映画「花とアリス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
花とアリスの紹介：2004年日本映画。好きな男の子を巡って三角関係に陥った女の子が、恋と友情の狭間で揺れる様子を描いた青春映画。岩井俊二監督の世界観が色濃く表れた作品です。
監督：岩井俊二 出演者：鈴木杏（荒井花 / ハナ）、蒼井優（有栖川徹子 / アリス）、郭智博（宮本雅志）、相田翔子（有栖川加代 / アリスの母）、阿部寛（アリス母の連れの男）、平泉成（黒柳健次 / アリスの父）、木村多江（堤ユキ / バレエの先生）、坂本真（猛烈亭ア太郎）、大沢たかお（リョウ・タグチ）、広末涼子（編集者現場担当）、ほか
この解説記事には映画「花とアリス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
中学生のハナ（鈴木杏）とアリス（蒼井優）は、同じバレエ教室に通う親友です。二人はいつもどこへ行くのも一緒で、大人しくて気弱なハナに対し、アリスは天真爛漫で活発な性格です。
ある日、通勤電車で見かけた高校生・デイヴ（Dave Lee）にアリスは一目ぼれします。一方、デイヴの横にいるもう一人の高校生・宮本雅志（郭智博）が気になり始めるハナ。アリスはすぐに恋の熱が冷めますが、ハナはその後も宮本の尾行を続けて隠し撮りをするなど、彼に夢中になります。
こうして中学を卒業したハナとアリスは、ハナが想いを寄せる宮本が通う高校に進学しました。宮本がいつも電車で「寿限無（じゅげむ）」を唱えていたことを知っていたハナは、彼が所属する落語研究会に入部。いつも本を読んで落語の勉強をしている宮本ですが、実際に披露するとなると全く抑揚がなく下手くそで、先輩からは叱られてばかりです。
そんな中、本に夢中になって歩いていた宮本は、シャッターに気が付かずに頭をぶつけて、そのまま倒れてしまいます。意識が朦朧としている宮本に駆け寄るハナ。「先輩、大丈夫ですか？」と声をかけるハナに対して、「君は誰？」と宮本。すかさずハナは、「先輩は私に告白した過去があるのを忘れたんですか？」と嘘をつきます。ハナから記憶喪失になったのだと言われた宮本は、そのまま病院へ行き検査を受けます。
CTをとりますがどこも悪いところが見つからず、本当に自分が記憶喪失なのかとハナの話を怪しむ宮本。しかしハナは強気です。「先輩が自分を好きになったのに…」と言い張るハナ。２人は急接近し、一緒にお茶をしたりゲームをしたりする仲になりました。
ハナは思い切って自分たちの関係を尋ねます。すると宮本から、「最近君を夢で見て、気になる存在だ」と言われ、舞い上がるハナ。その後ハナは「パソコンの調子が悪いんです」と宮本に相談して、ハナの家に宮本が遊びに来ることになりました。
そんな時、街で買い物をしていたアリスはモデルにスカウトされます。うれしくなったアリスはハナにすぐに報告し、今すぐ来てほしいと頼みます。しかし宮本が家に来ているハナはその申し出を断り、怒ったアリスは「もう電話はしない！」と携帯を切ってしまいました。
ハナのパソコンを直していた宮本は、データの中に隠し撮りをされている自分の写真を見つけてしまいます。それ以来ハナのことがよくわからなくなる宮本。変な夢を見るようになり、ナメクジに追いかけられて振り返ると、それはハナだったという不思議な夢です。その後も二人は映画に行くなどデートを重ねますが、宮本はハナのことを受け入れられなくなっています。
そしてある日、ついに宮本はパソコンで自分の隠し撮り写真を見たことをハナに電話で打ち明けます。「本当に君のことを好きって言ったの？」と言われ、慌てたハナはとっさに写真の出所は宮本の元カノだったアリスが送りつけてきたものだという嘘をついてしまいました。「アリスに強引に言い寄られて無理やり付き合っていた時に、目の前に現れた自分と付き合うことにした」と、さも本当のことのように話すハナ。宮本は信じませんが、パソコンの中身を勝手に見たことをハナは責め、宮本はそれ以上は何も言えなくなりました。
翌日、宮本はアリスの教室を尋ねます。するとアリスは「私たちもう関係ないでしょ！」と言い、宮本は自分が過去にアリスと付き合っていたのだと思い込みます。しかし実は、ハナがアリスに元カノのふりをしてほしいと事前に頼んでいたのでした。
スカウトされていたアリスは様々なオーディションを受けますが、ことごとく落ちてばかりです。ハナは宮本と一緒にいるので中学生の頃のようにつるむこともなく、一人で過ごすようになるアリス。アリスの両親は離婚しており、母は若い男にうつつを抜かし、父親とはたまに会うくらいです。
その頃、宮本は自分の記憶が一部戻らないと病院で再び検査を受けていました。そこへ、偶然にもバレエで足を怪我したアリスが宮本と会います。宮本は自分は記憶喪失だと言い、アリスはハナから頼まれていた通り、元カノのふりをして振舞うことにしました。
二人で会話をするうちに、宮本はどんどんアリスに惹かれていきます。そしてその気持ちをアリスに伝えるのですが、アリスは「自分を捨ててハナを好きになったんでしょ」と切なそうに答えます。
そして夏まつりの日、宮本は急に倒れ込んでしまい、ハナは急いで家へ連れて帰ります。ソファに宮本をねかせて、彼にキスをしようとするハナ。すると宮本が「アリスと付き合っていた頃だけの記憶が戻れば…」と言い出します。たえられなくなったハナは薬を買いに家を出た帰り道、雨の降りしきる中で一人で踊るアリスを見かけます。
アリスはたまに宮本と会っていることをハナに打ち明け、ショックを受けたハナは思い切って「宮本先輩は記憶喪失ではない」と本当のことを言ってしまいます。ハナが嘘を付き、宮本を騙していると知ったアリスが驚いていると、そこへ宮本がやって来ました。
それからは、三人で戻らない宮本の記憶探しをするようになります。アリスと宮本が付き合っていた頃を思い出すために、海岸を訪れる三人。アリスはなぜかありもしない昔の話ばかりして、ハナを困惑させます。そしてゲームをして勝ったアリスは、「先輩と別れて。私と付き合って。」とハナと宮本に言います。焦って怒り出すハナに、冗談だと笑うアリス。
その後も宮本とアリスはデートを重ねます。アリスが語る付き合っていた頃の思い出とは、本当は離れて暮らす父親との思い出でした。それを嬉しそうに話すアリス。二人でところてんをいつも食べていたと話すアリスですが、宮本はところてんアレルギーがあり、本当に自分は記憶喪失なのかと疑うようになります。
すべてが嘘だとばれて、素直に謝るアリス。そして2人は両想いにもかかわらず、ハナのために別れを決意したアリスは「愛してる、またね」と中国語で別れを言いました。
学校で文化祭が開かれていたある日、ハナは同じバレエ教室に通う友人から、アリスと仲直りをしたほうがいいと言われます。ハナは「アリスとは喧嘩してないよ」と言いますが、小学生のころに登校拒否をして家に引きこもっていた自分を、バレエ教室に誘ってくれたのがアリスだったことなどを思い出します。
その後、オーディションで面接官にバレエを披露したアリスは、見事合格し雑誌に掲載されました。その雑誌を見ながら顔を見合わせて笑うハナとアリス。こうして２人の間のわだかまりは、すっかりなくなっていたのでした。
以上、『花とアリス』のネタバレあらすじと結末でした。
子供でもなく、大人でもない時期は、自分が自分になっていく時期。そして自分が確立していくに連れて、いつも一緒だった友人とも分かれていく時期。楽しいことも、悲しいことも、人を好きになることも、嘘をつくことも、友を裏切ることも、いろいろある中で、それぞれの道を歩み始める。青春のみずみずしさを思い出させてくれる作品が「花とアリス」です。
「花とアリス」で岩井監督が描く少女達の世界観は、何かふわっとしたものを感じさせ、ありふれた話を最後まで観させてくれる。また演出として、柔らかくオレンジがかった自然光が、画面にあたたかい雰囲気を作り出している。桜並木を歩くシーンもホント、美しい。何より、主演の鈴木杏と蒼井優の表情がいい。特に真実ではないことを話すシーンの表情が。バレエシーンも秀逸です。
少女を撮らせると日本一の岩井俊二監督が、まさに少女たちを撮った佳作です。特に蒼井優がその才能をいかんなく見せてくれます。実際にバレーをやっていただけあり、彼女は身体の表現がうまい。だから表情に頼るだけの芝居よりも強く印象に残る。ちょっと振り返るだけでも、体に芯があり、変にぶれないので存在感がある。この名女優の初々しい時代として見るのも楽しい映画。