天命の城の紹介:2017年韓国映画。1636年、勢力を拡大する清は朝鮮に侵攻していた。都を逃げ延びた朝鮮王と家臣たちは南漢山城に篭城する。厳しい寒さの中、城は包囲され、飢えと寒さで兵士たちも疲弊し、援軍の助けも絶望的だった。そんな中、吏曹大臣・チェ・ミョンギルは和平を目指して交渉に奔走する。しかし大臣らの意見は真っ二つに分かれ、礼曹大臣キム・サンホンは徹底抗戦を主張する。朝鮮国王・仁祖とミョンギルら大臣は国の存亡を懸け、生きる道を模索する。
監督:ファン・ヒョンドク 出演者:イ・ビョンホン(吏曹大臣チェ・ミョンギル)、キム・ユンソク(礼曹大臣キム・サンホン)、パク・ヘイル(朝鮮国王・仁祖)、コ・ス(ソ・ナルセ)、パク・ヒスン(守御使イ・シベク)
映画「天命の城」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「天命の城」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
天命の城の予告編 動画
映画「天命の城」解説
この解説記事には映画「天命の城」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
天命の城のネタバレあらすじ:起
1636年、勢力を拡大する清は朝鮮へ侵攻を開始します。朝鮮王と家臣たちは清の包囲を逃れ、山城・南漢山城へ篭ります。吏曹大臣チェ・ミョンギルは清の大軍に向かって和平の交渉を試みていました。のちに丙子の役と呼ばれる戦いのはじまりでした。
南漢山城にはすでに近隣の住民が避難していました。鍛冶職人のナルセは入城してきたあまりに粗末な軍隊の装備にあきれます。朝鮮王・仁祖はさっそく清との交渉から帰ってきたミョンギルの報告を聞いていました。新しい協定の条件は、仁祖の世子を人質とすることです。ミョンギルの報告を聞いた家臣たちはミョンギルを逆臣だとののしります。仁祖にとっても、のみ難い条件でした。しかし、ミョンギルは早々に清の要求をのむことこそ、朝鮮が生き延びる道だと考えていました。
南漢山城には1万3千の兵が篭っていましたが、清の軍勢はその10倍もあります。堅固な山城ですが、飢えと寒さで兵たちはみな疲弊していました。夜、サンホンが武官のシベクと城内を歩いていると、ある兵が叱責されているところに出くわします。鍛冶職人のナルセとその弟子・チェオクが軍命を破り焚き火をしていたのです。焚き火の明かりで敵に陣がばれてしまうため、寒くても焚き火することは許されていませんでした。ナルセは失態を詫びると共に、サンホンへ少しでも寒さが和らぐよう、兵士にむしろを与えて欲しいと訴えます。
翌朝の会議でサンホンが兵士たちにむしろを与えて欲しいと進言すると、仁祖は意見を採用し、早速兵士たちへむしろが与えられました。同じ頃、ミョンギルは再び清の陣地を訪れます。朝鮮の兵士たちが寒さと飢えに苦しむ中、清の兵士たちは焚き火に当たり、肉を食べていました。英気を養う清の兵士を横目に、ミョンギルは再び清の将軍・ヨンゴルテに交渉を持ちかけます。世子を人質にはできないと返答するミョンギルへ、ヨンゴルテは弩を向けて清の皇帝が南漢山城まで向かうと挑発します。もはや交渉の余地はありませんでした。
天命の城のネタバレあらすじ:承
ミョンギルが南漢山城まで戻り交渉結果を報告すると、家臣たちはミョンギルを処刑するよう訴えます。仁祖も清の皇帝が来ることを信じられずにいました。食料も兵力も乏しい状況では、城外に援軍を求め兵力を増やすしかありません。清軍の包囲をくぐって南方にいる近衛兵に救援を求める必要がありました。仁祖は自ら檄文をしたため、使者を遣わします。城内の兵たちを集めて激励し、使者と共に包囲網を突破するよう命じます。その第一陣の中にはナルセとチェオクもいました。敵将の首を獲れば多額の賞金が与えられると浮かれていると、敵軍の奇襲を受けます。朝鮮軍も必死に反撃しますが、刀はもろく、銃の装填も外れておりまともに戦うことができず、敗走するしかありませんでした。
その晩、ナルセはサンホンの元を訪れ、武器の整備が必要だと訴えます。サンホンは早速仁祖に進言し、ナルセたちは鍛冶屋として武器の整備を進めます。その甲斐あって、再び清軍と交戦したときは敵将の首を獲り、反撃に成功します。そのとき軍を指揮していたスオサは木の陰に隠れていた少女を見つけ、保護します。ナルと名乗る少女は南漢山城へ王や家臣たちが逃げ延びる際、川を案内した船頭の孫でした。仁祖はサンホンへ少女の面倒を見るよう命じますが、サンホンは複雑な表情を浮かべていました。
城内はさらに苦しい状況にありました。食料も粗末なものになり、餓死する馬も増えます。さらに檄文を携えた使者は城内の兵士の過ちにより刺殺されており、檄文は南方の近衛兵に届いていないことが判明します。敵の本隊が近くの川に終結しているとの情報も錯綜します。
ミョンギルは再び清の陣地を訪れていました。正月の進物を清に送り、朝鮮の礼節を知らしめようとしていたのです。また、敵を視察することで情報を確かめるという考えもありました。陣地には多くの大砲が準備され、兵の数も増えています。清の本隊はいまだ到着していませんでしたが、到着にあわせて着々と準備を進めていたのです。朝鮮側は本隊が到着する前に城を突破しなければならない状況にありました。
天命の城のネタバレあらすじ:転
報告を聞いた仁祖と家臣たちは動揺をかくせません。城を突破する一策として、大臣たちは奇襲を提案します。勝算はあるものの、これからの情勢を考えると必ず勝ち戦でなければなりません。王の信頼を得たい兵曹大臣は早速兵を引き連れ準備に取り掛かります。戦慣れしているシベクは風や周囲の静けさから奇襲の実行を制止しますが、兵曹大臣は軍命だと聞く耳を持ちません。案の定、敵の策略に引っかかり、300人もの兵を失う大失態になってしまいました。この敗北により、サンホンが兵曹大臣として軍を指揮することになります。窮地が続くなか、サンホンは再び南方から近衛兵と援軍を呼ぼうと考えていました。最後の手立てとして、サンホンは新たに檄文を送る使者にナルセを選びます。
正月を向かえると、城中はつつましくも新年の儀式を行っていました。明の首都・北京の方角に向けて儀式を行う朝鮮の王と家臣たちを見て、清の将軍たちは大砲を打つ準備を始めます。しかしある男が「年初に火薬のにおいは縁起が悪い」と語り、発砲は中止になります。その男こそ本隊を引き連れた清の皇帝でした。
その頃、ナルセは日没と共に城を出ます。包囲網は拡大しており、偵察中の敵と遭遇し怪我を負ってしまいます。木の上に逃れますが、その衝撃で檄文を落としてしまいます。敵兵に危うく奪われかねないところでしたが、とっさの機転で難を逃れました。無我夢中で進むナルセが次に目を覚ますと、とある陣営の小屋にいました。無事に近衛兵の陣営にたどり着き、将軍へ檄文を届けることに成功したのです。居合わせた兵士たちはナルセの勇敢さに素性を尋ねますが、ナルセが階級の低い鍛冶屋だと知ると態度を一変させます。
城中のミョンギルは清の皇帝の要求にどう返書をしたためるか決断を迫られていました。次の満月までに降伏しなければ総攻撃を仕掛けるというのです。ミョンギルはどんな道でアレ朝鮮が国として存続することを望んでいました。一方、国の尊厳を守りたいサンホンは国家として恥辱を受け入れるくらいなら死を選ぶべきだと迫ります。窮地に立たされた仁祖にとって、どちらの言い分も甲乙つけられません。結局、サンホンの意見を採用し、直前まで近衛兵の到着を待つことにしました。
一方、檄文が届いた近衛兵の陣営では軍儀が行われます。檄文に記された印は確かに王のものでしたが、そのような文を階級の低い鍛冶屋の男が一人で届けに来たことに不信感を抱いていました。敵軍による策略の可能性も考えられていたのです。最終的に、檄文が届かなかったことにし、ナルセは敵のスパイとして処罰することにします。陣営から逃げるナルセは偶然居合わせた敵軍が追っ手を攻撃したことにより、窮地を脱します。
天命の城の結末
早朝、ナルセは失意を抱えながら南漢山城に戻ってきます。城門の近くにはおびただしいほど味方の亡骸がありました。時を同じくして、ミョンギルも降伏のための返書をたずさえ城を出発します。ナルセの失意とは裏腹に、弟子のチェオクは近衛兵の到着とナルセの帰還を楽しみにしていました。隣の兵士に戦が終わったら娘を嫁にやると約束した直後、突然城壁が大きな音を立て崩れます。清の本隊による総攻撃が始まったのです。
清が保有する大砲・紅夷砲は次々と城壁を崩し、おびただしい数の兵士たちがはしごを掛けて城内に攻め入ります。城の小屋や棟も破壊され、チェオクも清の兵士との戦いで命を落としてしまいます。ミョンギルは総攻撃が始まったことを知ると大急ぎで清の本隊陣に向かいます。大砲の音が響く中、ミョンギルは取次ぎに向かって朝鮮の王は清の臣下になると宣言しました。それを聞いた清の皇帝は即座に攻撃をやめさせます。攻撃を止める合図が山中に鳴り響き、朝鮮が清に降伏した瞬間でした。
翌日、降伏した南漢山城では清の兵士が徘徊し、ミョンギルとサンホンは城を出る支度をしていました。サンホンにとって、ミョンギルは恥辱を耐えながら自らの信念に基づき行動してきた忠臣でした。ミョンギルも考えは違えど、サンホンも国と王にとって忠臣であったと考えていました。ミョンギルは清の属国となっても、都で共に王と民の暮らしを支えようと誘います。しかしサンホンは自らのような古いものが消えてこそ、民のための生きる道が開けると断ります。サンホンはナルをナルセに預け、ひとり城に残ります。
その頃、仁祖は清へ出発する支度を整えていました。すでに清の属国となったため、仁祖は王の装束を着ず、簡素なトゥルマギ姿で裏門から出発します。清に向かう王と家臣一行の姿を見送る民は涙を浮かべていました。なぜ皆泣いているのか不思議に思うナルへ、ナルセは「王が言えにお帰りにナルから喜んでいるのだ」と涙ぐみながら教えました。
清・紫禁城では多くの軍勢が見守る中、仁祖が皇帝へ拝謁し臣従の誓いを立てます。叩頭礼を行う仁祖の姿はあまりにわびしく、ミョンギルも涙を隠せません。城に篭るサンホンも、王と国の行く末を思いながら屋敷で自ら命を絶ちます。こうして、47日間続いた丙子の役は終焉を迎えました。
この映画の感想を投稿する