ザ・ヤクザの紹介:1974年アメリカ映画。国籍も考え方も違う2人の男が、義理人情で結ばれていく姿を描いたサスペンス・アクション。私立探偵キルマーは、旧友から日本の暴力団に監禁されている娘を救出して欲しいと頼まれる。キルマーは20年ぶりに日本へ向かい、暴力団幹部の田中健に助力を求めた。健は既に足を洗っていたが、昔キルマーから受けた恩を返すため、刀を手に巨悪に立ち向かう。後に製作されたアメリカ映画「イントゥ・ザ・サン(2005年)」は、本作のリメイクである。
監督:シドニー・ポラック 出演者:ロバート・ミッチャム(ハリー・キルマー)、高倉健(田中健)、ブライアン・キース(ジョージ・タナー)、岸恵子(田中英子)、ハーブ・エデルマン(オリヴァー・ウィート)ほか
映画「ザ・ヤクザ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ザ・ヤクザ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ザ・ヤクザ」解説
この解説記事には映画「ザ・ヤクザ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ザ・ヤクザのネタバレあらすじ:ヤクザとのトラブル
舞台は1970年代のアメリカ、ロサンゼルス。私立探偵ハリー・キルマーは、進駐軍時代の友人ジョージ・タナーから相談を持ちかけられます。なんでも彼の一人娘が、日本の暴力団東野組に誘拐されてしまったらしいのです。タナーは海運会社を営む傍らマフィアとしても活動しており、東野組とは銃の密輸で取引がありました。しかしタナーは商品を紛失。既に支払いを済ませていた東野は不審に思い、タナーの娘を人質にしたのです。キルマーはボディガードの青年ダスティと共に日本へ渡りました。キルマーにとっては20年ぶりの日本です。彼はかつての恋人田中英子を訪ねました。終戦直後に乳飲み子を抱えた英子と出会い、5年ほど一緒にいたキルマー。貧しい英子とその娘花子を援助しながら、日本を離れる際は生きていけるようにとバーもプレゼントしていました。20年ぶりの再会に、英子も花子も喜びます。キルマーは、英子に彼女の兄田中健の居所を尋ねました。健は終戦から5年経って復員し、ヤクザの道に入った男です。同じヤクザである健なら、東野と話をつけられるかも知れません。英子は渋りましたが、結局京都にいると教えてくれました。
ザ・ヤクザのネタバレあらすじ:健に迫る危険
健は京都で剣道を教えていました。キルマーは健に東野とタナーのことを話し、力になってくれるよう頼みます。ところが、健は10年も前にヤクザから足を洗っていました。しかし英子と花子を助けて貰った恩義に報いるため、健は協力を約束します。タナーの娘が監禁されている古寺に襲撃をかけたキルマー達は、救出には成功しますがその場にいたヤクザを殺害してしまいました。キルマーの仕事は終わりましたが、健は東野組から命を狙われる羽目になってしまいます。キルマーは、暴力団の顔役で英子のもう1人の兄田中五郎に助けを求めます。しかし五郎はヤクザの掟に反することは出来ないと断りました。東野に付け入る隙を与えないため、中立の立場でいるしかなかったのです。
ザ・ヤクザのネタバレあらすじ:裏切り
一方、来日したタナーは密かに東野を訪ねていました。実は商品を紛失したというのは嘘で、受け取った金はギャンブルで使い切ってしまったのだと白状します。薄々勘付いていた東野は、五郎の地位を奪うために協力しろと言い出しました。五郎を引きずり出すため、キルマーと健の殺害を指示します。ヤクザの襲撃を受けタナーの裏切りを知った健達は、キルマーの友人で日本在住のオリヴァー・ウィートの家に集まります。深刻な顔をしたダスティは、健に「義理って何です?」と尋ねました。健は「義理ってのは日本人の生きる道なんです」と答えます。命懸けでキルマーに手を貸したのも義理のためなのだと。ダスティは意を決し、実はタナーからキルマーのスパイを命じられていたことを打ち明けました。そこに数人のヤクザが現れ乱闘になります。キルマー達は何とか撃退に成功しますが、ダスティと花子が命を落としてしまいました。
ザ・ヤクザのネタバレあらすじ:思わぬ真実
英子とオリヴァーをホテルに避難させたキルマーと健は、五郎を訪ねます。彼は一人息子の四郎が現在東野の手下になっていることを告げ、連れ帰ってくれるならばと協力を約束しました。そして五郎はキルマーだけに、健と英子の秘密について話します。2人は兄妹ではなく夫婦でした。復員した健はキルマーと英子の仲に苦悩し、結局兄妹だと嘘をついて身を引くことにしたのです。真実を知ったキルマーは、まずタナーの居所を暴き彼を殺害。そして健と共に東野邸へ襲撃をかけました。キルマーが手下のヤクザに銃を向ける中、健は一直線に東野へ近付き日本刀で切り伏せます。残ったヤクザ達との熾烈な戦いの中、健は四郎を殺害してしまいました。
ザ・ヤクザの結末:義理で結ばれた男達
全てが終わり、五郎を訪ねたキルマーと健。四郎を殺めてしまった健は、五郎の制止も聞かず指詰めをします。五郎も神妙な面持ちで指を受け取りました。義理人情を重んじる健の姿に、キルマーも小指を切り落とします。健の誇りを傷つけ、過去も未来も覆してしまったと謝罪するキルマー。そんな彼に、健は「私にとってこれ以上の友情はありません」と告げるのでした。キルマーは飛行機に乗り、アメリカへ帰って行きます。健が見送る中飛行機が離陸し、この映画も終幕を迎えます。
以上、映画ザ・ヤクザのあらすじと結末でした。
外国の監督が、日本を舞台にした映画を撮ってもめったに成功しないものだ。
必ず風俗的にチグハグで、ヘンテコなところが出てくるからだ。
だが、この映画「ザ・ヤクザ」は、稀に見る成功作だと言ってもいいと思う。
何しろ監督が「ひとりぼっちの青春」や「追憶」などのシドニー・ポラックだということと、ヤクザ映画(任侠映画)の本家・東映の全面的な協力のおかげで、おかしな失敗をしないですんだと思う。
アメリカで私立探偵をしていたハリー(ロバート・ミッチャム)が、友人のタナー(ブライアン・キース)から、ヤクザの東野(岡田英次)に誘拐された娘を取り戻してくれと頼まれて来日し、終戦の頃に愛し合った英子(岸恵子)と再会する。
彼女の兄だという健(高倉健)は、ヤクザの足を洗い、京都で剣道の師範をしているが、昔、英子がハリーに救われた”義理”を返すために協力を約束する。
ハリーと健は、タナーがつけてよこした若い用心棒のダスティ(リチャード・ジョーダン)も加えて行動を起こし、タナーの娘の奪還に成功する。
その結果、健もハリーも東野一味から狙われることになり、健の兄で全国ヤクザの長老格の五郎(ジェームズ繁田)を苦しい立場に立たせることになる。
シドニー・ポラック監督は、古めかしいフジヤマ・ゲイシャ的なイメージにこだわらず、1970年代当時の日本の自然な風俗の中で、物語を進めていて、安直なアクション映画のタッチではなく、腰を据えたドラマの味を出していると思う。
京都の大学の講師だった五年間に、ヤクザ映画の熱狂的なファンになったというポール・シュレーダーの原作もなかなかうまく出来ており、タナーが東野に密売する銃器の前払金を使い込んで、銃器を渡せなくなったため、娘を誘拐されたことがわかってから、場面は急テンポで緊迫の度を増していく。
そして、東野に脅かされたタナーが、ハリーの暗殺を企てたりしたあげく、ハリーが健と二人で、東野の邸へなぐり込みをかけるクライマックスへと至る。
健さんは日本刀、ミッチャムはショットガンと拳銃で暴れるこの修羅場は、カメラ・アングルにも工夫を凝らした、見応えのある一幕で、岡崎宏三の撮影が光っている。
健はこの乱戦で、東野の子分だった五郎の息子を殺す羽目になったため、指を詰める。
そして、健が実は英子の兄ではなく夫なのに、恩義のために自分たちの関係を隠していたという事情を知ったハリーも、侘びのしるしに指を詰めて健に送る。
“義理”というものが、本家の東映の映画より、合理的によくわかるのが面白い。
健さんも、ミッチャムも好演で、真の友情が生まれる経過がよく出ており、英語と日本語のまぜかたも上手くいっている。
そして、岸恵子もこの二人のバランスに相応しい配役だったと思う。