やじきた道中 てれすこの紹介:2007年日本映画。1802年から1814年にかけて初刷りされた、十返舎一九の滑稽本『東海道中膝栗毛』を元に、「花のお江戸は毎日が愉快で大騒ぎ!」というキャッチコピーで、弥次さんと喜多さんの珍道中を映画したものです。弥次さんには十八代目・中村勘三郎、喜多さんには柄本明、二人と共に旅する花魁役には小泉今日子、そして脇役には多彩な出演者を配したハートフル・コメディ・時代劇映画です。
映画「やじきた道中 てれすこ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「やじきた道中 てれすこ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「やじきた道中 てれすこ」解説
この解説記事には映画「やじきた道中 てれすこ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:1.プロローグ:謎の怪魚「てれすこ」
時は天下泰平・江戸時代のある夜、静かな霧に包まれた大坂の淀川に、一艘の小舟が浮かんでいました。その舟には、与兵衛とおさんという二人の老人が乗っていました。おさんは商家の娘、与兵衛はその奉公人でした。身分の違う二人はいつしか禁断の恋に落ち、淀川で心中して、あの世で一緒になろうと誓いあっていました。与兵衛はおさんの足を手ぬぐいで縛ろうとし、いよいよ二人で心中の決意をしたときでした。突然、舟がぐらぐらと揺れだし、回り始めました。川底から何か得体の知れない何かに、操られているようでした。驚いた二人は心中するつもりでしたが、死ぬのが恐ろしくなり、我先に逃げようと舟の上で押し合いになりました。結局、二人は川に飛び込み、別々になんとか川岸に生きて、逃げることができました。その翌日、この出来事は直ぐに瓦版屋の耳に入り、大坂の街中の話題となりました。なんと、与兵衛がその得体の知れない怪魚を捕獲したのでした。与兵衛はこの怪魚を持ち、奉行所に行きました。奉行は与兵衛に賞金を出し、お白砂の場でその怪魚の名を尋ねました。与兵衛はその怪魚を「てれすこ」と言いました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:2.弥次さんと花魁・お喜乃
その頃、江戸の街では、新粉細工職人の弥次郎兵衛(通称・弥次さん)は、子ども相手に新粉で動物などを作り売りして、生計を立てていました。弥次さんは、品川の遊郭“島崎”で売れっ子の花魁・お喜乃に頼まれ、偽りの切り小指を新粉で何本も作っていました。お喜乃は太鼓持ち・梅八を使って、馴染みの客たちにその偽物の切り小指と証文を贈り、愛の証と嘘をつき、金をせしめていました。お喜乃は早く、この稼業から足を洗いたかったのでした。お喜乃は花魁と言っても、全盛期が過ぎ、世代交代の時期が来ていました。若い花魁・おみちが台頭してきていました。おみちはお喜乃の昔馴染みの客を奪い、お喜乃の気持ちは焦る一方でした。そんなある夜、弥次さんはお喜乃の所に行ったとき、偶然、カワヤで貼ってあった瓦版を見ました。そこには、大坂で「てれすこ」なる奇妙奇天烈な怪魚が捕獲されたと書いてありました。そして、その肉を食べれば、あらゆる病を治すと書かれていました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:3.弥次さん、喜多さんと再会
一方、その夜、同じ遊郭の別室で、弥次の幼馴染みの喜多八(通称:喜多さん)は酒も飲まず、女も抱かず、ただただ落ち込み、死にたいと思っていました。実は喜多さんは町役者でした。喜多さんは、その日の昼の芝居『忠臣蔵』の見せ場の一つ、殿中・松之廊下で吉良に斬り傷を負わせる浅野内匠頭の役を演じたのでした。喜多さんはその見せ場で、吉良役を刀で刺し殺してしまうという大失敗をおかし、客から怒鳴られヤジを飛ばされてしまったのでした。役者としてプライドを持っていた喜多さんは、それで自分を責め、もう役者として生きられないと大泣きし、落ち込んでいました。喜多さんは部屋の女郎が出ていった隙に、外の庭に行き、大きな木の下の灯籠に昇り、紐帯で首を吊って自殺しようとしました。しかし、気の小さい繊細な喜多さん、いざとなると腰が引けてなかなか自殺できませんでしたが、うっかり足を滑らし、首吊り状態になっていきました。喜多さんは怖くなり、必死にもがきますが、喜多さんの体は中に浮き、ちょうど遊郭の二階の弥次さんとお喜乃の部屋まで体が上がっていきました。ちょうどその頃、お喜乃は気のいい江戸っ子・弥次さんが、自分に惚れている気持ちを利用して、この置屋から連れて逃げてほしいと懇願していました。お喜乃は弥次さんをその気にするため、自分の父親が大病を患い、危篤状態で一目でも会いたいという大嘘をつきました。弥次さんは惚れたお喜乃を信じ、「すてれこ」を食べれば治ると言い、彼女の申し出を快諾していたところでした。お喜乃は快諾してくれた弥次さんに抱きつき、シメシメと思って窓の外を見ると、人が浮き上がって来たのを見て驚き、叫び声をあげました。驚いた弥次さんが外を見ると、その人は喜多さんでした。すると、喜多さんは紐帯が切れ、首吊り状態から脱し、庭に落っこちしました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:4.奇妙な三人の珍道中開始
惚れたお喜乃から連れて逃げてと言われた弥次さんは、大喜びで家に帰り、旅支度を始めました。もう役者として江戸にはいられない喜多さんは、半分、弥次さんに「あの事を話す」と言い脅し、半分、頼み込みました。弥次さんは、酒癖の悪い喜多さんに「酒は一滴も飲まない」という約束をして、一緒に旅に出ることにしました。もう膳は急げで、その真夜中に三人は江戸から逃げ出すことにしました。難関はどうやってお喜乃を弁天一家の地廻り・太十と甚八の目をごまかして、連れ出すかでした。しかし、そこは役者の喜多さん、一計を案じ、三人で大芝居をうち、太十と甚八をまんまと騙して、お喜乃を遊郭から連れ出すことに成功しました。三人の奇妙な珍道中が始まりました。東海道の戸塚宿に着いた三人は、ある旅籠の一部屋で、一夜を過ごすことにしました。弥次さんはお喜乃と一緒に寝られると思い、ウキウキしながら、邪魔者の喜多さんを一人で寝かせるように、部屋の模様替えをしていました。お喜乃の危篤の父親への悲しい思いの隙に入り、寝取ろうとする弥次さんを見た喜多さんは、弥次さんに叱咤しました。弥次さんはちょっとしょんぼりしましたが、大嘘をついていたお喜乃は笑って外で団子を食べながら、ウキウキしていました。その頃、大坂では「てれすこ」に続いて、またもや奇怪な生き物の死骸があがり、奉行は報奨金目当てでその名を知っていると言う与兵衛を呼びつけました。奉行は与兵衛にその生き物の名を尋ねると、与兵衛は「すてれんきょう」と答えました。奉行は与兵衛の企みを知っていました。奉行は与兵衛に「たわけ者!今度は『てれすこ』の干物じゃ!報奨金目当てで御上を謀る不届き者!」と激怒し、与兵衛を牢屋に入れました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:5.戸塚宿での珍事
その夜、大坂から薬売りがやってきて、「てれすこ」事件を話して回り、旅籠の客を楽しませていました。弥次さんはその薬売りから、万病に効くという「てれすこ」の黒焼きを買い、お喜乃に渡し、お父さんに飲ませるように言いました。すると、お喜乃は心底自分の事を信じ切っている弥次さんを見直し、「あの首吊りの兄さん、今夜はどこに寝るんだろうね」と思わせぶりに言うと、風呂に入りに行きました。その言葉を聞いた弥次さんは、大喜びしました。その時、隣の部屋から女の人のすすり泣きが聞こえてきました。弥次さんはそっとふすまを少し開け、様子を窺うと、そこには一人の浪人とその妻がいました。二人は久しぶりに会ったようでした。弥次さんはそっとふすまを閉じ、一人、部屋で風呂からあがってくるお喜乃を待ちました。その頃、階下では薬売りを囲み、大勢の客たちが酒を酌み交わしながら、談笑していました。しかし、喜多さんはその中に入らずに一人、階段で茶を飲んでいました。すると、喜多さんの耳に、江戸の町芝居『忠臣蔵』で浅野が吉良を刺し殺してしまったという事件の話が、飛び込んできました。それはまさに喜多さんがやってしまった大失敗の芝居でした。それをみんなは酒の肴にして、大笑いしながら飲んでいました。喜多さんは逃げ出したい気分でした。するとそこに風呂からあがってきたお喜乃が来て、喜多さんを強引にその中に入れ、一緒にお酒を酌み交わし出しました。喜多さんは弥次さんとの約束を破り、酒を飲んでしまいました。一方、弥次さんは一人部屋で飲んでいました。すると、隣の浪人の部屋から般若心境を唱える声が聞こえてきました。弥次さんは不思議に思い、そっと覗くと、浪人が一人、床の間に向かって般若心境を唱えていました。浪人は一人で、さっきいた妻らしき女性はいませんでした。浪人は弥次さんが覗いているのに、気がつき、酒を少しばかり欲しいと頼んできました。気のいい弥次さんはその浪人・沓脱清十郎に酒を渡しました。床の間には一つの頭蓋骨が置いてありました。清十郎の話では妻・菊はあらぬ罪を着せられ自害し、しばしば幽霊となって姿を現すと悲しそうに語りました。妻を亡くしていた弥次さんは、清十郎のその話を信じ込み、その妻・菊の弔いのためにと路銀を清十郎に渡しました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:6.喜多さん、大暴れ!
その時、旅籠が大きく揺れ、1階から喜多さんの大声が聞こえました。驚いた弥次さんは、直ぐさま、清十郎の部屋を出て、1階に行きました。清十郎は弥次さんが出ていくのを見ると、妻に呼びかけました。すると妻・菊が押し入れから出てきました。清十郎はそれまでの風体から一変し、「うみゃあこといったなあ~。やっぱ、騙くらかすのは江戸っ子が一番だで」と言い、妻と一緒にさっさと路銀を持って逃げました。清十郎たちは詐欺師だったのでした。そうとは知らない弥次さんが、1階に行くと、そこはもう修羅場と化していました。その中で畳を積み重ね、一人悠然と酒を飲んでいたのは、凶暴な酒乱と化した喜多さんでした。そうとは知らなかったお喜乃は驚き、弥次さんに詰め寄りましたが、「飲んで悪いか~!」と怒鳴る喜多さんを弥次さんも止められませんでした。きっかけは喜多さんの役者としての失敗談を酒の肴にしていた薬売りとお客たちに、酒乱の喜多さんが激怒したからでした。弥次さんはその旅籠の主のように振る舞い、客や番頭たちの頭を丸坊主にして、踊らせ、やりたい放題をしました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:7.子狸との出会い
次の日、喜多さんは、昨夜の詳細なことは覚えていませんでしたが、自分がしでかした事の重大さだけは弥次さんとお喜乃から聞き、猛省しつつ、しょんぼりとして、旅について行きました。すると、一匹の子狸が首を縄で縛られ、子どもたちにいじめられている姿を見ました。昨夜の喜多さんの大暴れで路銀が大幅に少なくなり、食費を削りお腹がぺこぺこの弥次さんは、その子狸を殺して、狸鍋にして食べようとしました。弥次さんは子どもたちに手伝ってもらいながら、川岸の石で包丁を必死で研ぎました。しかし、いくら腹が減っているとはいっても子狸が可哀想と思った喜多さんとお喜乃は、子狸をこっそり逃がしてあげました。子狸は山奥に逃げて行きました。三人は腹ぺこのまま、旅を続け、とうとう収穫を終えた田圃で倒れるように休みをとりました。するとそこに一人の子どもがやって来ました。子どもはお団子を持って三人の前に現れました。腹ぺこの三人は団子を食べながら、子どもに尋ねると、子どもは自分は助けてもらった子狸だと言いました。にわかに信じられない三人に、子どもは子狸へと変身をといて証明して見せました。子狸は恩返しをしないと、母親に怒られて、巣穴に入れてもらえないと言いました。しかし、その恩返しの相手は、喜多さんとお喜乃でした。弥次さんは殺して食べようとしたので、子どもは除外し、冷たくあしらいました。子どもは何でも恩返しをすると言い、道案内も兼ねて、共に旅に行きました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:8.子狸の恩返し
三人はその夜、小田原の浜でやっている賭場に行きました。文無しの三人は、お喜乃を方に代貸から金を借り、博打を打つことにしたのでした。三人には必勝策がありました。それは子狸をさいころに化けさせて、自分たちのはったようにさいころの目を出させるというものでした。代貸は三人のもってきたさいころを、丹念に調べましたが、細工はなさそうと判断し、子狸が化けたさいころを使うことにしました。さあ、三人と一匹の子狸の大博打が始まりました。弥次さんは壺が振られ、閉じられると、自分たちがはった目をその壺の中の子狸に聞こえるように、大声で話しかけました。子狸はその声を聞き、壺の中で必死で計算して、三人が勝つようにさいころに化けました。三人と子狸の策は、大当たりし、がんがん勝ちまくりました。その様子を見ていた代貸は不審に思い、子分に調べさせました。子分は縁の下に潜り込み、そっと壺の中で何が起こっているのかを調べました。子分はその様子を見て、ビックリしました。さいころの一つが消え、ちっちゃな子どもがうろうろ歩いていたのでした。子分は目を疑いつつ、持っていた針で、その子どものお尻を突っつきました。子どもはお尻を針でつつかれながらも、二人に恩返しするために、さいころに化け、三人を大勝ちさせることに成功しました。三人は大喜びしました。子狸のお尻の手当をしてあげると、三人はお礼を言い、お金を渡そうとしました。しかし、子狸は貰うとご恩返しにならないと言って、礼儀正しく深くお辞儀をすると、母親のいる自分の巣穴に帰っていきました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:9.弥次さんの「あの事」
その頃、大坂では「すてれんきょう」と言った与兵衛が投獄されていることに、抗議する意味で、「イカを干した物をスルメと言うのはいけないのか」と言い、奉行所内にスルメを投げ入れるという抗議運動が起きていました。奉行はほとほと困り果て、白砂に与兵衛を座らせ、吟味しなおしました。与兵衛は奉行に「“しらす”はどない言いまひょ?干したら、“ちりめんじゃこ”に名、変わりますけど?…“とうふ”の絞りかす…」と尋ねました。奉行は与兵衛の質問に答えられず、与兵衛を釈放することにしました。一方、弥次さんら三人は、お喜乃の故郷に向けて、楽しく旅を続けていました。そんなある日、お喜乃は弥次さんにお父さんが大病であるのは嘘だと告白しました。弥次さんは驚きましたが、お喜乃の気持ちを思いやり、始めから知っていたふりをしました。お喜乃はずっと気になっていた喜多さんが弥次さんに言う「あの事」を聞きました。喜多さんにも「あの事」がどの事なのか、はっきりと知りませんでした。ただ、喜多さんはお喜乃に「里に帰って、お父さんの顔を見たら、弥次さんと夫婦になってほしい」と言いました。喜多さんはお喜乃に弥次さんには流行病のコロリで、妻と息子を同時に亡くし、その妻がお喜乃に瓜二つだと語りました。お喜乃はそれを聞き、弥次さんが自分に惚れている一つの訳を知りました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:10.お喜乃の一人旅
そして、翌朝、お喜乃は「ありがとう」と置き手紙をして、一人で宿を立ち、里を目指しました。弥次さんと喜多さんは後を追いかけるように、旅立ちました。一人旅をするお喜乃は、待ち伏せしていた地廻り・太十と甚八に見つかってしまいました。二人に捕らわれ、江戸の遊郭に連れて行かれそうになったとき、大勢の男たちが砂煙を上げ、お喜乃のもとに駆け込んできました。みんな手にお喜乃の偽の切り指と証文を持っていました。みんな、お喜乃の騙されお金を取られた男たちでした。男たちは憤り、お喜乃に詰め寄ってきました。そんな男たちに太十と甚八は、お喜乃は商売道具と言い、刀を抜き脅しました。男たちは太十と甚八に脅え、お喜乃の陰に隠れようとしました。そんな男たちを見たお喜乃は、開き直り、「女郎を盾に隠れてどうすんだい!…女郎ってのは、“だ・ま・し・ま・す”って書くんだい!色恋の手練手管でおまんま食ってんだい!…男に本気で惚れたときには、女郎をやめるって決めてんだい!…江戸には野暮と化け物はいないんじゃないのか~い。…このまま帰って、江戸中の笑いものになるか、こいつらをとっちめて、…江戸中の郭の女にもてて、もてて、もて倒すか。さっさと決めとくれ!」と啖呵をきりました。その言葉を聞いた脅えていた男たちは「もてて、…もう一人はたくさんだ」と呟きながら、太十と甚八に殺気を放ちながら詰め寄りました。太十と甚八は男たちの気迫に圧倒され、江戸に逃げ出しました。男たちも二人を追って江戸に帰って行きました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:11.お喜乃、死す?
お喜乃が里の実家に帰ると、ちょうど父・杢兵衛が後家をもらい、祝言をあげているところでした。お喜乃が遊郭から逃げてきたことを知った杢兵衛は、地廻りが追ってくると思い、お喜乃を村の古寺に隠しました。そこに到着したのが、弥次さんと喜多さんでした。杢兵衛たちは、二人を地廻りと勘違いして、お喜乃は村の底なし沼に、鯉を捕りに行き、足を滑らせ死んだと嘘をつきました。それを聞いた弥次さんと喜多さんは驚き、悲しみました。二人はせめて遺体をあげて、ちゃんと弔ってやろうと言い、沼をさらうと、2つの頭蓋骨があがりました。それもきれいな頭蓋骨でした。まだ、到着して月日が経っていないにも関わらず、きれいな骨になっていることに二人は不思議に思いましたが、ひとつがお喜乃だと弥次さんは言い、それを古寺で弔うことにしました。杢兵衛は変ないきさつになったことをお喜乃に告げ、古寺の奥の観音像の仏壇にお喜乃を隠しました。弥次さんは、喜多さんを坊さんにして、お喜乃を弔いました。弥次さんはお喜乃を連れ戻すと願いながら、必死で念仏を唱えました。お喜乃は、弥次さんの「女もくさやといっしょだよ。古いものほど味がよくなるんだい」と愛の言葉を告げました。お喜乃はそんな二人の声を聞き、だんだん腹が立ってきました。お喜乃は生きているのに死んだことにされ、隠れていることに憤り始め、横にあった観音様の像を使って、仏壇の扉を蹴破りました。必死で念仏を唱えていた弥次さんと喜多さんは、ビックリ仰天しました。そりゃそうです。死んだと聞かされたお喜乃が、仏壇の奥、埃煙の中から、観音像と一緒に飛び出してきたのですから。弥次さん、喜多さんは仁王立ちのお喜乃を見て、驚きつつも、喜びました。
やじきた道中 てれすこのネタバレあらすじ:12.弥次さん、てれすこを食す
蘇った(?)お喜乃は実家にとどまることにしました。弥次さんと喜多さんは、このまま旅を続けることにしました。弥次さんはお喜乃に後ろ髪を引かれながらも、江戸っ子らしく粋に旅立ちました。「唐変木…」と呟きながら、お喜乃は弥次さんの後ろ姿を眺めました。ある日、道中で弥次さんは「てれすこ有り」と書かれた茶店を見つけました。一度食べてみたかった弥次さんは喜多さんを連れ、その茶店に入り、女将・お仙からてれすこを出してもらいました。なぜかお仙は泣いていました。弥次さんはてれすこを食べると、意識が朦朧としてきて倒れ、夢を見ました。それは亡くなった女房・おりつと、息子・信吉が江戸の長屋で暮らしていた姿でした。おりつはまさにお喜乃と瓜二つでした。弥次さんは信吉に「おめえたちがいなくなってからよ。なんべん首くくって死のうと思ったか」と心の内をうち明けました。すると、遠くからお喜乃の「弥次さん~戻っておいでよ~」という声が聞こえてきました。おりつと信吉に、弥次さんは「本気でお喜乃に惚れちまった。ダメなお父っちゃんでごめんよ」と謝りました。おりつと信吉は笑ってうなずき、弥次さんをおいて消えてしまいました。目が覚めた弥次さんは、瓜畑の土の中に首から下を埋められていました。弥次さんはてれすこの毒気にあたり、死線を歩いていたのでした。茶店のお仙から毒気を抜く方法を聞いた喜多さんが、弥次さんを埋めて見守っていたのでした。生き返った弥次さんを見た喜多さんは、泣いて喜びました。しかし、その後すぐ、喜多さんは「おめえにあんなもの食わせて、銭だけとりやがって!あのくそババ!」と言うと、お仙を追いかけていきました。弥次さんは喜多さんに早く出してくれと叫びました。
やじきた道中 てれすこの結末:13.エピローグ:弥次さん、喜多さん、そしてお喜乃の珍道中再開
富士山が見える富士川、弥次さんと喜多さんは、銭を節約するため、自分で頭に着物・荷物をまとめ、川越えをしていました。弥次さんと喜多さんは昨夜の宿屋のことで、いつものように口げんかをしていました。その前に現れたのはお喜乃でした。お喜乃は悠々と銭を払って、輩台渡しに乗って川越えをして行こうとしていました。お喜乃は弥次さんを見て「この、野暮てん~!」と愛情を込めて言いました。三人は笑い合い、再び東海道を西に向かって、共に旅することになりました。
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