サッドヒルを掘り返せの紹介:2017年スペイン映画。映画史に残るマカロニウェスタンの傑作『続・夕陽のガンマン』。「サッドヒル墓地の三角決闘」はその有名なクライマックスシーンだ。制作から50年以上経ったいま、忘れ去られたそのロケ地を復元させようと動き始めた人たちがいた。スペインの若き映画監督ギレルモ・デ・オリベイラはYouTubeにアップするつもりで取材を開始したが、やがてプロジェクトは大きくなり、『続・夕陽のガンマン』の制作に関わった人たちへのインタビューを加え、初の長編第一作として本作を完成させた。
監督:ギレルモ・デ・オリベイラ キャスト:【サッドヒル文化連盟】メンバー ダヴィッド・アルバ、ディエゴ・モンテロ、セルジオ・ガルシア、ヨセバ・デル・ヴァレ エンニオ・モリコーネ[作曲家]、クリント・イーストウッド[俳優]、ジェイムズ・ヘットフィールド[ミュージシャン]、ジョー・ダンテ[映画監督]、クリストファー・フレイリング[映画研究者]、アレックス・デ・ラ・イグレシア[映画監督]、カルロ・レバ[美術助手]、エウヘニオ・アラビソ[編集]、セルジオ・サルヴァティ[撮影助手]、ジュディッタ・シーミ[美術監督の遺族]
映画「サッドヒルを掘り返せ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「サッドヒルを掘り返せ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「サッドヒルを掘り返せ」の予告編 動画
映画「サッドヒルを掘り返せ」解説
この解説記事には映画「サッドヒルを掘り返せ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「サッドヒルを掘り返せ」のネタバレあらすじ:起
2011年7月、スウェーデンでおこなわれたロックバンドMETALLICA(メタリカ)のライヴ映像で映画は始まります。
そしてカメラはスペインのブルゴス郊外にあるミランディージャ渓谷へ。1966年夏、この地でセルジオ・レオーネ監督の大作『続・夕陽のガンマン』が撮影されました。映画のクライマックスに登場する「サッドヒル墓地」は本物の墓地ではなく、この地に作られたセットでした。映画の撮影が終わるとその存在は忘れ去られ、風化し、20cmの土に覆われていたそうです。
その墓地は映画監督ジョー・ダンテいわく「映画史に残る美しさ」で、20分ほどのそのシーンは「アメリカ映画なら5分で終わっただろう」というこだわりのシーンです。
その場所は、カナダからやってきた青年たちによって特定されました。「サッドヒル墓地」をさがしてやってきた彼らはこの映画の大ファンで、山の形などを頼りに渓谷を歩き回り、ついにあの象徴的な同心円を見つけたのです。
「サッドヒルを掘り返せ」のネタバレあらすじ:承
続いて映画では、『続・夕陽のガンマン』の制作に関わった人たちへのインタビューでその当時をふり返ります。
セルジオ・レオーネ監督は『荒野の用心棒』(1964年)の成功により、その時20万ドルだった製作費が『夕陽のガンマン』(1965年)では60万ドルに、そしてこの『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗(当時の邦題)』(1966年)ではなんと130万ドルになったそうです。
ロケ地には、アメリカのバージニア州に景色が似ているという理由でスペイン北部のミランディージャ渓谷が選ばれました。当時のスペインはフランコ政権で、スペインの内戦などに関するものは許可されませんでしたが、これはアメリカ南北戦争の話だったので問題なかったそうです。しかも外貨獲得のためか人員の貸し出しにも積極的で、5,000人ものスペイン兵が撮影に協力したそうです。彼らはセット作りからエキストラとしての出演まで、多岐に渡り活躍しました。サッドヒル墓地も2日間で作られ、その墓の数は4~5,000基に及びました。
また、撮影助手をつとめていたセルジオ・サルヴァティが、橋の爆破のシーンは最初合図に失敗してカメラを回していなかったため撮り直しになったと語っています。三ヶ国語が飛び交う現場で意思疎通がうまくいかず、誤ってスイッチを押してしまったそうです。怒り心頭のレオーネ監督に、スペイン兵側は「2日で橋を作り直す」と言い、その間別の場所で撮影をおこなったようです。
「サッドヒルを掘り返せ」のネタバレあらすじ:転
「サッドヒル墓地」では2014年、四人のファンたちによって墓地を掘り返す活動が始まりました。教師、バーテンダー、宝くじ売り、民宿の主人…、映画制作とは関係のない彼らですが、ロケ地の近くに住んでいたという共通点があり、全員熱狂的なこの映画のファンでした。「サッドヒル文化連盟」として活動を始めた彼らですが、いざ作業を開始するとあまりに膨大なその作業量に完成が絶望的に思われ、SNSを使っていっしょに作業する仲間を募集することにしました。支援者がたくさん訪れる日は作業も進みますが、数人しか集まらない日もありました。さらに有志による活動は経済的にも限界があり、彼らは思いついた名案を実行します。それは「墓を実際に売り出す」ということ。もちろん埋葬はできませんが、十字架に自分の名前を書いてもらうことができるこのアイディアに、想定外の約1,000人が応募してきました。その資金をもとに十字架用の木材とペンキを買い、だんだんとサッドヒルは墓地らしくなってきました。
「サッドヒルを掘り返せ」の結末
「サッドヒル文化連盟」のメンバーは、『続・夕陽のガンマン』50週年の記念に、この地で上映会を開催することを決めました。
同心円の中心に石の舞台が完成し、イーストウッドのシルエットパネルを設置するメンバーたち。あの首吊り縄の下がる木も再現されました。
いよいよ上映会の日。世界中からたくさんのファンが集まり、復活した聖地でのひとときを楽しんでいます。
やがてあの石舞台で、メンバーが所属するアマチュア劇団による決闘シーンの再現が行われました。楽団によるモリコーネのテーマ曲の演奏で盛り上がる現場…。
そして夕闇迫る頃、上映会が始まります。まず、当時の撮影監督と、美術監督(故人)の娘があいさつし、会場はあたたかな雰囲気に包まれます。
つづいてサプライズの動画メッセージ。まずはエンリオ・モリコーネ。そしてこの活動を支援したMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールド。これで終わりかと思われた次の瞬間、画面にはクリント・イーストウッドの姿が…。会場に来ることは叶わなかったが、このプロジェクトを応援している、というそのメッセージにメンバーたちは感激し、抱き合って涙を流すのでした。
自身のコンサートのオープニングでサッドヒル墓地のシーンの映像と音楽を使用しているMETALLICAのジェイムズ・ヘットフィールドが、最後にこう語っています。
「音楽や芸術は人生を変えるし、人生を豊かにする」
以上、映画「サッドヒルを掘り返せ」のあらすじと結末でした。
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