小さいおうちの紹介:2013年日本映画。生涯独身で1人暮らしをしていた大叔母のタキを亡くした大学生の健史。遺品の中から、健史がタキに書くように勧めていた自叙伝のような記録のノートが見つかる。そのノートから、彼女が女中として生きていた昭和という時代と、ある家の秘密が描かれる。第64回ベルリン国際映画祭で、若いタキを演じた黒木華が最優秀女優賞受賞。中島京子の直木賞受賞作が原作となっています。
監督:山田洋次 出演者:松たかこ(平井時子)、黒木華(布宮タキ:過去)、吉岡秀隆(板倉)、妻夫木聡(健史)、賠償千恵子(布宮タキ:現在)ほか
映画「小さいおうち」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「小さいおうち」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
小さいおうちの予告編 動画
映画「小さいおうち」解説
この解説記事には映画「小さいおうち」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
小さいおうちのネタバレあらすじ:起
生涯独身で亡くなった大叔母・タキの葬儀を終えた健史は、自分あてに遺されたノートに書かれたタキの自叙伝を紐解いていきます。昭和11年、山形から上京したタキは、おもちゃ会社の常務である平井の家で女中として働きはじめます。世間の景気もよく、平井の妻・時子にもかわいがられ、タキはしばらく穏やかな生活を送ります。時はすぎ昭和13年、正月の挨拶をきっかけに、平井の会社の新人・板倉が平井家に通うようになり、時子との仲を深めていきます。同時に時子は、支那事変(日中戦争)の影響で仕事が難航し始めた平井とも少しずつすれ違うようになっていきました。板倉に会社がらみの縁談が持ち上がり説得を頼まると、時子は板倉の下宿に通い詰めるようになります。
小さいおうちのネタバレあらすじ:承
タキは二人の不穏な関係を察知し始めていましたが、ある日板倉を訪ねた時子の帯の結び方が変わっていたことから、二人が不倫関係に陥ったことを確信し、女中としてどうしたらいいのか悩みはじめます。そんな中、戦争の状況が悪化し、丙種合格だった板倉も召集されることになりました。そして昭和16年12月、ついにアメリカとの戦争が始まります。少しずつ世の中が暗い雰囲気になっていく中、時子と板倉の関係に周囲の人々も少しずつ気づき始めてしまいます。そうした人たちによる自分への密かな忠告も、タキの悩みに拍車をかけていきました。そんな中、板倉が訪ねてきて、召集令状がきたため明後日の夜には上野を発つと告げました。板倉がそっと「ずいぶん迷いました、お会いしない方がいいんじゃないかと」と言うと、時子は「黙って行ってしまったら、恨んだわ」と返し、二人は抱擁し合います。ちょうど帰宅してきた平井への挨拶を済ませると、板倉はそそくさと帰っていきます。
小さいおうちのネタバレあらすじ:転
あくる日、時子は板倉の下宿へ最後の逢瀬に向かおうとします。タキは、「二人を会わせてはいけない」という思いと、「これっきりもう会えやしないのだから何が起ころうと会わせてあげよう」という思いの間で揺れ動きます。迷った末にタキは、代わりに板倉を呼び寄せる手紙を書いて自分に届けさせてくれと申し出て、時子を思いとどまらせます。時子は、タキからの進言に少しいらつきながらも、すぐに手紙を書いて彼女に託しました。そして日が暮れるまで板倉を待っていましたが、その日彼が訪ねてくることはありませんでした。そしてその後、さらに戦況は悪化していき、タキは故郷の山形に戻り、平井と時子は東京大空襲で命を落とします。そこでタキの自叙伝は終わっていました。
小さいおうちの結末
健史はノートのほかに、宛名の無い1通の手紙を見つけます。差出人は「平井時子」とあったため、健史は恋人・ユキとともに生き延びていた息子の恭一の居場所を調べて訪ねます。年老いて目の見えない恭一の代わりに手紙を読み上げると、なんとそれは板倉を呼び寄せる時子の手紙だったのです。タキは手紙を届けないで、時子と板倉の関係を自分の手で終わらせたのです。自分の母親の不倫を知りショックを受けつつも、板挟みになって苦しんだタキを慮る恭一。健史は恭一の言葉に涙し、時子や板倉の狭間で揺れ動き、年老いてなお「長く生き過ぎたの」と涙を見せたタキの気持ちに思いを馳せながら、物語は終わります。
戦争を挟んで紡がれる比較的裕福な家庭に、田舎から女中奉公にきたタキの演技は本当に秀逸でした。素晴らしい日本映画に万歳!!
一日一日を大切に、其々の身分の人が精一杯生きてきたことを再確認させられました。有難う!