記憶の扉の紹介:1994年フランス,イタリア映画。失われた記憶を巡り、繰り返される問答を描くサスペンス・ドラマ。高名な作家オノフは雷雨の中を逃げるように走っていた。警察署に連行された彼は、署長から執拗な尋問を受ける。どうやら近くで殺人事件があったらしく、その容疑をかけられているのだ。渋々答えるオノフだったが、自分でも不思議に思うほど記憶が曖昧だった。尋問を続ける署長は大量の写真をオノフの前に広げる。次第に記憶を取り戻すオノフは、やがて思い出した真実を受け入れるのだった。監督を務めるのは、「ニュー・シネマ・パラダイス(1989年)」等で知られるジュゼッペ・トルナトーレ。
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ 出演者:ジェラール・ドパルデュー(オノフ)、ロマン・ポランスキー(警察署長)、セルジオ・ルビーニ(アンドレ)、タノ・チマローサ(下働きの老人)、ニコラ・ディ・ピントほか
映画「記憶の扉」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「記憶の扉」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
記憶の扉の予告編 動画
映画「記憶の扉」解説
この解説記事には映画「記憶の扉」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
記憶の扉のネタバレあらすじ:謎の警察署
舞台は北イタリア、トスカーナ地方。静かな森に一発の銃声が鳴り響きます。1人の男が雷雨の中を必死に走っていました。身分証すら持っていないその男を、居合わせた警官達は不審に思い警察署へ連行します。
警察署は至る所が雨漏りをしている、底冷えする古い建物でした。男は寒さに震えながら電話をかけたいと頼みますが、相手にして貰えません。腹を立てて暴れ出すも数人がかりで取り押さえられてしまいました。
しばらくして、ようやく署長が到着します。レオナルド・ダ・ヴィンチと名乗った署長に促され、男も渋々オノフと名乗りました。しかし署長達は信じません。「オノフ」は高名な作家であり、小説の他伝記や作詞も手がける文学者でした。オノフが自分の小説を諳んじてみせるとようやく信じたようで、特にオノフの大ファンだという署長は急に待遇を変えます。
オノフは執筆に集中するため、山荘に数日滞在していました。オノフが拘留される理由を聞くと、形式的な質問をするだけだと答える署長。今日は何をしていたかと問われ、オノフは記憶を掘り起こしてみました。しかし記憶の断片が脳裏をよぎるばかりで、詳しいことを思い出せません。
曖昧に答えた上に覚えていないと話すオノフに、署長は記憶が戻らない限り外には出られないと怒鳴りました。弁護士なしでは話さないとオノフが抵抗すると、雷雨はいつも電話線が切れるので無理だと言われてしまいます。
記憶の扉のネタバレあらすじ:執拗な尋問
オノフは署長の執拗な尋問の理由を問い質しました。なんでも今夜山荘近くで殺人事件があったらしく、オノフは容疑をかけられているのです。もう一度今日のことを聞かれたオノフは答え始めますが、先ほどと矛盾する返答ばかりで、しかも本人は気付いていません。何故山荘にやって来たのか、誰と一緒だったのか、何をしたのか。思い出せないオノフは混乱するばかりです。
停電になったのをチャンスに取調室から逃走するも、トラバサミに足を挟まれすぐに連れ戻されてしまいました。そしてまた名前から確認される尋問が始まります。「よくある記憶の欠落で私を不利にはできんぞ」と睨むオノフに、署長は不快な経験を忘れているようだと呟きました。
署長はオノフの伝記を読んで、彼の父親が軍人であること、オノフ自身も元将校だったことを持ち出します。するとオノフは急に笑い出しました。畑の隅の溝で生まれ、孤児院で育った少年ブレーズ・フェヴリエ。これがオノフの正体です。
オノフは出生に関して、嘘をでっち上げていたのでした。そして「オノフ」の名は友人で浮浪者の老人フォーバンが与えてくれたものだと懐かしそうに語ります。
記憶の扉のネタバレあらすじ:大量の写真達
人を殺して忘れる。そんなことが可能なのだろうかとオノフは考えます。署長は山荘から持ってきたという写真をオノフに差し出しました。高校の時の数学の先生。20年前にオノフが愛し、捨ててしまった女。オノフは昨夜もこの写真を探していたとはっきりと思い出します。
写真はオノフの趣味で、いつもカメラを持ち歩いていました。そして引退と同時にカメラも辞めようと決めると、写真がなくなってしまったのです。友人、敵、愛した人や愛したくなかった人達。署長は机の上いっぱいに大量の写真を広げます。写真を手に取るオノフは自然と笑顔になっていきました。
そしてフォーバンの写真を見つけます。彼は一切自分の過去を語らず、カレンダーの裏や捨てられたノートにとめどもない言葉を意味もなく書いていました。ある日彼の死を知ったオノフはショックを受け、スランプに陥ります。
記憶の扉のネタバレあらすじ:苦悩の果ての真実
フォーバンが遺した手紙や言葉の紡ぎを読み返したオノフは、これがひとつの作品であることに気付きました。素晴らしいその物語を、オノフは自分の名前で発表してしまったのです。オノフはすぐに後悔しました。もう自分には、フォーバンの作品を超えるものは書けないと分かってしまったからです。以降6年もの間オノフは新作を発表しませんでした。しかし編集者は書くことを強制します。
汗を滲ませ苦しむオノフに、署長は銃を取り出しました。それを見たオノフは、自分が探していたのは写真ではなく銃だったと思い出します。山荘へは知人女性ポールと一緒にやってきました。オノフは独りでいることを望みましたが、彼女は編集者達と組んで連れ帰ろうとしたそうです。
夜に会う約束をして、オノフはやっと独りになりました。そして日が落ちてから外に出たオノフは、銃を自分の額に押し当てて発砲したのです。オノフはようやく思い出しました。自分が自殺したことを。
記憶の扉の結末:旅立ち
オノフが取調室から出ると、数時間前の自分と同じように、ずぶ濡れで震える男が拘留されていました。誰もがここに来た時は何も知らないのだと、下働きの老人が呟きます。
オノフが外へ出ると雨はもう上がっていました。促されてゆっくり車に乗ったオノフは、見送りに来た署長に写真を持って行きたいと頼みます。書斎の机にしまっていた書きかけの小説について尋ねると、署長は拾い読みをしたと話しました。
「あなたの作品の最高傑作です」と賞賛する署長に礼を言い、握手を交わしたオノフは写真を受け取ります。やがて車が走り出しました。遠くなっていく警察署をオノフが見つめ続け、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「記憶の扉」のあらすじと結末でした。
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