女優霊の紹介:1995年日本映画。未現像のフィルムに映る不気味な影、それはロケバスやスタジオにも現れるようになった。リングの中田秀夫監督が送る和製ホラーの先駆け。
監督:中田秀夫 出演:柳ユーレイ(村井俊男)、白島靖代(黒川ひとみ)、石橋けい(村上沙織)、根岸季衣(筒見トキコ)、李丹(フィルムの中の女)、大杉漣(大谷)、ほか
映画「女優霊」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「女優霊」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
女優霊の予告編 動画
映画「女優霊」解説
この解説記事には映画「女優霊」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
女優霊のネタバレあらすじ:未現像のフィルムに映っていたもの
新人監督の村井は新作映画の撮影に奮闘していた。経費削減のために、仲間内で余ったフィルムをかき集めて使っていた。しかしある日、現像してみると、そこには現像されていなかった古い映像が映されていた。村井はそれを見て子供の頃に見た怖い映画を思い出しかけたが子供の頃のことなので、はっきりとは思い出せないまま撮影を続けることになった。この作品で、村井は新人女優の沙織を名だたる女優の仲間入りさせることを夢見ていた。そして、事務所の移籍問題に揺れるひとみは、事務所を介さず知人を通して出演依頼をしていた。それが気に入らなかったひとみの所属していた事務所の社長は、撮影所に乗り込んでくるなり「何を撮っているの?」と蒼褪め、ひとみにお守りを手渡し去っていった。
女優霊のネタバレあらすじ:撮影所で起こる怪現象
撮影中に少しずつおかしなことが起き始めた。村井はロケバスの中に人影を見たり、ひとみは一人で撮影所の廊下でセリフを覚えていると、少女の声を聴いたり、カメラトラブルなどが発生した。 村井は長く撮影所で働く六さんに、件のフィルムに映っていた女優について尋ねてみた。しかし思わしい答えは返ってこず、打ち切られたドラマか映画ではないか、思い出したら伝えると言った六さんを後日尋ねると、ああいうフィルムはよくないものだから燃やしたと返ってきた。村井はテレビで見た時の恐怖を思い出そうとしていたが、その手がかりはなくなってしまった。
女優霊のネタバレあらすじ:とうとう起こってしまった悲劇
撮影も佳境に入り、当初緊張していた沙織も現場に慣れ、スタッフと仲良くなっており、休憩時間に遊ぶようになっていた。緊張感の薄れた状態にここは一言、言わなければと思っていた村井だったが、それを言う前に、沙織はひとみのシーンの撮影中に、スタジオの高所からセットの庭に落ちて死んでしまった。それを目の当たりにしていたスタッフの一人は、沙織が落ちてくる時に何者かに抱きつかれていたと言う。もちろん死体はひとつなので事件性もなく、自殺の線も薄いので事故ということで処理されることになった。映画会社の上層は、今まで撮ったものを見て撮影続行の指示を出し、沙織のシーンは代役で吹き替えることになった。
女優霊の結末:完成するその前に
村井は件のフィルムのシーンを見た時に、母親が入院していた事を思い出し、実家に電話をすると、正確な年の他に、彼がその夏以降しばらくテレビを怖がって見なかったということが判明した。早速、図書館で言われた年号の夏のラテ欄をしらみつぶしに当たった村井は、探していた女優が、今自分たちが撮影しているスタジオで転落死したという記事を偶然見つけてしまった。撮影を再開し、物語の山場、ひとみが匿っている男性を殺す所を、沙織が見てしまうというシーンで、沙織の吹き替えの女優はそんなト書きはないのに、禍々しく笑いだした。その笑い方は、燃やされたフィルムに映っていたもう一人の女の笑い方そのままだった。釈然としない村井は、真夜中まで編集作業をし、帰り際にスタジオを訪れた。すると、上から声がし、見上げると沙織が転落した梁のあたりにてっきり帰宅していると思ったひとみがいた。村井が上がっていくとまさに沙織が転落した場所からひとみが手招き、その後ろにぼんやりとした人影があることに気が付いた。そして、ひとみの姿は消え、そのワンピースに長い黒髪の人影と対峙した村井はとっさに逃げ出した。そしてスタジオの中の一室に逃げ込む。そこは燃やされたフィルムの中で少年が怪異から逃げ閉じこもった部屋と同じ場所だった。ドアが打ち破られ入ってきた人影ははっきりとした顔で、笑いながら村井を扉の外のどこかへ引きずっていった。現場では村井は失踪という扱いになっていた。作品は笑い声の処理をすることで完成させることになった。その後、ひとみを含めた仲間内で村井の部屋を訪れた。そこには失踪をほのめかすような形跡は一切なかった。そして、ひとみが何気なく脱衣場に入ると、洗面台の鏡に女の人影が写っていた。
以上、映画女優霊のあらすじと結末でした。
この作品が製作された頃、いわゆるジャパニーズホラーというジャンルが確立される。黒く長い髪、白いワンピースの女、ぼんやりとはっきりしないが不穏な影といった、今ではおなじみの要素もこの作品に見受けられる。また映画製作現場という、あくまでもスタッフたちにとっては日常、日々の生活の中に忍び込んでくるホラーというのも今では定番となっている。この作品の中では、怪異のはっきりとした原因は解き明かされることはなく、そのヒントだけがいくつか提示されたまま、最終的な答えにはたどり着いていない。そんな、視聴後もじっとりと続くような怖さもまた、当時としては新しかったのではと思う。