ターナー、光に愛を求めての紹介:2014年/イギリス、フランス、ドイツ作品。イギリスの画壇において今でもファンの多いターナー、その色使いはフランスの印象派にも影響を与えたと言われる。多作ながら謎の多いその人物像に迫る。
監督:マイク・リー 出演:ティモシー・スポール、ドロシー・アトキンソン、マリオン・ベイリー、ポール・ジェッソン、レスリー・マンヴィル、マーティン・サヴェージほか
映画「ターナー、光に愛を求めて」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ターナー、光に愛を求めて」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ターナー、光に愛を求めての予告編 動画
映画「ターナー、光に愛を求めて」解説
この解説記事には映画「ターナー、光に愛を求めて」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ターナー、光に愛を求めてのネタバレあらすじ:若くして成功した息子を支える父とその喪失
大陸でのスケッチ旅行から帰ってきたターナーを迎える、父と家政婦のハンナ。帰宅早々アトリエへ戻り、キャンバスに向おうとするターナーは父に新しいキャンバスがあるか尋ねる。キャンバスは父のお手製だった。消して裕福ではない、労働者家庭のターナー。彼が若くしてアカデミーに認められたので父は献身的に彼を支える。市場に食材を買いに行っては、画材を求めるのも父の役目だった。そこへ元恋人のサラが二人の娘を伴って乗り込んできては自分や娘に無関心なターナーをなじるが、彼はもはや愛情をかけるつもりはない。そんな暇があったらスケッチをしに出かける。ターナーの父は、労働階級でありながら、ロイヤルアカデミーに認められた息子が誇らしく、アトリエの隣の部屋をギャラリーにし積極的に息子の絵を売り込む。そんな様子を覗き穴からターナーが覗く。パトロンとの関係も良好な彼は、他の画家や文化人とも親交を持つ。そこでであった、まだアカデミーの会員ではないヘイドンに借金を頼まれる。旅好きのターナーは蒸気船に乗って海沿いのマーゲイトという町にスケッチにちょうどいい部屋を見つけ、偽名で泊まる。そこの主人ブース氏に聞いた奴隷船の惨状が後の彼の作品「奴隷船」に繋がる。また、好奇心旺盛なターナーは自宅に女性の科学者を呼び、プリズムよって光りを色に分けられると言う事を知る。また、旅好きの彼は彼女が作った磁気を帯びた金属にも、コンパスのようだと興味を持つ。彼女も、ターナーの絵を気に入る。全ては順調のように見えたが、絵の具を作っていたターナーの父は倒れてしまう。そのまま、精神病院に送り死なせてしまった妻(ターナーの母)を思い出しながら死んでしまう。父の死にターナーは情緒不安定に陥る。ぼんやりと魚釣りをしても駄目、娼婦を買ってもスケッチをしながら泣き出す始末。
ターナー、光に愛を求めてのネタバレあらすじ:ロイヤルアカデミーでの対決
それでもアカデミーでの展覧会への出品は怠らない。見物しに行くと、同じ画家仲間は、展示されているえ絵の最終調整をしている最中だった。自分の絵の隣では、コンスタンブルが赤い色の鮮やかな絵を描いていた。ターナーの淡いグレーの色使いの絵とはテーマも違うのだが、並べられると自分の絵が地味に見えるので、ターナーは気に食わない。他の展示室でも、自分の描いた嵐の海の絵を、嵐と理解されずやはり気に食わないターナーは、まずコンスタンブルの隣においてある自分の船の絵に真赤な絵の具をべったりとつける。周りは傑作になんて事をするんだと驚くが、赤い絵の具の形を整え、波に揺られる赤いブイを置いたことで、絵は見事な仕上がりとなる。他の部屋にある絵にも、厚塗りの白で雲を書き加え、絵の具を荒々しく吹きかけ、完成させる。同じく出品していたヘイドンは自分の絵の展示場所について文句をつけ、つまみ出されてしまう。
ターナー、光に愛を求めてのネタバレあらすじ:ロンドンとマーゲイトとの二重生活
再び海辺のマーゲイトを訪れたターナーは、ブース夫人と再会する。彼女は未亡人になっており、互いの人柄に引かれた二人は深い仲になる。嵐の絵を理解されなかったからか、ターナーはある吹雪の嵐の日に、船のマストに自分を縛りつけ嵐を体感する。案の定、気管支炎を起こし、ブース夫人に看病される。そんな事をしているうちに、ロンドンではサラとの間に出来た下の娘が死んでしまう。ロンドンの家に変えると喪服で出迎えたサラと長女は、葬儀に来なかった彼をなじる。ロンドンの家では、父に代わって家政婦のハンナがターナーの絵のサポートをしていたが、油の手配がうまくいかないなど、不手際がターナーを苛立たせる。
マーゲイトに再び来たターナーは疲労のせいで倒れ、医者に心臓が悪いから不摂生はするなと言われる。挙句、それまで画家であることは隠していたのに、自分が画家ターナーであることがバレてしまう。トラファルガーの海戦で活躍したテメレール号が解体されるために、他の船に牽引されるのを見、また蒸気機関車が走るのをみるターナーには、新たな画題が浮かぶ。ロンドンの家で絵を描いていると、以前お金を貸したヘイデルが、その一部返しに来る。そこで彼が子供を5人も亡くし、妻と子供を抱え貧乏画家をしている事を知り、借金を帳消しにする。またある日、ターナーの「奴隷船」を賛美した美術評論家ラスキンのサロンに招かれた。画家の描く海に関する話の中で、ターナーの描く海は賞賛するが、古典であるクロード・ロランの描く海は凡庸だと酷評するラスキンをターナーは諌め、クロード・ロランは天才だという。
ターナー、光に愛を求めての結末:老いながらも画家であり続けるターナー
ターナーの健康心配するブース夫人は、ロンドンに程近いテムズ川沿いに居を移し、ターナーが通いやすくする。アカデミーの展覧会ではヴィクトリア女王にターナーは視力が落ちたんじゃないかと酷評され、大衆劇場ではターナーの絵を茶化すような演目が登場。ターナーは文句こそ口にしないが静かに耐え、スケッチをする。やがて絵が売れずロンドンの自宅に絵が溢れていく。そこへ、ペン先で財を成したジロット氏が、ターナーの全ての油絵とスケッチを丸ごと買いたいと申し出る。しかし、ターナーは、国にまとめて寄贈する事を望に、差し出された大金を受け取る事はなかった。ブース夫人と住むチェルシーの町で写真屋を見つけたターナーは試しに写真を撮ってみる。自分が画家のターナーであることは伏せていが、カメラに興味津々、「なぜ色がつかないのか?」と聞いて写真屋を困らせる。そして、次はブース夫人を連れてきてツーショットの写真を撮る。その時、アメリカから来ていた写真屋に人ではなく風景を撮るのか聞くと、ナイアガラで虹を撮ったとの答えに、ターナーは、やがて画家たちは外に行く時、絵の道具ではなくその箱(カメラ)を持って行くようになるだろうと呟く。
時は経ち、アカデミーの展覧会にはラファエロ前派など、新しい風潮が生まれる、それを見て刺激されたターナーは、ロンドンの家からチェルシーにキャンバスを持ち込み絵を描こうとする。しかし心臓の病に悩まされる。ターナーに献身的に仕えていたハンナは、ターナーが家に立ち寄り脱ぎっぱなしにしたジャケットのポケットからチェルシーの住所宛の手紙を見つけてしまう。チェルシーへ行き、その住所に行ってみるものの直接訪ねる勇気はなく、近くのベンチにいたご近所さんにここに年配の男性は住んでいないかと聞くと、年配の男性が女性と住んでいると聞かされショックを受ける。一方もう長くはないと医者に宣告されていたターナーだが、ある日テムズ川に溺死体があがったのをブース夫人が嘆いていると、すかさずスケッチブックを取り、パジャマのまま外に飛び出し女性の溺死体のスケッチを始める。ブース夫人にと医者に看取られながら、ターナーは「太陽は神だ」と言う。最後の言葉だった。そして、若き日、丘の上でスケッチをするターナーのシルエットが映り、玄関のガラスを磨きながら微笑むブース夫人が映り、ロンドンのアトリエにうな垂れながら入っていくハンナが映し出され、エンドロール。
ターナー、光に愛を求めてについて:画家ターナーの人間性を垣間見る
ターナーの画風は古典的な神話・聖書をモチーフにしたものに始まり、風景画や、風刺画とも取れる奴隷船など、様々に変遷する。しかし変わらずにあるのは、画面上の光。最初のカットがオランダから始まるが、オランダの淡い日の光が彼の原点にあることと、彼が生涯旅を愛し外でスケッチをしたことは、彼が亡くなるまで変わらない。またプリズムのくだりやカメラなど光の色や当時の科学技術にもターナーは注目している。クロード・ロランのような先人を尊敬し、画壇に流れ込むラファエロ前派のような新しい風潮を排斥したりはしない(不敵な顔で新しいスタイルの絵を見ているのだが、嘲笑ではない。その後の行動を考えると、刺激を受けたように思う)
カメラに関しては、カメラ・オプスキュラと言うものに言及しており、カメラの普及によって絵画が駆逐される恐怖よりは、新しい記録のあり方としてのカメラに興味を示している。カメラに色をつけたいと言うのは画家ならではの意見であると思う。ロンドン博覧会の水晶宮のことをブース夫人に話していたりもしていてとても好奇心の旺盛な人物に描かれている。情緒不安定にも見えるのだが、感受性が強いがゆえの宿命だろう。それを支えたのが彼の父親であり、ブース夫人であり、ハンナである。
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