愛情萬歳の紹介:1994年台湾映画。ヴェネチア映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した人間ドラマです。台湾・台北の高級マンションの一室を舞台に、それぞれ孤独を抱えた3人の男女が織りなす人間模様を冷徹なカメラワークで描きます。
監督:ツァイ・ミンリャン 出演者:ヤン・クイメイ(メイ)、リー・カンション(シャオカン)、チェン・チャオロン(アーロン)、ルー・イーチン(コーヒーショップのオーナー)ほか
映画「愛情萬歳」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「愛情萬歳」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「愛情萬歳」解説
この解説記事には映画「愛情萬歳」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
愛情萬歳のネタバレあらすじ:起
台湾・台北。ロッカー式共同納骨堂のセールスマンをしているシャオカン(リー・カンション)は、とある高級マンションに届け物をした時、偶然にも同じフロアの部屋に鍵がささったままのドアを見つけました。帰り際、シャオカンは素早くその鍵を抜き取ると、エレベーターに乗って逃げ帰ってしまいました。その夜、再びこのマンションを訪れたシャオカンは、人気がないことを確認したうえで先程抜き取った鍵を使ってこの部屋に忍び込みました。部屋にはマットレスだけが敷かれたベッドがあり、シャオカンは何を思ったかナイフを取り出して左手首を切りつけ、自殺を図ろうとしましたが、中々踏み切れませんでした。そこへ、この部屋を担当する不動産の女性販売員のメイ(ヤン・クイメイ)と道端で洋服を売って生計を立てている露天商のアーロン(チェン・チャオロン)がやってきました。シャオカンは隣の部屋に隠れて二人の様子を覗き見していました。
愛情萬歳のネタバレあらすじ:承
この部屋はメイの仲介物件の一つであり、アーロンは夜の街のカフェでコーヒーを飲んでいたところ、隣のテーブルに座っていたメイから成り行きで誘われたのです。シャオカンは手首から流れる血を抑えながら覗き込んでいると、メイとアーロンはおもむろに服を脱ぎ始め、やがて愛情のない無味乾燥なセックスに興じていました。
シャオカンは元々人見知りが激しく、会社でも同僚たちと打ち解けず孤立しがちでした。仕事といっても納骨堂のパンフレットをあちこちのマンションのポストにただひたすらに投函するだけの単調な作業であり、シャオカンはすっかり嫌気がさしていたのです。そんなシャオカンはこの部屋の存在を知ってからは、いつしか部屋に忍び込んではジャグジー風呂を浴びたり、女性ものの服を着て女装してみたりと、なんだか奇妙ながらも安らいだひと時を過ごすようになっていきました。
愛情萬歳のネタバレあらすじ:転
メイもまた不景気で物件が思うように売れず、毎日街中にマンション売り出しの看板を設置するだけの日々に心身ともに疲れ切っていました。メイは疲れた体を癒すように度々この部屋を訪れていました。アーロンもこの部屋の鍵を密かに盗んで合鍵を作り、度々この部屋に入り浸るようになっていました。
そんなある日、シャオカンとアーロンは偶然にもこの部屋で鉢合わせをしてしまいます。最初は互いに警戒しあっていたシャオカンとアーロンでしたが、メイが部屋にやってきたことからそっと抜け出し、それからというもの一緒にドライブに出かけたり、納骨堂を見学してみたり、鍋をつついたりするようになり、シャオカンとアーロンは奇妙な友情を深めていきました。
愛情萬歳の結末
アーロンはメイに電話をかけましたが、彼女は受話器の向こうの相手が誰なのか分からず互いにちぐはぐしていました。そんなある夜、メイの存在に気づいたアーロンはシャオカンを部屋に残してその後を追いました。置いてけぼりにされたシャオカンは仕方なく一人ベッドの上で自慰行為をしていると、アーロンがメイを連れて戻って来ました。慌ててベッドの下に隠れたシャオカンは、二人が激しく愛し合う音とベッドの軋む音を聞いていました。翌朝、実は同性愛者であるシャオカンはアーロンが寝ている間についキスをしてしまい、まだ眠ったままの二人に気付かれないようにこっそりと部屋を後にしました。
目覚めたメイは、好きでもない男と退屈しのぎに二度もセックスしてしまったことに嫌悪と絶望を感じていました。マンションから出たメイはまるで居場所を失ったかのように街をさまよい歩き、やがて造成中の公園へと足を踏み入れ、そこにあるベンチに腰掛けて煙草に火をつけましたが、しばらくしているうちに感情があふれ出してしまい、いつまでもベンチで嗚咽を続けていました。
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