽の情報を流して敵の様子をみることを提言しました。
ミッドウェイのネタバレあらすじ:転
日本軍はミッドウェイからの偽情報に反応を示し、ロシュフォールの読みが正しかったことが証明された形となりましたが、ワシントンの海軍本部から派遣されて来たビントン・マドックス大佐(ジェームズ・コバーン)は日本のミッドウェイ作戦が米軍の戦力を分散させるための陽動作戦であることを主張、主力をミッドウェイに派兵すればハワイと本土西海岸が無防備になると警鐘しましたが、ミニッツ提督はマドックスの意見を退けてミッドウェイへの派兵を決断、入院中の司令官ウィリアム・ハルゼー中将(ロバート・ミッチャム)の代わりとしてレイモンド・スプルアンス提督(グレン・フォード)とフランク・フレッチャー提督(ロバート・ウェッバー)に指揮を託すことにしました。
その頃、日本軍でも山本がミッドウェイ作戦を決断、南雲は参謀の草鹿龍之介少将(ノリユキ・パット・モリタ)と共に空母「赤城」に乗艦、着々と準備が進められていました。
1942年5月5日、大本営軍司令部は正式に作戦実行の命を下し、米軍も5月29日に空母「エンタープライズ」「ホーネット」を擁する第16機動部隊が真珠湾を出撃しました。ガースは空母「ヨークタウン」の航空司令官として出撃の途につき、トムの上官カール・ジョセップ中佐(クリフ・ロバートソン)に息子のことを託しました。
ミッドウェイの結末
当時圧倒的な艦隊を誇っていた日本軍に対し、米軍の艦隊は4分の1しかありませんでした。
1942年6月5日、ミッドウェイ基地の戦闘機部隊は友永丈市大尉(サブ・シモノ)を総司令官とする日本軍第1次攻撃隊を迎え撃ち、これを皮切りに遂にミッドウェイ大海戦の火蓋が切って落とされました。続いて日本軍は第2次攻撃隊として主力の空母艦隊「赤城」「加賀」「蒼龍」を投入しましたが、レーダーにより日本軍の動きを先読みしていた米軍は「ヨークタウン」から爆撃機を発進させて奇襲を仕掛け、日本軍空母は転回する間もなく4艦中3艦が撃沈されました。残る1隻の「飛龍」は「ヨークタウン」を撃沈するも、ガース自ら乗機して指揮する急降下爆撃隊が「飛龍」を撃沈しました。ガースは戦いで命を落とすも大海戦は米軍の勝利に終わり、艦隊の撤収を命じた山本は自ら作戦失敗の全責任を負う覚悟を決めました。やがて真珠湾には激戦を終えた艦隊が凱旋、ミニッツ提督は死んでいったガースらを偲びながら凱旋を見守りました。
「ミッドウェイ」感想・レビュー
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“アメリカ建国200年記念映画として製作され、アメリカ側からミッドウェイ海戦を描いた「ミッドウェイ」”
この映画「ミッドウェイ」は、アメリカ建国200年記念映画として製作された作品で、太平洋戦争の転機となった昭和17年6月5日のミッドウェイ海戦を、当時の製作費42億円で再現されました。
アメリカ太平洋艦隊司令長官ニミッツ大将(ヘンリー・フォンダ)が映画のラストシーンで、「我々の方が、彼らよりほんのわずか”ラッキー”だったのだ」と述懐していますが、この映画のテーマは、”信じ難い勝利”をアメリカにもたらした”幸運”というものに置かれているように思います。
アメリカ側の勝因の第一の理由は、日本海軍の暗号を解読して、その攻撃目標「AF」がミッドウェイである事を事前に察知していた事です。
それには、電信量からの判読と囮電報を使っていて、そして、この情報を根拠として、ニミッツ大将は必ず日本艦隊がミッドウェイへやって来るとの信念のもと、ワシントン海軍作戦部の反対を押し切って、ミッドウェイに賭けてアメリカ艦隊空母の全艦隊を進出させたのです。第二の理由は、索敵を強化して非常に速く日本艦隊を発見した事です。
偵察機は、アメリカ側22機に対して、日本側は7機という大きな差がある中、しかも、アメリカ艦隊を発見した日本側の索敵機の無電は故障していたのです。第三の理由は、アメリカ軍攻撃隊の攻撃順序が当初の予定と大幅に狂った事です。
航路のミスのため、雷撃隊に遅れて戦場に到着した急降下爆撃隊は、低空でアメリカ側の雷撃機を攻撃している零戦を叩いたうえで、日本側空母の奇襲に成功する事が出来たのです。
この急降下爆撃隊は、日本艦隊を発見出来ずに引き返す寸前だったのです。第四の理由は、ブルという愛称で呼ばれていた猪突猛進型のハルゼー(ロバート・ミッチャム)が入院中のため、冷静沈着型のスプルーアンス(グレン・フォード)にアメリカ機動艦隊の指揮官が交代したという事です。
ハルゼーは後のレイテ海戦で、日本海軍の小沢艦隊の歴史上有名な,陽動作戦にかかって、レイテ湾口を空にするという失敗を犯したという人物でした。第五の理由は、アメリカ側は、新開発の電探を設置しており、敵機の発見がより速かった事—-等々が、歴史的検証を踏まえた上で、この映画の中で描かれています。
以上のアメリカ側の勝因は、運というよりも、むしろ作戦的、技術的なものがかなり含まれていて、アメリカ側が”運”と言っているのは、勝者の余裕と見るべきではないかと思います。
一方の日本側の敗因は、アメリカ側の勝因の裏返しなのですが、更に言えば、山本五十六連合艦隊司令長官のMI(ミッドウェイ)作戦が、昭和17年4月18日のドゥリットルの東京爆撃に刺激されて、その発動を急ぎ過ぎ、準備不足の面があったのではないかと後世、言われています。
そして、何と言っても最大の敗因は、情報不足であり、連合艦隊旗艦の大和は、ハワイ方面の交信状況から敵空母の出撃を感ずいていたものの、洋上での無線封止のため、前方にある南雲機動艦隊に知らせる事をしませんでした。
もともと、連合艦隊司令部と前線の南雲機動艦隊との間には、気分的な齟齬があったと言われていますが、それは航空出身でありスマートな山本司令長官(三船敏郎)と、水雷戦隊上がりの無骨な南雲中将(ジェームズ・繁田)との出身と性格の差と、更には条約派と艦隊派の海軍内での抗争にまで遡るとも言われています。
しかし、やはり、基本的には、開戦以来7カ月の不敗の驕りと気分の緩みがあった事が、自ら不運を招いたのだと言わざるを得ません。
このように、ミッドウェイの失敗を、単に凶運として片づける事は出来ませんが、日本艦隊の空母からの攻撃隊の発進直前に奇襲を受ける、歴史的に有名なシーンは、瞬時の差だけに、やはり”歴史の中のつき”の無さを思わせます。そして、この発進の遅れは、艦爆護衛の戦闘機を付けようとしたのが最大の原因であって、「部下を失いたくない」という南雲中将の心情が出たからだとも言われています。
アメリカ側の出演俳優は、チャールトン・ヘストン、ヘンリー・フォンダ、グレン・フォード、ロバート・ミッチャムと、いずれもネイビー振りが板についていますが、日本側の出演俳優で意外に良かったのが、「ザ・ヤクザ」(シドニー・ポラック監督)にも出演していた日系俳優のジェームズ・繁田の南雲中将で、彼だけがそれらしい感じを出していましたが、山本司令長官を演じた三船敏郎は、いつもの精彩を欠いていたように思います。
実像としても、この敗戦の責任を負って、最後はサイパン島で戦死した愚直とも言える南雲中将は、不遇な提督であったような気がします。
アメリカ側の飛行隊長ガース大佐(チャールトン・ヘストン)の子息の少尉と日系二世の女性との恋愛のエピソードは、取って付けたような感じで不要だったのではないかと思います。
1976年はアメリカ建国200周年に当たり、この『ミッドウェイ』もその記念行事の一環として制作されたと記憶しています。公開当時はセンサウンドという当時の最新技術の音響効果が大きな話題となりました。映画の出来としては…期待が大きかった分だけハズレでした。当時の記録映像が多用されているのは悪い事とは一概に言えませんが、明らかな誤りが学生だった私の目からでも明らかでしたから。時代考証以前に、話題性先行の見本のような映画でしたね。ただし、キャストに関しては超・豪華でした。日系人俳優の中には後の大作に出演されている方が何人も居られ、それは嬉しい事なのですが、反面「おかしな」日本の描かれ方をしている嚆矢となったことも見逃せないのです。故・三船氏以外は大物の日本人俳優が起用されなかったのは『トラ・トラ・トラ!』と大きく異なり、とても残念に思えるのです。戦争映画であるが故の史実重視という点では満足がいかないという点で後の『パールハーバー』と共通していますね。根底にあるのは日本に対する眼差しが根本的に異なるということに思えるのですが。まあ、セリフが英語が基本のため日系人俳優を起用したということも理解は出来るのですが…。チープさが目立つことに反論も出来ないでしょう。実際の劇場で観た感想では、先述のセンサラウンドの迫力が凄かったことを第一に挙げておきます。パニック映画『大地震』で培われた技術ですが、意外と言いますか残念なことに映画界で広く普及することなくいつしか消えてしまいましたがね。低周波と思われる轟音が劇場内に響き渡り、これは凄かったのです。ロードショー以外では全ての劇場で対応出来たとは思えませんから、消えた技術の裏にはこういうお家事情もあったのかもしれないですが。ミッドウェー海戦はバトル・オブ・ブリテン、スターリングラードと並ぶ第二次世界大戦の転換点でしたから、最新技術を駆使したリメイクを待ち望んでいます。