絶唱の紹介:1975年日本映画。大江賢次の同名作品で、1958年・1966年に続いて三度目の映画化となった純愛作品です。大地主の息子と山番の娘の身分違いの悲恋を山口百恵と三浦友和のダブル主演で描きます。キャッチフレーズは「許して下さい 今日までの私を…あなたに捧げた短い命 哀しい運命の山鳩は 遠く遥かな蒼空へ 涙も枯れて飛んでゆく……最高のコンビで綴る美しく哀しい文芸ロマン!」。
監督:西河克己 出演者:山口百恵(小雪)、三浦友和(園田順吉)、辰巳柳太郎(園田惣兵衛)、吉田義夫(源助)、菅井きん(セキ)、大坂志郎(正造)、初井言栄(サト)、花沢徳衛(為吉)、有崎由見子(ハマ)、中村伸郎(橋本)、木内みどり(橋本美保子)、大和田伸也(大谷賢一)、服部妙子(川田マサ)、川口厚(佐野一夫)、武岡淳一(笹本卓治)、大家博(田中敬)、藤江喜幸(吉原準平)、鈴木瑞穂(語り手)ほか
映画「絶唱(1975年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「絶唱(1975年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「絶唱(1975年)」解説
この解説記事には映画「絶唱(1975年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
絶唱のネタバレあらすじ:起
昭和17年、山陰地方の小さな村。地元の大地主・園田家に奉公に出ている若い娘・小雪(山口百恵)が泣きながら懸命に山を下っていました。実家に辿り着いた小雪は、山番をしている父・正造(大坂志郎)と母・サト(初井言栄)に対し、自分のことが原因で園田家の当主・惣兵衛(辰巳柳太郎)と大学生の息子・順吉(三浦友和)が喧嘩してしまったことを伝えました。
惣兵衛は順吉を、街の実業家・橋本(中村伸郎)の娘・美保子(木内みどり)と結婚させようとしていましたが、順吉はかねてから健気な小雪に心を惹かれていました。順吉は乳母のセキ(菅井きん)と差配人の源助(吉田義夫)の説得も聞かずに家を飛び出し、山の中の小さな祠に手を合わせている小雪の元へ向かいました。
順吉は小雪に何を祈っていたのかと尋ねると、小雪は「バチが当りませんように。当たるなら自分だけに当ててくれ」と祈っていたと答えました。順吉は自分は大地主の息子としてではなく、一人の男として小雪と添い遂げたいと宣言しました。
京都の大学に戻った順吉は、木こりの吉原準平(藤江喜幸)や小学校教師の大谷賢一(大和田伸也)らと催している読書会の席で、仲間たちに小雪とのいきさつを打ち明けました。順吉は、日々を一生懸命生きている読書会の仲間たちに比べれは自分は何一つ不自由ない暮らしを送ってきたボンボンにすぎないと後ろめたささえ感じていました。
そんな時、下宿先に帰宅した順吉の元に美保子が上がり込んできました。美保子は惣兵衛から順吉の身の回りの世話を託されていましたが、順吉はそんな美保子を拒絶しました。しかし、そんな順吉たちにもひしひしと戦争の足音が近づきつつありました。
絶唱のネタバレあらすじ:承
その頃、惣兵衛らは順吉と小雪を引き離そうと、源助の仲介で小雪をここから遠く離れた津山の親戚に預けてしまおうと目論んでいました。小雪はせめて順吉に別れの手紙を書かせてほしいと懇願しますが聞き入れられず、そのまま津山に出発させられそうになりました。
一方、帰省した順吉は必死に小雪を探し出し、家出してきたと小雪に告げるとそのまま駆け落ちしました。
宍道湖のほとりの街に逃れた順吉と小雪は、小さな経師屋「大雅堂」の2階で暮し始めました。順吉は肥汲み作業や材木運びなどの仕事で生活費を稼ぎ、読書会の仲間たちも土産を手に二人を支援していました。
その頃、小雪の実家は惣兵衛の逆鱗に触れることを恐れた村人たちから村八分状態にされ、肩身の狭い暮らしを強いられていました。
そんなある日、読書会の仲間である笹本卓治(武岡淳一)と田中敬(大家博)にも召集令状が届き、そして遂に順吉の元にも召集令状が届いてしまいました。このことを知った大谷は惣兵衛の元を訪れ、せめて順吉を立派に送り出してほしいと呼びかけましたが、惣兵衛はあくまでも順吉が小雪と別れない限りは和解しないと強気の姿勢を崩しませんでした。大谷は惣兵衛のことを古い因習に縛られた哀れな人だと思いました。
仲間たちが催してくれた壮行会で、小雪は順吉から木挽き歌を歌ってくれるよう頼まれ、恥ずかしそうに歌ってみせました。順吉は小雪に「心に翼を持つんだ」と言い残して出征していきました。
絶唱のネタバレあらすじ:転
戦地に入った順吉はそれからというもの、毎日午後3時に決まって小雪と約束した木挽き歌を歌っていました。順吉に代わって働くようになった小雪もまた、同じ午後3時に順吉を想いながら木挽き歌を歌い続けました。
しかし、戦局は悪化の一途をたどり、笹本と田中は戦死し、遂には大谷の元にも召集令状が届きました。いつしか順吉からの手紙も途絶えがちになり、気丈に順吉の帰りを待ち続けていた小雪でしたが、彼女の身体は既に結核に侵されていました。
更に追い打ちをかけるように、小雪は吉原から、順吉から自分の元に手紙が来たこと、その中身は戦争が終わったら惣兵衛に詫びて彼の望む通りの嫁をもらうことにしたと書かれていたと知らせてきました。実はこの手紙の話は吉原が惣兵衛に脅されて仕方なくついた嘘であり、吉原は源助とセキに真相を打ち明けていました。
ようやく戦争が終わった昭和21年、次々と戦場から帰還兵が復員してきましたが、その中には順吉の姿はありませんでした。無事に戦場から帰還した大谷は小雪を見舞いに訪れましたが、小雪の病状はより一層悪化するばかりでした。それでも小雪は毎日午後3時になると、声を振り絞って木挽き歌を歌っていました。
そんなある日、セキは小雪の実家を訪れ、彼女の両親に惣兵衛が急死したとの知らせを持ってきました。かねてから惣兵衛のことを恨んでいたサトは、これでようやく小雪の見舞いに行けると思いました。知らせを聞いた吉原は小雪の元に向かい、あの手紙の件は嘘だったと白状しました。それを聞いた小雪は、この世の中から辛い事や哀しい事がなくなってほしいと呟きました。
絶唱の結末
小雪の容体は更に悪化していき、読書会の仲間たちが見舞いに駆け付けてくれました。大谷が川田マサ(服部妙子)という女性と結婚することになったことを聞いた小雪は、自分はもう子供を産める身体ではないので将来のために用意していた子供服をマサに譲り渡しました。
小雪の両親も見舞いに駆け付け、危篤状態に陥った小雪は突然「あの人が帰ってくる」と言い出しました。そして小雪の言葉通りに本当に順吉が戦場から戻ってきました。小雪は順吉に自分はもはや妻の勤めが果たせなくなったことを伝え、故郷の山に帰りたいと言い残して息を引き取りました。はじめる。小雪の最期を看取った順吉は、その場の者たち全員に故郷の山で結婚式と葬式を一緒にしようと呼びかけました。
小雪の亡骸は死化粧を施されて花嫁衣裳に身を包み、順吉に抱かれて園田家に入りました。村人たちは涙しながら嫁入り歌で二人を出迎え、順吉は駆け付けてくれた者たち全員にこれからは園田家の財産を小雪のような不幸な女を作らないように使っていきたいと語りました。
式が終わり、順吉は小雪の身体を抱いたまま山の中に入り、静かに木挽き歌を歌い始めました。いつしか順吉の耳には、歌声に合わせるかのように小雪の歌声も聞こえていました。
以上、映画「絶唱」のあらすじと結末でした。
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