野性の証明の紹介:1978年日本映画。森村誠一の小説を角川春樹のプロデュースで映画化したもので、高倉健と今作がデビュー作となる薬師丸ひろ子が主演しています。東北の寒村で起こった大量殺人事件を巡って、生き残りの少女と自衛隊員が壮大な陰謀に巻き込まれていきます。
監督:佐藤純彌 出演者:高倉健(味沢岳史)、薬師丸ひろ子(長井頼子)、夏八木勲(北野刑事)、舘ひろし(大場成明)、三國連太郎(大場一成)ほか
映画「野性の証明」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「野性の証明」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「野性の証明」解説
この解説記事には映画「野性の証明」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
野性の証明のネタバレあらすじ:起
自衛隊に極秘裏に創設された特殊工作隊。味沢岳史(高倉健)はその中でも非常に優秀な隊員でした。ある時、東北の山中で単独踏破訓練中だった味沢は、極限の疲労で行き倒れになったところを、偶然通りがかった越智美佐子(中野良子)という女性に発見されます。美佐子は助けを求めに近くの村に降りていきました。その直後、村で大量殺人事件が発生、美佐子を含む12人が殺害されてしまいます。唯一生き残ったのは長井頼子(薬師丸ひろ子)という13歳の少女だけでした。頼子は事件のショックから記憶を失い、ただ「青い服を着た男」と証言するのみでした。
野性の証明のネタバレあらすじ:承
事件から1年後、自衛隊を退職した味沢は頼子を養子に迎え、福島県羽代市で保険の外交員の仕事を得て暮らしていました。ただし、国家機密である特殊部隊の存在は知られてはならないため、味沢には常に特殊部隊隊員の渡会(原田大二郎)が監視にあたっていました。ある日、乗用車がダムに転落し、車内から羽代新報の記者の遺体が発見されました。警察は飲酒運転による事故と発表しましたが、亡くなった記者の同僚で、1年前の大量殺人事件の犠牲者の美佐子の妹・朋子(中野良子・二役)は記者がこの街の全てを牛耳る実業家の大場一成(三國連太郎)の不正を追っていたことから、口封じに殺害されたのだと確信していました。
野性の証明のネタバレあらすじ:転
その一方、1年前の事件を捜査していた北野刑事(夏八木勲)は、味沢の周囲を嗅ぎ回っていました。事件の犯人は風土病で錯乱した頼子の父による犯行とされていましたが、その頼子の父を殺害したのは何者か捜査していたのです。そして頼子を養子としていた味沢を密かにマークしていたのです。一方、記者の事件を追っていた朋子は、大場の息子・成明(舘ひろし)が率いる暴走族に襲撃されます。朋子の危機を救ったのは味沢でした。味沢は美佐子と瓜二つの朋子に惹かれていきます。しかし、その頃から頼子は不思議な予知能力を身につけていました。頼子を医師に診せた味沢は、頼子の心の奥底に自分への憎しみがあると知らされ、いずれ頼子に真実を話す時が近いことを悟ります。
野性の証明の結末
味沢は頼子を1年前の事件現場に連れて行き、頼子に真実を語り始めます。1年前、頼子の父が殺戮を始め、頼子までをも殺そうとしていた時、咄嗟に味沢が頼子の父を殺害したのです。ある日、予知能力を発揮した頼子は「姉ちゃんが殺される!」と朋子の危機を察知します。味沢は急いで朋子の部屋に駆け付けますが、そこにあったのは暴行を受けて殺害された朋子の変わり果てた姿でした。味沢は頼子を連れて街を出ようとしますが、そこに成明率いる暴走族が襲い掛かります。味沢は単独で暴走族を倒していき、最後は成明を殺害します。その手口が頼子の父の時と同じだったことから、遂に頼子は全ての記憶を取り戻し「お父さんを殺したのはこの人!」と叫び、味沢を激しく憎みました。その直後、北野刑事が現場に駆け付け、味沢に手錠をかけます。北野が味沢を護送しようとしたその時、味沢の監視を続けていた渡会が立ちはだかります。既に自衛隊の上層部から味沢の抹殺指令が出ていたのです。自衛隊は演習に見せかけて特殊部隊の戦車やヘリコプターを投入、三人を始末にかかります。北野は車で戦車に突入して自爆、頼子も銃撃され味沢の腕の中で息絶えます。味沢は頼子の亡骸を背負いながら、小銃を手に戦車部隊に突入していきました。
「野性の証明」感想・レビュー
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丁度、当時の薬師丸ひろ子と同年代だった若かりし頃にこの映画を見ました。薬師丸ひろ子側に立って、各場面とても共感したのを覚えています。
ラストシーンの頼子がトンネルから出てきて「おとうさーん!おとうさーん!」と健さんを追いかけていき撃たれてしまった場面、何とも言えない気持ちになりました。35年以上経っても薬師丸ひろ子のあのせつない呼び声が忘れられません。この映画をみる度に父への愛情を思い出す、そんな素晴らしい映画でした。 -
ラスト近くのトンネル内で、それまで頼子と呼んでいた健さんが、頼子ちゃんと声をかける、この映画の1番の見処です。
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ヤクザとの争い決着あたりまでが、リアリティがあって観れました。
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「野性の証明」は、角川春樹事務所の「犬神家の一族」「人間の証明」に続く第三作目の映画で、原作は森村誠一、監督は佐藤純彌で「人間の証明」と同じコンビで、原作は当時150万部の大ベストセラー。
原作者の森村誠一は、原作のあとがきで「この作品では現代における野性というものをテーマとしたが、同時に犯人に工夫を凝らした。私としては本格推理小説を書いたつもりである。真犯人は最初の数ページの間に登場する。読者がこれが真犯人と思った者は真犯人ではない。終章で真犯人を明らかにする」として、部分犯人という考え方と関連する別件を並行ではなく、垂直的に構成し、A事件の犯人(?)が、B事件の探偵になるという工夫が凝らされています。
このA事件である岩手県風道部落での13人の大量殺人と、B事件である東北羽代市での地方のボスとの対決では、一丁の斧が野性の凶器になっています。
この原作の小説には、推理をするヒントがないので、発刊時にはアンフェアだと言われたそうですが、冒頭に出て来るキャベツ畑の軟腐病がわずかな手掛かりであり、ラストで主人公の味沢の脳腫瘍から検出された病菌と結びついていますが、味沢の発狂によって彼の野性の核心は隠されたままとなりました。
森村誠一は、原作の終章で自衛隊特殊工作員として「平和な世の中で飼育された殺人鬼、人間の誰もがもっている野性を組織的に訓練され、助長され、しかもかつ絶対の歯止めをかけられた者の悲劇、それを味沢は身をもって証明したのではあるまいか」と書いていますが、この原作の小説は、本格推理小説としてもかなり無理がありますが、社会派推理小説としても不徹底であり、自衛隊特殊工作隊(こういう部隊が実在するかどうか知りませんが)の扱いが非常に安易すぎる気がします。
“映画は原作をこえられるか”というのが、この映画の当時のキャッチ・フレーズですが、むしろ原作と映画は完全に別物になったような気がします。
この映画は、推理的な謎解きの興味は途中で捨てられ、荒唐無稽でかなり無理のある筋書きだけが残って、最後のアクションが中心になっています。そのラストを、正気だが狂気の味沢(高倉健)が被害者の子である頼子(薬師丸ひろ子)を背負って突進する自衛隊戦車群相手のスペクタクル・シーンに拡大したため、アメリカ・ロケが妙に浮いた、現実感のないものになってしまったのだと思います。
総製作費12億円のうち戦闘シーンに5億円という、当時の邦画界空前の巨費を投入しながら、その自衛隊を”野性の証明”とどう関係づけようとしているのか、映画では原作以上にその点が判然としません。
佐藤純彌監督は「優秀な軍隊や警察は、決してその飼い主に歯を向けることはない。飼われること、管理されることを拒絶することから野性への出発が始まる」と語っていますが、これだけでは”野生の証明”にはなり得ません。
そして、もう一つのキャッチ・フレーズの”ネバー・ギブ・アップ”も、その目標が今一つ定かではありません。
更に”男はタフでなければ生きられない。優しくなければ生きている資格がない”というキャッチ・フレーズも、この映画に即しているとは言えません。製作者の角川春樹は「ゴッドファーザー」と「七人の侍」が一番好きな映画であり、それは貧しさからの脱出が暴力の引き金になっており、その最期は悲劇的であるとして、「男の内に潜む、暴力を否定し得ない野性を描きたかった。究極のところ人生は戦いなのだ」とこの映画の製作意図を語っていましたが、動物的な野性を呼び起こす人間的な憤怒の社会的な契機は何なのか、この映画はそれを的確に証明する事が出来なかったのが惜しまれます。
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イスラム教創始のムハンマド
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角川書店が映画で頑張っていた頃の名作です。高倉健と薬師丸ひろ子が大量殺人に巻き込まれ、そこから国家規模の陰謀にまで発展します。話としては荒唐無稽なところもありますが、原作が森村誠一だけにリアリティがあるようにうまく作られていて、最後まで飽きさせない内容です。
若き日の薬師丸さんがとにかく健気でかわいい。ラストシーンは涙なしには見られません。