ツリー・オブ・ライフの紹介:2011年アメリカ映画。テレンス・マリック監督による、ある家族の40年を描いた人間ドラマ。撮影に使用された巨木は、映画のために移植されたというエピソードもあります。聖書の『ヨブ記』の一節から始まる本作は、登場人物のセリフは少なく、作品の途中で大自然のカットが挿入される特徴的な手法で、評価は賛否両論に分かれました。
監督:テレンス・マリック 出演:ブラッド・ピット(オブライエン)、ショーン・ペン(ジャック)、ジェシカ・チャステイン(オブライエン夫人)、フィオナ・ショウ(祖母)、ほか
映画「ツリー・オブ・ライフ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ツリー・オブ・ライフ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ツリー・オブ・ライフの予告編 動画
映画「ツリー・オブ・ライフ」解説
この解説記事には映画「ツリー・オブ・ライフ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ツリー・オブ・ライフのネタバレあらすじ:厳格な父の思い出
1950年代のテキサス州の小さな町で、オブライエン夫妻は3人の息子たちと暮らしていました。厳格なクリスチャンである父(ブラッド・ピット)は教育熱心。子供達のしつけに大変厳しく、時には手をあげることもありました。一方、母(ジェシカ・チャステイン)は穏やかで子供達に優しく、大きな愛で包み込むような女性でした。妻に対し「お前は子供達に甘すぎる」と言い、夫婦は次第に口論になることが増えていきました。父は「優しいだけでは、男は成功しない」と考える人でした。ある日教会のオルガンの前で、かつて音楽家になりたかった夢を諦めたことを嘆いていました。母は神の恩寵に生き、「愛」があれば生きていけると考える人でした。子供達と同じ目線で喜び合い、日々の生活を謳歌する人です。父は、子供達は家の決まりに従うべきと考え、自分のことを“Sir”と呼ばせ、しつけは次第にエスカレートしていきます。若き日の長男のジャック(ハンター・マクラケン)は、そんな父に反発心を抱き始めます。
ツリー・オブ・ライフのネタバレあらすじ:現在のジャック
ジャック(ショーン・ペン)は現在、都心で建築家として成功を収め、大きな家で満ち足りた生活を送っていますが、どこか喪失感に苛まれていました。疲れた時にふと考えるのは昔のことばかりでした。ジャックが19歳の時に亡くなった次男のことを思い出し、弟の死とは何か、生きる意味とは何かを考え始めるのでした。弟の死はジャックの人生において大きな影を落とし、映画の中で、宇宙の成り立ちから様々な惑星が誕生する壮大なビジュアルとともに、ジャックの哲学的な質問が投げかけられます。
ツリー・オブ・ライフの結末:父の工場の閉鎖
物語はジャック青春時代に戻ります。父の厳しいしつけで、ジャックは次第に屈折した感情を抱くようになり、公共施設を破壊したり、動物虐待などに手を染めるようになっていきました。そんな折、父の工場が閉鎖され、無職になるか、もしくは望まない異動を余儀なくされる事態に陥ってしまいます。家族はテキサスの大きな家を出なければならなくなりました。この時初めて、父はジャックに自分の胸の内を明かしました。自分が夢破れた事、そして、子供達には事業を起こしてたくましく育って欲しくてつい強くあたってしまった事を謝りました。そして、今までの生活がどんなに満ち足りたものであったか、自分は気づいていなかったと後悔している事を告げるのでした。そんな父にジャックは優しく「自分は一番父さんに似ている」と言います。映画は、壮年期のジャックが、砂浜を一人歩いているシーンへと切り替わります。そこへ亡くなった弟、母、父、兄弟たちが現れ、家族が抱える確執がすべて解けたかのように、笑顔でハグを交わし、みなの再会を喜び合うシーンで幕を閉じます。
この映画「ツリー・オブ・ライフ」は、厚みのある人間ドラマと、そこからイメージを羽ばたかせる美しい映像、クラシックの流麗な音楽。
これらが、混然一体となった秀作だと思います。
孤高の天才・テレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」は、家族を亡くした喪失感や父と子の確執など、誰もが経験する家族の物語を、太古から繰り返される、命の物語として、壮大に描き出していると思います。
この映画の主要な舞台は、1950年代のアメリカのテキサス州の小さな町だ。
ブラット・ピットとジェシカ・チャスティン演じる夫婦は、3人の子をもうけて、幸福な日々を送っている。
庭の木漏れ日、母のスカートの揺らぎ、ギターを爪弾く音——-。
日常にありながら、移ろいやすい奇跡のような輝きが、丹念に描かれていく。
やがて、野心を抱いた父は、家庭でも強権的に振る舞い始め、穏やかな母や子供たちとの幸せな日々が軋みだす。
長男は純真さを失って、父を強く憎むようになる。
そんなドラマに、生命や自然の躍動を伝える壮大なイメージ映像が重ねられる。
CGも駆使し、星の誕生や太古の海、恐竜のいた時代など、今の自分へ繋がる、途方もない命の連鎖が、生き生きと浮かび上がってくる。
そしてドラマは、喪失感を抱えたまま成人となった、ショーン・ペン演じる現代の長男が、家族との和解に至るまでを描いていく。
全編を通して、人生の意味を神に問うような語りが、実に印象的だ。
大学で哲学を教えていたというテレンス・マリック監督は、農場の風景が美しい「天国の日々」や、哲学的な戦争映画「シン・レット・ライン」などで、愚かな人間をそのまま包み込む自然を描くことを、モチーフとしてきた映画作家だ。
そして、わずか5本目のこの監督作で、カンヌ国際映画祭の最高賞を受賞したのだ。