誘拐報道の紹介:1982年日本映画。1980年1月に発生した「宝塚市学童誘拐事件」、ならびに同事件を取り上げたドキュメンタリー「誘拐報道」を原作として映画化した社会派サスペンス作品です。
監督:伊藤俊也 出演者:萩原健一(古屋数男)、小柳ルミ子(古屋芳江 )、高橋かおり(古屋香織)、岡本富士太(三田村昇)、秋吉久美子(三田村緋沙子)、和田求由(三田村英之)、宅麻伸(滝耕太郎)、藤谷美和子(津島友子)、高沢順子(ヒロミ)、池波志乃(庄司のぶ代)、中尾彬(森安泰明)、三谷昇(借金取り)、伊東四朗(遠藤警部)、平幹二朗(剣持県警捜査第一課長)、賀原夏子(数男の母)、湯原昌幸(久保信次)、松尾嘉代(ハルエ)、亜湖(ホステス)、三波伸介(大西支局長)、丹波哲郎(土門社会部長)、大和田伸也(渡辺キャップ)、小倉一郎(字野記者)、宮内洋(A社キャップ)、なべおさみ(宝塚直配所々長)、橋爪功(耕太郎の同僚)、藤巻潤(服部刑事企画課長)、菅原文太(光宗パイロット)、渥美国泰(警察広報)ほか
映画「誘拐報道」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「誘拐報道」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「誘拐報道」解説
この解説記事には映画「誘拐報道」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
誘拐報道のネタバレあらすじ:起
1980年1月。兵庫県宝塚市で小学1年生の三田村英之(和田求由)が何者かに誘拐されるという事件が発生しました。英之は豊中市の私立若葉学園小学校に通っており、下校途中での出来事でした。
その日の午後5時。英之の父で小児科医の昇(岡本富士太)の自宅に犯人から電話がかかってきました。昇の妻・緋沙子(秋吉久美子)が応対すると犯人は身代金3千万円を要求してきました。犯人は警察に通報したら英之を殺すと脅しましたが、三田村夫妻はすぐさま警察に通報しました。
兵庫県警はただちに捜査本部を設け、各報道機関に対しては事件解決までの間、一切の取材活動と報道を自粛する報道協定を締結しました。しかしその一方で、読売新聞神戸支社は報道協定の解除に備えて極秘裏に取材を進めることにしました。
一方、三田村家には犯人から2度目の電話があり、緋沙子は一人で宝塚新大橋を渡った先の建設現場まで来るよう命じられました。緋沙子が指定場所に向かうと、そこには英之のランドセルと靴がありました。数時間後、また電話をかけてきた犯人は「警察に知らせたらどうなるかわかったやろ。今度は子供の死体と会うことになるぞ」と脅してきました。
捜査本部の陣頭指揮を執る剣持県警捜査第一課長(平幹二朗)は犯人からの電話の音声を分析し、犯人には明らかな関西訛りがあること、そして犯人は宝塚から半径40キロほどの範囲を車で移動していると推測しました。剣持はただちに周辺道路での検問の徹底を命じました。
誘拐報道のネタバレあらすじ:承
英之を誘拐した犯人は古屋数男(萩原健一)という男でした。古屋は車に英之を乗せ、雪が積もっている故郷の丹後方面へと走っていました。古屋は海沿いの公衆電話から三田村家に電話をかけ、再三3千万円を用意するよう緋沙子に要求しました。緋沙子はせめて英之の声だけでも聞かせてほしいと頼みましたが、古屋は「声を聞くより無事な顔を拝んだほうがいいだろう」と一蹴しました。
電話を切った古屋は断崖絶壁から寝袋に入れた英之を日本海に投げ捨てようとしましたが、崖下付近には地元の海女がいたため断念することにしました。その後、母(賀原夏子)の住む実家へと向かうことにした古屋は、途中の道でトラックが雪の影響で立ち往生していた高校時代の友人・久保信次(湯原昌幸)と偶然にも遭遇、久保を仕方なく車に乗せる羽目になりました。
古屋は久保から、古屋のかつての愛人だった庄司のぶ代(池波志乃)が地元に戻っており、信用金庫で働いていると伝えられました。その後、実家に着いた古屋は母から歓迎を受け、朝食をご馳走になりました。
古屋の妻・芳江(小柳ルミ子)は娘・香織(高橋かおり)を学校まで送り届け、アルバイト先の造花工場へ入りました。実は古屋は悪徳高利貸の森安泰明(中尾彬)から200万円ものの借金を抱えており、工場で働く芳江の元にも借金取り(三谷昇)が訪れていました。
古屋はかつて経営していた喫茶店の経営に失敗して借金を抱え、森安に店を明け渡したことで完済したはずでしたが、古屋が自分に内緒で新たな借金を抱え込んでいるのではないかと疑う芳江はたまたま実家にいた古屋に電話をかけました。古屋は森安が自分の名義で勝手に作った借金だとして自身の関与を否定しましたが、それでも芳江の古屋への疑いは晴れませんでした。
芳江は今は森安のものとなった喫茶店に向かい、森安に直接借金のことを問いただしました。森安は借金の件についてはすっとぼけ、甲斐性のない古屋など捨てて自分の愛人になるよう芳江に迫りましたが、芳江は森安を殴り飛ばしました。
誘拐報道のネタバレあらすじ:転
古屋は実家の近所の公衆電話から三田村家に電話をかけ、金の用意はできたのかと催促しました。三田村夫妻はあちこちから3千万円をかき集めており、古屋はいつでも回収できるよう用意しておくよう命じました。
その後、古屋はもう1泊していくよう伝えてきた母に急用ができたと告げ、海辺へと車を走らせました。古屋は海に英之を投げ捨てようとしましたが、たまたま現れたのぶ代に抱きつかれたため断念しました。古屋が車内でのぶ代と情事に耽っている間、英之は車のトランクから逃げ出して近くの廃屋に隠れましたが、すぐに古屋に見つかってしまいました。その際、古屋は母から香織にと預かった金の入った財布を落としてしまいました。
古屋はのぶ代を振り切って車を走らせ、再度英之を殺そうとしましたが、英之がトイレに行きたいと訴えてきたため、仕方なく英之の立ち小便を手伝ってやることにしました。古屋は途中で英之にパンを買い与え、美味しそうにパンを食べる英之を見ているうちに次第に情が移っていきました。
宝塚に戻った古屋は三田村家に電話をかけ、6時に喫茶店「アミーゴ」まで紙袋に入れた3千万円を持ってくるよう命じました。しかし、「アミーゴ」に着いた古屋は、店内に客を装った刑事や新聞記者が待ち構えていることに気付き、「アミーゴ」での取引を断念して我が家に向かいました。
久しぶりに香織と水入らずの時間を過ごした古屋でしたが、芳江から借金の件について説明を求められました。古屋は近々まとまった金が入ると釈明しましたが、古屋を信用できない芳江は泣き崩れてしまいました。その際、古屋は英之が香織の同級生であることを知り、愕然としました。
古屋は森安のところに向かい、腕時計を担保に1万円貸してくれるよう要求しました。その後、古屋は「アミーゴ」に電話をかけ、三田村夫妻に警察が張っているので一旦家に戻って指示を待つよう告げました。
車のトランクを開けた古屋は、英之が寒さと空腹で衰弱していることに気付きました。古屋は慌てて英之の好きなパンを買い与え、家から毛布と暖かいコーヒー入りのポットを持って必死で英之を温めてあげました。その際、夜空を見た英之は星が綺麗だと呟きました。
誘拐報道の結末
古屋は三田村家に電話をかけ、最後のチャンスだとして取引場所に某カーショップを指定しました。三田村夫妻は古屋が英之を返したがっていることに気付き、指定場所には夫妻だけで行くことを約束しました。三田村家を訪れていた県警の遠藤警部(伊東四朗)は刑事たちを帯同させようとしましたが、三田村夫妻の必死の懇願を受け入れ、剣持課長には手出しをしないよう頼みました。
三田村夫妻は二人だけでカーショップに向かいました。しかし、剣持課長は犯人の逮捕を第一に考え、密かに取引場所に刑事を向かわせました。一方、カーショップに着いた古屋は三田村夫妻の姿までは確認しましたが、周囲に刑事らしき人たちがいることを確認し、取引を断念して走り去ってしまいました。昇は刑事がいたことに憤りを露わにしました。
古屋はとうとう車のガソリンも付き、川沿いの道に車を停めました。そこにパトカーが通りかかり、古屋に職務質問を要求してきました。古屋は応じようとしませんでしたが、警官はトランクを開けて英之を発見しました。英之は衰弱してはいたものの生きていました。
三田村夫妻は英之が無事保護されたことを受けて喜び合いました。その頃、芳江はテレビのニュースで古屋が逮捕されたことを知りました。古屋は取り調べに対し、香織の同級生の名簿から医師の息子である英之の存在を知り、医師なら金があるので犯行を思い立ったことを供述しました。
報道協定は解除され、古屋の家には報道陣がやかましく詰め寄りました。芳江は居留守を装って香織と家に身を隠し、古屋は遠いところへ働きに行っているのでしばらく戻ってこれないと香織に伝えました。
真夜中、芳江は寝ていた香織を起こし、丹後の古屋の母の家に身を寄せることを告げました。密かに家を出た芳江と香織の前に読売新聞の若手記者・滝耕太郎(宅麻伸)が現れ、二人の写真を撮りましたが、香織は「うち、お父ちゃん好きや!」と叫びました。滝は芳江と香織の気持ちを考え、二人の写真は上司に提出しないでおくことにしました。
以上、映画「誘拐報道」のあらすじと結末でした。
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