少年と自転車の紹介:2011年ベルギー、フランス、イタリア映画。孤独な少年シリル、週末だけの里親のサマンサとの交流によって成長していく姿を見守るのは、彼がいつも乗っている自転車だった。
監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ 出演:セシル・ドゥ・フランス、トマ・ドレ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ、エゴン・ディ・マテオ、オリビエ・グルメほか
映画「少年と自転車」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「少年と自転車」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「少年と自転車」解説
この解説記事には映画「少年と自転車」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
少年と自転車のネタバレあらすじ:迎えに来ない父親を探して
唯一の肉親である父親にホームに預けられたまま迎えを待つシリル。しかし、父親は迎えに訪れず、住んでいた家は引き払われ、事実上音信不通。シリルの言い分はまだ自分の自転車があるはず。ある日、学校に行く振りをして父親と住んでいた団地を訪れると、管理人にその部屋は既に空き部屋だと告げられてエントランスを空けてもらえない。仕方なく、診療所のインターホンを押し、エントランスを空けてもらい父親と住んでいた部屋へ行くと向かいの住人にその部屋は空き家だと告げられる。そこへ、学校へ行ってないことで察したホームの職員たちがシリルを保護しにやってくる。シリルは先ほどインターホンを押した診療所へ逃げ込み、待合室にいた女性に抱きついて、ホームの職員に捕まるのを嫌がる。
ホームに連れ戻されたシリルの元に、シリルの自転車を買い取ったサマンサという女性がやってくる。かの序は診療所でシリルが抱きついていた女性だった。彼女は売られてしまっていた自転車を買い戻したのだと言う。シリルは父親が自分の自転車をいり払ったと言う事を信じたくなく、盗まれて売られたのだと言い張る。そして、帰り際のサマンサに週末里親になってほしいと頼む。
少年と自転車のネタバレあらすじ:週末だけの里親、サマンサ
サマンサは以前父親と住んでいた団地の近くで美容師をしていた。シリルは土日を彼女の家で過ごし、父親探しをした。途中、イタズラに自転車を盗まれ、不良グループに目をつけられるも、唯一見つけた手がかりは、ガソリンスタンドに貼られた、父親のオートバイと自分の自転車の買い手募集の貼紙だった。シリルはサマンサに頼んで彼女が自転車を買い戻してくれた相手に連絡させてもらったが、相手は父親の住所までは知らなかった。情緒不安定なシリルを見かねてサマンサは警察に頼み父親の居所を探してもらい、会う約束を取り付けた。
次の土曜日父親と約束をした場所へサマンサと訪れると、父親はいっこうに来ない。仕方なく、家を訪ねると見知らぬ女性がアカシアと言うレストランにいると教えてくれた。すぐ様行ってみると、中で父が仕込みをしていた。裏口へ回って父を呼び止めるシリルに、表から入るように父は言う。父親と久しぶりにあって嬉しいシリルは、話をしようとするものの、会話は打てど響かず。シリルが週末に電話をくれるように頼んでもかわされてしまった。自転車はお金に困って売ったということ、お金を貯めるまで一緒には暮らせないと言うことだけ言われた。サマンサが、父に話を聞きに入ると、祖母が泣くなってシリルの面倒を見るのが厳しくなったということと、子供連れでは再就職が厳しいので引き取れないと言う。
別れの時、シリルが週末の電話をせがむと、父親は電話はしないと言い放つ。父親に拒絶されたシリルは、不安定になりサマンサの車の中で自分を傷つけてしまう。そんなシリルを戸惑いながらもサマンサは里親として迎えようとしていた。
サマンサは恋人のジルをシリルに紹介して、遊園地に行ったりするものの、シリルは懐こうとしないどころか、サマンサとジルが一緒にいる事をあまりよしとしなかった。
少年と自転車のネタバレあらすじ:初めての友達は不良少年
ある日、サマンサに頼まれた買い物を済ませて、広場で遊んでいる子供たちを見ていると、遊びに誘われる。買い物袋を置きに美容室に戻った隙に自転車を以前も盗んだ不良に盗まれてしまう。シリルにわざと追いかけられるように進む彼を追っていくと、道路沿いの茂みの中に入ってしまう。そこで自転車を返してもらおうと喧嘩を始めると不良具ルームのほかのメンバーがはやしたて、なぜかシリルを応援してくれた。そして自転車を取り戻し、その中のリーダー格の少年と知り合いになる。パンクしてしまった自転車を直してもらっている間に団地にある彼の家へ誘われる。部屋に入ると、高齢の祖母がベッドから落ちそうになっていた。お婆さんの世話をする彼は、自分の家へ誰かを入れるのはシリルが初めてだと言い、団地の皆は自分を売人だと蔑むと言う。彼とゲームをして遊ぶシリルはサマンサからの携帯電話への連絡に一回だけ答えるが後は無視して遊んでしまう。日も暮れた頃、パンクを直してもらい、「襲撃」の話をしながら、帰ろうとするシリルに、彼はサマンサとの関係を聞く。週末だけの里親だと言うと、自分のところで一緒に住まないかと言う。話が盛り上がってきた所で、車に乗ったサマンサに呼び止められ、そのまま初めてできた友達とは別れる。
サマンサは、彼は売人だから付き合うのは止めなさいと怒り、シリルにばかり構うサマンサに、里親を辞めるように迫る。サマンサが里親を辞めないというと、ジルは車を降りて去ってしまう。
サマンサに止められながらも、不良少年の彼とシリルは遊び半分で「襲撃」の練習をしていた。夜、外に出るのを止められてもシリルは、「襲撃」を行う店の閉店後の時間を見計らい飛び出すと、彼に教わったとおりに襲撃し、お金を奪う。しかし、それを襲った男の息子に見られてしまう、息子を木の棒で殴ってしまう。襲撃を失敗した事で彼はもう助けないと言い放ち去ってしまう。シリルは奪ったお金を持って、父親の所へ行くが盗んだ大金に、父親にもう二度と来るなと言われてしまう。
少年と自転車の結末:里親サマンサと穏やかな日々を見変えた矢先
後日サマンサを踏まえて、簡易の裁判が行われ、シリルの謝罪の言葉と、サマンサが賠償金を払う事で示談が成立する。殴られた当人たちは来ないのかと聞くと、彼らが来ても謝罪は受け入れられないからと、代理人に言われる。
サマンサとの生活が穏やかになり始め、シリルの情緒不安定も治ってきた頃、二人でピクニックに行く。少し大きなサマンサの自転車についていくシリル。作ってきたサンドイッチを広げながら、今日の夜は人を呼んでバーベキューをしようということになり、帰りにスーパーに寄ると、肝心の炭が無い。そこでシリルは近くにあるもう一軒の小さなスーパーに寄って買えると申し出る。サマンサと別れて無事に炭を手に入れたシリルは、家路の途中で襲撃をした親子に遭遇してしまう。裁判で示談が成立していたけれど、腹の虫のおさまっていない息子は父親の制止も止めずにシリルを追い詰める。シリルは木の上に登るところまで追い詰められてしまう。投げられた石が命中し転落して動かなくなってしまったシリル。父親は救急車を呼ぼうとしながら、息子に、もしシリルが死んでしまったとしても石を投げて木から故意に転落させた事は伏せるように言い含め、シリルにあたった石を遠くに投げてしまう。程なくして、救急車を待つまでもなく、目を覚ましたシリルに手を差し伸べようとするが、シリルはその手を取ることなく、再び自転車に乗って家路につく。
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少年と自転車について:自転車と共に、成長していくシリル。
主人公のシリルを支えているのは常に自転車の存在。そして、彼も自転車をとても大事にしているというのが、盗まれそうになるたび必死に走るシリルの姿でよくわかる。まだ、誰かに頼りたい年頃だが、頼る宛ての無いシリルが、自転車に乗っている時だけその表情が変わる。多感な年頃に入り自分でも感情のバランスが取れなかっただろう事は、週末だけの里親のサマンサの戸惑う様子からも伺える。物言わぬ自転車はある種、シリルにとっての拠り所であり、彼の成長をずっと見守り続けていた存在だろう。やがてサマンサに心を開き始めた時も彼は自転車に乗っていた。そして、最終的に彼が襲撃した店の息子の報復を受け入れた時も自転車に乗って去る。シリルにとって自転車の存在はどれだけ大きなものだった痛感する。
父に捨てられた事が受け入れられず、非行に走ろうとする少年をサマンサが親代わりとなって見守ることで普通の少年になれる。
里親って子供が嫌になったら無責任に辞めることもできるけど、恋人よりも少年を選んだり傷つけられても受け入れる強さが心に沁みた。本当の親よりもよっぽど親らしい。
最後が唐突に終わってびっくりしたけど良いストーリーだった。