ゲッタウェイの紹介:1972年アメリカ映画。銀行強盗を犯した夫婦の逃走劇を描くサスペンス・アクション。ドク・マッコイは地元の顔役の指示で小さな銀行に強盗に入った。しかし少しずつ計画は破綻し始め、ドクは妻キャロルと共に逃走を余儀なくされる。バイオレンスとラブストーリーを融合させたサム・ペキンパー監督最大のヒット作。
監督:サム・ペキンパー 出演者:スティーブ・マックイーン(ドク・マッコイ)、アリ・マッグロー(キャロル・マッコイ)、ベン・ジョンソン(ジャック・ベニヨン)、アル・レッティエリ(ルディ・バトラー)、サリー・ストラザース(フラン・クリントン)ほか
映画「ゲッタウェイ (1972年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ゲッタウェイ (1972年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ゲッタウェイ (1972年)」解説
この解説記事には映画「ゲッタウェイ (1972年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ゲッタウェイのネタバレあらすじ:銀行強盗
舞台はアメリカ、テキサス州ビーコン・シティ。武装強盗の罪で4年刑務所暮らしをしているドク・マッコイは、なかなか仮釈放申請が通らず苛ついていました。ドクは妻キャロルを通じて地元の有力者ジャック・ベニヨンに力を貸して欲しいと頼みます。その後あっさり釈放されたドク。迎えに現れたキャロルと久しぶりに穏やかな時間を過ごしますが、内心では妻の不貞を疑っていました。2日後、ベニヨンと会ったドクは口利きの代わりに銀行強盗を指示されます。決行は2週間後、新しい仲間ルディ・バトラーとフランク・ジャクスン、そしてキャロルを加えた4人のチームです。ドクは綿密に計画を立て、ついに当日を迎えました。まずドクが地下から電力源を断ち、ルディとフランクが銀行に押し入り内部を制圧。遅れて到着したドクが金を奪う間にキャロルは現場を混乱させるため爆弾を町の各所に仕掛けます。ところがフランクが警備員を射殺してしまったことで計画が狂い始めました。ドクとキャロル、ルディとフランクの組み合わせで二手に分かれ車で逃走します。ルディはフランクの失態を責め、彼を射殺して車から放り出しました。
ゲッタウェイのネタバレあらすじ:裏切り
合流したルディはドクをも殺害するつもりでいましたが、先に発砲したのはドクでした。ルディを残しその場を去るドクとキャロル。しかしルディは辛うじて生きていました。ベニヨンの別荘に向かう途中、車内ラジオのニュースは銀行から75万ドルが盗まれたと伝えます。ところが盗んだ金は50万ドルしかありません。別荘に到着したドクはキャロルを車に残し、金を渡すため単身乗り込みます。ベニヨンはドクに真実を教えました。ベニヨンの弟が銀行の金を使い込んでしまったため、今回の強盗はその尻拭いだったこと。そしてキャロルと肉体関係を持ったことをほのめかします。そこへ車にいたはずのキャロルが現れベニヨンを射殺しました。別荘から逃げた2人は一度道を外れて停車します。怒りに震えるドクは泣くキャロルを何度も殴りました。彼女はドクの出所に力を貸して貰うため、ベニヨンに体を差し出していたのです。自分のための行動とはいえキャロルの浮気を許せないドク。その頃、ルディは獣医師夫妻を銃で脅して治療させ、エル・パソまで向かうよう命令。ベニヨンの遺体を発見した弟や部下達も動き始めます。
ゲッタウェイのネタバレあらすじ:すれ違う2人
エル・パソ行きの列車を待つドクとキャロル。ところが金の入った鞄を盗まれるというアクシデントに遭遇します。ドクは列車に乗った犯人の男を追いかけ、無事に鞄を取り返しました。ところが鞄の中身を見た男の証言により、銀行強盗の犯人がドクだと警察に特定されてしまいます。ドクと駅で合流したキャロルは安堵の笑みを浮かべ、夫への深い愛を示します。しかしドクはどうしてもキャロルの浮気を許せず、この件が終わり次第別れようと告げるのでした。
ゲッタウェイのネタバレあらすじ:夫婦の絆
夜、エル・パソに着いたドクとキャロルは車を調達して店に立ち寄ります。店員が2人の正体に気付き警察に通報、銃撃戦が始まります。車を捨てた2人はゴミ箱の中に身を隠し警察をやり過ごしますが、ちょうど回収車がやって来て大量のゴミもろとも集積場まで運ばれてしまいました。朝、ボロボロになった2人はゴミに囲まれ言い争いを始めます。ベニヨンとのことをいちいち蒸し返すドクに嫌気がさしたキャロルは別れを切り出しました。しかし彼女の大切さを再確認したドクはそれを拒否し、もう過去は忘れると誓います。2人は互いに支え合いながら歩き始めました。馴染みのラフリン・ホテルに到着した2人は束の間の休息を得ますが、ドクはホテル内の様子がおかしいと気付きます。ホテルには既にルディが到着していて、ドクを狙っていたのです。更にベニヨンの弟達も現れ激しい銃撃戦が始まりました。力を合わせてピンチを脱したドクとキャロルは、通りがかりの老人が運転するトラックに乗り込みます。
ゲッタウェイの結末:逃避行
上手くホテルから逃げ出した2人は、トラック代と口止め料として老人に3万ドルを渡します。トラックを手に入れたドクとキャロルはメキシコへと車を走らせました。車が道の向こうへ消えていき、この映画も終わりを迎えます。
以上、映画ゲッタウェイのあらすじと結末でした。
“非情の中の詩情を描いたサム・ペキンパー監督の映像美学を堪能できる痛快作「ゲッタウェイ」”
この暴力派の鬼才、サム・ペキンパー監督の「ゲッタウェイ」の原題である「The Getaway」とは本来、”高飛び”という意味なのですが、ここでは、”してやったり”という語感を滲ませた意味合いを持たせていて、暴力是認の美学を持つ、バイオレンス映画の作品となっています。
この映画で表現された暴力描写は、まさに凄絶としか言いようがないもので、自分の身を守るための暴力が、いつしか暴力そのものへの、痺れるような魅惑へと転化しかねない、といったムードはペキンパー監督特有のものですが、それまでの暴力否定などというテーマには一切、振り返りもせず、彼は人間の本能というものを、ダイナミックに尚且つ、赤裸々に叩き付けています。
スティーヴ・マックィーンとアリ・マッグローの銀行強盗の夫婦は、保釈させるために口をきいて、彼を利用した政治ボス一味の執拗な追跡を振り切って、アクションにつぐアクションの連続の末に、メキシコ国境を越えて行きます。
ジム・トンプソンの原作は、この映画が公開された20年前に、テキサス州で実際に起きた事件をもとにしており、映画は冒頭の刑務所のシーンから、ラストのメキシコ国境まで、原作に忠実な現地ロケでテキサスの風物を生き生きと鮮やかに描写していて、さすがにペキンパー監督のうまさに唸らされます。
この映画の製作意図としてペキンパー監督は、「この社会の底にあるのは暴力なのだ。そして暴力は、社会それ自体の反映なのだ」と語っていますが、それは、この映画の彼の前作である「わらの犬(The Straw Dogs)」で、普通の心優しく、気の弱い善人の男が、追い込まれて反撃に転じる暴力の凄まじさを描いて、暴力の哲学ないしは美学といったものをのぞかせていましたが、人間というものは、所詮は、知も情もない「わらの犬」にすぎないという中国の古の哲人・荘子の言葉をテーマとした事と共通していると思います。
しかし、考えてみると、この映画の背後には、サム・ペキンパー監督の映画監督としての系譜である、西部劇の古典的なスタイル、例えば、ジョン・フォード監督の「駅馬車」での脱獄犯リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)にみられるような、”祝福された脱走の明るさ”というようなものがあります。
つまり、この映画は、”非情の中の詩情”を描いた、古典的西部劇の現代版の物語を、ペキンパー監督の暴力の美学で味付けされた映像美学を堪能する作品なのです。