装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズの紹介:2008年日本映画。監督・高橋良輔が『装甲騎兵ボトムズ 赫奕たる異端』(1994年~1995年)から12年ぶりに監督した『装甲騎兵ボトムズ』シリーズの作品です。キャッチコピーは「すべては、振り出しに戻る」で、OVA『装甲騎兵ボトムズ~レッドショルダードキュメント~野望のルーツ』とテレビアニメ『装甲騎兵ボトムズ』の本編第1話との間のエピソードとなるアニメ映画です。
監督:高橋良輔 原作:矢立肇高橋良輔 声優:郷田ほづみ(キリコ・キュービィー)、長嶝高士(ノル・バーコフ)、江川央生(ガリー・ゴダンン)、矢部雅史(ゲレンボラッシュ・ドロカ・ザキ)、後藤哲夫(ダレ・コチャック)、ほか
映画「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」解説
この解説記事には映画「装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:1.プロローグ:ヨラン・ペールゼン
ある前線基地、サングラスをかけ、コートを肩にかけた軍服姿の精悍な男が1人、歩いていました。その男を守護するように、背後から無数の赤い右肩をしたスコープドッグたちが、足裏のホイールを回転させ、火花を散らしてローラーダッシュして、整然と整列し、その男の道を確保しました。その男は悠然と堂々と、赤い右肩のスコープドックたちの作った道を歩みました。その男が歩みを止めると、スコープドッグたちは、一糸乱れず右腕を上げ、アームパンチを一発撃ちました。薬莢が地面に音を鳴らして落ちると、スコープドッグたちは右腕を下げました。まばゆい光が、その男を照らし、車の中から数名の男たちが出てきました。その一番前の男は、1枚の令状らしきものを、その男に見せました。すると、即座にスコープドッグたちは、一斉に銃を令状を持ってきた男に向けました。その男は左肩を高々と挙げ、肩からかけていたコートを翻し、スコープドッグたちの行動を制しました。その男はその令状を持ってきた男に方に、歩いて行きました。その男の名はヨラン・ペールゼン、正式名称「ギルガメス宇宙軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1」、“吸血部隊”と呼ばれ恐れられたレッドショルダーの創設者であり、司令官でした。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:2.タイバス渡河作戦
惑星ロウムス、タイバス河下流にて、史上最大の作戦・タイバス渡河作戦の幕が上がろうとしていました。キリコ・キュービィーは、ギルガメスのAT部隊のスコープドッグに乗り、その作戦に一兵士として参戦していました。キリコの上官は、ナラヤ小隊長でキリコの監視役でした。ギルガメス軍は上空から河岸にくさびを打ち込み、AT部隊が上陸しやすいようにしました。AT部隊は、バララント軍の守備部隊の砲撃を受けながらも、河岸に上陸し、敵陣へ進攻を図りました。キリコは、その爆音と弾雨の激しい戦いの最中にいながらも、敵方の砲弾をかわしつつ、敵ATを倒していきました。しかし、ギルガメス軍はバララント軍の守備隊の反撃に苦戦を強いられ、大勢の兵士が命を落としました。タイバス渡河作戦は終了し、上官ナラヤ小隊長の死を看取ったキリコだけが生存者でした。その頃、惑星メルキア・ギルガメス軍・最高裁判所では、囚われたヨラン・ペールゼンがレッドショルダーの秘密基地の存在の隠蔽、そしてレッドショルダーを独断専横で私物化したことで、軍事裁判にかけられていました。しかし、その証拠は一切残っていませんでした。ペールゼンへの追及は激しいものでしたが、彼は黙秘を続けていました。するとそこに、情報省次官フェドク・ウォッカムが入ってきました。ウォッカムは独自に入手した資料・ペールゼン自身が作成した暗号文書を裁判官に提出すると、「検察はこの人物の危険性をご存知ない。この被告はこうして諸君に裁かれながらも、再び軍を私物化する研究を続けている。現在もです」と訴えました。そして、ウォッカムは裁判の中止、無期延期を提案し、再尋問のため情報省医療収容所への収監を提案しました。これを聞いたペールゼンは沈黙を破り、狂ったように叫び、暴れ出しました。これで裁判は閉廷され、ペールゼンは車椅子で拘束され、情報省ウォッカムに連行されました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:3.惑星ガレアデ
タイバス渡河作戦で負傷したキリコを、強靭な古参兵ガリー・ゴダンは面倒をみるように命じられました。輸送車の中で、ゴダンはキリコの面倒を見ますが、そのおおざっぱなやり方を見ていられなかったノル・バーコフがゴダンに代わり、丁寧に面倒をみました。キリコが着いたのは、惑星ガレアデM7基地でした。ある晩、キリコが眠っていると、少年兵ゲレンボラッシュ・ドロカ・ザキが突然、ナイフでキリコの右肩を刺し、殺そうとしました。その仲裁に入って止めたのは、バーコフでした。ザキはワップ上級曹長から拷問しました。ザキはキリコを殺そうとした理由を尋問されましたが、「分からない。あいつのせいで俺が死ぬ…そんな気が…」とだけ答えました。尋問で傷だらけになったザキを待っていたのは、バーコフでした。バーコフはザキに自分が殺そうとした男の名前が「キリコ」だというと、ザキは「その名前を言うな!」と叫びました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:4.分隊
キリコは、ノル・バーコフをリーダーに、ガリー・ゴダン、ゲレンボラッシュ・ドロカ・ザキの分隊に所属しました。配属されて1週間、キリコたちの分隊は、最前線基地X-2に送られました。そこでもうひとりの仲間ダレ・コチャックと合流しました。コチャックはキリコらと会うと「俺がここに配属されたのは技術者としてだ。…お前らなんぞとは違う。分隊には上申してある。いいか、俺に指一本触れてみろ。後悔するぞ」と虚勢をはりました。すると早速、分隊に命令が下されました。それはギルガメス軍本隊がマニド峡谷を通過するため、その峡谷を防衛しているバララント軍の空中要塞の攻略命令でした。この作戦の成否の鍵はこの基地攻略にかかっていました。キリコらは、まだ会ったばかりでお互いの信頼関係など全くないまま、空中からATにパラグライダーを着け、峡谷頂上に宙吊られた空中要塞の急襲に向かいました。しかし、コチャックのATだけがパラグライダーが外れず、谷に不時着し、岸壁から岩を落としてしまい、敵に気付かれてしまいました。要塞の中から敵ATが防衛のため出てきました。秘匿作戦だったので、キリコは分隊長バーコフに作戦中止の指示を請いましたが、バーコフはパラグライダーで空中から電波塔を攻撃する態勢に入っており、遂行するしかありませんでした。バーコフはロケットランチャーで電波塔を破壊しました。キリコたちは要塞を繋いでいる巨大なワイヤーロープの上をローラジェットでATを走らせ、敵ATの銃弾をかわしつつ、要塞屋上に乗り込み、続々と出てくる敵ATを、力を合わせて次々に倒していきました。ただ、コチャックだけは他の者よりAT乗りとしての技能が低く、敵を殺すことに躊躇いもありました。キリコは要塞内部に突入し、追ってくる敵ATを次々に撃破していきました。続いてザキも要塞内部に突入しました。侵入してきた敵ATにキリコは殴られ倒されましたが、間一髪のところでアームパンチを撃ち、ATを破壊しました。なんとか出てきた敵ATを殲滅させたキリコたちでしたが、にわか集めの分隊でチームワークは整っておらず、みんな命がけでした。うすのろで臆病なコチャックは、味方に向けて銃を撃ったりしたため、ゴダンから叱責されました。とにかく、要塞の攻略に成功したと思った分隊長バーコフは、味方に戦闘終了・作戦遂行を報告しました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:5.死の峡谷
分隊長バーコフから空中要塞攻略の報告を受けたギルガメス軍の地上本隊は、作戦通り、マニド峡谷通過を開始しました。ATから降りようとマスクを外したキリコの前に、ザキが座っていました。彼はキリコをじっと見ていました。コチャックは緊張から解けたからか、寝そべって深呼吸していました。すると、コチャックは下で何かが動いている音を聞きつけました。それは敵ATのローラーダッシュの音でした。まだ撃ち逃したバララントATがいたのです。キリコとザキはメインゲートのリフトに、バーコフとゴダンは外のリフトから敵ATを再度探索することにしました。バーコフはメンバーに「敵の生き残りはいても1機か2機だ。この状況では敵は必ず谷を崩落させる。そうなれば、下の遊軍もろとも、俺たちも生きて帰れねえ。見つけ次第ぶち殺せ」と命じました。その時、ザキだけ様子がおかしくなっていました。ザキは「キリコ」という名前を聞き、殺意がわき上がってきていました。キリコはザキの「敵が出てきたら援護してくれ」と頼み、影から通路に出ると、ザキが背後からキリコを撃ち始めました。キリコはザキの銃弾をかわし、ザキのATに体当たりして倒し、銃を向けました。キリコはザキに「なぜか知らないが、よっぽど俺を殺したいらしい。好きにしろ。だが、作戦行動中に味方を撃つようなら」と引き金に力を入れると、ザキは「やめろ!分からないんだ!お前といると頭がおかしくなる」とキリコに対して抱く恐怖感を吐露しました。キリコは銃を下ろしました。そこにバーコフとゴダンが合流しました。すると上部から巨大な砲銃が降りてきました。谷をこの砲撃で崩落させるようでした。1機の敵ATがそれを操作していました。すると、ザキが独断で砲銃の中に侵入していきました。キリコはザキを助けに行きました。キリコはワイヤーロープを使いATを宙づりにして、操縦している敵ATを狙いましたが、逆にATの銃弾で銃を破壊されてしまいました。ザキはATから弾薬を外し、キリコのATに渡し、キリコはその弾薬で操縦している敵ATを撃破しました。キリコは操縦席に乗り、砲銃を止めようとしましたが、操縦が利かず、砲撃は止められませんでした。峡谷通過中のギルガメス軍地上本隊は、進行を中止、後退を余儀なくされました。しかし、砲撃で峡谷は崩れ、地上本体は次々に岩盤や要塞の瓦礫の下敷きになっていきました。空中要塞はまだ無事でしたが時間に余裕はありませんでした。キリコはザキに手を出し、ザキはキリコの手にしっかり掴み、ワイヤーロープで空中要塞の上に上がりました。そこにバララント軍の空中爆雷が始まりました。傾く空中要塞を支える巨大なワイヤーロープの上を、キリコたちのATはローラーダッシュで疾走し、脱出しました。空中要塞は峡谷もろとも完全に崩れ去り、ギルガメス軍のマニド峡谷通過作戦は失敗に終わりました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:6.異能生存体
キリコ達は、死の谷から奇跡的に生還したことで怨嗟と監視の目に晒されながらも、通常軍務に勤しんでいた。AT整備の訓練中、不可解な事故が起き、さらにはキリコとゴダンは再び何者かによって襲撃される。その頃、惑星クズスクの情報省医療収容所では、ウォッカムによるペールゼンへの尋問が始まろうとしていました。ウォッカムはペールゼンの過去の経歴を全て把握していました。ペールゼンの経歴はエリート中のエリートと呼ぶにふさわしい輝ける経歴でした。しかし、ペールゼンが心血を注いだのは、“レッドショルダー”でした。ウォッカムは、キリコを監視していました。そして、彼はキリコの謎をペールゼンから聞き出そうとしました。ウォッカムは自白装置MRCでペールゼンへの尋問を始めました。激痛を与えられたペールゼンはキリコのことを語り始めました。キリコは「異能生存体」でした。その異能生存体とは、極めて特殊な遺伝子を持つ個体で、数百億分の一、あるいはそれ以下の確率でしか生まれない、殺すこともできない個体のことでした。キリコは、ペールゼンがメルキアで発見しました。始めは軍の純学問的な生命研究所で、キリコから特殊な菌類を発見しました。それはいかなる致命的な損害を与えても死なない生命の法則に反する菌で、数百億あるいは数乗分の一の確率でそれは存在したのでした。これまで確かめられた異能生存体は、アストラギウス銀河ではキリコだけでした。ペールゼンはそれを突き止めるまで7年も要しました。ペールゼンがキリコを発見したのは、惑星サンサでした。そこでペールゼンは、成長したキリコを炎で焼き殺そうとしました。しかし、キリコは生存し、火傷の痕跡もなかった。異能生存体とは信じられないほどの肉体的損傷を受けても、あるべき姿に完全に復元するのでした。その完全な復元は肉体だけで、精神は通常と変わらず、焼かれた記憶などの精神的外傷は深く記憶に刻み込まれるのでした。しかし、キリコはその記憶を拒否したのでした。ペールゼンはキリコの無意識の部分に触れ、キリコの心臓を撃ち抜いたのでした。ペールゼンはそこまで語ると、心停止しました。ウォッカムはペールゼンを蘇生させました。蘇生したペールゼンに、ウォッカムは「軍は基地を公式に調査し、お前は重罪で逮捕された。だか、お前は野望を捨てていない。全て計算済みだったのか。何を企んでいる?」と夕日を眺めながら質問すると、ペールゼンは「何も」と答えました。自白装置MRC以上のことは聞き出せないというドクター・メンケンに対し、ウォッカムはコートのポケットからペールゼン・ファイルを出してきました。そこには長年のキリコの調査が記されており、ペールゼンは部下に破棄を命じたが、その部下が爆発で死んだため、残っていたのでした。そのため、ディスクは一部破損しており、未解読の部分がありました。ペールゼンは個人的メモで読んでもムダだとウォッカムに告げました。ウォッカムはペールゼンに核心の部分をつき、「お前が観察したいたのは、キリコだけでないはずだ。検証のための実験は既に始まっている」と言ってきました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:7.死神シラスコ
キリコたち5人の分隊は、ガレアデ極北基地へ向かう輸送機に乗せられました。すると突然、輸送機は襲撃を受け、操縦がきかなくなり、荒野への不時着を余儀なくされました。そこでキリコたちは、何者かから狙撃されました。狙撃者は「ギルガメス軍浄化委員会」と名乗って、「死神シラスコ」を引き渡すことを要求してきました。「死神シラスコ」とは、自分が生き残るためには何度も仲間を見捨て、何度も他人に成りすまして戦場から逃亡していた者でした。今は本名シラスコを隠し、ガリー・ゴダンと名前を変えていました。ゴダンは無言でその通信を聞いていました。「ギルガメス軍浄化委員会」はゴダンを差し出さないと、全員を容赦なく射殺すると脅してきました。ゴダンは不敵にも「何事も先手必勝。それで俺は生き残っていた」とのたまいました。ザキは「あんたが出ていけば、物事全て解決するのにな」と言うと、ゴダンは「そういうことさ。でもな、俺は出ていかないぜ。お互い叩けば埃が出る身だろ。同じ穴の狢って奴さ」とキリコたちに言いました。すると、組織の狙撃手が数発、撃ってきました。どうやら、組織は本気のようでした。機内のバーコフ分隊はゴダンを引き渡すかどうかで口論を始めました。ただ、キリコだけは冷静でした。キリコは機体をほんの10秒でも浮かせ、射室システム開け、ATに乗り逃げ出す作戦を考えました。そのためにキリコはグレーゾン機長と中央制御盤に行きました。中央制御盤は誰かの手によって破壊される仕掛けになっていました。その犯人は副操縦士のショキットでした。ショキットは「ギルガメス軍浄化委員会」のメンバーだったのです。機長は組織の砲撃の衝撃で、ショキットの首の骨を折り殺してしまいました。ショキットの遺体を機内に運ぶと、コチャックはショキットの銃を取り、ゴダンに出ていくように脅しました。コチャックの脅しを無視し、キリコたちは脱出作戦を練っていました。無視状態のコチャックは引き金を引こうとした瞬間、ザキが止めて、5人と機長とで脱出作戦を決行しました。ゴダンはショキットの遺体を副操縦士席に縛りつけ、ゴダンと機長はエンジンを稼働させました。機体は崖から宙に浮き、射室システムから、まずゴダンを除く4人がATで脱出しました。ゴダンは機長をATの手に乗せ、続いて脱出に成功しました。5人の分隊はそれぞれ打ち合わせ通り、ATを駆使し、組織を撃破しました。念のため、コチャックが塹壕を調べると、2人だけ生き残りが出てきました。それを見たゴダンは「二度と俺の前に現れるんじゃねえぞ!」と言い、バトリングガンで蜂の巣にしました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:8.冷獄
惑星クズスクの情報省医療収容所では、ウォッカムはペールゼンにキリコたちの居場所を教えていました。キリコたちはガレアデ極北基地に向かっているところでした。ところがその極北では通常を凌ぐ超異常が発生しようとしていました。それはマイナス185度の気流が台風のように襲い、ある者全てを一瞬のうちに凍結・破壊するというものでした。異能生存体であれば、自らが置かれた環境すらも改変し、生存する。その中でキリコたちがどう生き残るかが見物でした。その頃、輸送機を失ったキリコたちは、吹き荒れる風雪の中を、ATによる徒歩で極北基地へ向かっていました。AT技術者であるコチャックは、マイナス100度でも凍結しないポリマーリンゲル液の配合を成功させていました。予定より3日遅れて、ようやくキリコたちは基地に辿り着きました。ガレアデからの全軍撤収作業が完了した誰もいない基地で、バーコフは刻々と流れてくる気象情報に目を通しました。翌日、キリコたちは雪上戦仕様ATに乗り込み、基地を出発しました。バーコフはとにかく前線基地から離れるように分隊に命じました。元気象観測の専門家であったバーコフの話では、超強力な“氷の嵐”がやってくるということでした。それに巻き込まれればATもろとも死んでしまうというものでした。キリコは冷静に「基地に兵士の姿がなかったのは、撤収に名をかりた退避ということか」と確認しました。ゴダンは、俺たちは何も知らされずにここに送り込まれたということかと憤りました。とにかく、5人はATと駆り、雪上を疾走しました。するとバララント軍のATが襲ってきました。キリコたちは敵ATを次々に撃破していきました。ようやく敵ATの奇襲を撃退したキリコたちは、バーコフの指示で基地に一事撤退し、コチャックの技術力でマイナス200度でも凍結しないポリマーリンゲル液を配合し、そのATで備えるしかないと判断しました。すると遠方から、バララント軍のATの大部隊が迫って来ていました。また、天候は一変して、台風のような不穏な雲と雷で覆われてきました。キリコたちは急ぎ、基地に戻りました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:9.ダウン・バースト
極北基地に孤立したキリコたちに、バララント軍の大軍団が押し寄せてきました。基地に搭載された防衛ミサイルで応戦しますが、大軍隊相手で基地が制圧されるのは時間の問題でした。コチャックは、マイナス200度の超低温でも生き残るためのポリマーリンゲル液の調合を研究、完成させました。そのポリマーリンゲル液を燃料にしたATにキリコたちは乗り、基地から出てバララント軍と戦い、生き残る作戦を実行することになりました。まず、キリコのATが囮になり、できるだけ派手に敵を引きつけて走り、その敵を背後から4人のATで撃破するという作戦でした。キリコは作戦通り、派手に囮になり、敵ATを引きつけ、撃退していきました。他に4人もキリコのATが引きつけた敵ATを次々に撃破していきました。天空では超寒気団が不穏な渦を巻き始めました。キリコを除いた4人のATは一個所に集まりました。そこはバララント軍ATの大部隊のど真ん中でした。すると、天空の不穏な渦は止み、静寂の暗雲の中から猛烈な寒気のダウン・バーストが襲ってきました。そのダウン・バーストはバララント軍のAT操縦士を次々に凍結死させ、ATをも爆破していきました。暫くして、その渦中にいたキリコのATから生命反応が出てきました。そして、あとの4人からも生命反応が確認されました。キリコたちは生き残ったのでした。これを監視していたウォッカムは、ペールゼンにこの事実を告げると、彼は「興味深いことだが…それ以上ではない」と呟きました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:10.戦略動議
キリコが所属するバーコフ分隊の不死を確信したウォッカムは、惑星メルキアの国家最高戦略会議ビルで開かれていた百年戦争終結に向けたメルキア最高戦略会議の演壇上から、「情報省は、政府及び国防総省、そして本会議にご列席の全ての各省庁各位に、新たな戦略構想を導入いたします。来るべき平和のために成すべきことは何か…“モナド”です」と宣言しました。その後、情報省医療収容所のペールゼンの部屋で、ウォッカムは、彼にペールゼン・ファイルを返してきました。「モナド」と聞いたペールゼンは、「屈辱だ。私としたことが隠匿に失敗したらしい」と呟きました。それを聞いたウォッカムは「だが、何であれ、この価値は変わらない」とペールゼンに囁きました。ペールゼンは「忠告しておく。作戦はやめろ。このファイルは誤りだ」と言いました。そう言うペールゼンにウォッカムは「お前は全ギルガメス兵士のデータから生存率を厳密に調べ上げた。そして、キリコ以外にも4名の異能生存体を見つけ出した。それがここにある。いや、1人だけは違う。ザキという少年兵は遺伝的ではない。お前はどうやら、人工的な異能生存体というものを考えたようだな」と語りました。それを聞いたペールゼンは「どこまで知っている」と問うと、ウォッカムは今、話したことは自分の勘で言ったと暴露しました。ウォッカムはペールゼン・ファイルから確固たる隠匿された情報は得ていなかったのでした。しかし、ペールゼンは「異能生存体はキリコだけだ。キリコ以外の者も限りなく奇跡に近いが、異能生存体ではない。単なる近似値にすぎん」と主張しました。ウォッカムは「近似値で十分だ。原理を知る必要はない。それでも歴史は動く。常に完璧を求めるお前のような者はいくらもいるが、私の興味は彼らの機能と結果としての効用だ。彼らをこの収容所に呼び寄せた。無論、キリコも」というと、ペールゼンの部屋を出ていきました。暫くして、キリコが所属するバーコフ分隊が情報省医療収容所に到着しました。ある部屋に通され、キリコたちは、情報省次官フェドク・ウォッカムと面会しました。そして、その秘書コッタ・ルスケから、新たな情報省直轄部隊ISSに所属することを命じられました。ルスケは、キリコたちの分隊に、ここで3日間休暇後、ギルガメス全軍を挙げた「惑星モナド攻略作戦」の最も重要な先兵役を果たすように命じました。以上の命を分隊に告げると、ウォッカムたちは部屋を出ていこうとしました。その時、コチャックがウォッカムに、分隊からの解放を願い出ましたが、ルスケは「そうしよう。任務が終わってからな」と言い出ていきました。コチャックは、またこの分隊で地獄の戦場を味わうのかと思うと怖くてしかたありませんでした。3日間の休暇が過ぎ、雨の日、キリコたちの分隊はヘリで、情報省医療収容所を後にしました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:11.惑星モナド攻略作戦
ギルガメス全軍を挙げた「惑星モナド攻略作戦」が開始されようとしていました。その先陣を切りこむ重要な役目は、キリコ、バーコフ、ゴダン、ザキ、コチャックの5人の情報省直轄部隊ISSでした。キリコたちのアーミースーツも漆黒で統一されました。艦と鉄騎兵の天文学的質量が鉄の惑星モナドを覆い、総動員兵員数1億2000万にも及ぶ史上最大の作戦がモナドを舞台に始まりました。ATたちが地上で、空中で、敵が、味方が、入り乱れ、弾雨が降り、爆音が空間を埋め尽くし、至る所で激しい戦闘が展開されました。その中をキリコたち5人の情報省直轄部隊ISSは、ドッグキャリアーに乗り、モナドの中枢に向けて突入していきました。「当初の予定から30秒遅れだ。取り戻せるか? キリコ、行くぞ!」とバーコフは指令し、更に加速して突入していきました。中枢近くから放たれた防衛ミサイルを巧みにかわしながら、キリコたちは敵の中枢に先陣を切って突入していきました。そして、向かってきたあらかたの敵ATを片づけ、キリコたちの情報省直轄部隊ISSは、コントローラ部を占拠しました。キリコたちが占拠したのは、モナドの全エネルギーとそのシステムのコントローラ部でした。キリコたちは、モナドのコントローラの占拠を開始しました。すると、突然、キリコたちがいたコントローラ部が開き、キリコたちは、底が見えない漆黒の闇の中を落ち込んでいきました。耳鳴りのように聞こえる赤ん坊の泣き声、コックピットに入り込んでくるわけのわからない黒い雲のようなものに、脅えたバーコフはたまらず、マスクを取ってしまいました。キリコたちは何かに轢き吊り込まれているようでした。そして、急にその闇の空間から抜け出ると、そこは敵ATたちのど真ん中でした。集中砲火を浴びながらも、5人はなんとか砲撃をかわし、敵ATを次々に撃破していきました。しかし、バーコフは暗闇の空間での味わった恐怖に我を忘れ、狂ったように、敵ATに向けて発砲しまくり、自分だけ逃げようとしました。このままではバーコフは殺されると判断したキリコたちは、バーコフを強引に奥に轢き吊り込みました。すると、その地面が崩壊し、5人はATもろとも、地下へ落下していきました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:12.不死身の部隊
地下に落下したキリコたち5人は、幸い無事でした。ゴダンはバーコフの胸ぐらを掴み、「てめえ!分隊長のくせに自分だけ逃げようとしやがって!」と怒り狂っていました。バーコフは脅えた顔で「俺は逃げようとしたんじゃない。ただ…」と弁解をしようとすると、ゴダンは銃でバーコフを脅し、みんなに同意を求めました。コチャックは目に涙をためて「あれは何だったんだ。あれは…」と脅えきっていました。ザキも「何が起こったんだ…何が…」と震える体を押さえていました。バーコフは「それは…何か…とんでもないことが起こったんだ」と震えながら言いました。ゴダンはそう言うバーコフに「ごまかすな!」と怒りをぶつけました。するとキリコがATのコックピットを開け、「ダメージを調べる。中からじゃ、わからない」と冷静に言い、ATから降りました。キリコだけが冷静でした。するとバーコフが独り言のように言いました。「聞いたことがある。このモナドにはクエントの古代テクノロジーが眠っていると。それを手に入れれば、銀河を手に入れることも可能だと。それは人が触れてはいけないものだと言うと」と。キリコはそう話すバーコフをじっと見つめていました。コチャックは「おしまいだ。いよいよ年貢の収め時ってやつだ。…」と言うと、ザキは笑いながら「だらしねえ!何とかなるさ!なあ、キリコ。こういうのにあんた慣れているんだろ。あんたはレッドショルダーだろ?」とキリコに問いかけました。バーコフ、ゴダン、コチャックは驚きました。キリコの脳裡にレッドショルダー時代の忌まわしい記憶が蘇り、ザキを睨み付け「誰から聞いた?」と問いました。ザキはとぼけながら「図星だろ」と答え、ゴダンはそれを聞き、大笑いしながら、キリコに「お前も人殺しだったか!」と言い放ちました。キリコは静かに「好きで入ったわけじゃない。俺は観察されてきた。ヨラン・ペールゼンに」と答えました。「ヨラン・ペールゼン?」聞いたことのある名前だと全員が思い出そうとすると、コチャックが「レッドショルダーの創始者だ」と答えました。キリコは過去の忌まわしい記憶を辿り、4人に話しました。自分が250億分の1の確率で存在する特異遺伝子をもつ個体「異能生存体」として誕生したこと、そして、ペールゼンにかつて心臓を銃で撃たれたが、今もこうして生きていることを話しました。そのキリコの話を聞き、コチャックは「早い話が、死なないということか」と呟きましたが、4人には「異能生存体」がどんなものなのか、まだよく理解できませんでした。キリコは4人に「信じろとは言わない。だが、みんな、覚えはないか? これまで生き延びてきたのを。不思議に思わなかったか?普通よりケガの治りが速いと感じたことは?」と静かに問いかけました。すると、ゴダンはキリコを見て「お前がそうだとすれば、一緒にされた俺たちが、意味がないわけがない」と言い出しました。キリコは「なぜ、一緒にされたのか…?」と4人に問いかけました。4人は、素性も歳も経歴もまるで関係ない自分たちを、こうして一つの分隊に集めたのは、ウォッカムの仕業だということに気がつきました。そして、バーコフは「俺たちはウォッカムの実験材料なんだ!…合格だから、ここにいる。コアに侵入して、何か分からないものにはじき飛ばされたが、俺たちはピンピンしている。つまり、俺たちは“異能生存体”なんだ」と全員を諭すように言いました。しかし、コチャックはそれを聞いて大笑いし、「そんなはずはない。…ゴダン、お前はだだのインチキ野郎じゃねえか!」とゴダンに言い放ちました。ゴダンは彼に殴りかかろうとしましたが、バーコフがそれを制しました。ゴダンはコチャックに「貴様こそ、人様をとやかく言えた義理か!薄汚いスパイめ!てめえがウォッカムに何もかも報告していただろうが!…うすのろが生きていくには、イヌになるしかねえのか!」と言い返しました。ゴダンとコチャックは喧嘩になりました。仲裁に入ったバーコフにザキは、「かっこつけんな、分隊長。肝心なときに消えやがって!」と言うと、ゴダンも「分隊長は逃げの名人だ。肝心なときはいないし、いざとなれば、しっぽを巻いて逃げやがる」と責めました。ついでにゴダンはコチャックを「イヌ」呼ばわりしました。その言葉に憤ったコチャックは銃を抜き「もう一度言ってみやがれ!」とゴダンを撃とうとしました。咄嗟にザキがコチャックに飛びかかり、コチャックから放たれた銃弾は、キリコの頬をかすめました。キリコは目くじらを立てることなく淡々と「卑怯だろうと、逃げ上手だろうと関係ない。ペールゼンの考え方はこうだ。理由はともかく、結果として異常な確率で生き残る者が“異能生存体”。生きてさえいれば…」と語りました。それを聞いたコチャックは「それでいいなら、俺は立派な資格がある」と言い、ゴダンは笑いながら「礼儀も仁義もねえ。遺伝子が決める。何をしようと生き残った者が勝ちだ」と言いました。キリコは、「じゃあ、キリコ、俺たちも?」と尋ねるバーコフに「この広い宇宙に、俺1人のはずがないと信じている。どんなに特殊だろうと…」と答えました。安堵する3人でしたが、新兵で実戦経験の少ない少年兵ザキは、不安そうにキリコに「俺も集められた。一緒にされたからには意味がある。一緒に俺も生き抜いた。皆と同じだ。違うか?キリコ!」と問うと、キリコは静かに「普通ならガレアデでとっくに死んでいたはずだ。ザキ!お前も一緒だ」と答えました。その時でした。地面が揺れ、穴の上から銃弾の雨が降ってきました。5人は各自のATに即座に乗り込みました。バーコフは言いました。「俺たちは生き延びられる体なんだ!」と。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:13.コチャック、ゴダンの死
キリコたちはATを駆り、敵ATを次々に撃破していきました。異能生存体のキリコ、そして、異能生存体であると思ったバーコフ、ゴダン、ザキ、コチャックは、「俺たちは死なない」と叫びながら、勇猛果敢に敵ATに向かい、撃滅していきました。敵の攻撃が一段落したとき、コチャックは腹を撃たれて出血していました。しかし、コチャックは、自分は死なない“異能生存体”と信じ込み、自信過剰の躁状態となっていました。コチャックはベルトで圧迫止血し、ATに乗り込むと、敵ATに姿をさらし攻撃しましたが、その挙句、敵ATの集中砲火を浴びて、木っ端微塵に破壊され、分隊最初の戦死者となりました。キリコはその様子を壁の陰から、冷静に見ていました。しかし、残りの3人はコチャックが死んだことに、動揺しました。自分たちが死なない“異能生存体”ではなかったのかということに疑問を感じたからでした。ゴダンはキリコにこの事実をどう受け止めればいいのか聞きました。キリコは「生存確率は高い。ある程度の環境と物理法則は変えられたはずだ」と答えました。ゴダンはキリコへの猜疑心と自らの死の恐怖心から、キリコに向けてロケットランチャーを発射してしまいました。キリコのATは爆風で吹き飛ばされました。ゴダンは完全に錯乱状態となり、バーコフ、ザキに向けてロケットランチャーを向けました。そこへ上空から敵ATが2機、攻撃をしながら、降りてきました。バーコフとザキは敵ATの砲撃をかわし、奥に逃げ込みました。ゴダンのATが振り返った瞬間、敵AT2機からの2本のミサイルがゴダンのATに命中しました。キリコは奥から銃で、その敵ATを撃破しました。煙の中、コックピットがむき出しになったゴダンのATが立っていました。ゴダンは「俺は死なない。コチャックのようなバカとは違う」と叫びましたが、ゴダンの傷は深く、ATにもたれかかり、息絶えました。ちょうどその頃、ペールゼンは、情報省医療収容所のベランダに立ち、ある思いを巡らせていました。そこへ心配したドクター・メンケンが駆け寄ってきました。ペールゼンは彼に「真実とは常に残酷だ。時には受け入れがたくもある。そうではないかね、ドクター」と静かに言いました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:14.バーコフ、ザキの最期
キリコ、バーコフ、ザキは向かってくる敵ATを迎え撃っていました。すると、突然、下部から異常な振動が起き始めました。それと同時に、敵ATが1機もいなくなりました。キリコは敵ATの通信機にプラグを繋ぎ、情報を得ました。バララント全軍にモナドからの撤退命令が出ていました。それを知った3人は、射出カタパルトから一気に逃げることにしました。しかし、脱出装置の争奪戦で無数のATが脱出しようと、敵、味方関係なく、銃撃戦が繰り広げられていました。脱出カタパルトの前で、バーコフは敵ATの攻撃で大きなダメージを受けました。バーコフは、先に戦死したコチャックやゴダンと同じく自分自身も“異能生存体”ではないことを自覚して、兵士になったときに命を捨てた“覚悟”を思い起こし、キリコとザキに「ここは俺が死守する」と言い、2人を脱出させるために残り、「俺は逃げない。もう逃げるのはやめだ」と言いながら自爆装置を押し、多数の敵ATを巻き添えにして自爆しました。脱出ポッドを1台確保したキリコは、バーコフを助けようとするザキのみぞおちにパンチを撃って気絶させ、脱出ポッドに乗り、モナドから脱出しました。その直後、惑星モナドはコアの原因不明の暴走により大爆発を起こし、1憶2000万の兵士を道連れに消滅してしまいました。これほどの殺戮は歴史上なく、軍司令部は戒厳令を引き、作戦立案した情報省ウォッカムをマークするよう命令をくだしました。脱出ポッド内でキリコはザキと2人だけになりました。ザキは目を覚ますとキリコに銃を向け「なぜかわからないが、お前を殺したくなる。…殺したい理由なんかありもしないのに」と言うと、キリコは「お前の脳は何らかの処理がされているはずだ。いいのか?誰かに操られたままで」と言い返しました。ザキは「いいわけないだろう。ダメだ、キリコ!どうしても…俺の体が引き金を引いちまう」と銃を持った手を自分自身で制御できずにいました。キリコはザキの腕を掴み、銃を手放すようにしますが、洗脳によるキリコ抹殺の衝動には抗うことができず、ザキはキリコに「本物の“異能生存体”はこんな所で死なないんだろ。生き抜け。そして、お前を殺したい奴、俺を操った奴の始末、頼んだぜ」と言うと、ザキは銃で自らを撃ち自殺しました。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズのネタバレあらすじ:15.「その私の名は今後、記録から消えるでしょう」
その頃、情報省医療収容所では、ドクター・メンケンがペールゼンに少年兵ザキの写真を見せ、「いきなりキリコとの接触は無謀だったかもしれません。しかし、モナド突入まで生存したという驚異的データは評価に値します。今後はより的確な洗脳も可能かと」と報告していました。そこに入ってきたのは、フェドク・ウォッカムとコッタ・ルスケでした。この光景をみたウォッカムは驚きました。実はメンケンは、ペールゼンの部下であり、ウォッカムの元に潜入させた要員だったのでした。ウォッカムはペールゼンに最初から踊らされていたのでした。ペールゼン・ファイル内のキリコ以外のデータは全て偽物で、ウォッカム自身も“異能生存体”の特殊な能力を過大評価し、惑わされ、必要のない「惑星モナド攻略作戦」を立案・遂行できると信じこまされていたのでした。大きく動揺し、これまでのキャリアも失ったウォッカムは、ペールゼンを殺害するように、秘書官ルスケに命令しました。しかし、ヘリで飛び立とうとしているペールゼンの「私には偶然とは思えない。モナドにはキリコがいたのだ」という言葉を聞いたルスケは、ペールゼンの部下になることを志願しました。寝返ったルスケに憤ったウォッカムは、彼を射殺しようとしましたが、逆にルスケから返り討ちにあい、射殺されてしまいました。ルスケは去り際に言いました。「その私の名は今後、記録から消えるでしょう」と。
装甲騎兵ボトムズ ペールゼン・ファイルズの結末:エピローグ:「俺にも与えてくれ、長い眠りを」
キリコは、ザキの遺体を乗せた脱出ポッド内で、自ら睡眠薬を打ち、眠りにつきながら思いました。「闇の底に沈んでいく意識を、俺は覚えている。それはささやかな祈りだ。このまま永遠に目覚めないでいい。最期まで人間らしかった彼らのように、俺にも与えてくれ、長い眠りを」と。そして、キリコを乗せた脱出ポッドは、砂漠の惑星に流れ着きました。キリコはザキの遺体を埋葬すると、天空に向け銃を撃ち、その銃を捨てて、ひとり、砂漠の荒野を歩みました。
この映画の感想を投稿する