バイスの紹介:2018年アメリカ映画。1960年代半ば、青年チェイニーはのちの妻となる恋人リンに背中を押されるようにして政界の道を歩み始める。型破りな下院議員ラムズフェルドの元で政治の表裏を学んだチェイニーは次第に権力の虜になっていく。ジョージ・W・ブッシュ政権において副大統領に就任した彼は、次第に影の大統領として振る舞い始める。ハリウッド屈指の"演技の鬼"として名高いクリスチャン・ベールが約20キロに及ぶ体重の増量と、一度あたり5時間を要する特殊メイクを施して半世紀にわたるチェイニーを体現。題名の『バイス』には、バイス・プレジデント(副大統領)を指すだけでなく、「悪徳」「邪道」という意味もこめられている。
監督:アダム・マッケイ 出演:クリスチャン・ベール(ディック・チェイニー)、エイミー・アダムス(リン・チェイニー)、スティーヴ・カレル(ドナルド・ラムズフェルド)、サム・ロックウェル(ジョージ・W・ブッシュ)、タイラー・ペリー(コリン・パウエル)、アリソン・ピル(メアリー・チェイニー)、リリー・レーブ(リズ・チェイニー)、リサゲイ・ハミルトン(コンドリーザ・ライス)、ジェシー・プレモンス(カート)ほか
映画「バイス」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「バイス」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
バイスの予告編 動画
映画「バイス」解説
この解説記事には映画「バイス」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
バイスのネタバレあらすじ:起
2001年9月11日。アメリカで複数の旅客機がハイジャックされ、うち2機が世界貿易センタービルに突っ込みました。国家を大きく揺るがすこととなった同時多発テロ。物語は軽快なカートの語り部により進められていきます。
その頃ホワイトハウスでは副大統領ディック・チェイニーが大統領危機管理センターに避難して陣頭指揮に当たっていました。国防長官ラムズフェルドからの電話で「国の交戦規定は?」と尋ねられたチェイニーは、不在のジョージ・W・ブッシュ大統領に確認を取ることもなく「いかなる航空機も脅威と見なせば撃墜できる」と答えました。人命に関わる重大な決断を平然と独断で下してしまうチェイニー。不穏な空気が流れました。
バイスのネタバレあらすじ:承
さかのぼること1963年。若きチェイニーは酒浸りの大学生でした。酒とケンカでイェール大学を退学になり電気工として働き始めましたが、酒癖の悪さは相変わらず。警察沙汰になったことをきっかけに恋人リンに喝を入れられ、二度と失望させないことを誓わせられます。1968年、ワシントンD.C.で連邦会議のインターンシップに参加したチェイニーは、共和党下院議員ラムズフェルドの型破りなスピーチを気に入り、彼のもとでアシスタントをすることにしました。「口は堅く」「指示を守れ」「忠実であれ」という部下に必須な3ヶ条を叩き込まれたチェイニーはこの世界に身を捧げることを決意したのでした。
その後ラムズフェルドの失脚で一度は政界を離れたチェイニーでしたが、1974年にニクソンが辞任を発表すると、再びラムズフェルドに連絡をして「ホワイトハウスを乗っ取ろう」と持ちかけます。こうして史上最年少34歳で大統領首席補佐官となったチェイニーでしたが、下院議員選挙に出馬を決めてまもなく心筋梗塞で倒れてしまいます。しかしそれを救ったのはまたもや妻リンでした。彼女は選挙キャンペーンでワイオミングの庶民の心打つ演説をし、夫を勝たせました。
バイスのネタバレあらすじ:転
したたかさを備えたチェイニーはレーガン政権で活躍、その後を受けたジョージ・H・W・ブッシュ大統領のもとでは国防長官に就任。輝かしい日々を送っていました。ところが、次女メアリーが同性愛者であることが発覚。共和党は同性愛や同性婚に不寛容だったため大統領への道は断念し、愛する家族とともに、ヴァージニア州ののどかな自然の中で悠々自適な生活を送ることにしました。
そんな中、チェイニーのもとに入った1本の電話で事態は急変します。かつて国防長官として仕えたブッシュ大統領の息子でひどくできが悪いと評判のジョージが大統領選に出馬するというのです。副大統領候補を打診され乗り気になれなかったチェイニーでしたが、無邪気な青二才のジョージと直接面会するとひらめきました。官僚や軍、エネルギー政策から外交政策に至るありとあらゆる実権を掌握することを画策します。こうしてジョージは2001年の1月20日に大統領に就任。副大統領となったチェイニーは旧知のラムズフェルドを国防長官に迎え、思惑通りの人事を敷きました。
バイスの結末
再び2001年9月11日。チェイニーはテロとの攻防に隠れて憲法や国際法を拡大解釈し、国民へ巧妙な情報操作を行うことでイラクを敵国と仕立て上げます。パウエル国防長官はこのイラク政策に同意していませんでしたが、2003年の国連安保理でイラクが大量破壊兵器を所持しているというスピーチをし、のちに責任を取って辞任。このスピーチのお膳立てをしたのもチェイニーでした。
その後、一元的執政府論という憲法の解釈を打ち立て、執政の主導権は大統領にあり、議会の干渉を受けずにさまざまな行政判断を行うことができるという理論を推し進めます。これにより減税や献金、軍事や拷問までもを自由に操っていくチェイニー。しかし、米兵の犠牲者増加や捕虜虐待報道がかけめぐり反戦論が吹き荒れます。追い討ちをかけるように再び倒れ生死をさまよいますが、それまで物語を進めていた語り部カートの不慮の事故により、新たなハートを手に入れ奇跡的に復活します。TV番組に出演し、責任を問われたチェイニーは言うのです。「非難の嵐も平気だ。愛されたかったら映画スターになればいい」と。さらには「あなたたちの愛する人々を守るためにしたこと。私は決して謝らない」と。
以上、映画「バイス」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する