女経(じょきょう)の紹介:1960年日本映画。市川崑がリーダーとなり、吉村、市川、増村の三監督が京マチ子、山本富士子、若尾文子の三大女優を主演に迎えた1960年大映の正月映画。脚本は三話とも八住利雄。
監督:増村保造(耳を噛みたがる女)、市川崑(物を高く売りつける女)、吉村公三郎(恋を忘れていた女) 出演者:「耳を噛みたがる女」 若尾文子(紀美)、左幸子(五月)、川口浩(田畑正巳)「物を高く売りつける女」船越英二(三原靖)、山本富士子(土砂爪子)「恋を忘れていた女」京マチ子(三津)、叶順子(弓子)、川崎敬三(吉須)、中村鴈治郎(三津の義父)、根上淳(兼光)
映画「女経(じょきょう)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「女経(じょきょう)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「女経(じょきょう)」解説
この解説記事には映画「女経(じょきょう)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
女経(じょきょう)のネタバレあらすじ:「耳を噛みたがる女」
水上生活者が暮らすだるま船が何艘も隅田川に浮かんでいる。その一つから紀美が出てくる。彼女の行き先は大阪から東京に出張中の、キャバレーの得意客の泊っているホテル。ベッドの上で男の耳を噛む。これでたいていの男は彼女にお金を出す気になる。ところが男が風呂に湯を入れている時に電話がかかってくる。父親の手術だと言って慌てて部屋を紀美は出る。彼女はいつもこの調子で男から金をまきあげるけれどセックスはしない。電話をかけてきたのは彼女の妹で、父親の手術は嘘。キャバレー・ゴンドラの同僚ホステスの間で、売れっ子だがしたたかな紀美の評判は悪い。同僚の中で彼女の味方は五月だけだった。しかし、紀美は大東機材の社長の息子の田畑正巳だけは愛していた。彼にだけは嘘はつかない。ためたお金でこまめに大東機材の株だけを買っていた。正巳とゴンドラを出て、ダンスをしてからホテルへ。紀美は結婚する気があるなら泊っていって、なければ帰ってと正巳に言い、ついに二人はホテルで一夜を共にする。だが、正巳は翌朝、一人で帰っていった。ホテルの勘定は紀美にまかせた。紀美が五月のアパートに行くと別のホステスからその日、正巳が別の女と結婚式を挙げることを知る。正巳は紀美が自分を本気で愛していること、自分も紀美を愛して始めていることを感じる。五月のアパートに来て紀美に求婚する正巳。だが、紀美は前夜のことは全部嘘だと言って正巳からホテル代を取って帰してしまう。紀美には初恋の男と結婚の約束をしながら捨てられた過去があり、他の女に同じ経験をさせるのは忍び難かった。
紀美は今日も兜町へ出かける。
女経(じょきょう)のネタバレあらすじ:「物を高く売りつける女」
流行作家三原靖の失踪を新聞が伝える。自殺説が流れる。当の三原は海岸に身を横たえていた。彼が体をもち上げたとき、向こうの砂浜に水色の和服の女がいた。翌日三原は崖の上から赤いショールが落ちてくるのを見る。落としたのは昨日の女だった。崖の上で、その謎めいた雰囲気の女に初めて声をかける。夜、女は砂浜で手紙の束を燃やしている。今晩はと声をかける三原に女は、死んだ夫の持ち物を全て海に返していると言う。死んじゃいけませんよと言って女と別れる前に、三原はこっそり燃えさしの手紙を盗む。翌日、三原は女の家を発見する。家の中へ通される。風呂をすすめられる。湯舟につかる三原の前に女も裸で入ってきた。湯上りに三原は女に接吻してしまう。あなたはいつも今日のようなことをしてるんですねと疑う三原に、女は、夫がお風呂のとき、いつも私に背中を流させた、あなたの背中を夫と思って流させていただいたと答える。そして男が流行作家三原靖であると知っていた。女は、夫と過ごしたこの家に思いを残しながらも、この家を売らざるを得ないと言う。三原は彼女のためにこの家を買うことにする。売値は六百万だった。契約の日、三原はスーツ姿で手付金の百万円を持って女の家を訪ねる。いやですわ、契約なんて、と言いながら、女の様子は前とちょっと違う。不動産取引に詳しく、てきぱきと事務的に仕事をこなす。翌日、三原が家を訪ねると、置手紙を残して女は消えていた。女は土砂爪子という。美貌を生かして男たちをだまして怪しい物件を高く売りつけて不動産屋から手数料を取る。衣装代はかかるが、税金は払わなくていい仕事である。ところが、着物を何枚も壁にかけた彼女の部屋に、三原が訪ねてくる。驚いてアイロンに触ってやけどする爪子。三原は家を既に転売していた。三原は爪子が燃していた夫の手紙が実は爪子への請求書であることに気づき、爪子の家を探し当てたのだ。君と結婚すれば小説の種はつきない、ノイローゼになって失踪することもないと三原は爪子に言う。
女経(じょきょう)のネタバレあらすじ:「恋を忘れていた女」
経営者として成功している三津には三つの顔がある。京都の老舗旅館だが、三津が修学旅行客専門の旅館に変えて成功している碇家の女将。木屋町のバー、チャイカのママ。そして、先斗町のお茶屋の重役である。亡夫の妹の弓子が東京から恋人の吉須を連れて京都に来る。弓子は三津に、吉須と結婚したいから、兄が自分のために預けていた金を出して欲しいと言う。碇家に弓子を呼んだ三津は、吉須は弓子をだましているに違いないから金を出さないと言う。でも弓子は、吉須を愛しているからたとえだまされてもかまわない、碇家の財産を狙ってあなたは兄の嫁になった、お金の勘定ばかりしているあなたは本当に幸せだったことはないし、これからもないと三津に言って碇家を出ていってしまった。弓子のことばが気になる三津は自宅に帰るが、義父が彼女の体を求めてくる。夫が死んで間もなく碇家で不安定な立場に置かれた三津は義父に体を許してしまったことがあったのだった。うるさい義父を避けて三津はチャイカに行く。このごろ電話を頻繁にかけてくるが会うのを避けてきた、先斗町の芸妓時代の恋人兼光が奥で待っていることを知らされる。三津は本当に好きだった男は兼光一人であったことを告白する。だが、兼光が二百万円の約束手形を割引いてほしいと要件を切り出したところに刑事たちが踏み込んできて兼光を逮捕する。彼は九州で詐欺をして手配されていたことを三津は知る。その時、碇家から電話が来る。碇家の前で交通事故に遭って、付き添いの女の先生と二人だけ碇家に居残ってしまった生徒の容体が悪化したという。生徒は輸血が必要だった。迷惑に思っていた客だったが、病床に駆けつけた三津は生徒に輸血する。自分のことしか考えずに生きて来た自分なのに。翌朝早く、三津は人助けをできたことに満足する。朝一番の列車で東京へ帰る弓子と吉須が挨拶に来ると、三津は気持よく金をやる。三津は女の本当の幸せを探してみようと思うと弓子に言う。三津は今警察にいる兼光とやり直すことを考えていた。
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