2008年イスラエル/フランス/ドイツ/アメリカ合作映画 監督・脚本・製作: アリ・フォルマン 「戦場でワルツを」は、2009年、アカデミー賞外国英語賞を受賞した戦争ドキュメンタリー映画で、イスラム人監督アリ・フォルマンが自ら、イスラエル国防軍歩兵としての戦争体験を題材としている。
映画「戦場でワルツを」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「戦場でワルツを」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
戦場でワルツをの予告編 動画
映画「戦場でワルツを」解説
この解説記事には映画「戦場でワルツを」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
戦争をアニメで描いた異色作品
「戦場でワルツを」は、2009年、アカデミー賞外国英語賞を受賞した戦争ドキュメンタリー映画で、イスラム人監督アリ・フォルマンが自ら、イスラエル国防軍歩兵としての戦争体験を題材としている。本作品が、他の戦争映画作品と大きく異なるのは、ある1部シーンを除き全編アニメで描かれていること。戦争描写がより誇張して描かれ、従来の戦争映画にはない生々しさを感じさせる。
失われた記憶
監督アリ・フォルマンは、兵役時代の旧友に、毎晩26匹の犬に吠え立てられる悪夢にうなされると相談される。相談されるなか、自分の中にも、戦争の中で、何か欠けてしまった記憶があることに気づく。その欠けた記憶を探るべく、かつての仲間であった戦友たちを訪れ話を聞くことにした。次第に、呼び起こされる戦争の記憶の中に、フォルマンは自分が記憶から消していたイメージに辿り着く。それは、1982年レバノンの首都であるベイルート近郊、パレスチナキャンプでおきた悲劇であった。フォルマンが属していたイスラエル軍は、一般人居住区であるパレスチナキャンンプを包囲し、40時間にわたる虐殺を行っていたのだ。戦争の狂気ともいえる虐殺に、自ら加担してしまった事実を記憶から消していたことに、彼は気づいてしまう。ここまで、全編アニメで描かれてきたが、最後に実際のニュース映像が登場する。それは、あの虐殺が行われたパレスチナキャンプの映像だった。
アニメで描かれる戦争描写
人物のシルエットが効果的に使われるなど、よく見かけるアニメとは異なる色調が斬新で面白い。物語が終焉に近づくにつれ、映像はより現実離れし、混沌としていく。特に、虐殺が行われるパレスチナキャンプを取り囲むイスラエル軍の描写は戦争映画には似つかわしくないほどの幻影的な美しさがある。この幻影的な美しさは、後に実際のニュース映像に続く事となり、監督によって意図された美しさであったことがわかる。本来の戦争映画とはまた異なる生々しさがあり、新しいアニメ映画としても楽しめるだろう。
戦争とは
実際に、行われた虐殺は、1800人以上もの一般人がイスラエル軍により、絶え間なく殺戮されるという本当の悪夢であった。監督はこの作品に対し、記憶は常に都合のいいように変化してしまうものであるとコメントしている。監督にとってこの作品は、虐殺の告白であると共に、過去の辛い記憶を変化させずにとどめておくものなのだと思う。それこそが、自分が加担してしまった虐殺への償いなのかもしれない。この映画には、ある若い報道カメラマンが登場する。最初、カメラマンはカメラのレンズ越しに戦場を見ているが、カメラが壊れてしまい、肉眼で見ることにより目の前の戦時状況が心の中に傷として残るというセリフがあるのだが、監督は私たちに、報道カメラのレンズを飛び越えて、現実の痛みとしての戦争に触れる機会を与えてくれたのだろう。
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