パピチャ 未来へのランウェイの紹介:2019年フランス,アルジェリア,ベルギー,カタール映画。暗黒の10年といわれる1990年代のアルジェリア内戦の時代を舞台に、イスラム原理主義による女性弾圧にもめげずに命がけでファッションショーを開こうと奮闘する女性大学生を描いた人間ドラマです。17歳までアルジェリアで過ごし、本作が長編映画監督デビュー作となるムニア・メドゥールが自身の経験から生み出した作品であり、タイトルの“パピチャ”とはアルジェリアのネットスラングで“愉快で常識にとらわれない自由な女性”を意味しています。本作は第72回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」正式出品作に選ばれ、第45回セザール賞では新人監督賞と有望若手女優賞を受賞しています。
監督:ムニア・メドゥール 出演:リナ・クードリ(ネジュマ)、シリン・ブティラ(ワシラ)、アミラ・イルダ・ドゥアウダ(サミラ)、ザーラ・ドゥモンディ(カヒナ)、ヤシン・ウイシャ(メディー)、マルワーン・ファレス(カリム)、ナディア・カシ(マダム・カミシ)、メリエム・メジケーン(リンダ)ほか
映画「パピチャ 未来へのランウェイ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パピチャ 未来へのランウェイ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
パピチャ 未来へのランウェイの予告編 動画
映画「パピチャ 未来へのランウェイ」解説
この解説記事には映画「パピチャ 未来へのランウェイ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パピチャ 未来へのランウェイのネタバレあらすじ:起
後に“暗黒の10年”と称された、内戦に明け暮れていた頃の1990年代のアルジェリアの首都アルジェ。ムスリム(イスラム教徒)の多いこの国ではイスラム原理主義勢力によるテロが後を絶たず、女性は頭や身体を覆うムスリムの正装・ヒジャブの着用を強制的に押し付けられていました。
そんな状況下においても将来世界的なファッションデザイナーになることを夢見る女子大学生のネジュマ(リナ・クードリ)は親友のワシラ(シリン・ブティラ)と共に大学の寮を抜け出し、ナイトクラブに繰り出してはトイレで密かに自作のドレスを売っていました。
ネジェマにはワシラの他にもサミラ(アミラ・イルダ・ドゥアウダ)やカヒナ(ザーラ・ドゥモンディ)という友人がいました。サミラは兄が決めた人と結婚させられることから近々大学を辞めなければならないという事情があり、カヒナもビザを取得してアルジェリアを飛び出そうと決心していました。
そんなある日のこと。ネジュマとワシラはいつものようにタクシーでナイトクラブに向かおうとしていた途中、検問に引っかかってしまいました。何とか検問をくぐり抜けた二人はいつものようにクラブで自作のドレスを売り、帰ろうとしましたがいつまで経ってもタクシーが来ませんでした。そんな二人にクラブにいた二人組の若い男が声をかけ、送ってやると持ちかけてきました。
二人は申し出に応じることにしましたが、自分たちが寮暮らしであることがバレると同時に自分たちが貧乏であることもバレてしまい、相手にしてもらえなると考え、大学寮の近くに住んでいると嘘をつきました。ワシラは二人組の男のうちの一人に一目惚れしてしまいました。
パピチャ 未来へのランウェイのネタバレあらすじ:承
ネジュマらが通う大学の門の壁には、女性はヒジャブを着用すべきだというポスターが大量に貼られていました。また、この国ではヒジャブを着用していない女性が殺害されるという事件が相次いでいました。ネジュマは好きな服を着て何が悪いのかと、かねてからずっと疑問に感じていました。
ある日、ネジュマは自作のドレスの材料を買いにとある洋服屋を訪れました。この店の店主は、女性は働かずに結婚して家庭に入るのが身のためであり、神に身を委ねればいいのだとネジュマを諭しました。父を亡くし、母と姉が働きに出ている家庭環境であるネジェマは、男がいない家庭は飢え死するしかないのかと店主に問いかけました。
ネジュマは帰りのバスに乗りました。車内では女性はヒジャブをつけるべきだと主張する人がヒジャブをつけていない女性に無理やりヒジャブを配っていました。この光景に怒りを覚えたネジュマは途中でバスを降り、雨の中を歩き出しました。途中でネジェブは姉の車に拾われ、久しぶりに実家へと戻りました。
束の間の家族団欒を楽しんだネジュマが大学寮に戻ろうとしたその時、家に見知らぬ女が訪れ、姉に会いたいと言い出しました。姉が家の外に出た次の瞬間、姉は凶弾に倒れ、そのまま命を落としてしまいました。ネジュマは姉の死を深く嘆きましたが、かつて自分と姉は母から一枚の布でできたハイクという伝統的な女性服の着方を教わったことを思い出しました。
パピチャ 未来へのランウェイのネタバレあらすじ:転
ネジュマは意を決し、ファッションショーを催そうと決意を固めました。ショーで披露するのはハイクをアレンジしたオリジナルの衣装です。ネジュマの行動に友人たちも賛同し、ショーの準備は順調に進んでいきました。
この頃から、ネジュマはクラブで知り合ったメディー(ヤシン・ウイシャ)と親密な関係になっていきました。ワシラもカリム(マルワーン・ファレス)という男と付き合い始めていました。そんなある日、ネジュマ、ワシラ、メディー、カリムの4人は街にドライブに出かけました。
その時、一行は街を歩く女性が露出度の高めな服装であることに気付き、保守的なカリムは「信じられない」「女性は正しい服装をすべきだ。わざわざ殺される危険性があるのになぜヒジャブをつけないのか」などと言い出しました。ネジェマは「肌を露出してはいけないのか?」と問い、服装の問題ではなく偏見が女性を殺しているのだと主張してもカリムは聞き入れませんでした。結局カリムはワシラを連れて車を降りていきました。
メディーはカリムとは違い、ネジェマの考えに理解を示していました。メディーは家族と共にアルジェリアを抜け出して外国に移住する計画を立てており、ネジェマに自分と結婚して一緒に来てほしいと告げましたが、ネジュマは「外国に行って私は何をするのか。私の国はここだ。ここで満足している。闘う必要があるだけ」と拒みました。メディーは「俺は機会を与えてやってるんだ」とキレ出すと、ネジェマは「何も頼んだ覚えはない」と反論、二人は口論となってしまいました。
一方のワシラはカリムに言われるがまま、カリムが望む服装をさせられていました。ワシラはネジェマを心配しますが、自暴自棄に陥ったネジェマはワシラとも喧嘩をしてしまいました。
パピチャ 未来へのランウェイの結末
全てに絶望したネジュマは、ショーのために作った服をハサミで切り刻んでしまいました。一方、ワシラは些細なことからカリムと喧嘩してしまい、今までカリムのことが好きだったけどようやく目が覚めたとネジェマに伝えました。ネジュマはワシラと和解し、ファッションショーは最後までやり遂げることを改めて誓いました。
しかし、ファッションショーの存在を嗅ぎ付けたイスラム原理主義勢力の者たちがネジュマらが不在の間を狙って寮に押し入り、全てを引き裂いてしまいました。衝撃を受けたネジュマでしたが、仲間たちは決して諦めず、必死の思いで遂にファッションショーの開催にこぎつけました。
会場には大学の学生たちが集まり、ショーは熱狂の中進められていきました。ところがその時、突然会場は停電となり、次の瞬間に武器を持った男たちが乱射しながら乱入してきました。会場には悲鳴が鳴り響き、ネジュマや学生たちは逃げ惑いました。
いくら自由を求めて立ち上がっても踏みにじられる現実でしたが、ネジュマはそれでもこのアルジェリアを離れようとはしませんでした。
そんなある日、ネジェマの家にサミラが助けを求めてきました。サミラは結婚前に兄が定めた婚約者ではない恋人との子を妊娠してしまい、行き場所を失っていたのです。サミラは中絶も考えましたが、既に合法的に中絶が可能な期限を過ぎていたことから、産んで育てることを決意していました。
ネジェマはサミラのお腹の中の子に想いを馳せながら、その目は決して諦めることのない希望の未来を見据えていました。
以上、映画「パピチャ 未来へのランウェイ」のあらすじと結末でした。
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