マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の紹介:2011年イギリス映画。この作品は、「世界を変えたのは、妻であり、母であり、ひとりの女性だった」というキャッチコピーで、英国初の女性首相“マーガレット・サッチャー”の生涯を、戦中の若年期から1990年の首相退陣に至るまでの回想をはさみながら描いたヒューマンドラマです。主演サッチャー役を熱演したメリル・ストリープは、本作品で第84回アカデミー賞主演女優賞を受賞しました。
監督:フィリダ・ロイド 出演:メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)、ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)、オリヴィア・コールマン(キャロル・サッチャー)、ロジャー・アラム(ゴードン・リース)、イアン・グレン(アルフレッド・ロバーツ)、ほか
映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の予告編 動画
映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」解説
この解説記事には映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:1.プロローグ:「鉄の女」マーガレット・サッチャーの今
舞台は英国、小さな食料品店で、ひとりの老婦人が買い物をしていました。彼女は置いてあった新聞の「ホテルで爆発」という記事に目を奪われました。彼女は買った牛乳の値段に驚きながら勘定を済ませ、帰宅すると、夫“デニス・サッチャー”といつものように朝食をとりました。彼女はデニスがトーストにバターを塗りすぎるので注意しました。デニスは彼女に「気をつけろ。うろついているぞ」と言うと、彼女はドアの隙間から外にちらっと目をやりました。ドアから入って来た家政婦は「あらあら、ここでしたのね」と言うと、彼女は「そうよ。私たちはここ」と言いました。しかし、そこにいたのは彼女ひとりだけでした。彼女は年老い、認知症を患い、しばしば幻想を抱くようになっていました。今は亡き夫・デニスの姿は彼女にしか見えませんでした。彼女の名前は“マーガレット・サッチャー”、元英国首相、「鉄の女(The Iron Lady)」と呼ばれた女性でした。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:2.胸に残る父の言葉
ドアの隙間から警備員や家政婦のひそひそ話を聞いたサッチャーは、夫・デニスが着るスーツを品定めし、デニスに奨めました。窓から外を見るとパトカーと警官たちがいました。デニスはサッチャーに「連中の仕事は君を監禁することだ」と言い、外出しました。そこにスージーがサインする本を持って来て、今後のスケジュールを伝えてきました。その中にコンサートがありました。そのプログラム名を聞いたサッチャーは、想い出の曲『シャル・ウィ・ダンス』を思い浮かべました。それは夫・デニスとの思い出の曲でした。出版された自身の伝記本に、サッチャーは「マーガレット・サッチャー」とサインをしていきますが、つい旧姓「マーガレット・ロバーツ」と書いてしまいました。ふと、彼女は昔のことを回想しました。時は第二次世界大戦時、ドイツ軍の空襲にあった英国、小さな食料雑貨店の家に生まれたマーガレット・サッチャーは、空襲警報が鳴る中、家族と共に防空壕に隠れていました。「バターに蓋をしたか」という父の言葉を聞き、勇敢にも彼女は防空壕を出て、バターに蓋をして、防空壕に戻りました。翌日、戦時下にあってもいつも通り、店を開ける父を敬愛し、彼女は店の手伝いをしました。「人に影響されてはいかん。自分の道を行け」という政治家の父の言葉を胸に刻み、サッチャーは同世代の若い女性たちがオシャレをして遊ぶ中、勉学に勤しみ、名門オックスフォード大学に合格しました。夢から覚めたサッチャーは、ベッドから目覚めると、夫・デニスがピンクのターバンを頭に巻き、戯けて見せました。その時、娘のキャロル・サッチャーが来ました。その日は、亡き夫の遺品を整理することになっていて、キャロルはそれを手伝いに来たのでした。サッチャーは昨日の今日の事なのにすっかり、その事を忘れていました。その時、サッチャーはテレビであるホテルの爆破事件の悲惨なニュースを観ていました。彼女は自身が首相時代に夫・デニスと宿泊したホテルでの爆破事件の時のことを思い出していました。サッチャーは「哀悼の意を表しましょう。声明文を出さなくては。我々は何があってもテロリストに屈してはなりません」と毅然と言い、立ち上がりました。それを聞いた娘・キャロルは「もう、それは誰かが」と老いた母に諭しました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:3.サッチャー、政治家への第一歩
その日は、旧友との昼食会の日でした。娘の案内でその部屋に入ったサッチャーは、若い頃、初めて夫となるデニスと出会った食事会の時のことを思い出しました。
政治家でもあり市長も勤めた父を持つサッチャーは、オックスフォード大で学位を取り、政治家への道を志しました。ただ裕福ではなかった家庭で育ったサッチャーは、正式な食事のマナーに戸惑いました。そんなサッチャーに、デニスはこっそり教えてくれました。大人たちの政治の議論が始まり、サッチャーは意見を求められました。彼女ははっきりと自分の意見を述べました。「人は誰もが自分の二本の足でしっかり立つべきです。もちろん、助け合いは必要です。…男性は財政面の責任だと言いますが、女性は家計のやりくりと言います」と。すると、ある男がその意見に反論をして「この難題を解決する男がいたら、一票入れるね」と言いました。それを聞いたサッチャーは「女かも」と言い返しました。するとデニスはくすっと笑いました。そんなサッチャーを見たある女性が「殿方だけにしましょう」と女性を部屋から出しました。男だけになった部屋から「やれやれ、男だけになった」と笑い声をサッチャーは耳にし、不快感を覚えました。そんな回想をしていると、サッチャーに今回のホテルの爆破事件について、旧友の男性が「あなたが首相ならどう対処しますか?」と意見を求めてきました。サッチャーは「人間はいつの時代も悪と競争してきたわ。…貪欲に殺戮を繰り返しては、罪もない人をなんの躊躇もなく死に追いやっている。西欧文明はそういう悪を白日の下に晒し、根絶せねば。…」と毅然と述べました。食事会が終わり、サッチャーの昔の演説に感動した若い女性が、彼女のもとに来ました。サッチャーはその女性に「あの頃の政治家は何かをしようとしていたわ。でも、今は力を持つ人間になろうとしている」と語りました。認知症の母・サッチャーに、寝る前に娘・キャロルは「ママはもう首相じゃないわ。それから、パパは死んだの」と言い、母の頬にキスをして、寝室を出ました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:4.結婚し妻に、そして母に、そして政治家に
時は遡り1950年、24歳のサッチャーは保守党から下院議員選挙に立候補しましたが、惜しくも落選してしまいました。それを慰めに来たのはデニスでした。デニスはサッチャーに「成功した実業家の妻なら、当選できる」と言い、プロポーズをしました。サッチャーはそれを受け入れましたが、デニスに「愛しているけど、他の女の人のようになれないわ。…料理とか掃除とか子育てとか、そういうことより、大切なのは生き方でしょ。ティーカップを洗っている人生なんてイヤ」と言いました。デニスはその言葉を聞き、「そういう君だから結婚したい」と言いました。そして、二人は『シャル・ウィ・ダンス』の曲に乗り、ダンスをしました。サッチャーはその夜、1959年にコーンウォールに家族で行ったときのビデオを観て、懐かしみました。すると「どうしたんだ。君が過去を振り返るなんて。そんな事をしていると、イヤな事まで思い出すぞ」と後ろからデニスの声がしました。振り返ってもデニスの姿はありませんでした。サッチャーはデニスとの間に、マークとキャロルの双子に恵まれ、幸せな家庭を築いていました。またその一方で、1959年、34歳になったサッチャーは、保守党から下院議員に初当選を果たしました。そして、政治家としての道を歩み始めたサッチャーは、幼い子供たちとの約束を反故にしてでも、仕事に精を出すようになりました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:5.紅一点のサッチャー、狂乱の世界へ
政治の舞台は、これまで男性ばかりで行われていたので女性に配慮され作られていませんでした。その中に飛び込んでいった紅一点のサッチャーは、エアリー・ニーブ議員に「狂乱の世界へようこそ」と言われ、政治家としての階段を昇り始めました。サッチャーは1970年、教育科学相となりました。男性議員の怒号とヤジを制し、サッチャーは英国の学校が閉鎖の危機にあるのは、労働組合のストが原因と主張します。それに対し労働党の男性議員は女性軽視の発言をし、労働者をストに突入させた原因は彼女が所属する保守党政権にあると反論してきました。確かに、当時の英国では労働者のストが頻発し、学校はおろか、街中にはゴミが溢れて公衆衛生も問題となり、炭鉱労働者のストで電力供給も問題となっていました。保守党政権は窮地に立たされ、首脳会議でエドワード・ヒース首相は、労働組合との妥協点を見つけ、状況を静観し事態をこれ以上悪化させないという方針を提示しました。他の大臣が同意する中、紅一点のサッチャーはその妥協する方針に異論を唱えました。彼女の脳裡に父の「我々英国人は強く、自立した国民です。…我々、保守党は人々に自由と機会を与え、その能力を開花させなければなりません。特に若者です。人間は全て平等ではない。…ですから、子供たちがより高い目標に向かっていけるよう保護すべきです。その子たちが成長し、英国の明日を担うのです」というスピーチが浮かびました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:6.社会貢献が第一と考える女
1974年、英国の状況を改善しようとヒース首相降ろしの動きが出てきました。サッチャーは「保守党の党首選に立候補する」と台所で言い出しました。それは英国の首相になるということでした。妻・サッチャーの言葉に、病気で静養を強いられていた夫・デニスは驚きました。「主張を通す政治家が必要」とサッチャーはその決意の理由を説きました。その頃のサッチャーは、政治のことで頭が一杯で、家庭の事は疎かになっていました。夫・デニスはそんな妻に「君は本当に耐え難い女だな」と呟きました。サッチャーは夫に「あなたが結婚したのは、社会貢献が第一と考える女よ。これは私の義務で…」と主張しました。夫・デニスは「義務が聞いて呆れる。君を駆り立てているのは野心だ!…心配するな、一人で大丈夫だから」と言い放ち、台所を出ていきました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:7.親友であり良き助言者・エアリー議員の死
サッチャーは保守党内に揺さぶりをかけるために党首選に立候補しようとしました。サッチャーの親友で良き助言者でもあったエアリー議員に相談すると、サッチャーは「党を改革したければ先陣をきれ。国を変えたければ国を引っ張れ。…一番重要なのは絶対にぶれないこと。君は君の信念を貫け」と言われ、首相を目指すべきだという意見に担がれる形となりました。そのために、サッチャーは裕福な婦人のような帽子を被ること、そして、パールのネックレスをつけることをやめるように言われました。サッチャーは帽子の件は受け入れましたが、双子が産まれた記念のパールの二連ネックレスは外しませんでした。サッチャーは英国首相になるべく、甲高いと言われた声を変えるため、ボイストレーニングに励みました。そして、彼女は様々な所へ出向き、直接有権者たちに自らの思想を力強くスピーチして回りました。「労働者を守るために組織された労働組合がいまや、労働者を苦しめています。…さあ、皆さん、立ち上がりましょう!そして、職場に復帰しましょう!今こそ大英帝国のその名に恥じぬ、偉大な国にするのです!」などと。そして、保守党党首選の大会の日、立候補したサッチャーは大歓声と大きな拍手で迎えられました。その大会終了後、これまでサッチャーを支えてくれたエアリー議員は、大会会場を車で出た所で、アイルランド民族解放軍INLAの仕掛けた爆弾で暗殺されてしまいました。サッチャーはその現場を目撃しました。彼女は彼の死に悲嘆に暮れながらも、彼の言葉を胸に刻み、英国首相への道を歩みました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:8.サッチャー、英国初の女性首相に
1979年、総選挙の日が刻々と近付く中、サッチャーは「審判の日が近づきました。どうぞ力を貸してください。力を合わせれば社会主義の足かせを振りほどくことができます。私たちが愛してやまない祖国の栄光を取り戻しましょう」と力強く訴えました。夫・デニスもそんな彼女を応援しました。そして、5月4日、ついにサッチャーは、英国だけでなく西欧主要国では初めての女性首相となりました。民衆の大歓声の中、サッチャーは夫・デニスに励まされ、首相として初めてのコメントをしました。「私は…その責任を果たすため、全身全霊を傾け、日々精進していきます。…諍いのあるところに許しをもたらそう。誤りのあるところに真理をもたらそう。迷いのあるところに信仰をもたらそう。そして、絶望のあるところに希望をもたらそう」と。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:9.幻聴に悩まされる老いたサッチャー
「真っ直ぐ正面を見てください」と医師に診察してもらっていた老いたサッチャーは、その医師に「幻覚を見ますかと」聞かれ「いいえ」と答え、「睡眠は?」と聞かれ「ちゃんと寝てます。毎晩4~5時間。夜も遅いですよ。ずっと昔から」と答えました。サッチャーは「主人を亡くして何年もなるの。遺品を寄付するの。慈善団体に。人の役に立つでしょ」と医師に言いました。そして、彼女は医師に「本当の気持ちは?」と聞かれ、「気持ち?最近は考えより気持ちね。…これは今の時代の大きな問題ですよ。人々は感情にばかり左右されて、考えやアイデアなんてどうでもよくなっている。本当におもしろいのは考えやアイデアなのに。自分の考えが言葉になる。言葉に気をつけよう。それは行動になる。行動に気をつけよう。それは習慣になる。習慣に気をつけよう。それは自分の人格になる。人格に気をつけよう。それは自分の運命になる。考えが人間をつくるのよ」と語りました。家に帰ったサッチャーは、幻聴で夫・デニスの声が聞こえ、思わず「デニス、いい加減にして」と呟きました。彼女はその夜、K. フォレット作の『針の眼』を読んでいました。その結末を夫・デニスはサッチャーに語りました。もうデニスの幻聴にうんざりしたサッチャーは、テレビ、CDプレーヤー、ミキサーなど家中の音の出る物にスイッチを入れ、彼の声を遮断しようとしました。そして、サッチャーは「おかしくならないの。絶対に」と考えました。すると、テレビで自分が主治医の定期検診から出てくる様子を映したニュースが、放送されていました。アナウンサーは「最近、姿を見せませんが、20世紀最長の在任期間を誇る元首相は、今でも論議を呼ぶ人物です。最初に“鉄の女”と呼んだのはソ連ですが、レーガン大統領と冷戦を終結させた立役者でもあります。戦後の景気後退から脱却し、英国経済を立ち直らせたと言われる反面、容赦ない公費節減と民営化政策は各方面からの強い反発を受けました」と解説していました。それを聞いたサッチャーは「自分で自分がわからない」と呟きました。ベッドについたサッチャーの横には、デニスがいました。サッチャーは彼に「テレグラフの素敵な記事を読んだ?歴史の流れを一変させた女性」と呟き、ひとり眠りに入ろうとしました。しかし、首相就任して2年のときの強烈な批判の言葉を思い出し、眠れませんでした。横にいるはずのデニスはもういませんでした。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:10.首相としての苦悩の2年間
サッチャーは首相になり、衰退する国内経済の建て直しを図ります。しかし、当初2年はその成果は実らず、労働党から現状を突きつけられ、彼女が提唱した自由市場主義経済について「中産階級の拡大が目標だったが、現実には富裕層の富を増やし、貧しい者を切り捨てている」と強烈な批判を受けました。民衆たちも頻繁にデモなどを行い、サッチャーは罵倒されました。サッチャー内閣は早くも窮地に立たされました。他の閣僚たちが焦る中、サッチャーは冷静でした。そして、サッチャーは閣僚たちに「支出を削減しないと国が破産するのよ。確かに薬は口に苦いわ。でも薬を飲まないと患者は死んでしまうの。…私たちは間違ってないわ!…今さら怖じ気づいてどうずるの」と一喝しました。傍にいたジェフリー・ハウ財相は、そう言うサッチャーに「閣僚の精神を試すのはいいが、度が過ぎると危険だぞ」と忠告しました。英国内では格差が生じ、各地でデモや暴動が頻発、警官隊との衝突もありましました。「ハンガーストの囚人を救え」というデモも行われました。それでもサッチャーは自らの経済改革を撤回せず、押し進めていきました。そんな改革に反対する国民の一部による過激な暴動で、死傷者が出るような事件も頻発しました。アイルランド統一を目指すIRAのテロも起こり、サッチャーは頭の痛い問題が相継ぎ、夜もよく眠れない状態でした。しかし、彼女は首相として打ち出した信念を曲げず、「こんなときこそ、平常通り仕事をしなければなりません」と党内議員たちに訴えました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:11.1984年の爆破テロ事件
1984年、自分の抱いているビジョンをより正しく力強く訴えたいサッチャーは、夫・デニスとグランド・ホテルに泊まり、翌日のスピーチ原稿の推敲をしていました。時刻は午前3時10分前、夫・デニスは歯を磨きながら、仕事に余念のない妻・サッチャーにもう止めて寝るように言いました。その時、突然、激しい爆発音がし、窓ガラスが吹き飛び、石造りの建物が崩れ落ち、居間にはガラスの破片や瓦礫が飛び込んできました。砂埃の中、奇跡的に無事であったサッチャーは夫・デニスを探しました。彼も奇跡的に無事でした。この爆破テロ事件はIRA暫定派によるものでした。サッチャーはその時に夫は死んだと思ったほどで、また目の当たりした多数の死傷者が出たテロ事件で、老いてもなお彼女を苦しめる衝撃的なものでした。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:12.1982年、フォークランド紛争勃発
サッチャーにはまだ忘れられない事件の記憶がありました。1982年の南大西洋のフォークランド諸島で勃発したフォークランド紛争でした。その時、サッチャーは閣僚たちに、「アルゼンチンの軍政権はファシストの集団です。我が国固有の領土への侵略は断じて許せません。…私は犯罪者やゴロツキとの交渉には断じて応じません。フォークランド諸島は英国領です」と自分の意見を明言すると、閣僚たちに意見を問いました。サッチャーの意見を果たすには、軍は今すぐ行動を起こさねばなりませんでした。財政面の問題もあり、彼女は悩みましたが、軍の体制が整い次第、英国軍を出動させる決断を下しました。それを聞いた米国国務長官は直接、サッチャーに面会し、「あなたはあの島を巡って戦争を始めるというのですか?」と説得しに来ました。しかし、サッチャーは決断を変えませんでした。彼女は「これまでの私も毎日が戦いの連続でした。大勢の男性に侮られながらね。今度の相手も同じでしょうが、最後には必ず後悔するでしょう」と毅然と彼に言い返しました。サッチャーは英国軍の体制が整った段階で「沈めて」と命令し、アルゼンチン軍に攻撃をしかけました。2か月の戦闘の末、6月14日、英国軍の善戦の前にアルゼンチン軍は退却し、英国は領土を守りました。しかし、多くの犠牲者を出してしまいました。サッチャーは国のために死んだ兵士の遺族たち一人ひとりに、お悔やみの手紙を手書きで書き送りました。サッチャーが見せた強硬な姿勢によるこの戦争の勝利後、サッチャーは国会で「我々は確信していました。たとえ大きな犠牲を伴っても、最後には善が悪を倒し、勝利することを」と野党議員たちに力強く宣言しました。これを契機にサッチャーは世論調査で史上最も憎まれた首相から、国家の寵児に大躍進しました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:13.持論を曲げないサッチャー
サッチャーは国民から高い支持を得て、外交にも力を入れ、米国大統領レーガンとは親友になり、「愛を捧げよう、マーガレット・サッチャーに」という歌までできました。低迷していた経済も回復していき、景気は天井知らずとなり、「サッチャー景気」と言われるまでいきました。そして、サッチャーは任期10年目に入りました。サッチャーはソ連最高指導者ミハイル・ゴルバチョフとも面会しました。1989年11月9日には東西ドイツを遮断していたベルリンの壁が崩壊し、西欧は大きく動こうとしていました。そんな中、ヨーロッパの統一通貨の問題が浮上してきますが、サッチャーは準備ができていないと言い、懐疑的姿勢をとりました。そんなサッチャーの言動に、多数の保守党議員や閣僚たちから、もっと意見を聴き、妥協すべきだという批判的意見が噴出し始めました。サッチャーは人頭税の導入を提案しましたが、閣僚たちから批判を受けます。しかし、彼女は持論を曲げず、閣僚たちに厳しい言動を投げかけました。次第に独善的になっていたサッチャーの人頭税導入案は、再び国民の強い反発を受けました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:14.サッチャー、首相を退任
そんなある日、ジェフリー・ハウが辞職を願い出てきました。彼は国会で「私は党と国のために最善を尽くしました。しかし、それも他に譲るときがついに来たようです。忠誠に対する解釈の相違から出た軋轢、…」と辞職の言葉を述べました。それを聴いた議員たちは、サッチャーへ嫌悪感を露わにし始めました。そして、ジョン・メージャーがついに保守党党首選に立候補してきました。夫・デニスの忠告も耳にせず、冷戦終結のための国際会議にサッチャーはフランス・パリに行きました。その間、サッチャー降ろしの動きは速くなっていきました。サッチャーはフランスから帰ると、票固めに入りますが、もう手遅れでした。サッチャーを担ぎ上げてきた議員たちは彼女から離反していました。サッチャーは夫・デニスの助言を聞き入れ、党首選で敗北するよりも名誉ある辞職をするという選択をしました。首相として11年半という20世紀で最長の在任期間をまっとうしたサッチャーは、最後の日、真っ赤なスーツでその座を降りました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のネタバレあらすじ:15.「デニス、幸せだった?」
老いたサッチャーは、家で亡き夫に、当時のことを振り返り、自分を首相から轢き吊り降ろした議員たちに、「腰抜け」と悪態をつきました。そして、サッチャーは「苦渋の決断を下すと、その時は国民に憎まれても、何世代に渡っても感謝される」と呟きました。サッチャーは夫・デニスの遺品を整理していると、箱から昔の写真が出てきました。サッチャーは夫・デニスに「私はただ社会に貢献したかっただけ」と呟くと、デニスは「君はやったよ。貢献した」と囁いてくれました。サッチャーは「そして、子供たちが育ち立派になってほしかった」と呟きました。最後にサッチャーは「デニス、幸せだった?」と問いかけましたが、夫からの答えは聞こえませんでした。サッチャーは夫・デニスとの想い出を消すように、彼のクローゼットや引き出しを開け、デニスの服や靴を黒いゴミ袋にどんどん詰めていきました。最後にベッドに残ったデニスの旅行用スーツケースに、彼のナイトガウンをたたんで入れると、夫・デニスに渡しました。デニスはそれを持ち、靴も履かずに家を出ていきました。サッチャーは「まだよ、行かないで。待って。私はまだひとりぼっちになりたくないの」と懇願しますが、デニスは「しっかりしなさい。君はひとりでも生きていけるよ。今までもそうだった」と言うと、そのまま歩き、光の中に消えていきました。
マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の結末:16.エピローグ:穏やかな余生
老いたマーガレットは、認知症を患いつつ、夫の遺品を整理し思い出を振り切ろうとしました。自分ひとりになって寝室で寝てしまったサッチャーを、娘・キャロルがやって来て起こしました。目が覚めたサッチャーは、自分で飲んだティーカップを自分で洗い、娘と家政婦に支えられながら、その後、穏やかに余生を送りました。
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