グラン・トリノの紹介:2008年アメリカ映画。白人のほとんどがいなくなってしまったその町は代わりにどこからともなくアジア人が大勢住むようになった。そんな町に住む数少ない白人ウォルトは長年連れ添った妻を亡くしてしまう。子供も巣立ち共に暮らすのは老いぼれた犬だけ。そんなある夜ウォルトの家のガレージに泥棒が入る。犯人は隣に住むアジア人青年。狙われたのはウォルトの大事にしていた車、グラン・トリノだった。この作品は「俺は迷っていた、人生の締めくくり方を。少年は知らなかった、人生の始め方を。」というキャッチコピーで、世の中に怒り、孤独に生きる人種差別主義の偏屈老人が、隣人のアジア系移民家族と交流を深めていく様子を丁寧な筆致で描いた感動のヒューマンドラマです。
監督:クリント・イーストウッド 出演:クリント・イーストウッド(ウォルト・コワルスキー)、ビー・ヴァン(タオ・ロー)、アーニー・ハー(スー・ロー)、クリストファー・カーリー(ヤノビッチ神父)、コリー・ハードリクト(デューク)、ブライアン・ヘイリー(ミッチ・コワルスキー)、ブライアン・ホウ(スティーブ・コワルスキー)、ジェラルディン・ヒューズ(カレン・コワルスキー)、ドリーマ・ウォーカー(アシュリー・コワルスキー)、ほか
映画「グラン・トリノ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「グラン・トリノ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
グラントリノの予告編 動画
映画「グラン・トリノ」解説
この解説記事には映画「グラン・トリノ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
グラントリノのネタバレあらすじ:起・頑固な偏屈親父
愛妻を亡くしたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、二人の息子・ミッチ(ブライアン・ヘイリー)やスティーブ(ブライアン・ホウ)、そしてその孫たちからも疎んじられた、筋金入りの頑固で偏屈な年老いた親父でした。朝鮮戦争帰還兵であるウォルトは、戦場で多くの人々を殺した罪と葛藤し、愛犬のデイジー以外には心を開けなくなっていました。
また、フォード社の自動車工だったウォルトは、大の愛国主義者で、日本車などは大嫌いで、近所のアジア系の人たちにも「野蛮人」と罵り、自宅の芝生に一歩でも侵入しようものならライフルを突きつけるという典型的な人種差別主義者でした。
しかも、妻と交流が深かった若いヤノビッチ神父(クリストファー・カーリー)からの懺悔の誘いも、ウォルトは「若い神学校出たての神父に何がわかる」と言い、頑として拒み続けました。そんなウォルトの宝物は、ガレージで眠るコブラジェットエンジン搭載のヴィンテージカー「72年型グラン・トリノ」でした。
ウォルトは限られた友人と悪態をつき合いながら、静かに独りで隠居生活を続けようとしていました。しかし、デトロイトのその街は、朝鮮戦争の影響で、今や移民の東洋人の街となっていました。街では若いアジア系と黒人系の不良たちが争っていました。
グラントリノのネタバレあらすじ:承・不思議な交流
そんな彼の隣にアジア系モン族の一家が引っ越してきました。その一家には仕事もなく、学校にも行かない少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)がいました。タオは無口で大人しく引っ込み思案で、気丈な姉のスー・ロー(アーニー・ハー)の言われるまま、動いていました。そんなタオに、チューンアップしたホンダ車を乗り回す従兄の不良たちが「仲間に入れ」と近づいてきました。タオは嫌がりながらも彼に従い、仲間に入る通過儀礼として、ウォルトが何よりも大事にしているヴィンテージカー「72年型グラン・トリノ」を、ある深夜、盗もうと忍び込みました。しかし、ウォルトの構えたライフル銃の前に、タオは逃げ去りました。
ある日、ウォルトは偶然、タオの姉スーを黒人の不良たちに襲われそうになっているところから救い出しました。恩義を感じたスーは、ウォルトをホームパーティーに招きました。スーの強い希望に押され、しぶしぶウォルトはホームパーティーに行きました。周りはモン族の人ばかり、ウォルトは当初、戸惑いますが、スーから文化の違いを教えられ、理解していきました。そのうち、ウォルトは近所のモン族の人たちから歓待され、彼らから家族的な温かさを感じました。
そんなある日、タオを連れて母と姉スーがウォルトのもとにやってきました。タオの母とスーはタオがウォルトの愛車を盗み出そうとしたことを知り、謝罪に来たのでした。素直に謝るタオを、母とスーは、独り暮らしのウォルトの仕事の世話をタオにさせて、罪を償わせたいと言い出しました。ウォルトは戸惑い拒みましたが、スーに「これはモン族の伝統で、断ると失礼にあたる」と言われ、しぶしぶウォルトはタオを受け入れることにしました。
タオはウォルトに「トロスケ」と呼ばれながらも、素直にウォルトの指示に従い、真面目に真摯に仕事をしました。仕事をしながら成長していくタオの姿を見ていくうちに、ウォルトはいつしか、タオが日に日に成長していく姿に喜びを覚え、次第に偏見に凝り固まっていたこれまでの考え方も変わっていきました。タオにとってもウォルトは特別な存在になっていました。父親のいないタオは、一人前の男としてのモデルがいなかったので、ウォルトがその良い父親代わりのモデルとなっていたのでした。
グラントリノのネタバレあらすじ:転・決着のつけ方
ウォルトはタオの姉・スーとも親しくなり、人種偏見のあったウォルトも、近所のアジア系の一家との交流を深めていきました。タオは仕事を通して、生き生きと成長していきました。しかし、タオは将来への夢をまだはっきりと持てずにいました。そんなタオにウォルトは、友人が責任者をしている建築現場での仕事を世話しました。お金がないタオに、ウォルトはその仕事に必要な道具を買い与えました。タオはウォルトに感謝しました。
自信をつけだしたタオは仕事に精を出し、好きだった女性をデートに誘うこともできるようになりました。しかし、タオの従兄の不良たちは彼を襲い、挙句の果てには、深夜、タオ一家をマシンガンで襲撃し、スーを拉致して乱暴を加えました。タオは愚かな争いに巻き込まれ、家族と共に命の危険に晒されるようになりました。ウォルトは激怒しました。タオは直ぐに復讐しようと躍起になっていました。病にかかり、老い先短いことを覚悟していたウォルトは、身辺整理をすませると、そんな復讐の念に燃えるタオを家に閉じ込めて、この状況に決着をつけるため、ある作戦を胸に独りギャングたちの住処へ向かって行きました。
その夜、ギャングたちの住処に着いたウォルトは、タバコをくわえて、銃を取り出すかのように上着のポケットに手を入れました。それを見ていたギャングたちは、恐怖に駆られてウォルトを銃撃しました。ウォルトはそこで静かに息絶えました。
急いで現場に着いたタオは、そこでシートにくるまれて運ばれていくウォルトの遺体を見ました。現場の警官に聞くと、ウォルトは何の武器も持たずに、単身、ギャングの住処に向かっていき、そこで射殺されたとのことでした。ウォルトの上着のポケットにあったのは、彼が愛用していた第一騎兵師団のジッポーライターでした。周辺での目撃証言もあり、ギャングたちは逮捕され、長期刑が見込まれました。これがウォルトの作戦で、彼の人生の決着のつけ方でした。
グラントリノの結末:未来へ走るグラン・トリノ
タオの将来を案じ、自らの命を引き換えにしたウォルトの葬儀で、ヤノビッチ神父は「私は彼から本当の生と死を教えられました」と語り、祈りました。ウォルトの遺書には「愛車グラン・トリノを我が友・タオに贈る」と記されていました。ウォルトと過ごした思い出と、彼から学んだ生き方を胸に、タオはグラン・トリノを運転し、海岸線を走っていきました。
「そっとやさしく、人生は流れる♪いつの間にか、遠く過ぎ去った日々、そして未来…♪しっかりと大地を踏みしめて、想いにふける♪そよ風がやさしく吹き抜ける♪俺のグラン・トリノを、歌い古したメロディーのように♪…孤独なリズムを刻む車…夜を通して…♪」が静かに流れ、この物語は幕を閉じました。
以上、映画「グラン・トリノ」のあらすじと結末でした。
「グラン・トリノ」感想・レビュー
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クリント・イーストウッド監督の映画や演技には
心にズシンと重く響くものがある。
私が米国で一番好きな監督であり俳優である。
老いてなお自分を変えられずにいる昔気質の男が、差別的だった生き方を変え、少しずつ少年と歩み寄っていく、その中で様々な事件が起こります。しかしクリントイーストウッドのラストシーン、これが本当にカッコいい。アメリカ的な、マッスル思考なアクションシーンではなく、この所謂サクリファイス(自己犠牲)のような散り様。少し日本の武士道に通じる物を感じました。