グランド・ブダペスト・ホテルの紹介:2013年イギリス,ドイツ映画。名門、グランド・ブダペスト・ホテルのコンシエルジュ、グスタヴをご贔屓にしていたマダムDの遺産である一枚の絵を巡って始まった逃亡劇はどこかコミカル。
監督:ウェス・アンダーソン 出演:レイフ・ファインズ、トニー・レボトリ、F・マーレイ・エイブラハム、マチュー・アマルリック、エイドリアン・ブロディ、ウィレム・デュフォー、ジェフ・ゴールドブラム、ジュード・ロウ、エドワード・ノートン、ティルダ・スウィントンほか
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「グランド・ブダペスト・ホテル」解説
この解説記事には映画「グランド・ブダペスト・ホテル」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
グランド・ブダペスト・ホテルのネタバレあらすじ:愛されるコンシエルジュ、グスタヴと新人ベルボーイ
とある墓地、作家の墓標の前で、若い女性が本を広げる。とのタイトルは「グランド・ブダペスト・ホテル」。
若かりし日(1960年代)の作家が訪れたグランド・ブダペスト・ホテルは閑散期はひなびていて、お客はお一人ばかり。オーナーと言われるムスタファ氏とジャグジーで話すうちに、彼は一緒にディナーをすることに。食事の席で、ムスタファ氏はこのホテルは自分が買ったわけではないと、昔の話を始める。ムスタファ氏はかつて(1930年代)ゼロ・ムスタファとしてこのホテルのロビーボーイとして働いていた、ゼロが妻で菓子職人のアガサに出会ったのもこのホテル。絵に描いたような一流ホテルだった当時、オーナー不明のこのホテルの一切をほぼコンシエルジュのムッシュー・グスタヴが取り仕切っていた。彼はまたお客の懇意にする事もありグスタヴに会うためにこのホテルを利用するお客もいた。その一人、マダムDはもう会えなくなってしまう気がするから帰りたくないと駄々をこねていた。そんな彼女を宥めすかし家路につかせるのも、役目だった。
グランド・ブダペスト・ホテルのネタバレあらすじ:お得意様、マダムDの遺産相続を巡って
ある朝ゼロが新聞を買いに行くと、一面の戦争の記事の下に、マダムDの死亡記事を発見。グスタヴは訃報を知り、ゼロを連れてマダムDの家に最後の挨拶をしに行く事になった。ルッツ城へ向かう途中、列車が麦畑で止まる。待ち受けていたのは国境警備の軍隊だった。ゼロは移民で無国籍のため、旅券を持っていなかった。危うく逮捕されそうになったが、指揮官のヘンケルスが子供の時分にホテルでグスタヴに良くしてもらっていたというのを理由に、特別通許可書を発行してもらえ、その場はしのいだ。ルッツ城で棺の中のマダムDに挨拶を済ませると、親戚一同の集まった部屋に通される。弁護士で、マダムDの代理人が彼女の遺言状を箱一杯に抱えてやってくる。最新の遺言は彼女の死の間際に書かれたものだった。そこには、ホイトル作の「少年とリンゴ」という絵画をグスタヴ譲るという胸が描いてあった。一切血の繋がっていない彼に、唯一の個人蔵のホイトルの絵を譲渡する事に、マダムDの一族は納得しない。しかし、グスタヴは暖炉の上にあるその絵を外し、エゴン・シーレの絵に変えるとホイトルの絵を使用人に包んでもらいもって帰る事にした。その際キャンバスの後ろに極秘扱いの手紙が後ろに入れられる。グスタヴは持って帰って来るとホテルの金庫に隠した。しかし、マダムDの死因が毒による殺人だと分かると、懇意にしていたというだけで、グスタヴは疑いをかけられ、逮捕されてしまう。これは当時力のあったマダムDの一族による陰謀だったが知る由もなかった。
グランド・ブダペスト・ホテルのネタバレあらすじ:グスタヴを救出せよ!鍵の秘密結社。
彼は収監されてしまう。ゼロはアガサの働くメンドルのお菓子を差し入れに面会に訪れ、真犯人を知るはずのマダムDの家の執事の行方が分からないと話した。無実の罪でここいるグスタヴは、メンドルのお菓子に脱獄に使うための刃物を仕込ませ、ばれないように差し入れさせる。一方、マダムDの一族で遺産相続の筆頭でもあるドミトリーは遺言状の代理人の弁護士を脅し、雇った殺し屋に始末させる。ゼロの手引きと、同室の仲間の協力で脱獄したグスタヴは、すぐホテルへ帰るわけにもいかずある場所に電話をかけた、それは「鍵の秘密結社」と呼ばれるもので各ホテルが電話でつながっていた。そのおかげで列車の切符を手に入れ、導かれるままに逃げた。列車の中で話すうちに、グスタヴはゼロが戦争による移民で家族も村もなくしている事を知る。そして、彼はゼロがアガサと結婚する時は司祭として立ち会うと約束する。彼らは列車からケーブルカーに乗り換え山の上の修道院に修道士の恰好をして紛れ込む。そこで告解室に入るように促されると、行方不明のセルジュがおり、ドミトリーに雇われた殺し屋に始末された。二人は殺し屋を追い雪道をソリで追いかけ、崖で殺し屋をゼロが突き落とした。それを別の峰から見ていた脱走者を追う軍隊。ゼロとグスタフは殺し屋の乗っていたバイクで逃走する。
グランド・ブダペスト・ホテルのネタバレあらすじ:二通目の手紙の発見と物語の終り。
メンドルの店員に扮した二人は、戦争により兵舎として使われていたホテルへ、アガサに隠していた絵画を持ってきてもらうように頼む。いつものようにお菓子の配達を装ってホテルに入るアガサだったが、ホテルにいたドミトリーに包まれた絵画が例のものだと気づかれホテルの中を追い回される。助けにはいった二人はバルコニーにぶら下がった彼女を助けようとして、落ちる時に包みを破いてしまう。そこには、極秘扱いの手紙が入れてあり、マダムDが「殺された場合の遺産相続」が記されていた。それによれば、マダムDの所有するあらゆるもの物品や会社や人脈、そしてホテルをグスタフに譲るというものだった。全てを手にしたグスタフ。ゼロとアガサは無事に結婚した。
しかし幸せな時は長く続かなかった。ルッツへ旅行の途中、再び麦畑の真ん中で国境警備に止められる。ヘンケルスによる特別通行許可書を見せるが、それは破り捨てられ抵抗したグスタフは撃たれて亡くなる。アガサもプロイセン風邪にかかり長く生きる事はなかった。グスタフから受け継いだゼロは、アガサの思い出のためにホテルを残す事にした。ゼロ・ムスタファ氏の話が終り、作家との夕食も終わった。作家はホテルを離れ、南米へ渡った。作家の墓標の前で女性は本を閉じた。
以上、映画グランド・ブダペスト・ホテルのネタバレあらすじと結末でした。
グランド・ブダペスト・ホテルのレビュー・感想:物語の中の物語
この作品は墓標の前の本、若かりし作家とムスタファ氏の記憶、ムスタファ氏がロビーボーイだった頃の話、何層にも伝聞になっている。その層ごとに、年代はさかのぼり、物語調になり、メインとなっている、ゼロ・ムスタファ氏の話になると、画面全体が絵本のような雰囲気になる。アガサの作るお菓子もパステルカラーのマカロンを思わせるものの現実離れしている。この伝聞によってファンタジックなっている分だけ、戦争や逃亡劇なども象徴的になりコミカルにさえ映る。そうする事で、浮かび上がるのが、グスタヴのカリスマ性とその魅力。かつて華やいでいた時のグランド・ブダベスト・ホテルの様相である。そしてそれは墓標の前の女性の本が閉じられる事で終幕する。物語を読んでいるような、構成である。
この映画は、ハリウッドと一線を画し、独特な映像世界を築く、奇才ウェス・アンダーソン監督が、目を見張らんばかりの造形美(特に左右対称の造形美)を存分に生かし、遊び心溢れた、心ときめく大人の童話に仕上げてくれましたね。
ナチズムや共産主義のパワーバランスに右往左往する、不安定な東欧の歴史に弄ばれながら、コンシェルジェとベル・ボーイの波乱万丈の物語が展開し、不思議な運命の巡り会わせの結果、気が付けばゼロ氏は雇われベルボーイからホテルのオーナーになって、めでたし、めでたしという摩訶不思議なお話でしたね。
とにかく、遊び心たっぷりで、スピーディな展開の奇妙奇天烈なお話に魅了された1時間40分でした。