旅の重さの紹介:1972年日本映画。素鬼九子の同名小説の映画化。主演の高橋洋子、オーディションで次点であった秋吉久美子のそれぞれの映画初出演作です。四国をオールロケした映像の美しさが話題を呼びました。
監督:斎藤耕一 出演:高橋洋子(少女)、岸田今日子(ママ)、高橋悦史(木村)、横山リエ(政子)、中山加奈(光子)ほか
映画「旅の重さ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「旅の重さ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「旅の重さ」解説
この解説記事には映画「旅の重さ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
旅の重さのネタバレあらすじ:起
16歳の「少女」は、ある日突然母を置いて高知に霊場参りの旅に出ます。母親に対する愛憎入り混じる複雑な感情からの行動のようです。野宿をしたり、雨宿りさせてもらった家に一夜の宿を借りたり、映画館で痴漢をしてきた男に食事をおごらせたりしてやりくりしながら、わずかな所持金で少女は旅を続けます。途中で事あるごとに母に対する感情をつづった手紙を書いては送りしながら、少女は旅を通じて変わり始めている自分自身に気づき始めていました。
旅の重さのネタバレあらすじ:承
途中で出会った旅役者の一座に惹かれた少女は、彼等の身の周りの世話をしているうちに一座に入りたいとまで思うようになりました。ある日、少女は一座の看板役者吉蔵に体を触られ、それに嫉妬した女役者に折檻を受け、逃げ出した先で、仲の良かった政子という女役者が男と体を重ねているところを目撃して男に石を投げつけられ、人間関係の疎ましさに嫌気がさし、一座に別れを告げ、旅を再開します。徐々に旅に疲れを感じ始めていた少女は体調を崩し、肩にずっしりと「旅の重さ」を感じ、歩くこともままならなくなってきます。
旅の重さのネタバレあらすじ:転
ある日、ついに少女は路上で意識を失って倒れこんでしまいます。目を覚ましたとき、少女は見知らぬ家の布団に寝かされていました。魚の行商人の木村という男が倒れている少女を家に運びこんだのです。木村は少女の食事の用意をしたり、誠実に看病をしてくれました。罪悪感を感じた少女はまだ体調が万全でないにもかかわらず、手紙とお礼のお金を残して木村の家を出ますが、動けなくなってしゃがみこんでいるところを木村に見つけられ、家に連れ戻されます。
旅の重さの結末
体調が回復した少女はお礼に仕事をさせてほしいと木村に頼みますが木村はとりあいません。少女は何とかお礼をしようと寝ている木村をうちわであおいだり、体を拭いたりするうちに木村に対して特別な想いを感じ始めていました。そして賭博の疑いで逮捕され、三日間の取り調べの後帰って来た木村と少女はキスをして抱き合いますが、すんでのところで少女は木村を拒み、いったん家を出ますが、再び戻ってきます。寝たふりをしている少女を木村はうちわであおぎ始め、少女はこらえきれず泣きだし、木村に抱きつきます。そして少女は行商を手伝って木村とともに生きて行くことを決意したのです。
日本のクロード・ルルーシュこと、映像叙情派の斎藤耕一監督の「旅の重さ」は、当時、覆面作家などと言われ話題を呼んでいた、素九鬼子の同名小説を映画化した作品で、主演の高橋洋子の初々しい演技が素晴らしいですね。
貧しい絵描きで男出入りの多い母親(岸田今日子)や、学校生活が嫌で家を飛び出した16歳の少女(高橋洋子)が、四国遍路の一人旅に出る。
痴漢に遭ったり、旅芸人の一座に加わってレズビアンを経験したりして、少女は自分の中にある何か割り切れないものを探っていく。
旅の出来事が、スケッチ風な美しい映像で展開していきます。
ところどころに、母親に送る手紙のような、少女の瑞々しいモノローグが入り、真っ青な夏の空に吸い込まれていく。
結局、少女は中年の行商人(高橋悦史)と夫婦生活に入る。
吉田拓郎の「今日までそして明日から」が流れる中、まだ初々しい高橋洋子が、山間の田園を歩く姿が、名手・坂本典隆の流麗なカメラワークによる美しい撮影で捉えられていて、新鮮で瑞々しい感動を与えてくれますね。
身体も心も大人に移りつつある少女の不均衡な精神と、その反面にある女としての本性が見事に描かれた作品だと思います。