秋刀魚の味の紹介:1962年日本映画。巨匠・小津安二郎の遺作。自らの名作「晩春」をリメイクしたような物語で、やもめの父親と婚期を逃しかけている娘の関係をしみじみと描く。軍艦マーチが流れるバーの場面が印象的。
監督:小津安二郎 出演:笠智衆(平山周平)、岩下志麻(平山路子)、中村伸郎(河合秀三)、北龍二(堀江晋)、東野英治郎(佐久間清太郎)、吉田輝雄(三浦豊)、ほか
映画「秋刀魚の味(1962年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「秋刀魚の味(1962年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
秋刀魚の味の予告編 動画
映画「秋刀魚の味(1962年)」解説
この解説記事には映画「秋刀魚の味(1962年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
秋刀魚の味のネタバレあらすじ:起
川崎の大きな会社で監査役をしている平山は、友人の河合と一緒に西銀座の小料理屋へと向かいます。河合もある商事会社の常務で、二人は中学以来の付き合いでした。小料理屋でやはり中学の同級生である堀江と合流した二人は、同窓会の打ち合わせを始めます。やがて酒を飲んで馬鹿話をするうちに、堀江の口から中学時代の漢文の先生だった佐久間の話題が出てきました。最近、同級生の一人が偶然佐久間と出くわしたので、今度の同窓会にも呼びたい、ということです。平山と河合としては別に反対する気持ちもありません。
秋刀魚の味のネタバレあらすじ:承
同窓会の当日、もうかなりの老人となった佐久間がやってきます。会は盛り上がり、楽しい席となりました。やがて盛んに酒を進められてすっかり泥酔した佐久間を、平山と河合が家まで送り届けることになります。タクシーで行き着いた佐久間の家は、驚いたことに中華料理屋でした。佐久間は今では、行き遅れた一人娘と一緒にそこを切り盛りしているのです。娘に佐久間を預けた二人は、尾羽打ち枯らした老恩師の境遇を憐れみます。
秋刀魚の味のネタバレあらすじ:転
平山たちが佐久間の家の様子を同級生たちに話すと、彼らは義援金を自主的に集め、佐久間に寄付することにします。平山が代表でそれを手渡すと、佐久間はひどく感激し、卑屈な様子でひとりひとりにお礼を言いに出かけます。その様子を見た河合から「お前もいつかああなるぞ」と言われ、平山も自分の家庭について深く考える気分に陥ります。平山にも路子という娘がいますが、妻が早く死んだために家事一切をやっていました。まだ24歳ですが、今の状況では佐久間の娘のようになりかねません。
秋刀魚の味の結末
平山は決心し、路子に縁談を勧めます。しかし路子には好きな男性がいて、その人となら結婚してもいいということでした。それは路子の兄・幸一の同僚である三浦です。それなら、というので幸一が話を持ちかけてみましたが、残念なことに三浦にはもう決まった女性がいました。それを聞いた路子は三浦のことは諦め、父親の進める見合い相手と結婚することになります。無事結婚式も終わり、平山は家に帰りますが、寂しい思いは隠せませんでした。
「秋刀魚の味(1962年)」感想・レビュー
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テーマは重いのですが、悲壮感が漂っていないところが、良いですよね。
ラストの笠智衆も悲しいのですが、悲壮感とはまた別の感じです。私は独身で、子供もいないので、残念ながらこの作品にはあまり感銘を受けませんでした。
ただその反面、自分がもしこのまま独身で、子供もいなかったら、老人になってから、やはり色々と後悔しそうだなと、感じました。個人的には、家族間の亀裂をじわじわと描いた「東京物語」のほうが、グサッときます。
岩下志麻、美人ですね。
1962年の日本映画です。
小津安二郎監督最後の作品。
私が小津安二郎の作品を観まくったのは、スペイン、バルセロナにいた19歳の頃で、安いアートシアターでのことだった。
その頃は、これほど世界的な評価を受けているのだから、何か優れたものがあるのだろう、と思いながら見ていたにもかかわらず、ちっともその良さが分からなかった。
しかし今回観て、何と素晴らしい芸術品なのだろうと、初めてその素晴らしさを堪能した。
これは昭和の見事な映像美であり、心に染み入る物語である。
まず映像については、これほど全てを考え尽くされた、構図も、色彩も見事な作品であることには、19歳の私は全く気づかなかった。
本当に何と美しいのだろう!
まさに昭和の美術品のような映像である。
団地の佇まいも、団地の中も、家や料亭の中も、夜の街も、心に染み入る美しさをたたえている。
しかも今見ると、そのレトロな感覚が一層名品を際立たせている。
物語はありきたりといえばそうかもしれない。
しかし19歳の時とは違って、今見ると,登場人物一人ひとりの境遇や、想いや、人生そのものが、見事なまでに全身に伝わってきて、何とも皆が愛おしい。
これだ、これなのだ、と、今回観ながら思った。
これはここに私の拙い筆で物語を書くのは勿体なすぎる。
もしご覧になっていない方がいたら、是非ご覧になってください。
美術品のような映画です。