キーパー ある兵士の奇跡の紹介:2018年イギリス,ドイツ映画。捕虜としてイギリスの収容所に連れてこられたナチス兵バート・トラウトマンは、サッカーの素質を認められ、地元チームのゴールキーパーとしてスカウトされる。収容所が解散したあともチームのためにイギリスに残ったトラウトマンは、監督の娘マーガレットと結婚し、名門サッカークラブ、マンチェスター・シティFCの入団テストに合格する。ユダヤ人が多く住む街で想像を絶する誹謗中傷を受けながら、ゴールを守り抜き、やがてトラウトマンの活躍によって世界で最も歴史のある大会FAカップで優勝を飾った。しかし彼には秘密の過去があり、思わぬ運命を引き寄せてしまう。ひとりのナチス兵士の青年が終戦後にイギリスとドイツを結ぶ平和の架け橋となりやがて国民的ヒーローとして敬愛されたという、バート・トラウトマンの驚くべき実話。ドイツ・バイエルン映画賞で最優秀作品賞に輝き、アメリカ、イギリス、フランスなどの映画祭で次々と観客賞を受賞した作品。
監督:マルクス・H・ローゼンミュラー 出演:デヴィッド・クロス(バート・トラウトマン)、フレイア・メーバー(マーガレット・フライアー)、ジョン・ヘンショウ(ジャック・フライアー)、デブラ・カーワン(クラリス・フライアー)、マイケル・ソーチャ(ビル・ツイスト)、ハリー・メリング(スマイス軍曹)、ゲイリー・ルイス(ジョック・トンプソン)、バーバラ・ヤング(サーラおばあちゃん)、オリビア・ミニス(バーバラ・フライアー)、トビアス・マスターソン(ジョン・トラウトマン)、クロエ・ハリス(ベッツィ)ほか
映画「キーパー ある兵士の奇跡」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「キーパー ある兵士の奇跡」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
キーパー ある兵士の予告編 動画
映画「キーパー ある兵士の奇跡」解説
この解説記事には映画「キーパー ある兵士の奇跡」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
キーパー ある兵士の奇跡のネタバレあらすじ:起
1945年。第二次世界大戦の前線で戦っていたナチス兵バート・トラウトマンは連合国の捕虜として、イギリスのランカシャー収容所に送りこまれました。ほどなくして終戦を迎えますが、降伏したドイツ兵はすぐ帰国することはできず、しばらくは過酷な労働を強いられていました。
きつい環境から救ってくれるのは束の間の仲間との時間。トラウトマンはサッカーすることを特に楽しんでいました。彼はゴールキーパーとして天才的な才能を持っていました。1点のPKも許さない鉄のような守備を見た地元のサッカーチームの監督、ジャック・フライアーは彼を連れ出し、無理やり試合に出場させます。
ナチスをメンバーに迎え入れることに、選手たちは怒り出しましたが、連敗続きでスポンサーからも見放される直前のチームは、しぶしぶトラウトマンと一緒にプレーすることを認めました。
トラウトマンは次々に名セーブを見せました。チームは久々の圧巻。ジャックは試合のない日はトラウトマンを自分の食料品店で働かせることにしました。
キーパー ある兵士の奇跡のネタバレあらすじ:承
ジャックの娘マーガレットは、キャプテンのビル・ツイストを彼氏に持つ美しい女性でした。彼女には戦争で友人を失った過去があり、トラウトマンをチームに迎えることも自分の家で働かせることにも大反対でした。「ドイツ軍は友達だけではなく、青春も奪った」と辛く当たるマーガレットに、トラウトマンは「選ぶことができなかった」としか返すことができませんでした。
真面目に練習し、試合ではチームを連勝に導き、店ではもくもくと働くトラウトマンは、誠実な青年で温かみのある性格でした。最初は誰もが警戒をしていましたが、徐々にフライアー家の人々とも打ち解けていきます。特にマーガレットの妹バーバラは彼に懐き心を通わせていました。
そんな中、チームがリーグの残留をかけた大切な試合の1週間前、突然の収容所閉鎖が発表されました。捕虜たちはドイツへ帰ることとなりましたが、トラウトマンはチームを助けるためにイギリスに残ることを決めます。
相手チームは強豪でしたが、トラウトマンの活躍でチームは勝利。その日の夜、トラウトマンとマーガレットは結ばれ互いの愛を確かめ合いました。
キーパー ある兵士の奇跡のネタバレあらすじ:転
1949年10月。
トラウトマンは歴史あるビッグクラブ、マンチェスター・シティのトンプソン監督より入団テストを受けるよう勧められました。
テストを見事パスし、妻となったマーガレットが見守る中、記者会見が開かれました。晴れやかな気持ちで臨んだ会見でしたが、記者からは「軍には志願して入っているね?」「鉄十字勲章を受けたのは本当か?」など、質問はサッカーとは関係のないものばかり。翌日の新聞には“戦争責任を言い逃れたナチス兵”という見出しがつけられ、センセーショナルな物議を誘いました。
ユダヤ人を中心としたシティのファンは大激怒し、トラウトマン初出場の試合では大ブーイングが鳴りやみません。堪えられなくなったマーガレットと、彼女の父であり前チームの監督だったジャックは本部に乗り込み、激高する人々の前で「戦争から立ち直ろうとしている者に全員で束になって鞭打つのか?それならあなたたちも加害者だ」と訴えました。この言葉に胸を撃たれたユダヤ人コミュニティのラビ・アルトマンは新聞に声明を発表しました。「教団としてはシティの指示を継続する」と。
それがきっかけとなり、トラウトマンはシティを応援する人々に絶対的な守護神として信頼されていきました。
のちに息子ジャックも生まれ、幸せの絶頂にいました。
キーパー ある兵士の奇跡の結末
しかし、この幸せは長く続きませんでした。
ウェンブリースタジアムで女王陛下も観戦する歴史ある大会FAカップで、敵チームのキックを受けて首の骨が折れ、瀕死の重傷を負ってしまったのです。それでも最後まで試合を続行させゴールを守り抜いた彼の熱意に、国民的ヒーローとして相手チームからも賛辞を贈られました。
しかし思った以上に怪我は重く、しばらく入院を余儀なくされてしまいました。
不幸はそれだけに終わりませんでした。病室からマーガレットに電話していたある日、息子のジョンがアイスクリームを買いに行ったまま車に轢かれて命を落としてしまいます。
失意に沈むマーガレットに、トラウトマンはある過去の告白をしました。兵士として戦いで訪れた街で、ボールで遊んでいたサッカー少年に銃を向けた仲間を止めることができず、見殺しにしてしまったのです。それ以来ずっとその少年の影を感じ、懺悔の日々を繰り返していたのでした。
ジョンが亡くなったのはそんな自分への罰だと言うトラウトマンに向かって、マーガレットは「自分の過ちに私を巻き込まないで!もうジョンは戻ってこないから、前に向くしかないの!」と言い放ちます。極限まで追い詰められていても、マーガレットなりに前に向かって一生懸命歩こうとしているのが分かったトラウトマンは、一時考えていた引退を撤回し再びピッチに戻ってきました。
1956年にはFWA年間最優秀選手賞を外国人として初めて受賞。マンチェスター・シティでは1964年までプレーし、545試合に出場しました。さらにサッカーを通じてイギリスとドイツの相互理解を深めたことが評価され、2004年には大英帝国勲章を授与されました。
トラウトマンは、2013年7月死去。89歳でした。
以上、映画「キーパー ある兵士の奇跡」のあらすじと結末でした。
この実話に基づいて制作された映画は、ナチス兵バート・トラウマンが身に降りかかる困難にくじけそうになりながらも立ち向かっていく勇敢な姿に誰しもが心打たれ、こんな人生を送れたらと思うことだろうと感じた。
第二次世界大戦が終わり、捕虜としてイギリスの収容所に連行され、過酷な環境に置かれただけで心が折れてしまうのだが、トラウマンは、そこからわずかな光を手掛かりにしぶとく生き抜いていく。そして、彼の運の強さも後押しする。まず、地元サッカーチームの監督であるジャックとの出会いがある。ジャックは収容所内でのサッカーの練習を見て、キーパーとしてのトラウマンの素質を見抜く。そして、収容所閉鎖後に地元サッカーチームのキーパーとしてスカウトされ、そのチームで大活躍し、絶望から希望に運命が変わっていく姿は圧巻である。