工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男の紹介:2018年韓国映画。1990年代に実在した韓国のスパイの実話を基に、北朝鮮内部に潜入して権力の中枢との接触に成功した韓国の工作員の運命と南北の権力者たちの闘争を描いたポリティカル・サスペンス映画です。本作はカンヌ国際映画祭のミッドナイト・スクリーニングに公式招待され、韓国を代表する映画賞である青龍映画賞・大鐘賞・百想芸術大賞などで高い評価を得ました。
監督:ユン・ジョンビン 出演者:ファン・ジョンミン(パク・ソギョン(黒金星))、イ・ソンミン(リ・ミョンウン)、チョ・ジヌン(チェ・ハクソン)、チュ・ジフン(チョン・ムテク)、キ・ジュボン(金正日)、チョン・ソリ(イ・フンソル)、キム・ウンス(キム部長)、チェヨン(ファン・ビョンチョル)、パク・ジニョン(キム・チャンヒョク)、ナム・ムンチョル(パク議員)、チェ・ビョンモ(ユ議員)、キム・イヌ(清原)ほか
映画「工作 黒金星と呼ばれた男」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「工作 黒金星と呼ばれた男」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男の予告編 動画
映画「工作 黒金星と呼ばれた男」解説
この解説記事には映画「工作 黒金星と呼ばれた男」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
工作 黒金星と呼ばれた男のネタバレあらすじ:起
東西冷戦が終結した後の1992年。なおも朝鮮戦争の休戦下にある朝鮮半島では、韓国と北朝鮮は互いに水面下でスパイを送り込んでの熾烈な諜報戦を繰り広げていました。
そんなある時、韓国軍の情報部隊の将校パク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は、韓国の情報機関である国家安全企画部のチェ・ハクソン室長(チョ・ジヌン)に呼び出され、核開発の疑惑がある北朝鮮に工作員として潜入するよう指令されました。
「黒金星(ブラック・ヴィーナス)」というコードネームを与えられたパクは、北朝鮮の最高指導者である金正日総書記(キ・ジュボン)直属のごく限られた人物しか知らないとされる核開発の実態を探ることになりました。
1995年。周到な準備期間を終えたパクは北朝鮮の外貨獲得部門に近づくため、実業家に扮して中国に向かいました。パクはチェ室長の裏工作もあって北朝鮮の対外経済委員会のリ・ミョンウン所長(イ・ソンミン)に接触することに成功しましたが、パクを利用できる人物か韓国スパイか見極めたい北朝鮮側はパク側に北朝鮮への誠意として現金と韓国側の機密情報提供を要求してきました。
チェ室長と打ち合わせたパクはリ所長との交渉に臨みますが、交渉に立ち会った北朝鮮のの国家安全保衛部のチョン・ムテク課長(チュ・ジフン)はパクの正体を疑い、ビジネスの条件として北朝鮮側のスパイになれとパクに要求してきました。パクは拒絶したことから交渉は決裂しましたが、リ所長は改めてパクとの交渉の機会を設けました。
パクはその次の交渉でも強気の態度を見せました。リ所長はその物怖じしない態度を“浩然の気”と呼んで評価、彼を南のスパイか信頼できるビジネスパートナーか見極めようと考えました。パクは北朝鮮側にチェ室長から渡された精巧な偽物のブランド時計を渡し、一方の北側も精巧な偽物の骨董の壺を渡し、それを売って金に換えるよう求めてきました。
これは北側に試されているのだと考えたパクとチェ室長は壺を偽物と見破ったうえで金に替えて北側に渡しました。
工作 黒金星と呼ばれた男のネタバレあらすじ:承
パクらは北朝鮮国内で韓国企業のCM撮影を行うことを思いつき、その際に撮影クルーを北朝鮮国内に潜り込ませることで北の軍事機密を密かに記録しようと目論みました。パクは北朝鮮側に自らの商才とビジネスへの情熱をアピール、当初は難色を示した北朝鮮側にCM撮影事業を共同で展開させる確約を得ることに成功しました。
1996年4月5日、韓国の総選挙の6日前に南北朝鮮の軍事境界線・38度線で武力衝突が勃発しました。韓国内の世論が北朝鮮への反発に動くなか、時を同じくして韓国国家安全企画部の協力者が謎の死を遂げるという事件が発生しました。
同年4月27日、パクは一連の出来事に不信感を抱きつつも、金正日が面会を求めているとの情報を得てピョンヤンに向かいました。そこでパクは健康診断と称して自白剤を打たされ、チョン課長から尋問を受けましたが、幸いにも自分の正体を知られることはありませんでした。
こうして金正日との面会に臨んだパクは事業のメリットを説明、リ所長の取りなしもあって事業の開始許可を得ることに成功しました。パクは北朝鮮側から本物の骨董品の売却ビジネスを持ちかけられ、南北の融和を名目に北朝鮮側の枢軸に取り入ることに成功しましたが、依然として本来の目的である核開発の実態を探ることはできていませんでした。
そこでパクとチェ室長は、骨董品が埋蔵されている遺跡の調査という名目で核開発施設のあると思わしき地に立ち入ることにしましたが、この地でパクは貧困に喘ぐ一般市民の姿を目の当たりにしました。パクはリ所長の部下のキム部長(キム・ウンス)から貧しき人々を救いたいと訴えられましたが、パクにはどうすることもできませんでした。
一部始終のやりとりを盗聴していたリ所長は、その翌日にパクにキム部長とは二度と会えなくなったと告げ、40年ぶりの再開となる南北交流事業の成功のためにも無用の疑いはかけるべきではないと忠告されました。しかし、パクはこれまでのやり取りから、リ所長は北朝鮮の体制側にありながら南北の交流を通じてこの国が変革してくれることを心から願っていることに気付き、リ所長もまたパクの正体に薄々気付きながらも南北事業の継続のために尽力してくれていると感じ取っていました。
工作 黒金星と呼ばれた男のネタバレあらすじ:転
1997年12月、大統領選挙を目前に控えた韓国では金大中候補が選挙戦を優位に戦っていました。もし金大中が大統領に当選となると、国家安全企画部の前身である中央情報部に弾圧された経験を持つ金大中が国家安全企画部を廃止しかねない事態に陥る可能性がありました。
そこで国家安全企画部は存続をかけて北朝鮮の上層部との接触を試みることにし、北との繋がりのあるパクに金大中と対立する与党の議員からの密書を北朝鮮側に手渡すよう命じてきました。パクは密書を渡す行為は工作活動への関与を疑われ、南北交流事業を中断の危機に貶め、そして最大の目的である核開発の実態を掴めなくすることだと危惧しましたが、チェ室長は組織の存続のためにはやむを得ないと命令の遂行を命じました。
パクは命令に従って密書を北朝鮮側に渡した、韓国の与党議員や国家安全企画部と北朝鮮の国家安全保衛部や軍幹部との密談が北京で実施される運びとなりました。しかし、先の南北の軍事衝突に不審を抱くパクは北京での密談を盗聴することにし、その結果として南北朝鮮は互いの権力の維持のために裏取引をして軍事衝突をでっちあげ、北朝鮮軍部は見返りとして韓国与党側から多額の金を受け取っていた事実を掴みました。
韓国与党側は北朝鮮に融和的な金大中の大統領当選を阻止すべく、北朝鮮の軍事挑発を利用して韓国国民の危機感を煽ろうと目論んでいたのです。
このままではこれまでの工作活動が無になり、南北交流事業も頓挫すると危機感を抱いたパクは意を決してリ所長と接触しますが、南北の工作は既に二人の予想を超えて大きく進んでいました。リ所長は絶望するパクにひとつだけ方法が残っていると語り、「ビジネスにはふたつ意味がある。ひとつは事業、もうひとつは冒険。今度は二人で冒険しようではないか」と持ちかけました。
パクはリ所長の手引きで再び金正日と面会、その際に北朝鮮上層部に金正日が受け取るはずの金を横取りした裏切り者がいることを示唆しました。金大中の当選の可能性が高まってもなお韓国を表向き揺さぶる考えに変わりのない金正日でしたが、裏切り者の存在を受けて直ちに捜査と軍事挑発の中止を命じました。
軍事挑発のまさかの中断に韓国の国家安全企画部は大きく動揺、内部に裏切り者がいるのではと感じ始めました。
工作 黒金星と呼ばれた男の結末
1997年12月の韓国大統領選挙で金大中が当選、韓国の政治は大きく様変わりしようとしていました。金正日との会談を終えたパクはリ所長の自宅に招かれ、友好の証として“浩然の気”と刻まれたネクタイピンを贈られました。
一方、韓国の国家安全企画部は内部の裏切り者はパクであることに気付き、パクの情報をマスコミにリークしたうえで社会的に抹殺しようと画策しました。そのことをいち早く知ったリ所長はパクを北朝鮮から脱出させることにし、通行証を渡して直ちに国外に退去するよう要求しました。
パクは韓国の工作員と関わったリ所長の身の安全を危惧しますが、リ所長は自分は北朝鮮の外貨獲得に必要なので粛清されないはずだと語りました。
パクは北朝鮮から脱出を果たす一方、韓国では国家安全企画部が権力維持の為に行った対北朝鮮工作が問題視され、チェ室長は逮捕され、国家安全企画部は解体・規模縮小されたうえで大統領直属の国家情報院へとリニューアルされました。
2006年、南北朝鮮のモデルが共に出演するCMが撮影されることとなりました。パクたちが事業を持ちかけてから実に10年以上の歳月が過ぎていました。パクはビジネスマンとして対北事業を続けており、記者会見の場で北朝鮮側関係者として同席していたリ所長と再会しました。リ所長はパクから贈られた腕時計を見せ、パクはリ所長から贈られた“浩然の気”のネクタイピンを見せました。
それから4年後の2010年6月、パクは数々の国家保安法違反で逮捕され、2016年に刑期を終えて釈放されました。
以上、映画「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」のあらすじと結末でした。
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