ホモ・サピエンスの涙の紹介:2019年スウェーデン,ドイツ,ノルウェー映画。時代も年齢も異なる人々が織りなす33の悲喜劇。この世に絶望し信じるものを失った牧師、戦禍で灰色と化した街を上空から眺めるカップルなど、悲しみは長くは続かない。そして、まだ愛を見つけていない青年が出会った恋や、陽気な音楽で踊る女学など幸せは一瞬でも永遠に心に残るもの。人類の愛しい姿をビリー・ホリディやザ・デジタル・リズム・ボーイズなど時代を超えて愛される楽曲と共にまるで万華鏡のように映し出す。ウェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した前作『さよなら、人類』に続き、本作も同映画祭で銀獅子賞受賞という快挙を果たした。
監督:ロイ・アンダーソン 出演:マッティン・サーネル(牧師)、イェッシカ・ロウトハンデル(ナレーター)、タティアーナ・デローナイ(空飛ぶカップル)、アンデシュ・ヘルストルム(空飛ぶカップル)、ヤーン・エイェ・ファルリング(階段の男)、ベングト・バルギウス(精神科医)、トーレ・フリーゲル(歯科医)ほか
映画「ホモ・サピエンスの涙」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ホモ・サピエンスの涙」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ホモサピエンスの涙の予告編 動画
映画「ホモ・サピエンスの涙」解説
この解説記事には映画「ホモ・サピエンスの涙」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ホモサピエンスの涙のネタバレあらすじ:起
「もう9月ね」
高台のベンチで女は男にそう言いました。ゆっくりと穏やかに流れる時間でした。
空には鳥の群れが飛んでいました。
― 男の人を見た。おいしい夕食で妻を驚かそうとしていた。
腕からこぼれそうなほどの食料品を抱えた中年の男が、階段を昇りきったところで古い友人スヴァルケルとのエピソードを話します。何年かぶりに見かけ声をかけたが無視されたとのこと。その横を偶然スヴァルケルが通り過ぎ、男は声をかけましたがやはり無視されてしまいました。
― 男の人を見た。ぼんやり別のことを考えていた。
レストランで新聞を広げている初老の男性客。同じく初老のウェイターがワインを注いでいましたが、溢れ出してもぼんやりしたまま。客の男は慌てて席を立つが、ウェイターの男はぼんやりと立ったままでした。
― 女の人を見た。広報の責任者で恥じるということを知らない。
オフィスには不服そうに窓を眺めている中年女性がいました。
― 男の人を見た。貯めたお金をベッドの間に隠していた。
パジャマ姿の男は銀行を信用せず、マットレスの下にお金を隠していました。お金が盗まれていないか入念にチェックし、ベッドに入りましたが、心配でそわそわしていました。
「はりつけだ!」
群衆に野次を飛ばされながら、巨大な十字架を背負った男が坂道を歩いていました。男は鞭を打たれ身体から血をにじませて、苦悶の表情で訴えます。「俺は何をしたんだ!」
あるアパートの一室では太った男が、騒ぎでうなされ目覚めました。妻は心配そうに寄り添います。
ホモサピエンスの涙のネタバレあらすじ:承
― 診療室。毎晩悪夢にうなされている牧師は、精神科医のカウンセリングを受けていました。「神の存在が信じられなくなったんです」と牧師は悲痛な表情を浮かべていました。
― 男の人を見た。地雷を踏んでしまい両脚を失った。
とある街の一角で、両脚を失った男がマンドリンで“オー・ソレーミオ”を奏でていました。せわしなく行きかう人々は、誰も足を止めませんでした。
「こっちを見て!おててを振って!」
可愛い孫の写真撮影に熱心な祖母。いい写真を撮るためにまだまだ撮影は続きます。
― 男の人を見た。信仰を失ってしまっていた。
教会でミサの準備をする牧師。信者たちから隠れワインをラッパ飲みすると、ふらつきながら信者のもとへ向かいました。
― ある父親と母親を見た。息子を戦争で失った夫婦だった。
息子の墓地に花を添え綺麗に整える夫婦。「毎日お前を想っているぞ」
― 恋人たちを見た。愛し合う2人は空を漂っていた。かつての麗しの都。今は廃墟と化したケルンの街。上空を男女が抱き合いながら、変わり果てた街を眺め漂っています。
― 女の人を見た。自分を待つ人はいない、と彼女は思った。
とある街の駅。列車から降りた人たちは大切な人との再会を喜んでいました。続いて降りてきたスーツケースを抱えた女。しかし待ち人の姿はありませんでした。誰もいなくなったホームのベンチに腰掛けていると、男が駆け足でやってきます。2人は抱き合い喜びをかみしめました。
― 女の人を見た。彼女はシャンパンがどうしようもなく好きだった。
ゴージャスなクラブ。店内にはビリー・ホリディの「All of Me」が流れています。よく冷やされたシャンパンを幸せそうな表情でゆっくり味わう女。隣にはその姿をうっとり眺めている男がいました。
ホモサピエンスの涙のネタバレあらすじ:転
― 男の人を見た。彼は道を間違えた。
街の食堂。突然店内に入ってきた男が客の女に向かって「リーサ・ラーションさん?」と尋ねます。「いいえ」男は店を出ていきました。
― 男の人を見た。命乞いをしていた。
兵士たちに支柱に縛り付けられる男がいます。すぐそばには木でできた棺が置かれていました。「やめてくれ!」男は泣きながら命乞いをしましたが、銃を持った兵士たちはその場から離れていきました。
とあるカフェ。自転車でやってきた3人の女子学生たちは店のテラスで流れていた陽気な曲につられ踊りだします。カフェの客たちは、踊り終えた彼女たちに拍手を送りました。
― 女の人を見た。その人は靴に問題を抱えていた。
ベビーカーを押す若い母親。しかしヒールが折れてしまい歩くことができません。ベンチに座ると靴を脱ぎ捨て立ち上がり、またベビーカーを押して歩き出しました。まるで何事もなかったかのように。
― 男の人を見た。家族の名誉守ろうとしたが今は悔やんでいた。
家具や絨毯が乱れ、包丁を握った男が号泣していました。腕には胸から血を流してぐったりした女を抱きかかえていました。その様子を別の男女が静かに見ていました。
魚屋の前で男が女に声をかけました。「奴と話しが弾んでいたな」「だから何?」にらみ合う2人はエスカレートし、ビンタの応酬になりました。周囲の人々は止めに入ります。男は言いました。「俺の愛を知っているだろう?」
専門書を食い入るように読む青年。「理論上は僕らのエネルギーは数百万年の時を経て、再び巡り合えるんだ。その時君はジャガイモかもしれない、またはトマトかも」少女は退屈そうに「だったらトマトのほうがいいわ」と聞き流していました。
― 男の人を見た。世界征服の野望が砕け散るのを悟った男だ。
爆撃を受け散乱した部屋で終わりを感じる3人の軍人。「ジーク・ハイル!(勝利万歳!)」顔面蒼白のヒトラーが部屋に入ってきました。爆撃音は絶え間なく鳴り響いていました。
ホモサピエンスの涙の結末
「自分の望みが分からない」
発車を待つ満員バスの中で、嗚咽する男。「なぜここで泣く!」乗客たちからそう言われても男は構わず泣き続けます。まだバスは発車しそうにありません。
― 娘を連れた男の人を見た。誕生会に向かう途中で土砂降りの雨に見舞われた。
小さな傘をさしたかわいらしいワンピースの幼い娘。父親は自分の傘を脇に置き、ずぶ濡れになりながら娘の靴紐を結んであげていました。
「信仰を失ったんです。どうすればいいですか?」
診療時間が終わった精神科のもとに再び牧師がやってきます。帰り支度をしていた医師はバスに乗り遅れるからと看護師に男を閉め出すよう指示しました。ドアの外では泣き叫ぶ牧師の声が響いています。
歯科医院。「痛い!痛い!」と麻酔を拒否して絶叫する患者に嫌気をさし、医師は診察室から出て行ってしまいました。
バーでお酒を飲む歯科医。居合わせた客が突然話し出します。「素晴らしいよな」「何が?」「すべて素晴らしい」窓の外は雪が降っていました。
― 戦に敗れた軍隊を見た。捕虜収容所に向かって進んでいた。シベリアの地を。
猛吹雪の中、敗軍が列をなして歩いています。列は長くどこまでも続いています。
妻のために夕食を作っている男は、再び古い友人スヴァルケルの話をします。「また出くわした。今度も無視された。スヴァルケルは今や博士。あんな負け犬が博士だとは」
― 男の人を見た。その人は車に問題を抱えていた。
郊外の長い長い一本道。車が故障してしまい立ち尽くす男がいました。助けを呼ぼうと見渡しますが、人の気配はありません。
曇天の空には鳥の群れが飛んでいました。
以上、映画「ホモ・サピエンスの涙」のあらすじと結末でした。
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