傷だらけの栄光の紹介:1956年アメリカ映画。アメリカの元ボクシング世界ミドル級チャンピオンのロッキー・グラジアノの半生を描いた伝記映画です。監督は『ウエスト・サイド物語』(1961)、『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)のロバート・ワイズで、メリハリの効いた演出でロッキーの生涯をスピーディかつ丁寧に描いています。ポール・ニューマンが撮影直前に交通事故で他界したジェームズ・ディーンに代わって主演を好演し、その存在感は抜群です。第29回アカデミー賞撮影賞と美術賞(共に白黒部門)の2部門を受賞した傑作で、スティーブ・マックイーンの映画デビュー作でもあります。
監督:ロバート・ワイズ 出演:ポール・ニューマン(ロッキー・グラジアノ)、ピア・アンジェリ(ノーマ・グラジアノ)、サル・ミネオ(ロモロ)、アイリーン・ヘッカート(バーベラ夫人)、ハロルド・J・ストーン(ニック・バーベラ)、エヴェレット・スローン(アーヴィング・コーエン)、ロバート・ロジア(フランキー・ペッポ)、スティーヴ・マックィーン(ファイデル)、ほか
映画「傷だらけの栄光」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「傷だらけの栄光」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「傷だらけの栄光」解説
この解説記事には映画「傷だらけの栄光」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
傷だらけの栄光のネタバレあらすじ:起・どん底
「これが覚えている真実だ」元ボクシング世界チャンピオンのロッキー・グラジアノは語ります。時は1930年代に遡ります。「どうせ将来は見えている」アメリカ・ニューヨークのスラム街で、元ボクサーの父から虐待を受けて育ったロッキーは学校にも行かず、札付きのワルに成長していました。「大物になる」家を飛び出したロッキーは、地元のワルたちと強盗や泥棒を繰り返しては教護院を抜け出す日々を繰り返しました。そんなロッキーもついに逮捕され、刑務所に収監されます。「ボクシングをやる気は?金になる」腕っぷしの強かったロッキーは、そこでフランキー・ペッポという男からボクシングを勧められます。しかし、ロッキーは即、その誘いを断ります。それは元ボクサーである父の最低な姿を、幼い頃から嫌というほど見続けてきたからでした。
収監されてから半年後、ロッキーの母アイダがひどくやつれた様子で面会に来ました。ロッキーの事が心配で精神を病み、入院していたと言います。「もう限界…」泣き崩れる母の姿にショックを受けたロッキーは、更生することを心に誓います。しかし釈放後、晴れて自由の身となったロッキーを待っていたのは、アメリカ陸軍の招集でした。母の元に帰れると思っていたロッキーは規律厳しい軍隊生活に慣れず、ついに上官を殴り倒してしまい、脱走しました。
傷だらけの栄光のネタバレあらすじ:承・運命の出会い
脱走したロッキーは故郷ニューヨークへと舞い戻ります。ロッキーは金で事態を収拾しようと考えます。ペッポの言葉を思い出したロッキーは、ボクシングジムへ向かいました。そこでロッキーは飛び入りでリングに上がり、一流選手を見事にノックアウトして勝利します。これを契機にロッキーは、ボクサーとして本格的に賞金を稼ぐようになります。しかし、それは長くは続きませんでした。逃走犯ロッキーはアメリカ陸軍に捕まり、再び1年間のムショ暮らしとなりました。
ムショでロッキーは、相変わらず殴り合いの日々を送っていました。しかし、そんなロッキーの姿を見ていた刑務官ハイランドは、彼の中にボクシングの優れた才を見出します。「他のボクサーが持っていないものを君は持っている。“憎しみ”だ。その拳を自分のために役立てろ。人生を変えろ。その憎しみをリングで燃やせ。燃やし続ければいつかなくなる」喧嘩三昧でこれまでの人生を棒に振ってきたロッキーは、ハイランドの言葉を信じ、刑務所内のボクシング部に入ります。そこでロッキーはトレーニングを積み、みるみる実力をつけていきました。
ハイランドが見抜いた通り、出所後、ロッキーは連戦連勝の快進撃を重ねていきます。そんなある日、母からロッキーは父の意外な過去を聞かされます。父は母との結婚でボクシングの道を閉ざし、飲んだくれに陥ってしまったというのです。その頃、ノーマという美しい女性に恋したロッキーは、その母の話を聞き、深く思い悩みます。彼女は昔の母と同様に人を殴る血生臭いボクシングを快く思っていませんでした。「愛だの恋だのは男にとって大事じゃない」と思っていたロッキーでしたが、何とかボクシングを理解して欲しいと、色々策を講じてノーマを説得しようと試みます。ノーマに夢中になるあまり、ロッキーはついに試合をすっぽかすという大失態をおかしてしまいます。そんなロッキーの様子を見かねたジムの人たちは、ロッキーにノーマと結婚するよう提案します。「家族を養う責任感。それが金の卵を産む秘訣かもしれん」結婚がロッキーを成長させると考えたのです。
傷だらけの栄光のネタバレあらすじ:転・苦境
ジムの人たちの思惑通り、ノーマとの結婚後、ロッキーは連勝を重ねます。子供が産まれてからもロッキーは連勝記録を伸ばし続けまし。しかし、世界ミドル級チャンピオンのトニー・ゼールとの対戦で、その記録は潰えます。「勝ち負けじゃない…」ノーマはただボクサーである夫ロッキーの身だけを心配していました。「彼にはこれしかない。私はボクサーと結婚した」ノーマは気丈に振舞い、敗北したロッキーを励まします。そんな妻ノーマの愛を糧に、ロッキーはゼールとの再戦を目指し、更に厳しいトレーニングに励みました。
そんなある日、ペッポがロッキーの前に現れ、次の試合を八百長で負けるように求めてきました。「オレはクリーンにやってるんだ。誰にも邪魔させない」拒むロッキーに、ペッポはもし拒否すれば陸軍懲戒除隊と服役の事実という過去のスキャンダルを公表すると、執拗に脅してきました。苦悩の末、ロッキーは結局、仮病で試合放棄します。しかし、これで事態は収拾しませんでした。ロッキーは八百長疑惑を調査していた検事局から取り調べられました。「ボクシング界に貢献するチャンスだぞ。誰も君を責めない。君は買収されず、八百長もしなかった」検事局はロッキーの口から黒幕を突き止めようしました。ロッキーはペッポからの仕返しを恐れて証言しませんでした。そしてロッキーはプロ資格を剥奪され、世界チャンピオンへの道も閉ざされてしまいます。その上、何者かによって、ロッキーの過去の犯罪歴も新聞社に暴露されてしました。
ロッキーは精神的窮地に追い込まれ、家に引きこもる日々が続きます。そんなある日、ロッキーの元に嬉しい知らせが届きます。それはチャンピオン・ゼールとシカゴでタイトルマッチができるというのです。ジムの人たちが州ごとに法律が異なる事に目をつけて、やっとのことで実現にこぎつけた試合でした。「シカゴなんて敵だらけだぞ。全員ゼールの味方だ。そんな所へは行かない」恐怖感から怖気づくロッキーは、心を閉ざします。
傷だらけの栄光の結末:再び王者へ
「社会の一員になるには…。絶対に立ち直らせなきゃ!」ロッキーを復活させるため、覚悟を決めたノーマは、過去から目を背けてはいけないと諭します。しかし、耐え切れなくなったロッキーは、ニューヨークに逃げてしまいます。そんなニューヨークに戻ったロッキーを温かく迎え入れる仲間はもう誰もいませんでした。ロッキーは絶望し、何気なく実家を訪ねます。するとそこには父の姿がありました。いつものごとく父と口喧嘩を始めるロッキーでしたが、この時、ロッキーは初めて父の本心を悟ります。「チャンプになれ、オレの夢だった」「何も心配ない。任せとけ」父親の言葉を胸にロッキーはシカゴに戻りました。
ガッツを取り戻し帰って来たロッキーを、ノーマは笑顔で迎え入れました。そして、ノーマは二人目の子を妊娠していると吉報を告げました。ロッキーは喜び、ノーマを抱きしめました。
そしてついにチャンピオン・ゼールとのタイトルマッチの日が到来しました。序盤からロッキーは苦戦を強いられます。誰もがロッキーの敗北を予感していました。しかし、ロッキーは諦めていませんでした。そして第6ラウンド、ロッキーは気力を振り絞ります。見違える動きを見せ、ロッキーはゼールを圧倒しノックダウン、KO勝利を収めました。ついに念願の世界チャンピオンの座をロッキーは獲得しました。
ニューヨークに戻ったロッキーを、故郷の街は盛大な凱旋パレードで迎えました。「王者になった事実は誰にも奪えない。オレはツイてた。神様に愛されてる」「私にも好かれてる」天を指差しながら誇らしげに話すロッキーに、ノーマはすかさず返しました。世界チャンピオン・ロッキーの帰還に街の人々は歓喜しました。
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