めぐりあう時間たちの紹介:2002年アメリカ映画。三つの時代、三人の女達が、家庭、友情、同性愛、自立心、自分の心にある自分らしさに葛藤し逡巡し、そして決断していく。三つの人生が一つの言葉と一つの作品を通じて繋がっていく。実力派3大女優が共演するヒューマンドラマ。
監督:スティーヴン・ダルドリー 出演者:ニコール・キッドマン(ヴァージニア・ウルフ)、ジュリアン・ムーア(ローラ・ブラウン)、メリル・ストリープ(クラリッサ・ヴォーン)、スティーヴン・ディレイン(レナード・ウルフ)、ミランダ・リチャードソン(ヴァネッサ・ベル)、エド・ハリス(リチャード・ブラウン )、クレア・デインズ(ジュリア・ヴォーガン)、ほか
映画「めぐりあう時間たち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「めぐりあう時間たち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「めぐりあう時間たち」解説
この解説記事には映画「めぐりあう時間たち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
めぐりあう時間たちのネタバレあらすじ:起
1941年、イギリスのサセックス。ヴァージニア・ウルフ(ニコール・キッドマン)は家をへ出て川へ向かいます。彼女は、家を出る前に書置きを残していました。それは精神の病を患った自分を支えてくれた夫レナード(スティーヴン・ディレイン)への遺書でした。彼女は石をポケットに詰め込み、川の中へ入り、その急な流れに身を任せました。
1951年、アメリカのロサンゼルス。ダン・ブラウン(ジョン・C・ライリー)は車から降り、寝ている妻ローラ(ジュリアン・ムーア)の様子を見ます。
1923年、イギリスのリッチモンド。レナードは精神を病んでいるヴァージニアの容態を気づかいます。
2001年、アメリカのニューヨーク、サリー・レスター(アリソン・ジャネイ)は家に帰ると、パートナーのクラリッサ・ヴォーン(メリル・ストリープ)が起きないように気を使ってベッドに潜り込みます。朝、ローラ、ヴァージニア、クラリッサの時計がそれぞれアラームを鳴らし、起床を促します。クラリッサとヴァージニアは身支度を整え、ローラはベッドの中でヴァージニアの著書『ダロウェイ夫人』を手に取ります。
起きたヴァージニアは寝室を抜け出て、レナードに声を掛けます。レナードは編集長で、新人作家が書いた作品の校正を行っていました。彼は食事をとろうとしない妻に、無理にでも食べさせようと食事の約束をさせます。ヴァージニアはそれに答えず「新作の出だしを考えた」と告げると、夫はため息を吐いて書く事を許します。ヴァージニアは自室に戻り、ペンを取って執筆を始めます。
その本をローラはベッドの中で読み、『ダロウェイ夫人』の出だしを口にします。クラリッサは書類を確認し、おもむろに『ダロウェイ夫人』の出だしと同じ言葉、「花は私が買ってくるわ」と叫びます。寝入っていたサリーは、今日の予定を思い出して慌てて飛び起きました。ローラが起きた頃には、食事は夫が用意し、息子にしっかり食べるよう促していました。
ローラは第2子を身篭っていて、今日は夫ダンの誕生日でした。食卓には花が飾ってあって彼女はそれに驚きます。「起こしたくなかった」と言う彼に、ローラは「計画があるの」と微笑みます。出勤するダンを見送ったローラですが、どこか様子が変でした。彼女は息子ににケーキを焼くと告げます。
めぐりあう時間たちのネタバレあらすじ:承
クラリッサは、詩人である友人リチャード・ブラウン(エド・ハリス)の授賞を祝うパーティーの準備を整えていきます。彼は小説家でもあり、クラリッサをモデルに本を書いてもいました。クラリッサはリチャードのアパートを尋ねます。彼は、尋ねてきたクラリッサをダロウェイ夫人と呼び、招き入れます。クラリッサはリチャードに今日の授賞式の話をします。リチャードはエイズが深刻化し、死を考えるようになって神経質になっていました。クラリッサはそんな彼に献身的につくします。
ヴァージニアは、執筆を続けます。クラリッサ・ダロウェイの人生を描いた本です。彼女は散歩しながら、主人公は自殺させようと考えます。
ローラは息子とケーキを焼き始めます。「パパを愛している証拠の為に焼くんだ」という彼女に息子は「証拠がなければダメなのか」と聞きます。ケーキが焼上がると友人のキティ・バーロウ(トニ・コレット)が尋ねてきます。ローラは「ケーキが失敗した」と言い、世間話を始めます。そのうちキティは「子宮ガン検査の為に入院するので家を頼む」と言い始めました。
キティは不妊に悩んでいて、病気との二重苦に酷く落ち込みます。ローラはそんな彼女の頭を抱え、思わずキスをしてしまいました。キティはそれを優しさだと受け取り帰って行きます。しかしローラは心の整理がつかず、失敗作のケーキをゴミ箱に捨てます。
ヴァージニアの姉が訪ねてきます。ロンドンに住む彼女から色々聞き、彼女は蔑ろにされたように拗ねたような態度を取ります。そのうち、甥と姪が瀕死の小鳥を見つけ、彼女は姪と死に関する話をします。死にゆく小鳥をヴァージニアは、どこか愛しい目で見ます。
横たわり、身篭った自分のお腹を撫でるローラはおもむろに薬を取り出してバッグに入れ、息子に「もう一度ケーキを焼きましょう」と提案し、その後で出掛けると言います。
クラリッサの家に、リチャードの元恋人ルイス・ウォーターズ(ジェフ・ダニエルズ)が訪ねてきます。受賞した本を彼も読んだと言い、モデルがクラリッサそのままだと言います。しかし、結末で自殺を図る所から、彼女はモデルがリチャードの母親だと説明します。彼女は残念な点として、ルイスがほとんど書かれていない事を挙げました。ルイスは舞台となった昔の家を訪ね、そのままだったと言います。
クラリッサは「昔の思いが消えてしまったのを確認する事になるのに訪ねるとは勇気がある」と評価します。彼女はどんどん落ち着きがなくなっていき、胸騒ぎがすると泣き出してしまいました。彼女は本に書いてあった昔に思いを馳せますが、リチャードが自分と母親を重ねて、苦悩を口にします。ルイスは彼と別れた時、自由を感じたと言います。
めぐりあう時間たちのネタバレあらすじ:転
ローラは再びケーキを焼き上げました。彼女は息子を知人に預け、自分は行く所があると言います。息子は嫌がります。しかしローラは涙を流して去って行き、息子は追いすがろうとしますが、彼女は振り切りって行きました。ローラはホテルの一室に入ります。ベッドに座り、家から持ち出してきた薬を並べ、本を読みます。
ヴァージニアは、話し掛ける姉をよそに、結末の構想を頭で思い浮かべていました。姉はそんな才能ある彼女を「恵まれている」と子供達に語ります。ヴァージニアは姪を抱きながら、主人公を殺そうと思ったが、そんな事は出来ないと思い直しました。
ローラは本を読み終え、お腹を撫でながら並べられた薬を眺めます。彼女の中に死がよぎりますが、「出来ない」と言いました。
帰る仕度をする姉ですが、何か思い込んでいるようなヴァージニアを見て、頬にキスをします。その時ヴァージニアは、おもむろに姉の唇を奪いました。彼女は姉に「自分がいつか楽になる日が来るか」と聞きます。姉は「来る」と言って、逃げるように帰って行きました。
クラリッサの娘ジュリア・ヴォーン(クレア・デインズ)が帰宅します。彼女は帰るなりパーティーの準備を手伝い始めます。彼女は、帰る途中にルイスと会った事を話しますが、クラリッサの様子がおかしい事に気付きます。クラリッサはリチャードに対する愚痴をこぼし始め、しかし「彼といると生きていると実感できる」と言います。彼女にとってリチャードは特別な、幸せを感じた思い出を持つ存在でした。
ヴァージニアは突然家を抜け出します。胸騒ぎを感じたレナードは、彼女が居ない事を知り慌てて駅へ向かい、ベンチに座る彼女を見付けて家に帰ろうと説得します。ヴァージニアは、「もう隔離されるのは嫌だ」と訴えます。しかしレナードは彼女の心の病を心配し、留まる事を強く言います。それでも彼女はロンドンへ思いを馳せます。レナードは、ロンドンの喧騒が病を悪化させると考えていました。ですがヴァージニアが「生き方も死に方も自分に選ばせて欲しい」と訴えるので、レナードはロンドンへ帰る事を泣きながらも受け入れました。その目の前に、ロンドン行きの列車が到着します。
めぐりあう時間たちの結末
ローラは息子を迎えに戻って来ました。息子は彼女を見るなり抱き着きます。ローラは家路への車の中、遠くへ行ってしまおうかと思ったのを思い直したと話します。息子リチャードは彼女と話し、少しずつ安心して行きます。
リチャードはローラが迎えに来た時の事を思い出していました。クラリッサが迎えに行った時、彼は暴れるように家財を動かし、光を取り込もうとしていました。リチャードは強い薬をやってハイになっていると告白します。その姿を見て不安を感じるクラリッサは落ち着くよう促します。しかしリチャードは「君のために生きていたが、もう逝かせてくれ」と訴え、窓から身を投げました。
ダンは喜んでケーキに刺したろうそくを吹き消し、幸せを実感し、リチャードにローラの素晴らしさを語ります。戦争を生き抜き、妻が居て子供が居る理想の家庭を手に入れた充実感を味わっていました。
死体安置所にサリーがやって来た時、クラリッサは放心していました。
本の結末について、ヴァージニアとレナードは語り合います。彼女は誰かが死ぬ事でその命の価値が判ると語り、詩人、幻視者が死ぬと話します。
ローラは一人トイレで思いを巡らせていました。「寝ないのか?」と言うダンは、キティの話をします。すると彼女は涙ぐみ、そして決心したかのように出てきました。
レナードは夜寝ないヴァージニアの事を案じます。彼女は、結末をどうするか悩んでいました。
クラリッサは用意したパーティーの後始末をしていました。そこにローラが尋ねてきます。ジュリアは彼女を怪物と称します。リチャードの電話帳から連絡先を見付け、クラリッサが連絡しました。ローラは夫も娘も既に他界し、最後に自分だけが生きている事に恥と悲しみを感じると言います。リチャードの本を読み、自分が死んでいる事に傷付きましたが、それは理解とも言いました。ローラは人工授精で娘を得たクラリッサに「幸せな女性だ」と言い、「息子と娘を捨てて、家を出たが後悔はない」と告げ、自分の選択の重荷は背負って生きていくと語ります。話し終えたクラリッサは、寄り添ってくれるサリーに口付けをしました。
ヴァージニアはレナードに向けて自分らしく生きて死ぬ事を語り、自分達の間に愛とその時間があった事を思いながら、川へ入って行きました。
以上、映画「めぐりあう時間たち」のあらすじと結末でした。
違う時間、違う場所で生きた3人の女性が繋がっていくストーリー。今までに観たことのないような映画で、公開当時はとても感銘を受けました。ヴァージニア・ウルフのファッションを真似て、似たようなワンピースを買った思い出があります。母に捨てられても、年をとってからも母を思い続けているリチャードが切ないです。言葉で説明するのは難しいので、是非一度観てほしい作品です。