砂の女の紹介:1964年日本映画。安部公房の同名小説を作者自らシナリオ化、勅使河原宏が監督した名作。世界的に評価され、カンヌ国際映画祭審査員特別賞ほか多数の賞を受けた。勅使河原宏も日本人として初めてアカデミー賞の監督賞にノミネート。
監督:勅使河原宏 出演:仁木順平(岡田英次)、砂の穴に住む女(岸田今日子)ほか
映画「砂の女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「砂の女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「砂の女」解説
この解説記事には映画「砂の女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
砂の女のネタバレあらすじ:1
砂の壁を棒を持った男が上がっていきます。砂は崩れることを繰り返し、男の足場も危うく見えます。ここは海岸そばの小さな村で、男は新種の昆虫を発見しようと休日を利用してやってきたのです。そんな男のそばへ中年の地元民らしい人間がやってきて、「宿を世話する」といいます。言われるままについて行くと、そこは宿といっても板切れで出来た掘っ立て小屋で、しかも蟻地獄のような砂の穴の底にありました。
砂の女のネタバレあらすじ:2
おまけに家にゆくには、危なっかしい縄ばしごを使わなければなりません。それでも折角だというので、男はそこに泊まることにしました。世話をしてくれるのは三十歳代に見える女です。疲れて眠った翌朝、目が覚めた男は横の部屋で女が全裸で寝ているのに驚きます。眠っている女をそのままに帰ろうとしますが、穴を登るための縄ばしごがありません。これでは穴から出られないと女を起こしますが、彼女は驚きもせずに口をつぐんでいます。
砂の女のネタバレあらすじ:3
脅したりすかしたりしても、女は「仕方ない」といった表情。どうやら、男は騙されて、ここに閉じ込められることになったらしいのです。その理由はまもなく判明します。ここは砂が風に乗って襲いかかり、砂かきをしないと穴が埋まってしまう過酷な環境です。その砂かき作業を男にやらせようというのです。暴力で女を脅し、なんとか村人と交渉させようとしますが、どうにもなりません。砂を運ばないと食料、さらに水さえ配給してもらえないので、男は仕方なく砂をかき出します。
砂の女の結末
何日か経ち、男はなんとか穴を這い上がって逃げ出しますが、砂地に体を取られて死にそうになり、また穴へ戻されます。もはや逃げ出すことも諦め、女と夫婦のように暮らす男。やがて、鳥の動きを観察することで空気中の湿気から水をバケツに溜める仕組みを思いつきます。女は妊娠しますが、子宮外妊娠だったせいか急に苦しみだして、穴から出されて病院へと運ばれます。村人たちも慌てていたせいで、普段は必ず回収される縄ばしごがそのままになっています。男はそれを見て外に出ようかと思いますが結局穴に戻ります。もはや男はその村の一員になっていました。
「砂の女」感想・レビュー
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まだ20歳前後の頃、私にとって安部公房という作家は特別な存在だった。
言ってみれば日本文学の最先端であり、頂点に立つ存在のように思っていた。友人とは、「安部公房はノーベル賞とるよな」などと話していた。
中でもこの「砂の女」などは、その解釈をめぐって熱い議論を繰り広げたものである。
私も若かった。いや、幼かった。しかし考えてみると、そもそもこの「砂の女」の主役は誰であろう。これは小説を読んだ時は全く感じなかったが、映画を観た時ふと思ったことだ。
「男」(岡田英次)が主役なのか。
「女」(岸田今日子)なのか。これがなんと、映画を観ていると「砂」こそが主役だと思えてくるのだ。
その証拠に、映画を観ている間中、私は口がカラカラになり、のどが渇いて仕方がなかった。
強烈な、砂の映像であった。* * *
ある駅で降り、休日を利用して昆虫採集にやってきた男は、いつしか砂漠のような、砂丘に入り込む。
夜になり、帰り損ねた男は村人の厚意で宿を紹介してもらうが、それは砂の中にある一軒家で、縄梯子で下に降り、女が1人で暮らしている古い木造家屋だった。
男は女のもとに世話になる。
翌朝気がついてみると、縄梯子がなく、男は穴から出られなくなってしまう。
どうやら男は騙されたようで、そこは少しでも砂かきをサボると、すぐに穴が砂に埋まってしまうような、過酷な環境だった。砂を運ばないと、食料や水の配給がもらえない。
男はあの手この手で脱出を試みるが、とにもかくにも砂かきを続けなければならない。
ある日男はふとしたことで、空気中の湿気から水をバケツに溜める装置を思いつく。
いつしか男と女は文字通り男と女として暮らすようになっていたが、妊娠している女が急に苦しみ出し、穴から出されて病院へ運ばれる。
気がつくと、村人たちがはずし忘れた縄梯子が穴にかかっている。男はそこからちょっと外へ出てみるが、外の世界はそれほど思ったよりいい世界とも感じられず、穴の中に戻ってしまう。
男はそれよりも溜水装置のことを村の人に話したい気持ちでいっぱいなのだ。7年後、男は失踪者として死亡が認定される。
この作品は安部公房自身がシナリオを書き、カンヌ映画祭で審査員特別賞を受けたほか、様々な賞を獲得したそうだ。
映画は一人の男が砂丘の中を歩いている場面から始まります。砂の上に広がる砂の波紋が、この物語の展開を象徴しているかのように思われます。主人公の仁木順平役には岡田英次が扮します。これからがまるで現在の日本の物語とは思えない物語が展開をしていくことになります。
村人から仁木は砂の穴底に落とされて監禁同様の生活を強いられますが、その砂の穴の中から脱出しようともがき苦しむ姿には蟻地獄にはまって逃げ出せない昆虫をも連想させられます。その岡田の演技力は見事といえるでしょう。また、砂の中の家で生活している女の役には、岸田今日子が扮して、怪しいながらも一寸妖艶な魅力を見せてくれます。登場する人物はこの2人と、あとは村人が数人という映画ですが、小説家、劇作家で演出家の阿部公房の書き下ろし長編小説の映画化を勅使河原宏監督が、人間はどんな環境下でも、それに見事に順応出来るものだという不思議な世界を見せてくれる映画です。古い映画ですが、たまにはすこし変わった世界をのぞいて見るのもいいものです。