恋の罪の紹介:2011年日本映画。1990年代に渋谷区で起きたエリートOLの殺人事件に触発されて作られたサスペンス映画です。猟奇的な殺人の真相を追う女刑事が夜の街から消えた二人の女の運命を辿っていきます。女性のむき出しの欲望や愛憎を赤裸々に描いたセンセーショナルな作品として話題を呼びました。
監督:園子温 出演者: 水野美紀(吉田和子)、冨樫真(尾沢美津子)、神楽坂恵(菊池いずみ)、児嶋一哉(正二)、二階堂智(吉田正男)、小林竜樹(カオル)、岩松了(スーパーの店長)、大方斐紗子(尾沢志津)、津田寛治(菊池由紀夫)、ほか
映画「恋の罪」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「恋の罪」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
恋の罪の予告編 動画
映画「恋の罪」解説
この解説記事には映画「恋の罪」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
恋の罪のネタバレあらすじ:起
とあるホテルで不倫相手の男と密会をしていた刑事の吉田和子に一本の電話がかかってきます。彼女が雨の中向かったのは渋谷区円山町35丁目のラブホテル街。古びたアパートの一室から、切断された死体が二体のマネキンに接合された形で発見されます。一体は赤いスリップドレスを着せられ、一体にはセーラー服が着せられていました。アパートの壁には赤い字で「城」という文字が残されていました。小説家菊池由紀夫の妻であるいずみは神経質な夫の世話に明け暮れる専業主婦です。彼女は夫だけの愛では物足りない生活を送っていました。いずみは持て余している時間を外に働きに出ることで発散しようとしました。彼女が試食販売の仕事をしていると、ある女からモデルをやらないかと誘われます。軽い気持ちからモデルを始めたいずみはやがてAVの世界に足を踏み入れてしまいます。快楽を知り、解放的になった彼女は見違えるほど美しくなっていきます。若い男を自分から誘い、派手な恰好で出歩くことも多くなりました。ある日いずみが渋谷の街を歩いていると若い男カオルから声を掛けられます。カオルは円山町のラブホテル街を彷徨う男女はまだ見たことのない城に辿り着きたがっているのだと彼女に語るのでした。円山町のアパートで起きた猟奇的な殺人事件は、身元の特定が難航していました。事件を追う和子は、温かい家族に囲まれながらも夫の後輩と不倫関係を続けています。和子は夫や子供に見つかることを恐れながらも刺激的な快楽から抜け出せずにいました。軽い気持ちでラブホテルに入ったいずみでしたが、カオルから拘束され屈辱的な行為を強いられます。ようやく解放されホテルを出たところで、尾沢美津子という中年の女に出会います。カオルに城の話をしたのは美津子だといいます。いずみはミステリアスな美津子に惹かれていきます。
恋の罪のネタバレあらすじ:承
和子は行方不明になっている尾沢美津子がデリヘル嬢をやっていたのではないかと推理しますが、部下からあり得ないと否定されてしまいます。美津子は昼間は大学の助教授という堅実な仕事にを就きながら、夜は街に立って身体を売る破滅的な生活をしているのでした。いずみには大学の講義で詩を朗読する美津子が魅力的な大人の女性に映ります。知性的な美津子は確信に満ちた言葉でいずみの心を捉え、夜の世界へと誘いこんでいきます。やがていずみは美津子が売春の場として使用している円山町の古びたアパートで美津子とともに身体を売るのでした。いずみは美津子から愛のないセックスには必ず金銭を介在させることを教え込まれます。そしていずみは身体目的で近づいてくる男にはすすんで金銭を要求するようになるのでした。ある日いずみは売春の斡旋をするカオルとともに、美津子の実家でお茶をすることになります。実家には美津子の母もおり、いずみは戸惑いを隠せません。美津子の母は娘が売春をしていることを知っているといいます。そして美津子の下品さや汚れは、10年前に死んだ美津子の父親から受け継いだものだと罵り始めます。美津子が父親に似た男と寝た話をすると、母はナイフを持ち出して騒ぎ始めますが、逆上する母を美津子とカオルはただ嘲笑するのでした。和子は後輩の刑事から行方不明になっているデリヘル嬢の写真を見せられます。その中には美津子の写真もありました。和子たちが捜査のためデリヘルの事務所で事情を聞いていると、遺体の身元が判明したという知らせが入ります。
恋の罪のネタバレあらすじ:転
いずみは美津子の紹介で魔女っ子クラブというデリヘル事務所に所属することになりました。美津子の客からチェンジの依頼が入り、指名されたいずみはカオルとともにラブホテルに向かいます。ラブホテルの部屋に入ると、美津子が客の男と性行為を済ませて、寝ている状況でした。部屋に散乱した原稿を見て、いずみは客の男が自分の夫であることを知ってしまうのでした。夫は美津子の常連客だったのです。嫉妬を隠せないいずみは夫と何回寝たのかと美津子を問い詰めます。美津子はいずみが菊池の妻と知った上で今まで親切にしてあげたのだと勝ち誇ったように告白するのでした。そして夫の首を絞めながら再び性行為に及ぶ美津子に、いずみは憎悪を増幅させていきます。和子が後輩の刑事とともに美津子の家を訪れると、床に置かれたボストンバッグの中から切断された美津子の身体の一部が発見されます。美津子の母は娘の穢れた部分を切り取って閉じ込めたと説明しますが、和子には老いた美津子の母親が一人でこの猟奇的な殺人を行ったとは思えません。円山町の古びたアパートに戻った美津子は、いずみに父親を男として愛していたことを告白します。美津子にとって父親は永遠に辿り着けない城であり、城の入り口を探して死ぬまで彷徨い続けるのだと言います。死んだら城に辿り着けるのかと問ういずみと、殺してと凄む美津子が激しくもみ合いはじめます。カオルは楽し気に二人の様子を見物し、美津子の母も一部始終をアパートの外から見つめています。
恋の罪の結末
美津子の母は娘の身体を切り取るのを手伝ってもらったと和子に嬉しそうに語りだします。いずみに美津子の首を絞めるよう唆したのは美津子の母でした。美津子もまた楽になりたいという思いからいずみに強く首を絞めることを要求するのでした。和子が部下の刑事の大きな声に呼び出されて別室へ行くと、首を吊ったカオルの死体が発見されます。そして美津子の母は自らの首に躊躇することなくナイフを突き刺すのでした。和子は小説家の菊池の元へ行き、いずみの行方について尋ねます。妻の行方も売春をしていたことすら知らないと語る菊池でしたが、彼が嘘をついていることを和子はすぐに見破るのでした。いずみはかつての美津子のように、夜の街に立ち続けていました。身体を売っては男に暴力を振られるどん底の生活の中でも、美津子が朗読していた詩だけが不思議といずみの心の拠り所になっていました。ある朝自宅で夫と朝食を食べていた和子は、ゴミを出し忘れたことに気づいてゴミ収集車を追いかけます。無我夢中でゴミ収集車を追いかける和子は、気づくと円山町の廃墟のアパートの前に一人佇んでいるのでした。
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