殺しのドレスの紹介:1980年アメリカ映画。ブライアン・デ・パルマの監督作のなかでも「ボディ・ダブル」と並んで最もエロチックな作品。ヒッチコックの「サイコ」のような二重人格の犯人を扱い、華麗な映像テクニックを駆使している。
監督:ブライアン・デ・パルマ 出演:マイケル・ケイン、ナンシー・アレン、アンジー・ディキンソン、キース・ゴードン、デニス・フランツ、ほか
映画「殺しのドレス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「殺しのドレス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「殺しのドレス」解説
この解説記事には映画「殺しのドレス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
殺しのドレスのネタバレあらすじ:起
趣味良く設えられた部屋。ガラス張りの浴室で中年女性がシャワーを浴びながら、そばで髭を剃る男性を恨めしそうに見つめています。女性はケイト。男性は夫のマイクです。2人は性交渉を欠かしませんが、ケイトはそれでも欲求不満を抱えています。夫妻にはピーターという十代の息子がいて、コンピュータをいじるのが大好き。部屋は基盤でいっぱいでした。
殺しのドレスのネタバレあらすじ:承
ケイトは精神分析医に通っていて、その性的な欲求不満をぶちまけます。その帰り、メトロポリタン美術館に寄ったケイトは見知らぬ男性からモーションをかけられます。それに応じて一緒にタクシーにのるケイト。我慢しきれずに車内でセックスを始めます。そして男のアパートで再び性交に及んだ後、帰ろうとして偶然彼が性病持ちだという事を知ってしまいます。パニックに陥りながら部屋を出たケイト。慌てていたので結婚指輪を忘れたことに気づき、部屋に戻ろうとします。そしてエレベーターの中、ブロンドの髪でサングラスをかけた女性が後から乗り込んできます。そして、ケイトは彼女からいきなりカミソリで切りつけられ、そのまま死亡。
殺しのドレスのネタバレあらすじ:転
その様子をエレベーターを待っていた高級コールガール、リズが目撃します。マリノという刑事が早速リズを参考人として取り調べますが、まるで犯人扱いです。腹の立ったリズは警察を後にしますが、やがて彼女を目撃者と知った犯人により、地下鉄で殺されかけます。そこを助けたのはケイトの息子ピーター。彼は警察で精神分析医が話している内容を盗聴し、彼の患者の中に犯人がいると思い、診察所を見張っていたのです。そしてブロンド、サングラスの女の跡を付け、リズを救うことになったのでした。
殺しのドレスの結末
共同で犯人を見つけようと言うことになり、リズはカルテを見るために精神分析医の診察を受けます。わざと下着姿になって医師を誘惑。準備のためと称して、別室へ行ってカルテを探します。その時、雨の降る外からブロンドの女が室内へ。診察室へ戻るとそこには犯人の女がいてリズを殺そうとしますが、そこへ別のブロンドの女が現れ、犯人を撃ちます。倒れた拍子にカツラがとれ、苦悶する医師の顔が。実は彼は服装倒錯者で、性欲を覚えると相手の女性を殺してしまう変質者だったのです。もう一人のブロンドの女は真相を見破っていた女刑事でした。最後の場面で再び医師が現れ、リズを殺そうとしますが、それは彼女の夢。事件は本当に解決しました。
映像の魔術師、ブライアン・デ・パルマ監督の華麗な映像テクニックは、銀幕の上に”悪夢”を現出させてしまう。
この場合の悪夢とは、「キャリー」のショッキングなラスト・シーンのように、文字通りの悪夢という意味合いでもいいし、彼の作品中で起きるサスペンスフルで異常な事件そのものが、悪夢なのだと考えてもいい。
それによって彼は、我々観る者を”現実世界”から一気に、映画という非日常的な”虚構世界”の内へと引きずり込む。
この「殺しのドレス」においても、オープニングとエンディングを飾る悪夢は、作品そのものを一つの異次元空間として、現実から切り離すキーの役目を見事に果たしていると思う。
この”現実”から”悪夢”へとワープする一瞬の落差が、ブライアン・デ・パルマ監督作品独特の恍惚感とも言える、スリリングな感興を引き起こす。
それは、エレベーターで急降下する際のちょっと気の遠くなるような眩暈の感覚にも似ている。
正から負へのボルテージの反転という彼のこの手法は、「キャリー」のハイライト・シーンで延々たるスローモーションの後に、主人公を幸福の絶頂から奈落の底へと突き落とした瞬間に開花していたと思う。
「殺しのドレス」では、アンジー・ディッキンソンが情事の後の心地よい疲労感に酔いながら、健康診断書の一文を盗み見る一瞬に集約されている。
その一瞬を境に、物語は加速度的に不吉な雰囲気を増し、エレベーター内でのカタストロフへとなだれ落ちていく。
この作品を支配する二面性—現実と悪夢、都会的に洗練されたタッチとプリミティブな血のイメージ、エロティックな官能美と剃刀の刃が代表する金属質のクールさ、鏡に象徴される性倒錯者の実像と虚像—は、このように相対する”陰”と”陽”の接点を、鮮やかに描き分けるブライアン・デ・パルマ監督の独自の手法によって、銀幕上で融合するのだ。