光のノスタルジアの紹介:2010年フランス,ドイツ,チリ映画。アンデス山脈のふもとに広がる世界で最も乾いた土地、アタカマ砂漠。天文学者たちが星を探すこの地では、女性達が今でも圧政下で消えた家族の骨を探している。
監督:パトリシオ・グスマン 出演者:ガルパール・ガラス、ラウタロ・ヌニェス、ルイス・エンリケス、ミゲル・ローナ―、ビクトル・ゴンザレス、ビッキー・サアベドラ、ビオレータ・べリオス、バレンティナ・ロドリゲス
映画「光のノスタルジア」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「光のノスタルジア」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
光のノスタルジアの予告編 動画
映画「光のノスタルジア」解説
この解説記事には映画「光のノスタルジア」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
光のノスタルジアのネタバレあらすじ:起・アタカマ砂漠
アンデス山脈のふもとにあるアタカマ砂漠は、世界でも有数の天体観測として、世界から科学者たちが集まっている。
一見平和に見えるこの地は、ピノチェトの軍事政権下では政治囚の流刑地としても使われていた。また、考古学的にも重要な地で、天文台の近くには、千年以上前の岩絵が残されている。アタカマ砂漠では、天文学が過去から地球に届いた光を研究するように、考古学、地質学、歴史学など、過去についての研究が交差している。
しかしその裏では、一番近い迫害の歴史が隠そうとされている。
光のノスタルジアのネタバレあらすじ:承・砂漠の強制収容所
鉱物資源に富むアタカマ砂漠に残る、かつて鉱夫や先住民たちが使用していたチャカブコの廃墟は、軍事政権時には強制収容所として使われ、星座を頼りに脱走する事を恐れた政府は星の観察を禁止していた。その中でも望遠鏡なしで星の観察をする者は星の美しさに心の自由を求めた。
現在建設中の電波望遠鏡アルマの技術者のビクトルは、ドイツ出身だがその母親はチリの亡命者で、元政治囚の心のケアを行っている。
光のノスタルジアのネタバレあらすじ:転・消えた遺骨
拷問を受けて亡くなった政治囚たちは、一度埋葬された地から掘り起こされ、海に移されたと言われている。今でも彼らの遺骨を探す女性たちがいるが、残された欠片を見つけるにはアタカマ砂漠は広すぎる。
同じく広い宇宙に星を探す天文学と似ているが、遺骨が見つかるまで彼女達の心が晴れる事はない。さらに遺骨を見つけるという事は、行方不明の家族の死という現実を彼女たちに突きつける。
それでも、いつか見つかるという希望を持って、女性たちは砂漠の砂の中に骨の欠片を探す。
光のノスタルジアの結末:星と骨
カルシウムはビックバンの直後に出来た物質で、そこに原子が集まっていった。ゆえに星を構成する物質にはカルシウムがある。骨のカルシウムも初めから存在した宇宙の一部であり、探求の道のりは違うけれど、探している天体も遺骨も同じ物質でてきている。
アタカマ砂漠で見つかった考古学的資料のミイラや、動物の骨格標本など、たくさんの骨が博物館で展示されている。しかし軍事政権下のおびただしい無名の遺骨は箱に入れられて保管されたまま、展示されるのか、慰霊碑と共に埋葬されるのかわからない。
このチリの抱える問題は、宇宙の壮大さに比べたら小さく見えるかもしれないが、記憶は人をとらえ続け、その思い出によって人は現在を生き抜いていく。
以上、映画「光のノスタルジア」のあらすじと結末でした。
光のノスタルジアの結末:ミクロとマクロ
アタカマ砂では天文学、考古学、歴史学など色々な学問が重なりあっている。この砂漠で見つかるのは太古の地層やアンデス文明のミイラ、大航海時代の痕跡、そして圧政によって行方不明になった人々の遺骨。家族が行方不明になった女性たちが見つける遺骨はほんの指先ほどの大きさで、砂の中から見つけるのは極めて困難である。しかし、彼女たちが探すことを止めることはない。チリの軍事政権による圧政はいまだ隠されている部分が多い。ただ、彼女たちがもくもくと遺骨を探し続ける限り、圧政があったと言う事実が忘れ去られる事はないだろう。
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