白い肌の異常な夜の紹介:1971年アメリカ映画。南北戦争で傷を負った北軍の兵士クリント・イーストウッドがとある森の中の男子禁制の女子寄宿舎に命からがら保護され手厚い看病を受けます。男を知らない或いはしばらく男と遠ざかっていた彼女たちは女のいやらしい性(さが)に目覚め平静を装いながらそれぞれの思惑で男に近づき、それをいいことに男もまた彼女たちにそれぞれの方法で誘惑し、ワルな男と怖い女のおどろおどろしい展開となります。ドン・シーゲル監督とイーストウッドのコンビ作のひとつで、アクションを手掛けてきた彼らにとっては異色作。一人の男をめぐる女性たちの異常心理を描く。ノコギリを使った手術場面が凄惨。
監督・製作:ドン・シーゲル キャスト:クリント・イーストウッド(ジョン・マクバニー伍長)、エリザベス・ハートマン(エドウィーナ・ダブニー)、ジョー・アン・ハリス(キャロル)、ダーリーン・カー(ドリス)、ジェラルディン・ペイジ(マーサ・ファーンズワース)、メエ・マーサー(ヘイリー)、ほか
映画「白い肌の異常な夜」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「白い肌の異常な夜」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「白い肌の異常な夜」解説
この解説記事には映画「白い肌の異常な夜」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
白い肌の異常な夜のネタバレあらすじ:起
1863年、南北戦争も終わりに近づいていました。森の中でキノコを採っていた12歳の少女エミー(パメリン・ファーディン)は、瀕死の重傷を負った北軍の伍長ジョン・マクバニー(クリント・イーストウッド)と遭遇。彼を自分の住むファンスワース学院に連れて帰ります。
そこはマーサ(ジェラルディン・ペイジ)という篤志家が女教師エドウィーナ(エリザベス・ハートマン)の手を借りて運営する小さな女学校。エミーのほかに、キャロル(ジョー・アン・ハリス)、ドリス(ダーリーン・カー)といった生徒、それに黒人奴隷の女性ハリー(メエ・マーサー)が共同生活を行なっています。
マーサは学院の前まで来た南軍の小隊にジョンを引き渡すつもりでしたが、捕虜が酷い扱いを受けているのを見て気持ちを変えます。ジョンは元気になるまで、手厚い看護を受ける事になったのです。
白い肌の異常な夜のネタバレあらすじ:承
ジョンはハンサムで男として魅力的でした。異性とほとんど接したことのない女生徒たちは彼の存在に気持ちを乱されます。
17歳のキャロルなどは聖書の授業を抜け出してジョンの部屋へ行き、いきなり口づけをするという大胆な行動を取ります。生徒だけでなく教師のエドウィーナも彼に夢中になり、ジョンの方でも清楚な彼女へ気持ちが傾いていきます。
体の傷も癒やされていき、エミーが納屋で見つけた松葉杖のおかげで散歩もできるようになりました。一時は南軍側のパトロールに見つかりかけましたが、南部訛りを真似たおかげで事なきを得ます。
白い肌の異常な夜のネタバレあらすじ:転
ところがキャロルがしつこくジョンに言い寄り、気の多いジョンの方でもそれに応じたためにエドウィーナが嫉妬。学内に不穏な空気が立ち込めていきます。
やがてジョンに厳しかったマーサも彼の優しい態度に心が軟化し、「畑仕事を手伝いながらずっとここで暮らしては?」と提案します。それを承諾したジョンはマーサにまで手を出すのです。
こうなるとこの女学院はジョンにとってちょっとしたハーレムでした。そして3人の年の違う女たちは、ジョンを巡ってお互いに疑心暗鬼に陥ります。
白い肌の異常な夜の結末
まもなくエドウィーナがジョンとキャロルの情事を目撃。ジョンは階段から突き落とされ、足を骨折します。マーサが救命措置としてその足をノコギリで切断したため、彼は逃げ出すこともできなくなります。
ハーレムが一転して、監獄同様でした。しかしジョンはマーサの銃を盗み、女生徒たちを脅しつけます。このままでは自分たちの命が危ないと考えたマーサは思い切って彼に毒キノコを食べさせ、ジョンを殺害。
一同は協力して死体を始末し、ようやく女学校に平和が戻るのでした。
以上、映画「白い肌の異常な夜」のあらすじと結末でした。
白い肌の異常な夜:解説・ポルノ映画と思いきや
題名だけ見るとエロティックな映画を想像しますが実は女の園に舞い込んだ兵士が無残にも文字通り白い肌の女たちによって異常な夜を迎えるサイコスリラー映画です。ドン・シーゲルが「ダーティハリー」同様クリント・イーストウッド主演で、同じ1971年に監督した作品で、撮影がブルー ス・サーティーズ、音楽はラロ・シフリンという贅沢な布陣で仕上げ、監督自身この作品が自分の最高傑作だと言ってるのも面白くもあります。出だしはグリム童話の赤ずきんちゃんを連想させる森の中でキノコ採りをしている12歳女の子の場面から始まり、そこで傷ついた男を発見し、セピアカラーの映像が不吉な予感をジワジワ湧かせます。
白い肌の異常な夜:解説・嫉妬や憎悪てんこ盛り
南北戦争で傷を負った北軍の兵士イーストウッドがとある森の中の男子禁制の女子寄宿舎に命からがら保護され手厚い看病を受けます。男を知らない或いはしばらく男と遠ざかっていた彼女たちは女のいやらしい性(さが)に目覚め、平静を装いながらそれぞれの思惑で男に近づき、それをいいことに男もまた彼女たちにそれぞれの方法で誘惑し、ワルな男と怖い女のおどろおどろしい展開となります。
彼女たちは皆怖いが、腺病質な顔立ちの教師エリザベス・ハートマンは兄と情事を交わした過去を持つ女で、特にいい味を出していました。そしてだんだんエスカレートして傷が癒えても彼女たちは男を留めようと壊疽と偽りアヘンチンキをむりやり飲ませて眠らせ、医学書片手に男の右脚を切断してしまうのです。のこぎりでギリギリ切るシーンはズバリ見せないで、壁にシルエットで映し出されるので、よけいに恐怖心をそそります。
ハンマーで脚を折る「ミザリー」、牛を殺す大型ハンマーで頭をガツン!とやる「悪魔のいけにえ」と同じくらい戦慄が走ります。ただ、あんなことされても途中で目が覚めないのもおかしいとは思いますが、それはそれとして、やがて麻酔から覚めたイーストウッドのソレを見た時の表情は想像に余りあるでしょう。いつも思うのですがシーゲル監督の映画に出てくる血の色はいかにも作り物と言った感じのどぎつい鮮やかな赤で、そこがまたいいんですよね。
白い肌の異常な夜:解説・赤ずきんちゃんには気を付けて・・
怒り狂った男も最後には和解しようと男の大好きなキノコ料理でもてなしを受けるが、毒キノコと知らず食べてしまって男は無残な死を遂げるのです(ここで冒頭のシーンが生きてくる)。結局、誰が怖いって女の子が一番怖いです。いやあ~面白かった!
「白い肌の異常な夜」感想・レビュー
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んーーーー。主演と脚本を変えてリメイクしたら、もっと面白いエロチックサイコスリラーに成りそうなストーリーなんだけどなぁ。
当時はどうだったか分からないけど、今となっては、イーストウッド=善のイメージが強すぎてこの映画ではミスキャス感が否めない。 -
この映画の原作を初めて読んだ時、クリント・イーストウッドは、頭が混乱して眠れなくなったそうだ。
この小説に好悪こもごもの感情を抱いた彼は、盟友のドン・シーゲル監督に相談を持ちかける。
二人は「真昼の死闘」を撮影しているさなかだった。この映画の舞台は、南北戦争さなかのアメリカ南部だ。
重傷を負った北軍の兵士マクビー(クリント・イーストウッド)が、12歳の少女に助けられて、全寮制の女学院に運び込まれる。その存在に、女たちは心を乱される。厳格な院長(ジェラルディン・ペイジ)や処女の教師(エリザベス・ハートマン)はもちろん、淫蕩な少女や無邪気な少女も狂い始める。
しかも、院長には、弟と近親相姦していた過去があった——-。
アクション俳優の看板を掲げてきたクリント・イーストウッドにとって、この「白い肌の異常な夜」に出演するのは、大冒険だったはずだ。
男性的娯楽映画を得意としてきたドン・シーゲル監督にとっても事情は同じはずだ。しかし、二人は河を渡った。室内劇にされてもおかしくない悪夢を、見事にエロティックでスリリングな映画に仕上げた。
この作品は、二人の最高傑作と呼ばれてもよいだろう。そればかりではない。クリント・イーストウッドは、この映画を通して、秘められていた”自らの資質”を発掘したと思う。
この後に続く、初監督作品「恐怖のメロディ」はもとより、「タイトロープ」や「ザ・シークレット・サービス」といった作品でも、彼は”内なる悪魔”を相手に、辛抱強い白兵戦を演じているではないか。
タイトルだけで怪しさムンムン。ヨーロッパの芸術官能映画かな?と思ったら、まさかのアメリカ映画でした。しかも、あのクリント・イーストウッド主演です。こんなマニアックな映画もやっていたんですね。彼は私が物心ついた時から、渋いじいさんでしたが、若い時はヒュー・ジャックマンみたいなイケメンだったんですね。それだけでも見た甲斐ありますが、人間の心理サスペンスは幽霊などのホラーよりよっぽど怖くて、子供が観たらトラウマになりそうです。