黙ってピアノを弾いてくれの紹介:2018年ドイツ,イギリス映画。ラップからクラシックまでこなすピアニスト、チリー・ゴンザレス。表現方法としての音楽という観点からそのスタイルを見つめる。
監督:フィリップ・ジェディック 出演者:チリー・ゴンザレス、ピーチズ、ファイスト、ジャーヴィス・コッカー、ウィーン放送交響楽団、シビル・バーグ、ほか
映画「黙ってピアノを弾いてくれ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「黙ってピアノを弾いてくれ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
黙ってピアノを弾いてくれの予告編 動画
映画「黙ってピアノを弾いてくれ」解説
この解説記事には映画「黙ってピアノを弾いてくれ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
黙ってピアノを弾いてくれのネタバレあらすじ:起・唯一無二のアーティスト
作家、シビル・バーグによる、チリー・ゴンザレスことジェンソン・ベックのインタビューが行われた。
モントリオールに住んでいた彼は、スポーツ少年でもオタクでもなく、音楽少年で三歳から祖父にピアノを習い、兄とは作曲も行い、11歳くらいから一人で行っていた。アウトサイダーだと腹をくくった。
父は実業家で、音楽業界にいる兄は音楽仲間でありライバルでもあった。兄に勝ちたいと思った彼は、音楽の本質より技術にこだわる兄に対して、より深い音楽性を求めるようになった。
そしてピーチズのバンド、ザ・シットに最初はドラムとして参加した。
黙ってピアノを弾いてくれのネタバレあらすじ:承・ベルリンでの活動
彼らは3年くらいでヨーロッパのベルリンへ移り、クラブなどで音楽活動を続けた。ついてすぐ、チリー・ゴンザレスという名前を使うようになった。実験的なパンクが盛んなベルリンで、ゴンゾのやり方に刺激され、ピーチズは集団でラップをするようになった。
ベルリンで表現欲は満たされたが、成功とは言えず、チリー・ゴンザレスはレストランでピアノを弾き、生活費を稼いでいた。それでもバンドの売り込みを諦めず、一つのアルバムがヒットした。パフォーマーとしての頭角を見せる彼は、ベルリン、アンダーグラウンドに永住を決め、大統領選に出馬するという会見のパフォーマンスをした。そしてピーチズの世界で音楽から離れ、パンクのキワモノ二なった。
黙ってピアノを弾いてくれのネタバレあらすじ:転・拠点をパリに移して
その後スタジオ・フェルベールで、チリー・ゴンザレス彼の原点回帰とも言える『solo piano』を発表した。
特別なアルバムになればと思っていたけれど、反応がわかるまで口にはしなかった。静かな音楽を聞かせる力があったとはと、周りを驚かせた。叫んで注目される形から注目を生かす形への転換だった。
他のアーティストとのコラボをし、ファイストのプロデュースも手掛けた。
しかし、プロデュース、作曲、多彩な活躍をするミュージシャン、チリー・ゴンザレスに注目するメディアは想定範囲内のことを質問するばかりで、そんなメディアには現実じゃなくてフェイクで十分だと、試しに替え玉を使ってみてはと、かつてベルリンで行った大統領選出馬のパフォーマンスを色々なキャストたちにやってもらった。
黙ってピアノを弾いてくれの結末:オーケストラとの共演
ウィーン放送交響楽団とクラシックとラップで共演をした。
チリー・ゴンザレスは演奏家として、ずば抜けているというわけではないが、その目標は例えばラフマニノフのソロを弾く事ではなく、他の一流のソリストたちが出来ない事をやることだった。オーケストラとの初共演は、ソリストにとって特別な事、しかもウィーンは世界的な音楽の都だから、チリー・ゴンザレスは頭を使い自分らしさで勝負をした。
パンクだけでは、祖父の先人を敬えという言葉に逆らえない。もちろん先人たちの努力でピアノの技術は進化し、世界中コンサートホールや音楽学校が出来た。けれど、同時に反発心も大切にしたいと思っていた。
チリー・ゴンザレスはケルンへ越した後、15年以上前からやりたいと思っていた、音楽を読むという訓練を始めた。それはやってみると、難しいコード一つ弾くのに時間を費やし、ラヴェルのコードも弾けなかった。自分がほぼ初心者で、力不足だと痛感した彼は、ピアノを始めた子供が1、2年で使うような練習曲を使い、毎日練習を開始し、地道に取り組んだ。それはチリー・ゴンザレスという音楽の天才とは真逆の姿だった。
そして、音楽で食べ、お客さんがいる現状は、子供の頃の自分の夢をつづった兄宛ての手紙に書いていることを既に達成していると気づき、ようやく自分を祝うことができた。
チリー・ゴンザレスは彼自身のの音楽を独自のビジョンで愚直に追っている。空気を読んだ自己規制などなく、自分の内面を探り、表現するために、形式にはこだわらない。ピアノでも室内楽でもラップでもいい。創作の過程で自分を発見していくチリー・ゴンザレスは、本物のアーティストと言えるだろう。
以上、映画「黙ってピアノを弾いてくれ」のあらすじと結末でした。
黙ってピアノを弾いてくれのレビュー・考察:「チリー・ゴンザレス」というアーティスト
何より目を引いたのは、インタビュアーの前で真摯に質問に応じる姿と、バッハのプレリュードを練習している姿だった。おもしろいのは、この作品はけして、クラシックの道からドロップアウトしたピアニストがクラシックに立ち返る様子を追っているのではなく、パンクやラップ等と同列の一つの表現方法として、ゴンザレスが導き出している点で、クラシックだからと言って、けして畏まっている訳ではなく、ゴンザレスらしいコメントやパフォーマンスが行われている。そこには、チリー・ゴンザレスが音楽という物を、とても広く、そして分け隔てなく扱っている様子がうかがえる。
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