捜索者の紹介:1956年アメリカ映画。ジョン・ウェイン主演の西部劇。公開当時不評だったが、徐々に評価を上げ、今ではジョン・フォードの数多くの名画の中でもとりわけ評価の高い作品となっている。2007年度のAFIアメリカ映画ベスト100では第12位。
監督:ジョン・フォード 出演:ジョン・ウェイン(イーサン・エドワーズ)、ジェフリー・ハンター(マーティン・ポウリー)、ナタリー・ウッド(デビー・エドワーズ)、ヴェラ・マイルズ(ローリー・ジョーゲンセン)、ほか
映画「捜索者」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「捜索者」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「捜索者」解説
この解説記事には映画「捜索者」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
捜索者のネタバレあらすじ:1
1868年のテキサス。南北戦争が終わって3年たちます。南部側で戦ったイーサンはモニュメント・バレーの見える兄の家へ。独り者の風来坊である彼が姿を見せたのは数年ぶりです。いつの間にか大きくなった甥や姪と再会し、家族の雰囲気を楽しむイーサンですが、インディアンの血をひくマーティンが養子として育てられているのを見て気分を害します。彼はインディアンに対して嫌悪感を抱いているのです。やがて、イーサンとマーティンは近隣に住むクレイトン牧師の要請に応えて牛泥棒を探しに外へ。その間にコマンチ族が残った家族を襲います。兄夫婦とイーサンの甥は虐殺され、ルーシーとデビーの姉妹は連れ去られました。
捜索者のネタバレあらすじ:2
クレイトン牧師を含む大掛かりな捜索隊が編成されますが、捜索は難航。時間が経つに連れて人数も減り、最後にはイーサンとマーティン、それにルーシーの婚約者であるブラッドの3人だけとなります。岩場のそばで一旦ふた手に別れるイーサン、そしてマーティンとブラッド。その時、イーサンはルーシーの死体を発見、埋葬しました。しばらくは黙っていましたが、やがてブラッドに告白。ヤケになったブラッドは近くにいたコマンチ族を1人きりで襲撃。返り討ちにあいます。2人きりになったイーサンとマーティン。
捜索者の結末
捜索はこのあと6年続きました。そしてようやく仲介者によってコマンチ族の酋長とテントで会う2人。そこにはすっかり成長したデビーがいました。手出しも出来ないまま帰ろうとした2人の後をデビーが追ってきます。インディアンに同化した彼女をイーサンは撃ち殺そうとしますが、マーティンが邪魔をします。
2人は一旦帰郷。そして騎兵隊がコマンチ族を襲撃することになります。それに参加したイーサンとマーティン。イーサンは酋長を殺し、逃げるデビーを追いかけます。それをさらに追いかけるマーティン。しかし、洞窟の入り口でデビーに追いついたイーサンは彼女を抱き上げます。「家に帰ろう、デビー」と優しく声をかけるイーサン。やがて故郷に帰り、家の中に入っていく一同を見ながら、イーサンはまた1人で荒野を去ってゆきます。
正義感に溢れ、心優しくヒューマンというのが、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインが創り出した西部劇のヒーローのイメージだ。
だが、この映画「捜索者」の主人公イーサンには、それはない。
放浪の旅から帰り、インディアンとの混血青年が、家族に加わっているのを見ると、不快感を現わすし、コマンチ族の妻となった娘を、我が子であっても殺そうとする。
偏見に満ちた、復讐鬼なのだ。
ジョン・ウェイン自身も語っているように、「イーサンは悪役である。だが、この悪役は滅法、魅力的である。」と。
それは、ジョン・ウェインが演じたためでもあるのだが、単に憎悪に燃えて、執拗なまでにコマンチ族を追うだけの男ではなく、その内に、愛の不在を宿しつつ、荒野を流離うしかなかった孤独な魂、男が本来持ち合わせている、あるいは、それに限りないロマンを感ずるという事を表したものだったからだ。
ジョン・ウェインは、後に「勇気ある追跡」で、アカデミー主演男優賞を受賞しているが、この映画での悪役イーサンの演技の方が、優れているのではないかと、個人的には思っています。
復讐の鬼と化し、数年かけてコマンチを追い、遂に酋長のスカーの死体の頭皮をはぎ、娘を抱きかかえ、「家に帰ろう」というイーサン。
彼は突如として、ヒューマニズムを回復させるが、その連れ帰るべき”家”は、イーサンにはないのだ。
ジョンフォード監督自身の言葉を借りれば、「家族の一員となることができなかった一匹狼の悲劇」が、ここで鮮やかに浮き彫りにされてくる。
娘は取り戻した。だが、イーサンには、その娘と失われた愛を回復させ、育んでいく場もなければ、また、それができるとも思われない。
愛は不在のまま、孤独な魂を抱えた肉体だけが、そこには存在していて、なんとも切ないのだ。
だが、その切なさが、たまらない魅力となっている異色の西部劇だ。
ジョン・フォード=ジョン・ウェインのコンビ作の中では、最も好きな作品であり、ジョン・フォード監督の最高傑作だと思う。