サスペリアの紹介:2018年イタリア,アメリカ映画。1977年、ベルリンを拠点とするダンスカンパニーのオーディションを受けるために、アメリカからやってきたスージー。彼女の内なる素質を見抜いたマダム・ブランはすぐに次回の演目のセンターへと抜擢する。しかし、このダンスカンパニーの内部では次々に不可解なダンサーの失踪が続いていた。この闇は、事件を追っていた心理療法士クレンペラー博士やスージーを巻き込んで闇へとつながっていく。ダリオ・アルジェント監督『サスペリア(1977年)』の現代版リメイク。『サスペリア(1977年)』でスージーを演じたジェシカ・ハーパーが、クレンペラー博士の妻役で登場するのも見どころのひとつ。
監督:ルカ・グァダニーノ 出演:ダコタ・ジョンソン(スージー・バニヨン)、ディルダ・スウィントン(マダム・ブラン)、ミア・ゴス(サラ)、クロエ・グローレス・モレッツ(パトリシア)、ルッツ・エバースドルフ(ジョセフ・クレンペラー)、ジェシカ・ハーパー(アンケ)、エレナ・フォキナ(オルガ)、アンゲラ・ヴィンクラー(ミス・ターナー)、イングリット・カーフェン(ミス・ヴェンデガスト)ほか
映画「サスペリア(2018年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サスペリア(2018年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
サスペリアの予告編 動画
映画「サスペリア(2018年)」解説
この解説記事には映画「サスペリア(2018年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
サスペリアのネタバレあらすじ:起
1977年、東西に分断されていたベルリン。ドイツ赤軍の爆破テロに触発された学生たちのデモが頻発し、街は混沌とした不安に覆われていました。そんな中、スージー・バニヨンはダンサーとして有名になることを夢見て、アメリカ・オハイオの田舎町から世界的活躍を見せる舞踏団マルコス・ダンス・カンパニーへやってきました。スージーは専門的にダンスを学んだことこそなかったものの、マルコス・ダンス・カンパニーのアメリカ公演を何度も観ており、独学でダンスを習得しました。オーデションで彼女は天才的な才能と溢れるほどの情熱を見せ、舞踏団の振付師マダム・ブランの目にとまります。入団を許可されたスージーは華々しい寮生活をスタートさせました。 レッスン初日、それまでセンターダンサーだったパトリシアの代役にオルガが指名されました。ところが、オルガは突然、パトリシアが失踪したのはこのカンパニーの陰謀のせいだと騒ぎ出し、練習を放棄してしまいました。パトリシアは優秀なダンサーでしたが、数日前に不可解にも忽然と姿を消してしまったのです。
サスペリアのネタバレあらすじ:承
パトリシアが失踪する前、彼女は心理療法士ジョセフ・クレンペラー博士のもとを訪れていました。そして追い詰められた様子でカンパニーは魔女たちの結社だと訴えました。クレンペラーはその狂言を妄想と診断。深く取り合うことはしませんでした。一報クレンペラーも心に闇を抱えていました。第二次世界大戦の中、生き別れてしまった妻アンケへの想いを消し去ることができず、アンケと住んでいた家を度々訪れては過去の記憶に浸っていました。カンパニーは数日後に公演会を控えていました。マダム・ブランはスージーをリードダンサーに抜擢し、個人レッスンを開始します。やがてスージーもマダム・ブランに導かれながら踊ることで得体の知れない大きな力が宿り、その存在と共鳴していくのを感じます。その頃、クレンペラー博士はパトリシアが置いていった日記を読み、3人の魔女がいることを知ります。魔女組織の顔を持つカンパニーの調査を始めていました。そしてスージーの親友であるサラと接触し、パトリシア失踪の真実を伝えました。サラは並べられた信じ難い話を受け入れることができず、そのまま店を飛び出してしまいました。
サスペリアのネタバレあらすじ:転
クレンペラーの言葉が気になっているサラはカンパニーの秘密を嗅ぎまわり始めます。すると、ダンスフロアの鏡が開き、隠し扉が現れました。恐る恐る中に入っていくと、ブランの肖像画や、不気味なオブジェなどがあり異様な空気が漂っています。恐ろしい巨大な鉤フックを見つけたサラはこっそり持ち出しました。後日、クレンペラーと再会したサラは隠し部屋のことを伝え、鉤フックをクレンペラーに見せました。2人は嫌な予感を感じつつも、公演会の日は来ました。クレンペラーも観賞に訪れています。ところがサラの姿がありません。サラは皆が舞台に集中する機を狙い、隠し部屋にいました。そして思った通りパトリシアは瀕死の状態でそこにいました。しかし助け出そうとした瞬間、うめき声とともに恐ろしい気配に包まれ恐怖で逃げ出したサラ。途中で足を怪我してしまいます。しかしどこからともなく現れたブランがサラの足に触れると傷はなくなり、吸い寄せられるかのように舞台へと戻っていきました。センターをつとめるスージーは何かが憑依したかのように、一層熱をおび踊り狂います。クライマックスに差し掛かった次の瞬間、サラが倒れ不自然に足が折れます。魔女の存在を確信したクレンペラーは消化できないまま会場を後にしました。
サスペリアの結末
後日、いつものようにアンケと住んでいた家へ行くと、驚くことにアンケがいました。アンケは離れ離れになった日からの出来事をつぶさに語り、寄り添いながら歩く2人。クレンペラーにとって、幸せなひと時でした。しかし気づくとそこはカンパニーのビルの前。ふと振り向くとアンケは消えていました。建物から女に誘われるままに入るクレンペラー。我に返ったときには、丸裸で拘束され儀式の証人として祭壇へ乗せられていました。ダンサーたちが踊り狂い儀式を盛り上げます。ダンサーの中に、失踪したパトリシア、オルガ、サラもいました。中央に座っている裸の醜い女がマザー・マルコスでした。生き永らえるために若く純粋な身体を探し、スージーにたどり着いたのでした。しかしブランが割って入ります。まだ早いのではないか、と。マルコスはブランの頸動脈を切り絶命させました。しかし次の瞬間、スージーは言います。「私こそがマザー・サスペリオルム」と。マルコスに口づけをすると死が訪れました。恐ろしい光景を目にしたクレンペラーは呆然と家路につき寝込んでしまいます。そこへ訪ねてきたのはスージーでした。彼女はクレンペラーに「"娘たち"を止めることができなかった」と詫び、真実を伝えると続けました。「あなたの妻アンケはナチスの強制収容所へ入れられて調査と称して極寒の地へ放り出され、1943年11月11日に息を引き取った」と。また、「収容所で知り合い、親しくなった女性たちと共に亡くなったので孤独ではなかった。そしてあなたと行ったコンサートを思い出して最期まであなたを想って亡くなった」と伝えます。涙を流すクレンペラー。スージーはそこまで伝えるとクレンペラーから全ての記憶を奪いました。40年以上の歳月が経った今日のベルリン。元気な子供たちの声が聞こえる幸せそうな家族の家。正面に生えている木には"ヨーゼフ&アンケ"と刻まれていました。
以上、2018年版サスペリアのあらすじと結末でした。
「サスペリア(2018年)」感想・レビュー
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評価が分かれる作品かも知れません。私個人と致しましては最高の御馳走でした。コンテンポラリーダンスや舞踏系が好きで、音楽もビジュアルもエロティックなのは大歓迎。黒魔術やグロテスクな儀式の描写も大好物なので、正にこの映画の世界観にどっぷりと浸る事ができました。ストラヴィンスキーの「春の祭典」などに共通するデモーニッシュな魔性の魅力です。また、カルト集団が醸し出す狂気や暴力(残虐性)もとてもスパイシーなのです。外の世界と隔絶した閉ざされた空間に蠢く魔物たち。か弱い男とは違って、女性は理性より野生が勝るマッチョな猛者なのです。個性豊かな女性たちに取り囲まれたら失禁してしまいそうです。舞台となった77年のベルリンは壁を隔てて明暗がハッキリと別れていました。この映画全体を支配する光と影が正にそれだと思います。「この映画に登場する女性たちは全員が最高に素敵でした!」と、そう思わせる演出は説得力があり見事だと思うのです。私のような寺山修二の前衛演劇が好きな人にはピッタシではないでしょうか。
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初期サスペリア、小学生の時にTVのロードショーで観て依頼、再放送やベータ録画のものを度々観てましたが、重要な?怖いシーンの前後はいつも目を背けるので結局毎回完全に観れていない自分でした。ゴブリンのシングルレコードも購入する位、影響受けました。今回こちらの解説で詳細がわかり改めて観たい気持ちになりました。ありがとうございました。
この映画を観る前から若干の懸念はありました。アルジェントの強烈な個性である原色をふんだんに使った照明や音などをリメイク版の本作ではどのように表現されているのだろうと。
映画が始まって30分ぐらいで「私の求めていたモノとは違うな…」という思いになってしまったのはやはりというかなんというか。
オリジナル版「サスペリア」を期待すればするほどイメージのギャップは激しいですよ。オリジナルにあった凝った殺人シーンなどもあまりなく、一種の文芸映画として観るべき作品かもしれません。
ただ、1977年という設定上、当たり前にタバコを吸う登場人物たちには妙なリアリティーが感じられました。