ヴィクトリア女王 最期の秘密の紹介:2017年イギリス,アメリカ映画。長年にわたって堅固な国政を維持し、その名を世界に轟かせたヴィクトリア女王。在位50周年の式典にあらわれたインドの青年に惹かれます。その後、彼の美貌と博識とが、女王を、幾十年も昔に仕舞われた「恋するヴィクトリア」に戻してしまいます。衰えきっていた顔に表情が宿り、目には光が、身体にはバネ仕掛けのしなやかさが戻ってきます。「女王の老いらくの恋」と噂され、英国王室のみならず英国政界を巻き込む大騒ぎとなりました。
監督:スティーブン・フリアーズ 出演者:ジュディ・デンチ(ヴィクトリア女王)、アリ・ファザル(アブドゥル・カリム)、ティム・ピゴット=スミス(ヘンリー・ポンソンビー)、エディー・イザード(ウェールズ公エドワード/バーティー)、アディール・アクタル(モハメド)、マイケル・ガンボン(ソールズベリー首相 )、ポール・ヒギンズ(ジェームズ・ライド)、オリヴィア・ウィリアムズ(ジェーン・スペンサー)ほか
映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ヴィクトリア女王 最期の秘密の予告編 動画
映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」解説
この解説記事には映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ヴィクトリア女王 最期の秘密のネタバレあらすじ:起
インドの下層階級に育った青年、アブドゥル・カリム(アリ・ファザル)がイギリス王室の招きを受けたのは1887年のことでした。インドは当時、大英帝国の支配下に置かれていた国です。多くのインド人がそうであるように、アブドゥルもまた貧しさの中で暮らす青年でした。にもかかわらず、彼は渡英の栄誉を受けることになりました。彼の西洋人並みの長身、そして博識が、周囲の評価を得るにいたったからでした。
その年は、ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)即位50年の記念の年でした。首都ロンドンにあるウィンザー城では、いままさに女王陛下を囲んだ昼餐会が催されています。並みいる紳士淑女のなかでも女王の健啖ぶりが目を惹きます。81歳になった女王は、無駄口をいっさい利くことなく、食事に集中しています。いきおいデザートが運ばれてくる頃には寝入ってしまいましたが、目の前に置かれたデザートを見ると、またも目を輝かせて頬張ります。
アブドゥルは会場の外に控えています。会食が済むのを彼はいまかと待っています。在位50年の記念硬貨を女王陛下の席まで捧げ持ち、しずしずと戻ってくるのが式進行上の彼の役割です。いよいよ女王陛下への謁見です。「絶対に陛下の顔を拝んではいけない」ときつく言い渡されています。しかし彼は女王の顔に目を止めます。女王も気づいて、距離を置いた位置から目を細めます。アブドゥルも相好を崩しました。
「あれほど言っておいたのに」と、侍従の大きな叱責にもかかわらず彼は大満足です。翌日は、すぐに帰国の途へ就かなければなりませんでした。しかし荷物を積みこんでいたアブドゥルのもとへ王室からの使いがやって来ます。女王陛下がお呼びであると、秘書からの伝令です。彼はバッキンガム宮殿へ向かいます。女王に再開することになりました。アブドゥルはその日、女王付きの下僕となりました。
ヴィクトリア女王 最期の秘密のネタバレあらすじ:承
女王には、国政の長として多くの仕事が控えています。秘書の案内に従って分刻みの面会や面談、執務をこなしますが、高齢になった女王にとっていかに負担であるか、傍らで見ているアブドゥルには染み入るように伝わってきます。つい「お手伝いします」と執務中の女王の仕事に手を出してしまいました。女王は下僕の彼に文字が書けると知って驚きます。人間アブドゥルに対して女王の興味が湧いてきます。
アブドゥルは、おしゃべりをやめません。自分は文章も書ける、絨毯の目利きでもあると言って、執務室に敷かれた豪華なペルシャ絨毯を指さします。その歴史からはじまり、多くの糸と人の手によって織られる製品の妙を語ります。それは「人生の出会いに似ている」と言います。女王は感心するばかりです。この青年ほど、素直に自分に語りかけ、思うことを口にする人間に、近頃は出会ったことがありませんでした。
女王は、権謀術数の渦巻く役人たちのなかで仕事をしています。王位継承者の皇太子エドワードを含め、王室関係者のなかには多くの思惑を持つ者たちがいます。その多くが女王の長い在任期間中に力を得てきた者たちです。保守的であり、権威主義的であり、保身的です。そのために、女王に忠実であることを装いながら、一方では女王の振る舞いに批判的な一面も併せ持っています。
高齢の女王に仕える若いインド人のアブドゥルが、彼らには懐疑的です。長年にわたり仕えた自分たちが蔑ろにされているような、家臣の誇りを傷つけられたような、辛い思いを味わっています。しかし女王は彼らの思いを気にとめません。側近たちと過ごす退屈な毎日に飽き飽きしていた女王は、いま生きる喜びを味わっています。その象徴たるアブドゥルを、女王は「先生」と呼び敬います。
ヴィクトリア女王 最期の秘密のネタバレあらすじ:転
先生はイスラム社会では「ムンシ」と呼ばれます。「心の師」を意味する、精神的な支えとなる存在です。アブドゥルは、女王にウルドゥー語を教えコーランを説きます。アブドゥルは敬虔なイスラム教徒にふさわしくコーラン114章すべてを暗記しています。そのなかから女王の心境にふさわしい言葉を選び人生の理を説いていきます。波乱万丈の人生を積み重ねてきた女王は、その教えに深い感慨を覚えます。
夫のアルバートを亡くし、かつて寵愛したジョン・ブラウンにも先立たれたヴィクトリアは、心の支えになる人物を欲していました。アブドゥルの幅広い知識と豊かな心は、ヴィクトリアの乾ききった心に温かな湯を注いでゆきました。彼女の相貌に生気が戻り、目が輝きます。声には抑揚が生まれ、杖をついてしなだれていた身体が、いつの間にはバネ仕掛けでもあるかのように動き回っています。
ヴィクトリアは、アブドゥルを引き連れて頻繁に旅をするようになりました。侍従や女官、息子のエドワードは宮殿に置き去りです。湖を抱えた別荘へ、壮麗な美を誇るイタリアへ。旅を経たのち、「すでに死に体」と囁かれていたヴィクトリアは、もうそこにはいません。ヴィクトリアは、少女のように純真で好奇心に満ちた十代の乙女に戻っています。謡曲を歌い、華麗なステップを披露します。
政務に戻った女王の傍らにインド人が秘書のような顔をして付き従っています。側近たちにとって、こんなおもしろくないことはありません。さらに自信を得たアブドゥルは、厚顔な(誇りある)態度を示すようになり、側近たちにとっては嫌悪の対象です。とくに宮殿の一部にインド風の装飾を施し、「王の間」としたヴィクトリアの暴挙に対しては、首相ソールズベリー(マイケル・ガンボン)も、看過できないと抵抗の意を示すまでになりました。
ヴィクトリア女王 最期の秘密の結末
英国政界、英王室が大英帝国の名にかけてアブドゥルを排除しようと画策してきます。対する女王も、アブドゥルにナイトの称号を授与すると言って権威を見せつけます。王宮職員総辞職の動きがあるなか、女王は職員全員を「王の間」へ集めます。辞職を希望する者は一歩前へ出ろと、厳しく全員を見渡します。そこには秘書のポンソンビー(ティム・ピゴット=スミス)、医師のジョン・ライド(ポール・ヒギンズ)もいます。しかし、これ以上の抵抗は無意味だと誰もが知っています。
ナイトの称号授与は、その後女王自らが「行き過ぎた判断」だと悟って撤回しましたが、大きな権力を持つエドワード皇太子とソールズベリー首相は腹の虫がおさまりません。なかでも、アブドゥルを女王の傍らから引き離したいエドワードは、アブドゥルが卑賤の身であることを理由に詐欺師だと進言しますが、立身出世の大欲はあなたたちもおなじことではないかと言って女王は聞き入れません。
やがて皇太子と女王との間で、ものの見方を巡って大きな確執を生みますが、老齢の女王に感情的な諍いは体力的な消耗となって返ってきました。自らの行動を自重するかのように女王はベッドに伏す日を迎えます。そして死が目の前に近づいてきます。女王は、ムンシであるアブドゥルを呼び寄せます。臣下の者たちを退がらせたあと、人間ヴィクトリアに戻った女王がムンシひとりに告げます。「死を受け入れられない」と。
ムンシが柔らかに答えます。「一滴のしずくよ、安んじて身を任せれば大海に行き着く、我を捨てれば、大いなる海で安らぎを得よう」とペルシャの詩人ルーミーの詩を朗読します。女王の顔が感謝の思いでいっぱいです。女王は大海へ旅立つ決意をし、思いはすでに一滴のしずくとなっています。女王崩御ののち、アブドゥルはイギリスを石持て追われます。女王最期の秘密は、2010年になり、アブドゥルの日記によって明らかになりました。
以上、映画「ヴィクトリア女王 最期の秘密」のあらすじと結末でした。
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