学生ロマンス 若き日の紹介:1929年日本映画。小津作品の中では現存する最も古いプリントだといわれています。小津安二郎は当時26歳。誰もが経験した若き日のあの時。古いアルバムをめくるように思い起こすあの時代。小津監督が大学生の日常をスナップやビデオムービーのように綴っていきます。後年の帝釈天の御前様、笠智衆の大学生姿も見どころです。
監督: 小津安二郎 出演者:結城一朗(学生渡辺)、斎藤達雄(学生山本) 、松井潤子(千恵子)、飯田蝶子(千恵子の叔母)、高松榮子(下宿の内儀)、坂本武(教授)、日守新一(スキー部主将畑本)、笠智衆(スキー部学生)ほか
映画「学生ロマンス 若き日」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「学生ロマンス 若き日」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
学生ロマンス 若き日の予告編 動画
映画「学生ロマンス 若き日」解説
この解説記事には映画「学生ロマンス 若き日」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
学生ロマンス 若き日のネタバレあらすじ:起
時代は昭和初期。場所は、都の西北にある大学キャンパスにほど近い2階建ての下宿屋です。2階の窓に「二階貸間」の貼紙文字が見えます。貼紙を目にした若い男がその部屋を訪ねて階段を上がってきました。
部屋では部屋着姿の学生がくつろいでいました。訊ねてみると、「僕は今朝越してきたばかりです」と言います。
「えっ?でも窓には貼紙が・・・」
「ああ!はがし忘れていました」と、学生はさっそく窓を開けて貼紙をはがしにかかります。
「なんだ、そうだったんですね」と、訪ねてきた男は去っていきました。じつはこの下宿人(渡辺といいますが)、またおなじ貼紙をこしらえます。
渡辺が窓に貼紙を貼っていると、「あのぉ、そこ貸間ですか?」と、下の道端から見上げる年増女がいます。
「いや、貸間なんかではありません」と、渡辺は素っ気なく貼紙を隠してしまいました。
年増女が怪訝な面持ちで去ると、今度は若い娘さんが渡辺の部屋を内見に訪れてきました。
「あのぉ、窓の貼紙を見て・・・」と、娘さんが訊ねます。
「どうぞ、どうぞ」と渡辺は、わが意を得たりと目を細めています。
「この部屋、閑静で見晴らしがいいですよ」と、渡辺はずいぶん気の利いたことを言います。「えっ?もう決めましたか?明日からですか?」渡辺はご機嫌です。「いいですよ、ぼくは今晩中に引っ越します、ではまた明日」と、この下宿人、可愛い娘さんと口を利くことができてすっかり満足です。
翌日、娘さんが越してきても、渡辺はまだゴロゴロと部屋に居座っています。
「あのぉ・・・、ゆうべ出ていって下さるはずだったのでは・・・」
「あっ、引越しは今日でしたね、いや、忘れていました」
「あたしの荷物運んでもいいですか?」
「どうぞ、どうぞ、かまいません」と渡辺は、引越すつもりがないのか調子よく居座ります。娘さんの気を惹きたい渡辺は、あの手この手で居座ります。娘さんも無下には扱えず困ってしまいます。とうとう階下から大家さんが現れて「渡辺さん、アンタいつまで引越し屋さんを待たせておくつもり!」と叱られて、やっと渡辺は重い腰を上げました。
学生ロマンス 若き日のネタバレあらすじ:承
さて、大八車を牽く引越し屋さんを連れ歩く渡辺。行くアテはないようです。引越し屋さんも困ってしまいますが、渡辺も困っています。だいたいどうして引越すのか説明がありません。商店街のちょっと気の利いた下宿屋は家賃が高く、不動産屋の店先にも渡辺の手が届く物件は見つかりません。しかたなく、思い立ったのが同級の山本の部屋へ居候することでした。
山本の下宿先を訪ねると、山本は試験勉強の真最中です。「試験まではあと3日しかないのに、おまえフラフラしていていいのか?」と訊ねる山本に対して、「試験までまだ3日ある」と渡辺は呑気に構えています。だから部屋探しなどして歩いていますが、「試験勉強なんかして、試験の時に忘れてしまっては大変だ」と口が達者なのは渡辺の取柄のひとつです。
中間試験が終わると、いまも昔も学生の冬休みがやってきます。ふたりは妙高高原の赤倉へスキーに出かけることになりました。渡辺はスキーのベテランですが、山本は美津濃製のスキーシューズを買い、板も新品です。じつは山本にはマドンナがいて、近所に住む千恵子さんです。千恵子さんはいま赤倉スキー場へ出かけています。千恵子さんとは、渡辺の下宿へ移ってきたあの娘さんです。この奇縁に渡辺も山本も気づいていません。
学生ロマンス 若き日のネタバレあらすじ:転
渡辺と山本の乗る汽車が煙を上げて雪国を走っていきます。駅弁のおかずの取り合いや試験の点数の予想などをしてはしゃいでいるうちに赤倉へ到着します。渡辺と山本は大学のスキー部のメンバーと合流しました。千恵子さんともゲレンデで偶然に会いました。
千恵子さんにいいところを見せたい山本は、スキーの腕が少しだけ上達します。渡辺も千恵子さんとふたり、ゲレンデに並んでおしゃべりできて満足です。さらにふたりは千恵子さんの伯母さんとも仲良くなりました。
千恵子さんはスキー部の主将の畑本と見合いすることになりました。中に入った伯母さんが上手に立ち回ってふたりをいい関係にします。しかし、渡辺と山本はがっかりです。千恵子さんと仲良くなって、これからという時に、畑本に千恵子さんを奪われてしまいました。とくに山本は失恋の痛手が大きく、渡辺を促して早々と赤倉をあとにすることになりました。
学生ロマンス 若き日の結末
帰京する汽車のなかでふたりは大学の担任教授に会いました。教授は汽車に揺られながら中間試験の採点中です。試験勉強をして臨んだ山本の結果は45点、試験勉強をしないで臨んだ渡辺の結果は37点、点数ではどっこいどっこいのふたりに教授が諭します。「スキーもいいけれど勉強もがんばらないと」。
赤倉で疲れたのか、東京へ帰ったふたりはごろごろと昼間から寝そべっています。渡辺は東京へ帰ると、山本の部屋の窓に「二階貸間」の文字を貼り付けます。もう一度、千恵子さんのような可愛いらしい娘さんが訪ねてくるのを待とうという魂胆です。「果報は寝て待て」と、ふたりは失恋の痛手とスキーの疲れを癒すためにまた寝床へ入ることに決めました。ふたりはこれから先、どんな夢をみるのでしょうか。
やがて月日は流れていきました。学生時代には、あんなこと、こんなことがありました。誰にでもあるような、いまは昔のお話でした。
以上、映画「学生ロマンス 若き日」のあらすじと結末でした。
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