最低。の紹介:2017年日本映画。人気AV女優の紗倉まなが初めて書き下ろした同名連作短編集を映画化した作品です。本作は短編のいくつかのエピソードの中から3編をピックアップ、夫への不満からAV業界に飛び込んだ主婦、母がAV女優だったという理由でいわれなき差別を受ける女子高生、現役のAV女優とそれぞれの家族との関係を描いています。本作は第30回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されています。
監督:瀬々敬久 出演者:森口彩乃(橋口美穂)、佐々木心音(彩乃)、山田愛奈(本間あやこ)、渡辺真起子(泉美)、根岸季衣(知恵)、高岡早紀(孝子)、忍成修吾(健太)、森岡龍(日比野)、斉藤陽一郎(男)、江口のりこ(美沙)ほか
映画「最低。」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「最低。」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
最低。の予告編 動画
映画「最低。」解説
この解説記事には映画「最低。」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
最低。のネタバレあらすじ:起
とある小さな港町に住む女子高生の本間あやこ(山田愛奈)は、自宅で趣味の絵画に没頭していました。あやこは父の顔を知らず、幼い頃に母・孝子(高岡早紀)に連れられて祖母・知恵(根岸季衣)が暮らす実家に預けられたのです。
孝子は酒とタバコに溺れ、ろくに子育てもせずに度々実家に戻ってはしばらくして出ていくことを繰り返していました。あやこは知恵に育てられ、知恵が営む小さな喫茶店を手伝いながら暮らしていました。
34歳になる主婦の橋口美穂(森口彩乃)は夫・健太(忍成修吾)と結婚して数年が経っていました。美穂はそろそろ子供が欲しいと願っていましたが、健太は仕事の多忙を理由に美穂を抱こうとはしませんでした。
それどころが、健太は近頃、寝る部屋を別々にしないかと言い出しており、美穂は仕方なく健太とは別々に睡眠をとっていました。そんなある日、美穂は健太の寝室に忍び込み、山積みになった仕事の資料に紛れているAVのDVDを発見しました。健太は美穂を抱こうとしない代わりに、こっそりAVを隠れ見て性欲を発散させていたようです。
この日の早朝、あやこはいつものようにキャンバスに向かっていました。人付き合いが苦手で、クラスメートとも打ち解けられないでいるあやこにとって、絵を描くことは唯一心が休まる時間でした。
すると、家の外にはクラスメートの男子・中村が自転車で来ており、あやこの方をじっと見ていました。中村はあやこに「母親のこと、気にするな」とメールを送ると足早に去っていきました。あやこは中村を拒むかのように部屋のカーテンを閉ざしました。
とあるAVの撮影現場では、25歳のAV女優・彩乃(佐々木心音)が男優に抱かれていました。元々家族と反りの合わなかった彩乃は専門学校の進学を口実に故郷の北海道・釧路を飛び出して上京し、その直後にスカウトされてAV業界に飛び込んだのです。軽い気持ちでAVに出演した彩乃は、今では売れっ子女優の仲間入りを果たしており、この仕事も天職ではないかと思っていました。
彩乃が撮影を終えたその時、彼女の元に故郷の母・泉美(渡辺真起子)から電話がかかってきました。泉美は変な仕事とかしてないかと問いかけてきたので、自分がAVの仕事をしているのがバレたと思い込んだ彩乃はすぐに電話を切りました。
最低。のネタバレあらすじ:承
その夜、彩乃はひとりバーで酒を飲んでいました。すると、バーに日比野(森岡龍)というどこか頼りなさげな男が入ってきました。日比野はどうやらこのバーに忘れ物をしたらしく、彩乃は日比野と意気投合して酒を飲み語り合いました。
翌朝、彩乃は自宅アパートで目を覚ましました。彩乃のベッドには日比野が眠っていました。彩乃は日比野と飲んだ後のことなど全く覚えていませんでした。やがて目覚めた日比野は彩乃の部屋から出社することにし、彩乃は日比野の後についていきました。
美穂の父は病院で昏睡状態に陥っていました。美穂は姉の美沙(江口のりこ)と交代で病院に見舞いに行く日々を送っていました。美穂は先行きの見えない父の容態への不安や、健太への不満から自分の人生を変えてみようと思い立ち、意を決してAV女優の事務所に応募しました。美穂は事務所のマネージャーに促され、プロフィール写真を撮るために服を脱いで裸身をさらけ出しました。
あやこは知恵の喫茶店を手伝っていると、そこに東京から孝子が帰ってきました。孝子は勝手にあやこの自転車に乗り、どこかへと出かけていきました。帰宅したあやこはある画集を手に取り、自分が描いた絵と見比べました。そしてあやこは何を思ったか、自分の絵をひっくり返してしまいました。
登校したあやこは、クラスメートたちが掲示板の前に集まっていることに気付きました。掲示板にはあやこがコンクールに出した絵が受賞したことを報じる新聞記事が貼り出されていました。あやこはクラスメートの問いかけにも応じずにその場を離れました。
美穂が病室で父を見舞っていると、そこに美沙がやってきました。美穂と美沙は父がかつてAVを見ていたという思い出話をしていると、美穂の携帯にAV事務所のマネージャーから電話がかかってきました。ある作品に出演する予定だった女優が体調を崩したというので、美穂に代わりに出演してほしいと頼んできたのです。美穂は出演を即決し、健太には友人と旅行に行くと嘘をついて撮影現場のとあるコテージに向かいました。
買い物をしていた彩乃が帰宅すると、部屋の前にはわざわざ釧路から上京してきた泉美と妹が待ち構えていました。泉美は彩乃にAVの仕事を辞めるよう説得してきましたが、彩乃は耳を傾けずに次の撮影現場に向かう支度を始めました。泉美はおもわず彩乃を平手打ちしてしまい、彩乃は「(顔は)一応商売道具なんだよ!」とブチ切れました。
彩乃は「姉ちゃんはどうなりたいの?」と問いかける妹に「なりたいものになってる」とだけ答え、自分の顔が腫れていないことを確認してから部屋を出ていきました。
あやこのクラスでは、クラスメートたちが何やらざわついていました。クラスメートの間では「あやこの母親はAV女優」とのメールが出回っており、メールの発信元はあの中村でした。ショックを受けたあやこはその場に卒倒してしまい、保健室で目を覚ましました。あやこは教師から進路について問われ、母がどう思っているのか訊かれましたが、あやこは「母は関係ない」と一喝すると保健室を出ていきました。
最低。のネタバレあらすじ:転
あやこは帰宅しようとしたところをクラスメートたちに取り囲まれ、孝子のことでいじめられました。クラスメートの間では、あやこの父はAV男優ではないかといういわれなき噂が流れていたのです。自転車を走らせるあやこをあの中村が追いかけてきました。
中村はかねてからあやこにストーカーじみた行為を繰り返しており、さすがに自分の行いを恥じたのか「大丈夫か?」と声をかけてきました。あやこは「影で笑っているんでしょ?」と言いながら中村にキスをし、「これで気がすんだ?」と言い放ちました。動揺した中村は「ふざけんな」と吐き捨ててその場から去っていきました。
撮影現場のコテージに着いた美穂は全裸になり、男優と露天風呂で初めての撮影に臨みました。緊張しながらも絡みのシーンをこなしていた美穂は、このコテージの隣の部屋には家族連れが泊まっていることに気付き、思わず涙を流しました。
あやこは意を決して、孝子に真相を尋ねてみました。孝子はあやこが生まれるまではAV女優をしていたことを認めましたが、あやこの父については何も語りませんでした。
撮影現場のプールに着いた彩乃は男優と絡み始めましたが、突然意識を失ってプールに転落してしまいました。彩乃が搬送されたのは美穂の父が入院している病院でした。彩乃を乗せた担架が担ぎ込まれたその横で、美沙は美穂に電話をかけていました。
美沙の美穂への電話が繋がったのは、美穂がちょうど撮影を終えた直後でした。美穂は美沙から父の訃報を知らされ、死に目に会えなかったことでその場に泣き崩れました。
彩乃が倒れた原因は極度の疲労と貧血でした。回復した彩乃はマネージャーの出迎えを受けて退院しました。その時、マネージャーの電話がなり、違う現場でデビュー作を取っていた女優(美穂)の父が亡くなったことを知らされました。彩乃のマネージャーは美穂も担当していたのです。彩乃は「ふーん」と無関心を装い、以前日比野と飲んだバーに向かいました。
知恵の喫茶店を手伝っていたあやこの前に孝子が現れました。孝子は神妙な面持ちであやこの実父が死んだことを告げ、自分の代わりに葬式に出てくれないかと頼んできました。あやこは孝子に見送られてバスに乗り込みました。
その日の夜、美穂の実家には父の遺体が安置され、健太や美沙の夫も駆け付けていました。美沙は美穂に喪主をやってほしいと頼むと、自分は不倫相手との子を身籠ってしまったことを打ち明けました。美沙はお腹の子を堕ろすべきか悩んでおり、相談を受けた美穂は思わず「ふざけないでよ!」怒鳴ってしまいました。
美穂は喪服を取りに、健太と共に帰宅しました。美穂は健太に「今から抱いて」と告げ、突然のことに困惑する健太に自らの自慰行為を見せました。健太もようやくその気になり、美穂は健太と久しぶりのセックスをしました。その最中、美穂は自分がAVの撮影をしたことを打ち明けました。ショックを受けた健太は部屋から出ていってしまい、美穂は思わず泣き崩れました。
最低。の結末
日比野と飲んだ彩乃はタクシーで帰路につきました。同乗していた日比野は何か言いたそうでしたが、結局何も言い出せずに帰ることにしました。日比野と別れた後、部屋に入った彩乃は泉美の置き手紙を発見しました。手紙には「辛くなったらいつでも帰っておいで」とかかれていました。
彩乃は実家に電話をかけましたが、電話に出た妹は、泉美とは別行動を取っており、泉美はまだ帰っていないと伝えてきました。
妹から、泉美は夜行バスに乗って青森の親戚の家に向かおうとしていることを聞いた彩乃は、急いでバス乗り場に向かいました。泉美の姿を見つけた彩乃は「戻れるわけないでしょ。私はそういう仕事をしているんだよ」と涙ながらに告げ、泉美は彩乃を優しく抱きしめました。そして彩乃は泉美の乗ったバスを見送りました。
すっかり眠りこけていた美穂は健太に起こされました。健太は美穂の父の葬儀が終わってから今後について話し合おうと告げ、美穂は健太と共に実家に向かうと、葬儀の準備に取り掛かりました。
父の通夜が終わり、朝が訪れました。健太と美沙夫妻が父の遺品を整理している時、玄関のインターホンが鳴りました。玄関に立っていたのはあやこでした。
実は美穂の父はあやこの実父であり、美穂とあやこは腹違いの姉妹だったのです。初めて姉と会ったあやこは、亡くなったこの老人が自分の父であることにまだ実感が湧いていませんでしたが、それでも線香をあげることにしました。
美穂はあやこに、父を恨まないでほしいと言い、あやこは母がAV女優だったこと、母は「死んだ人間には興味がない」とうそぶきながら自分を代わりに葬式に行かせたことを打ち明けました。
美穂はあやこが絵を描いていることを知り、父もかつて絵描きだったことを明かしました。あやこが持っている画集の絵は実は父が描いたものでした。そのことを知ったあやこは初めて父に誇りを持ち、美穂とあやこは空を見上げながら寄り添い合いました。
その頃、あやこの家では、孝子がタバコを吸いながら家の庭に現れた中村の姿を見ていました。
同じ頃、彩乃はビルの屋上に上り、朝陽を浴びながら都会の景色を眺めていました。そして彩乃はおもむろに携帯を取り出し、「日比野さん、私ね…」と語り始めました。
以上、映画「最低。」のあらすじと結末でした。
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