バラキの紹介:1972年イタリア,アメリカ映画。実在したマフィア、ジョゼフ・バラキが掟を破ってFBIに協力、巨大マフィア組織の実態をアメリカ議会で証言する過程を描いたピーター・マーズのノンフィクション・ドキュメンタリー『マフィア/恐怖の犯罪シンジケート』を史実に忠実に映画化した実録犯罪ドラマです。
監督:テレンス・ヤング 出演者:チャールズ・ブロンソン(ジョゼフ・バラキ)、リノ・ヴァンチュラ(ヴィト・ジェノヴェーゼ)、ジル・アイアランド(マリア・レイナ・バラキ)、ジョセフ・ワイズマン(サルヴァトーレ・マランツァーノ)、グイド・レオンティーニ(トニー・ベンダー)ほか
映画「バラキ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「バラキ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「バラキ」解説
この解説記事には映画「バラキ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
バラキのネタバレあらすじ:起
1962年6月22日。アメリカ・ジョージア州アトランタの連邦刑務所にて服役していたマフィア、ジョゼフ・バラキ(チャールズ・ブロンソン)は、刑務所内で同房の囚人を鉄パイプで殴り殺してしまいます。かねてからバラキは刑務所内で命を狙われており、看守に独房に移してもらうよう頼んでいましたが却下されていました。バラキは同じ刑務所で服役しているマフィア時代のボス、ヴィト・ジェノヴェーゼ(リノ・ヴァンチュラ)に事情を話そうとしますが、バラキの命を狙っていたのはジェノヴェーゼ本人の指示だったのです。しかもバラキが殺した男はマフィアとは何も関係のないただの詐欺師だったのです。軍の刑務所に移送されたバラキは、自責の念とジェノヴェーゼへの復讐心から、かつて自身が所属していた巨大マフィア組織「コーザ・ノストラ」の実態をFBI捜査官ライアン(ジェラルド・S・オローリン)に語り始めました。
バラキのネタバレあらすじ:承
1904年、イタリア移民の子としてニューヨークのハーレムで生まれたバラキは若い頃から窃盗などの犯罪に手を染め、シンシン刑務所に収監されました。1929年、バラキはそこでトニー・ベンダー(グイド・レオンティーニ)とドミニク・“ギャップ”・ペトリッリ(ワルテル・キアーリ)と知り合い、出所後にベンダーとギャップのボスであるサルヴァトーレ・マランツァーノ(ジョセフ・ワイズマン)一家の元で働き始めます。マランツァーノは、当時ニューヨークの暗黒街を仕切っていたジョー・マッセリア(アレッサンドロ・スペルリ)一家とニューヨークの覇権を巡り、後に「カステランマレーゼ戦争」と呼ばれることになる抗争の真っ只中にいました。バラキはマランツァーノの部下ガエタノ・レイナ(アメデオ・ナザーリ)の運転手となり、バラキは組織と“血の掟”を交わします。しかし1930年、レイナは自宅前で殺害され、葬儀に参列したラッキー・ルチアーノ(アンジェロ・インファンティ)とジェノヴェーゼはマランツァーノ側につく決断をします。1931年、マッセリアはルチアーノに招待されたイタリアンレストランで暗殺されました。巨大組織「コーザ・ノストラ」のボスとなったマランツァーノは全米の24ファミリーを束ね、ニューヨークを5つのファミリーに分けてルチアーノをその内の一つとし、バラキはマランツァーノの運転手となります。
バラキのネタバレあらすじ:転
しかし、それから程なくしてマランツァーノとルチアーノの間に亀裂が入り、1931年9月10日、マランツァーノはルチアーノとジェノヴェーゼが差し向けた刺客によって暗殺されました。身の危険を感じたバラキはレイナの未亡人レティジア(プペラ・マッジオ)に匿われ、かねてより好意を抱いていたレイナの娘マリア(ジル・アイアランド)と結婚します。その後バラキは、ルチアーノやジェノヴェーゼに寝返っていたギャップの仲介によりジェノヴェーゼの部下となり、スロット・マシン20台分の権利を得ます。その後ルチアーノが売春容疑で逮捕されて30年の刑を受け、イタリアへ追放されました。1937年、「コーザ・ノストラ」のボスに登り詰めたジェノヴェーゼは後をアルバート・アナスタジア(ファウスト・トッツィ)に任せ、犯罪ルートを確保すべくイタリアに渡りますが1946年にアメリカに舞い戻り、レストランの経営者として幸せな家庭を築いていたバラキはマリアら家族を安全な場所へと避難させます。1957年、組織の立て直しを図ったジェノヴェーゼはアナスタジアを暗殺し、バラキも権力争いに巻き込まれて麻薬密売に手を染めるようになりました。やがてジェノヴェーゼは逮捕され、1960年、バラキはベンダーに裏切られて逮捕され、懲役15年の刑を受けました。
バラキの結末
バラキはライアンから、マリアら家族の安全を保障する代わりにアメリカ上院審問委員会の公聴会での証言を求めます。そして1963年9月9日、バラキは血の掟を破り、「コーザ・ノストラ」の実態について証言を始めました。その様子をテレビで見ていたジェノヴェーゼはバラキの首に10万ドルを賭けます。公聴会から独房に戻ったバラキは、仲間を裏切った自責の念とアメリカへの失望から自殺を図りますが、ライアンに発見されて一命を取り留めます。ライアンはバラキにジェノヴェーゼを喜ばせるだけだと諭し、バラキはジョノヴェーゼよりも長生きすると誓います。ジェノヴェーゼは1969年に獄死、厳重に警備された独房で余生を過ごしたバラキはジェノヴェーゼの死から2年後の1971年、刑務所にてその波乱に満ちた生涯を閉じました。
「バラキ」感想・レビュー
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この「バラキ」は、ノン・フィクションの映画化としては実証性が希薄で、ギャング映画としては事実に足を引っ張られて、フィクション化が不徹底な作品だと思います。
この映画「バラキ」は、監督が007シリーズの初期の監督を務めたテレンス・ヤング、製作がイタリアの大プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティス、音楽がリズ・オルトラーニという、映画好きにとっては、この名前を聞いただけで、ワクワクするようなメンバーによる作品ですね。
そして、主演のチャールズ・ブロンソンと監督のテレンス・ヤングのコンビとしては、「夜の訪問者」、「レッド・サン」に続く3度目の作品になりますね。
この映画の原作は、「セルピコ」の原作者としても有名なピーター・マーズの大ベストセラー小説の「マフィア/恐怖のシンジケート」で、映画化に当たっては、当時、関係者が獄中で存命中であり、彼の指示で暗殺等の危険性もあった為、関係者の死後、製作されたといういわくつきの作品なんですね。
マフィアの準幹部だったバラキ(チャールズ・ブロンソン)が、組織に欺かれ、復讐のためにマフィアの組織、コーザ・ノストラの内情をFBIの係官にぶちまけるが—-という内容ですが、当時、同時期に公開されていた「ゴッドファーザー」と同様に、残虐な場面が話題を呼び、一度足を踏み入れたら抜けられない、血のファミリーの怖さを描いた実録物として評判になった作品でもあるんですね。
このピーター・マーズの原作は、ジョセフ・バラキ、映画の中ではバラチと発音していましたが、彼の告白をもとにしたノン・フィクション・ルポルタージュとも言うべきもので、バラキがどんな人間であったのかも、よく観察して表現していたと思います。
私は、この原作を先に読んでから、映画を観たのですが、テレンス・ヤング監督の映画の方は、一応、事件の起こった日時などが画面に出て来て、実話的な感じを出そうとしているようなのですが、脚色も演出も、完全なギャング映画のスタイルになっていて、実話の映画化といった実証性に乏しかったような気がします。
それでいて、登場する人物には、一応、実在の人物らしい似せ方もしようとしています。
つまり、ノン・フィクションとしての興味と、ギャング映画的な面白さとをいっしょくたに、まぜこぜにしてしまったような映画になっているとの印象を受けました。だから、ノン・フィクションの映画化としては、実証性が希薄だし、ギャング映画としては、事実に足を引っ張られてフィクション化が不徹底になっているのだと思います。
娯楽映画の職人監督のテレンス・ヤングとしては、あまりにも欲張りすぎて、かえって中途半端な映画になってしまったという気がします。そのような、この映画の欠点は、主人公バラキの描写に、はっきりと表れています。
実話の映画化としては、映画のバラキは朴訥な好人物でありすぎるし、ギャング映画の主人公としては、粒が小さくて、アクの強い魅力にも乏しい気がします。
ブロンソン自身も演じていて、やりにくかったんじゃないかという気さえしてきます。これを劇映画のつもりで観る人は、恐らく、劇中の人間関係の複雑さにちょっとついていけない感じを受けるのではないかと思います。
さいわい、私は原作を先に読んでいたので、人間関係はよくわかりましたが、その代わり、人物の描写がかなり平板でチャチだったのに不満を覚えました。例えば、国外逃亡していたバラキのボスのヴィトー・ジェノベーゼ(リノ・ヴァンチュラ)が、ニューヨークに帰って来た時、波止場で出迎えの連中に対して、すぐ麻薬の話を始めますが、そういうところが、いかにも通俗的なギャング映画のようで、安っぽい感じがしましたね。
「ゴッドファーザー」の大ヒットににあやかって、本場イタリアのディノ・デ・ラウレンティスが製作したマフィアというか、コーザノストラの興亡史。フランシス・フォード・コッポラ監督の世界が、ある種、東映任侠路線なら、こちらは東映実録路線調の作品だ。ドライなタッチの実話の再現が、とても面白く、チャールズ・ブロンソンも苦渋に満ちた好演で、新境地を開いている。