ローマ環状線、めぐりゆく人生たちの紹介:2013年イタリア,フランス映画。イタリア・ローマを囲む環状高速道路「GRA(グランデ・ラッコルド・アヌラーレ)」周辺に暮らす人々の姿を足掛け2年に渡って追ったドキュメンタリーです。本作はドキュメンタリー映画として初めてヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞しています。監督・撮影:ジャンフランコ・ロッシ
映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ローマ環状線、めぐりゆく人生たちの予告編 動画
映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」解説
この解説記事には映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ローマ環状線、めぐりゆく人生たちのネタバレあらすじ:起
イタリア・ローマを囲むように敷かれた全長70kmの「グランデ・ラッコルド・アヌラーレ(GRA)」はイタリア最長の環状高速道路です。1日の車の交通量は約16万台を超えるGRAの周辺には、スポットライトを浴びることのない様々な人々の暮らしがありました。
GRAを巡回する救急隊員のロベルトは、排水路に男性が転落したとの通報を受けて緊急車両で現場に急行し、男性を救助して病院に搬送しました。別の日、ロベルトは交通事故が発生したとの通報を受け、現場へと急行しました。ロベルトは横転して大破した車内から負傷した運転手を救助しましたが、スピード狂のこの運転手は明日も仕事だから帰してほしいと要求していました。
GRAのインターチェンジ近くのマンションやアパートが立ち並ぶエリアに、没落した元貴族のフィリッポが所有する城のような屋敷がありました。フィリッポはこの屋敷を様々な催し物などのために貸し出しており、ある時は宿泊所、ある時はコンベンションセンター、ある時は写真やドラマ、映画の撮影場所、またある時はパーティー会場、そして日曜日には舞台を上演する劇場へと姿を変えていました。この日もフィリッポは写真小説用の写真の撮影予約を取り付けたところでした。
地元の子供たちや住民たちの憩いの場である市営アパート前の広場。そのすぐ近くの車道では老いた二人の娼婦がキャンピングカー暮らしを送っていました。ある日、娼婦は公道でわいせつ行為を働いたとして警察に捕まり、調書に「車中で裸の女を逮捕した」と書かれたことに腹を立てていました。そんな娼婦は酒とタバコで枯れた声で得意のカンタータを口ずさんでみせました。
ローマ環状線、めぐりゆく人生たちのネタバレあらすじ:承
GRAの近くにあるテヴェレ川の畔には、先祖代々からウナギ漁で生計を立てている老漁師のチェーザレが妻と共に住んでいました。チューザレはイタリア政府はフランスやアメリカ、アフリカなどから外国産ウナギを輸入して養殖する方針を打ち出していることに疑問を抱いていました。
この日もボートで川を下り、先祖代々から受け継がれてきた技法で網を張っていきました。そんなチューザレは釣り小屋で網の手入れをしている妻に、イタリア政府のやり方では輸入ウナギの病原体を調査するのに時間とコストがかかり、しかもイタリアの水質で育つ保証もないことを愚痴っていました。しかし、妻はチューザレの話を全く聞いてはくれませんでした。
GRAの脇にある小さくモダンなマンションでは、様々なところから移り住んだ住民がそれぞれ独自のライフスタイルを送っていました。ある部屋ではインド系のDJがイベントで流すための楽曲のリミックス作業に勤しみ、またある部屋では若い親子が壁の色を塗り替えていました。ある部屋に一人暮らしをしている女性は恋人に電話をかけていました。ある部屋を仮住まいとしているピアモンテ州出身の偏屈な老紳士パオロは未だ独身の娘アメリアに一方的に延々と語りかけていました。
やがて街に夜が訪れました。とあるナイトクラブでは派手な衣装で着飾った女性ダンサーが大勢の客相手にパフォーマンスを繰り広げていました。その一方で救急隊員のロベルトは明け方近くに認知症を患う老いた母親の待つ家に戻っていきました。車上暮らしの老娼婦は友人の女性に「金持ちばかり得をする世の中なんて嫌だわ」と愚痴をこぼしていました。
ローマ環状線、めぐりゆく人生たちのネタバレあらすじ:転
GRAの脇にあるヤシの植林地では、老いた植物学者のフランチェスコがヤシの木を食い荒らす害虫の調査を行っていました。フランチェスコは害虫のヤシオオオサゾウムシがまるで人間のように組織化された社会構造を築き上げていることに着目しました。
ヤシオオオサゾウムシの群れにはリーダー的な存在がおり、1本のヤシの木に狙いを定めたリーダーは音波を発して仲間を集め、その木を徹底的に食らい尽くして卵を産み付けるというのがフランチェスコが調査結果から導き出した答えでした。
この日はフィリッポの屋敷で写真小説の撮影が行われる日でした。小説の執事役を演じるのは売れない俳優のガエターノ。彼は渋滞に巻き込まれながらもフィリップの屋敷へ向かい、撮影に臨みました。
GRA脇のマンションに住むインド系DJは、同郷の人々が集まる広場でのイベントに出演していました。同じ頃、そのマンションではパオロは相変わらずアメリアに話を振っていました。フィリッポは屋敷にリトアニア大使を招き、妻のイクセニアや娘のアナスタシアと共に会食を開きました。
一方、フランチェスコは自宅のパソコンでヤシオオオサゾウムシの幼虫の鳴き声を解析し、そのデータを元に害虫をヤシから遠ざける警告音を作っていました。フランチェスコは研究所に自らの調査結果を報告する一方、害虫たちを1箇所に集めて一気に退治するアイデアを思い付いていました。
ローマ環状線、めぐりゆく人生たちの結末
やがてローマにも冬が訪れ、街には雪が降り始めていました。ロベルトは雪のため立往生した車の救助のため高速道路を走り回り、帰宅するといつものように母の面倒を見ていました。
ウナギ漁師のチューザレは川を下り、友人女性の家を訪れました。女性は先日フィリッポの家で撮影されたものであろう写真小説を読んでいるのですが近眼のため分かりづらそうにしており、チューザレは彼女のために登場人物の名前を教えてあげました。
この日もパオロは相変わらず結婚する予定すらないアメリアを心配していました。しかし、アメリアにはその気はなく、パオロの考えは古いとまで言ってきました。アメリアから早く寝るよう言われたパオロはぶつくさと文句を言いつつ従いました。
フランチェスコは痛んできたヤシの木を調べていました。フランチェスコは木の内部から響く音を聞き取り、自分の持論が間違っていないことを確認しました。フランチェスコは改めてヤシオオオサゾウムシは人間と同じような習性であることを再確認すると、捕らえた数匹の害虫を窒息させる実験を行いました。
ローマにはこの日も夜が訪れました。GRAには今日も変わらず無数の車のヘッドライトが列を成していました。
以上、映画「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」のあらすじと結末でした。
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