七月と安生の紹介:2016年中国, 香港映画。対照的な2人の女性の数奇な運命を、繊細で流れるような映像美で丁寧に描いた珠玉の青春映画です。アニー・ベイビーの同名ネット小説の映画化で、監督は『恋人のディスクール』(OAFF2011グランプリ)のデレク・ツァンです。友情、恋愛、家族愛などが交錯する中、大人になっていく少女たちの姿をチョウ・ドンユイとマー・スーチュンが好演し、第53回金馬奨で史上初の主演女優賞W受賞を果たしました。また、主題歌をフェイ・ウォンとドウ・ウェイの娘リア・ドウが歌って話題にもなりました。
監督:デレク・ツァン 出演:チョウ・ドンユイ(李安生)、マー・スーチュン(林七月)、トビー・リー(蘇家明)、ほか
映画「七月と安生」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「七月と安生」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
七月と安生の予告編 動画
映画「七月と安生」解説
この解説記事には映画「七月と安生」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
七月と安生のネタバレあらすじ:第1章「安生との出会い」
中国・上海で穏やかに暮らしていた李安生のもとに、ある日突然、映画会社からの連絡が届きます。「映画化したので。作者と連絡をとってほしい」映画会社の人が持ち出したのは、林七月が書いた『七月と安生』という連載中のネット小説でした。七月と安生という2人の女性の物語が綴られていると言います。「“安生”はあなたがモデルでしょう?」「私じゃない。“七月”なんて知らない」安生は答えました。「七月」という懐かしい名前に安生の心はざわめきます。「ネット小説なんて読まない」しかし、帰宅した安生は早速、パソコンを開き、その小説を読み始めます。
七月と安生が初めて出会ったのは13歳の時でした。学校での退屈な軍事訓練を抜け出した2人は、全く正反対の互いの性格に惹かれ、やがて親友となっていきます。仲が良い両親のもと円満な家庭で育った七月は、保守的で安定志向の所謂いい子でした。その一方、安生は規則など気にしない、大胆で自由奔放ないたずら好きなオテンバ娘でした。安生の家は複雑で父親はおらず、母親は仕事で家を空けがちでした。そんな母親とうまくいっていなかった安生は、いつも七月の家でご飯を食べさせてもらい、七月の両親も安生に優しく接してくれたのでした。「13歳から15歳まで2人はいつも一緒でした。七月が安生の影になったり、安生が七月の影になったりしました。“相手の影を踏めれば、一生、離れない”でも安生は“一生は長すぎる。27歳で死にたい”と言いました。」
七月と安生のネタバレあらすじ:第2章「彼女と彼女と彼」
中学卒業後、七月は最難関の高校に、安生は美容関係の専門学校に進みました。そして、七月は高校で蘇家明と出会い、片想いに落ちます。大好きな七月が離れていく事に不安を覚えつつも、安生は蘇家明に直接会いに行きます。「最近、あんたを好きになった子がいる。態度に気をつけて。今日会ったことは秘密よ」安生は暗に七月を大事にするように言います。その数日後、そんな事とは知らない七月は偶然、図書室で家明と会います。「“好きなら積極的に”と友達に言われたの」七月は思い切って家明に告白し、それから2人は交際します。
ある夜、七月は家明に親友・安生を紹介します。「七月のどこが好き?」「全部」「私たち共通点があるのね」「そう嫌うなよ」安生は次第に蘇家明に魅かれ、蘇家明もまた、七月とは対照的な安生に魅かれていていきます。そして、仲良くなった3人はある日、サイクリングに行きます。そこで安生と家明は怪しい雰囲気になってしまいます。2人は何事もなかったように七月の前では振舞い、七月も気づかない素振りです。
そんな微妙な3人の関係に耐えらなくなった安生は、バイト先のギターリストと北京へ旅立ちます。「どうして?」「こんな狭い街はもう飽き飽きなのよ…」安生は別れを惜しむ七月に言い残します。しかしその時、なぜか家明のお守りのネックレスが安生の胸元にあるのを、七月は目にしてしまいます。「その日、七月は長い間泣き続けました。それは安生との別れが悲しかったのではなく、自分に失望していたからでした。安生よりも自分が大切だったことと、分かち合えないものがあることに…」。
七月と安生のネタバレあらすじ:第3章「家明によろしく」
その後、七月は北京の安生からたくさんの手紙を受け取ります。その最後には決まって必ず、「家明にもよろしく」と書いてありました。それを読むたび、七月は複雑な気持ちに駆られます。七月と家明は一緒に大学も卒業し、就職先も決まります。そして、家明は世間を勉強するために北京へと行きますが、彼は2年後の春に結婚しようと七月に約束します。「別れはいつも悲しいものだ。大人になれば、少し慣れるだけのこと」七月は旅立つ家明との別れを悲しみます。一方、安生はギターリストの彼の浮気が原因で別れ、それから職も住所も転々とする漂流生活をしていました。「私も世界の果てに来たみたい。疲れたよ。帰ってもいいかな?そろそろ帰らせて」そんな生活に疲れ切った安生が突然、七月のもとに帰って来ます。
再会を喜んだ2人は上海に旅行に行きます。しかし、銀行で働く七月と金なし漂流暮らしをしていた安生とは、もう昔のようにうまくはいきませんでした。「豪勢ね。私も稼がないと。知ってる?駆け引きができないと私は餓死してた。でもこうやって生きてる」「そうやって生きてきたのね。男にたかって。恥ずかしくないの?」「人生の苦しみも喜びも味わい尽くしてきた。甘っちょろい学生にはわからない。…誰のものかはっきり分けてるのは、あんたのほうでしょ」「そう思ってるのに、なぜいつも手紙に私の恋人の名前を書くの?」「ほら、やっぱり…。私が町を出てくれて嬉しかった?あんたの本性を家明は知らない。でも私は知ってる」ついに2人は大げんかして別れてしまいます。
七月と安生のネタバレあらすじ:第4章「逃げ場がない」
音信不通になったその2年後、安生は北京で美容関連の仕事に就き、安定した生活を送りますが、なぜか運悪くうまくいきませんでした。そんな時、偶然、安生は北京に来ていた家明と再会します。安生は想いを振り切るように「恋人とカナダへ行くの」と言い残して立ち去ります。しかし、安生はその外で悲劇を目の当たりにします。交通事故で安生の恋人が死んでしまったのです。半狂乱に陥った安生を、家明が自分の家に連れて行き、慰め、2人は七月に内緒で関係を持ってしまいます。そしてある日、酒に溺れた安生を抱えて家に帰ってきた家明の元に、あれほど故郷から出るのが嫌だと言っていた七月が不意に現れます。
2人の姿を見た七月は憤ります。「あんたのママの言うとおりよ。私は本当に運が悪い」家明の家で安生はタバコをふかします。七月の怒りは頂点に達します。「つらいのは私のほうよ」「あんたはずっと目障りだった。そろそろ本性を出したら?うんざりなのよ」「あんたも白々しい芝居はやめたら?芸風変えたの?彼に愛されるとでも思った?男たちはみんなあんたを愛してたと思う?愛してたのは私だけ。誰もあなたを愛したりしない!…うちに来なければ一人ぼっちのくせに。そんなあなたが私のものを奪うの?あんたのせいよ」安生に罵詈雑言を投げつけた七月は泣き崩れます。安生も静かに涙を流します。2人の関係は完全に崩壊してしまいます。そして七月は一人故郷へ帰り、安生も家明の元を去ります。
1か月後、家明は七月の元へ行き、改めてプロポーズします。2人は結婚する事になります。
しかし、結婚式当日、家明は姿を消してしまいます。花婿に逃げられた花嫁・七月は町中の噂となり、銀行を辞め故郷を出ていきました。「ママたちの望んだ人生は、もう歩めない」失意のまま七月は、親友だった安生がかつて送っていた漂流生活をたどります。「時々考えてしまう。家明は安生と一緒にいるのだろうか?家を求めていた安生は幸せになれたはず。…誰よりも恋しいのは安生だった」七月はそして、安生を訪ねていきます。そこには自分とは入れ替わったような結婚を控え、幸せそうな生活をおくる安生の姿がありました。再会した2人はすぐに打ち解けます。「一緒に行こう」と言う七月に、「行かないでよ」と安生は引き止めます。しかし、七月は振り返ることなく、旅立って行きました。
七月と安生の結末:最終章「27歳、旅の途中」
「七月にはわかっていた。その日から2人は別々の人生を歩むことになるのだと…。安生は七月のように落ち着き、七月は安生のように旅を…。続く」こんな風にネット小説には綴られていました。家明は毎日それを読んでいました。すると電話がかかってきました。相手は安生の娘・瞳瞳(トントン)でした。
「私のパパなの?」約束の場所で少女は家明に聞きました。「どうして?」「“家明によろしく”って書いてあるから、好きだったと思うの」尋ねると少女は古いはがきの束を出してきました。それは安生が七月にかつて送った手紙でした。そして、少女はネット小説「七月と安生」を取り出してきました。「これを書いたのはママなんだよ」少女は言いました。なんと、小説は安生が「七月」というペンネームで書いたものでした。
「瞳瞳!」そこへ安生が娘を追って駆け込んで来ました。「父親は僕か?」「そう。あなたと七月の子よ」家明に安生は静かに答えました。「小説は作り話か。七月はどこに?」家明は問いました。
最後に安生が七月と会ったあの日、七月は身籠っていたのでした。「私を愛してない人とは生きられない。あなたが逃げてくれたら、私も町を出られる」実は、結婚式当日に家明に逃げるように頼んだのは、七月本人でした。「本当に賢い人間は人に賢いとは思わせない。あなたは愚かよ。強がってみせても本心は隠せてなかった」「なぜ会いにきたの?」「妊娠しておなかの子供の成長を感じていたら、大切なものと大切でないものがわかってきた。あなたは親友よ。憎んだけど…」妊娠した七月が頼ったのは、無二の親友である安生でした。
そして、安生は産まれた子供を2人で育てて行こうと七月に言います。「私たち、人生を交換する約束をしたはず」しかし、その直後、七月はこう言い残して姿を消します。「あなたのように自由に生きたい」かつて七月が呟いた言葉は安生の脳裏をよぎります。それから安生は瞳瞳を娘として育てていたのでした。「七月は去ったのか?」「うん」「連絡もなし?」「うん」「瞳瞳に会いに来ても?」「うん」家明は呆然と去って行きました。しかし、実は、七月は産後、出血多量で死んでいました。「なんで27歳で死ぬのよ」安生の目から涙がとめどなく溢れました。安生は小説の最終章を締めくくります。
「七月にはわかっていた。その日から2人は別々の人生を歩むことになるのだと…。七月にとって行き先や期間は、どうでもよかった。ただ自由になりたかったのだ。…七月は旅先で安生に伝えたいことを記した。自分の人生を小説にしたのだ。13歳で安生と出会ってからの、すべてを小説に。書き出しはこうだ。“旅の途中、振り返って七月は気づいた。自分の影を踏んでいるのは、幸せに暮らす安生なのだと”」
以上、映画「七月と安生」のあらすじと結末でした。
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