歓びの毒牙(きば)の紹介:1969年イタリア,西ドイツ映画。ホラー映画の名匠ダリオ・アルジェントの処女作。フレドリック・ブラウンの小説をアルジェント自らが脚色している。後の作品に見られるようなスーパーナチュラルな要素はなく、あくまで普通のフーダニット(犯人当て)になっている。
監督:ダリオ・アルジェント 出演:トニー・ムサンテ(サム・ダルマス)、スージー・ケンドール(ジュリア)、エンリコ・マリア・サレルノ(モロシーニ警部)、エヴァ・レンツィ(モニカ)、ウンベルト・ラオ(ラニエリ)、マリオ・アドルフ(ベルト)
映画「歓びの毒牙」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「歓びの毒牙」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「歓びの毒牙」解説
この解説記事には映画「歓びの毒牙」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
歓びの毒牙のネタバレあらすじ:起
アメリカ人作家のサム・ダルマスはローマでモデルのジュリアと暮らしていましたが、2年間にわたるイタリア滞在を切り上げ、一緒に帰国するつもりでした。そして出発も2日後に迫ったある夜のことです。ある画廊の前を通りかかると、ガラス越しに男女ふたりが争っている姿が見えました。やがて女性の方が刃物で刺され、苦しんだ末に倒れてしまいます。サムは中に入ろうとしますが、鍵がかかっていてどうしようもありません。やがて別の通行人の通報により警察が到着。幸い女性は無事で、病院に運ばれます。女性はモニカといい、画廊の経営者アルベルト・ラニエリの妻でした。サムは犯行の目撃者として執拗な取り調べを受け、おまけにパスポートを取り上げられます。その頃、ローマでは謎めいた殺人事件が続いており、警察ではサムがその犯人ではないかと疑っているのです。ようやく尋問から解放されたサムは、その直後に何者によって命を狙われます。間一髪で襲撃は逃れましたが、どうやら襲った人間が真犯人のようです。帰宅したサムはジュリアに今日の出来事を話して聞かせますが、画廊の犯行時の様子が何度も頭に蘇り、なかなか眠れません。
歓びの毒牙のネタバレあらすじ:承
翌日もサムは警察に呼び出され、何人かの犯罪者の面通しをさせられます。しかし事件のとき犯人は顔を隠していたため、そんな行為には意味がありません。サムは捜査に協力する見返りとして証拠分析の結果についても知らされます。どうやら犯人は左利きのようでした。サムは自分で犯人を捜すつもりになり、まず退院した被害者モニカの部屋を訪ねます。しかしアルベルトが対応に出て、「妻には会えません」というだけです。サムがタバコを彼に放り投げると、アルベルトはとっさに左手で受け取りました。左利きということで、サムは彼のことを怪しみます。家に帰ったサムはジュリアと一緒に新聞の切抜きを集め、連続殺人の詳細を調べます。被害者のひとりが古物商の店員ということで、サムはそのオーナーと会見。そして被害者が殺される直前、店にあった絵をある客に売っていたことが分かります。その絵の写真を手に入れたサムは、壁に貼ってしげしげと観察。ナイフを持った男が少女を襲っている絵です。絵柄は不気味ですが、犯人の手がかりになどなりません。やがて連続殺人事件に新たな犠牲者が出ます。モロシーニ警部が部屋まで来て、サムをまた警察署へ連れて行きますが、今度はパスポートを返すためでした。サムは画廊に行き、ようやくモニカに会いますが、新しい展示物の準備で忙しく、ゆっくり話をする暇もありません。
歓びの毒牙のネタバレあらすじ:転
その夜、サムがジュリアと夜道を歩いていると、再びある男に襲われます。しつこく追いかけられたものの何とか助かったサムは、かえって捜査への意欲を燃やすことになります。そしてまたひとり被害者が出た後、サムは関係者から情報屋を紹介してもらいます。情報屋はすぐに調査を開始。元ボクサーのニードルズがなにか知っているらしいと分かります。しかしサムがニードルズの家に行くと彼は殺されていました。ニードルズこそ、サムを殺そうとした男なのです。おまけに犯人らしい人物から電話がかかり、ジュリアを狙うぞと脅してきます。さすがにもう捜査は切り上げることにし、サムはジュリアとともに帰国のための荷造りを始めます。しかし再び絵を見ているうち、情熱が蘇り、絵の作者に会うつもりになります。その画家によれば、その絵のモチーフは知り合いの娘が襲われた実際の事件。犯人の男は精神病と判断され、施設に入れられたそうです。しかし、直接的な犯人へのヒントにはならず、サムはがっかりして帰宅します。翌日になって、犯人の電話の録音テープを預かっていたサムの友達がやってきます。声の背後に聞こえる妙な音の正体が分かったのです。シベリア北部にだけいる鳥の鳴き声でした。イタリアには動物園に1羽だけいます。早速動物園を訪れると、そのそばにはラニエリのアパートがありました。窓を見上げた途端、女の叫び声が聞こえてきます。サムが駆けつけると、アルベルトがナイフをかざしてモニカと揉み合っているところでした。アルベルトはサムと駆けつけた警察に追い詰められ、窓から転落。虫の息で「連続殺人の犯人は私だ」と告白し、そのまま死亡します。
歓びの毒牙の結末
事件が解決したと考えてホッとしたサムは帰ろうとしますが、一緒に来たジュリアの姿が見えません。探し回っているうちに、サムはある部屋に入り込みます。そこには例の絵の原画が飾ってありました。やがて狂ったように笑いながら姿を現したのはモニカでした。実は連続殺人犯は彼女で、夫はその身代わりとなって死んだのです。サムは彼女に殺されそうになりますが、モロシーニ警部に助けられます。ジュリアも無事でした。モニカはあの絵に描かれた傷害事件の被害者であり、絵を見ることでを怒りが歪んだ形で表れ、なぜか被害者ではなく加害者に同化して殺人を繰り返すことになったのでした。アルベルトは最初妻の犯行を隠蔽するように努力していましたが、自分も影響を受け、犯罪に協力することになったのです。サムとジュリアはようやく飛行機に乗り込み、アメリカへと旅立ちました。
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